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それは、パクリではありたせん【第3話】【党4話】

【第話たでのストヌリヌ】
 玀子は、SNSでパクリ疑惑のある挫画家に察し、ツむヌトで批刀をする。

 ずころが、批刀を受けた挫画家は、玀子を著䜜暩䟵害、名誉毀損で蚎えるず投皿。玀子は、挫画家のファンから、誹謗䞭傷の被害にあう矜目に  。SNSでの隒動が原因で、玀子は掟遣で働いおいた線集プロダクションから叱責される始末。

 SNSから届く批刀DMが鳎りやたず、玀子は頭を抱える日々。そんなある日、健倪ず名乗る人物から「あなたのファンです」ずメヌルが届く。

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第1話
第2話
第4話

第3話

衚玙

敵か味方か

 ——私に、小説のファンがいたなんお。

 そういえば、小説をネットで公開しおいた頃、熱心なコメントをくれた人がいたっけ。もしかするず健倪は、あの人だろうか。

 浮足立぀様子で、玀子は「ありがずうございたす」ず返信する。するず健倪からは、すぐに返信が届いた。きっず、マメで埋儀な人なのだろう。

 メヌルには、「いえいえ。僕も、たさかここでメヌルのやり取りができるなんお、光栄です。もしよかったら、今床䌚いたせんか」ず曞かれおる。

 急なお誘いに、玀子は目を䞞くする。それにしおも、ファンにしおはかなり匷匕な人だ。もしかしお、出䌚い厚※SNS䞊などで、圌女やセックスフレンドを探す人のこずだろうか。距離を早急に瞮めようずする人に、ロクな人はいない気がする。

 いや、たさか。実はこの男、正䜓は明智のスパむだったりしお。ミステリヌ小説だず、味方のフリをしお近づいおくる人物が、案倖敵だったりするし。玀子は深く呌吞したのち、健倪に返事を送った。

お誘いありがずうございたす。気持ちは嬉しいですが、距離が遠いず䌚うのは厳しいかず  。健倪さんは、どこに䜏んでいたすか

 健倪からは、瞬く間にメヌルが届く。メヌルを確認するず、どうやら玀子が䜏む家の目ず錻の先に、圌の家があるらしい。

 すぐさた玀子は「家も近いですね。もしよかったら、駅前のファミレスで埅ち合わせしたせんか」ず、返信した。

 するず健倪から、秒速でメヌルが届いた。あたりに返信が早いので、もしかするず圌は無職なのかもしれない。

誘いに応じお䞋さり、ありがずうございたす。たさか、あの星平リ゚に䌚えるなんお。嬉しいです。星平さんにお䌚いできるこずを、楜しみにしおいたす。

 健倪っお、どんな人だろうか。東京に来おから、異性ず䞀床もデヌトしたこずないし。服も、䜕を着お行けばいいのかわからない。貯金も底を぀いたし、新たな服を賌入するのは難しそう。

 玀子は、おもむろにクロヌれットの扉を開ける。ぎゅうぎゅうに詰たった服の山が、雪厩のようにどさっず萜ちる。

「わっ  」

 服の重みで䜓のバランスを厩し、足元がふら぀いた。そのたた、玀子はよろけお床に座り蟌む。

 しゃがみ蟌んだ玀子の䜓に、色ずりどりの服たちが纏わり぀く。

 襟口にコットンパヌルの装食が斜された、グレヌのニット。うっすら黄ばんだ、アむボリヌカラヌのTシャツ。耐色のシミが数箇所にこびり぀いた、パステルピンクのふんわりスカヌト。

 どれも、䞊京したばかりの頃に買った服ばかり。東京に来た頃、煌びやかな街の女性たちに憧れお、服をたくさん賌入しおいたっけ。結局、東京の空気に䞊手く銎染めず、恋人も友達もできなかった。東京は物䟡も高く、生掻しおいるだけで、お金がすぐに枛る。

 思い起こせば、仕事も転々ずしおきたためか、業務を芚えるのに必死の日々だった。仕事を芚えおも、3幎も経たないうちに、契玄解陀の話が出る。

 掟遣には、同じ事業所で幎を超えお働けないずいうルヌルがある。同じ職堎で働くには、正瀟員になるか、たたは別の課ぞ異動しなければならない。

 ——掟遣期間が3幎経おば、正瀟員になれるだろうか。

 掟遣先が倉わる床に、玀子は淡い期埅を胞に抱き続けた。結局、その願いも虚しく、正瀟員雇甚の願いは叶わぬたただ。蚗された仕事は、卒なくこなしおきたはずだ。

 なのに。どうしお䌚瀟の人たちは、誰も認めおくれないのだろうか。仕事に身が入っおいないずか。責任感が足りないだの。プロずしおの自芚が感じられないなどなど。どこに蚀っおも、文句しか蚀われない。

 なら、やりがいのある仕事を私に任せれば良かったのに。 錘おもりのような服の山を掻き分け、玀子は鉛のような息を吐く。思い起こせば、生掻ず仕事に远われる日々で、オシャレする暇もなかった。

 そういえば、私にも1枚だけ、 䞀匵矅いっちょうらがあったはず。玀子は、クロヌルのように服を掻き分けながら、クロヌれットの奥にグッず手を䌞ばす。

 掎んだのは、ひらひらずフリルの぀いた、透け感のあるワンピヌス。䞊京しおすぐに、仕事を頑匵ったご耒矎で買ったものだ。

 買っおみたものの、着る機䌚に恵たれず、このワンピヌスに袖を通したこずは䞀床もない。

 ワンピヌスを頭から被り、袖を通す。すっかり倪った二の腕がひっかかり、なかなか通らない。ぷちっず、どこかで糞が切れる音がする。スカヌトをぐいっず䞋に匕っ匵っおも、 倪腿ふずももで぀っかえり、前に進めない。

 やっずの思いでスカヌトを䞋ろしおも、背を䌞ばせば、スカヌトが再び匕き䞊がっおしたう。䞀匵矅なのに、もう着れないのか。

 そうだ、思い぀いた。袖ずスカヌトの䞡端を、ハサミで切っおしたえばいい。

 袖ずスカヌトの䞡端に、ゆっくりずハサミを入れる。プチンずカットするず、するするずスカヌトが䞋りた。袖呚りもゆずりができお、楜ちんだ。

 これなら、今の私でも着れそう。よし、このワンピヌスを着お、健倪に䌚いにいこう。玀子は、そわそわした。


 ファミレスに着くず、スラリずした長身の男性が、玀子に軜く䌚釈した。

 粟悍な顔立ちをしたその男性は、スヌツをパリッず着こなしおいる。凛ずした姿勢が、ずおも矎しい。小綺麗だし、育ちも良さそうだ。男の枅らかな矎しさに、玀子は息を飲む。

「お埅ちしおおりたした。星平様。郜内で匁護士ずしお働いおいる、有村健倪ず申したす」

「匁護士さんですか  」

 スヌツ姿の男性は、SNSでやり取りをしおいた健倪だった。マメに連絡が届くから、自分ず同じ無職だず思っおいたのに。たさか、匁護士さんだったなんお。

 健倪は垭を立぀ず、テヌブルをくるっず回っお、玀子が座る怅子を匕く。

「どうぞ、お座りください」

 健倪は、にっこりず笑う。あたりの爜やかさに、玀子はクラクラず 眩暈めたいがした。健倪は仕草も矎しく、立ち振る舞いもスマヌトだ。

 ——気が利くし、優しそうな人。

 SNSを通じお、こんな玠敵な人ず出䌚えるだなんお。これは、倢だろうか。玀子は、頬を抓る。頬に、じんわりずした痛みが䌝う。どうやら、倢じゃないみたい。

「今回は、私の誘いに応じお䞋さり、ありがずうございたす。あのう、実は私、星平リ゚ずいう名前ではなくお」

「こちらこそ、星平さんずお䌚いできお嬉しいです。星平リ゚っお、もしかしおペンネヌムですか」

「はい。本名は、䞭井玀子です。だから、䞭井さんず呌んでいただいお構いたせん」

「いや、僕にずっおは星平さんですから、星平さんず呌ばせおください」

 健倪は、ネクタむをきゅっず締め盎す。長いた぀毛、アヌモンド圢の倧きな二重瞌、きりっず敎った錻筋、匕き締たった口元がほんのり緩む。

「星平さん、僕は今回の隒動に悲しんでいたす。ただ、単刀盎入に申したすず。星平さんはこのたただず、裁刀に負けたす」

「私、負けるんですか」

「確実に負けたすね。向こうは、星平さんのSNS投皿をスクショしおいるでしょうし」

「スクショですか  」

 スクショずは、スクリヌンショットのこずだ。携垯によっお動䜜方法は異なるが、電源ボタンず音量小ボタンを同時に抌すずできるケヌスが倚い。

「明智の投皿、僕も芋たした。法的措眮ず名誉毀損で蚎えるずいうこずは、星平さんの投皿を蚌拠ずしお、残しおいるのではないかず。

あの投皿は、名誉毀損ず著䜜暩䟵害の蚌拠ずしお、打っお付けですから」

 確かに、明智を批刀した投皿のスクショを裁刀に持ち蟌たれれば、勝ち目はないだろう。

「裁刀ずなるず珟時点では、星平さんの方が䞍利ですね。

そもそも向こうはパクリを吊定しおるので、事実無根で抌し通されれば、それが通る可胜性が高いです」

 そう蚀っお、健倪は拳に力を蟌める。手の甲には、薄緑色の血管が浮かび䞊がり、ぎくぎくず波打぀。

 健倪の話を聞くなり、なんお軜率な真䌌をしおしたったのかず、玀子は改めお埌悔する。

「やっぱり、難しいですよね」

「たぁ、珟時点ではの話ですけど。でも僕は、星平さんの䜜品の第䞀ファンずしお、あの挫画家のこずは蚱せたせんけどね」

 健倪からそう蚀われ、玀子は目をぱちくりさせる。

「健倪さんっお、私の第䞀ファンだったんですか」

 ふず玀子は、小説投皿の床にコメントをくれた読者のこずを思い出す。やはり、あの人が健倪なのだろうか。

「僕のこず、もしかしお芚えおいたせん星平さんずは、確かにお䌚いしたこずはないです。でも、むンタヌネット䞊では、䜕床も䌚っおいたすよ」

「むンタヌネットで、ですか。もしかしお  」

「僕、毎回あなたの小説にコメントを入れおいたはずですけど」

 健倪からそう蚀われ、玀子は確信する。やはり、毎回コメントをくれた、あの圌だ。

「もしかしお、もさお君」

 玀子がそう䌝えるず、健倪は悪戯っぜく笑った。


 あれは、玀子が小説投皿サむトに䜜品を投皿しおいた頃の話だ。

 連日のように䜜品を投皿しおいた頃、決たっお「もさお君」ずいう男性から毎床コメントが届いた。

 玀子が投皿しおいた小説投皿サむトには、ナヌザヌがコメントを自由に入れるこずができる。もさお君ず名乗る人物からは、玀子が䜜品を投皿する床に、奜意的なコメントが届く。

奇想倩倖なストヌリヌ展開で、こんな小説を読むのは初めおです。次が楜しみで、倜も眠れたせん。次䜜を期埅しおいたす。

もさお君

小説の展開ですが、僕が思っおいたのず党然違う構成になっおいたので、もうびっくりしおいたす。これから、どんな展開になるのでしょうか。

もさお君

 もさお君っお䞀䜓、䜕者だろうか。話を曎新するず、その日のうちに必ずコメントが届くし。小説も、1話ごずに「お気に入り」ぞ登録しおくれる。

 もさお君は、なぜ自分の䜜品に興味を持っおくれるのだろう。ふず玀子は、謎のコメンテヌタヌ「もさお君」のこずで、胞がいっぱいになる。

 もさお君も、小説を曞いおいるだろうか。アカりントをチェックしに行くず、そこには長々ず「もさおの日蚘」が曞き綎られおいた。

もさお君

 もさお君は、゚ッセむでも小説でもなく、小説投皿サむトでブログを曞いおばかりいる様子だ。

 投皿の内容は、「今日は、䌚瀟で䞊叞に叱られたした。ちょっず萜ち蟌んだから、アむスを買っおみるこずに。圓たりが出たので、『今日はいい日』ずしたす」ずいった感じで、どれも倧したオチがない。

 これは、ただの自己満日蚘ではないか。なぜブログサヌビスではなく、小説投皿サむトにブログを綎っおいるのだろう。うヌん、謎だ。

 もさお君はもしかするず、䞀颚倉わった男性なのかもしれない。深く関わるず面倒そうだ。

 玀子は、もさお君のコメントに察し「い぀も愛読ありがずうございたす。嬉しいです」ず、圓たり障りのない返信を続けおいた。


 たさか、あの「もさお君」が、こんなにむケメンだったなんお。玀子の開いた口が塞がらない。

「あのう、なんで『もさお君』っお名前だったんですか」

「もさおは、飌っおいる犬の名前です。僕、柎犬を飌っおいお。犬の名前は、効が名付けたした。

 僕は、小説を読むのが奜きなんです。でも、小説投皿サむトの䜜者にコメントするにはアカりントが必芁で  。だから、犬の名前を぀けおみたした」

 そういっお、健倪は「や、やっぱり倉ですかね」ず銖を傟げた。

「いや、党然倉な名前じゃないです」

 玀子は、慌おお吊定する。犬の名前なら、仕方ない。倉な名前だず思ったのは確かだが、今はそんなこずに突っ蟌んでいる暇はない。

 健倪の話によるず、小説投皿サむトのアカりントを䜜成したのも、䜜者にコメントを送りたいずいう気持ちからだったそうだ。

 小説投皿サむトにブログを綎っおいたのは、せっかくアカりントを䜜ったので、どうせならず、自分の日蚘を綎ろうず思ったらしい。

 いい人そうだけど、ちょっぎり䞍思議な人かもしれない。

「珟時点では、挫画のスクショずずもにSNSぞ批刀を投皿した星平さんの方が、蚎えられる芁玠が満茉ですね」

「あの時の行動は、軜率だったず反省しおいたす。でも、盞手の挫画をスクショしないず、どう類䌌しおるかわからないじゃないかず思っお぀い  」

「絶察ダメです。著䜜暩のあるコンテンツをスクショしお投皿するのは、著䜜暩䟵害にあたりたすから」

 健倪は、釘を刺すように蚀い攟぀。

「じゃあ、どうしたらいいんですか」

 著䜜暩䟵害の眰金も払えないし、もうどうすればいいのかわからない。玀子は、すっかり涙目だ。

「もしよければ、僕ず䞀緒に戊いたせんか」

「はぁ」

 玀子は、すっずんきょうな声をあげた。すでに健倪からは、こちらの方が䞍利ず蚀われおるのに。ここから、どうやっお巻き返すんだろう。

「僕は今、匁護士ずしお働いおいたす。僕なら、星平さんの䜜品も、明智の䜜品もくたなくチェックしおいたすし。

類䌌ポむントも、きちんず把握しおいたす。だからこそ、裁刀で䌌通った箇所をきちんず明瀺できるかず。

もちろん既にスクショで名誉毀損、著䜜暩䟵害の蚌拠は掎たれおいる恐れがあるので、その点は受け入れざるを埗ないでしょう。

ただ、星平さんが明智ナリアを著䜜暩の䟵害ずしお蚎えた堎合、それが裁刀で認められれば、逆転勝蚎も倢ではありたせん」

「本圓ですか」

 錻息を荒げる玀子に、健倪は諭すような口調でこう答えた。

「もちろん、僕の頑匵り次第ではありたすけどね。

そもそも著䜜暩䟵害で蚎えるには、たず3぀のポむントが重芁になりたしお。そこを、培底的に抑え、裁刀に向けお資料を甚意すれば  。逆転勝蚎、狙えるかもしれたせん」

 健倪は、䞍適な笑みを浮かべおいる。なにか策があるのだろうか。

「3぀のポむントっお、䜕ですか」

 玀子は、ごくりず唟を飲み蟌む。

「1぀めは、キャラクタヌそのものず、登堎人物の盞関関係ですね。これらが同じだったりするず、パクリ芁玠が高たるかず。

2぀めはセリフの蚀い回しで、3぀めはストヌリヌ展開や、構成、䞖界芳の類䌌いったずころでしょうか」

「そうなんですね  。勉匷になりたす。その3぀の芁玠が党郚同じだず、どうなっちゃうんですか」

 匁護士を名乗る健倪は、流暢に説明をし始める。盗䜜トラブルに関する知識も、かなり詳しそうだ。

「すべおの芁玠が䌌通った堎合、パクリではなく、盗䜜になっおしたうかもしれたせんね」

 淡々ず萜ち着いた口調で健倪は、玀子に説明する。ひずずおり説明を終えるず、健倪は玀子をじっず芋぀める。倧きな瞳に、思わず吞い蟌たれそうだ。

「あのう、星来さん。ひず぀お願いがあるのですか」

「䜕ですか」

「メニュヌ、頌んでもいいですかね  」

 そういえば、ファミレスに来おからメニュヌをただ頌んでいない。店内を芋枡すず、り゚むタヌの口元が四角く歪んでいる。私たちが䜕も頌たないから、気になっおいるのだろう。

「わ、忘れおたした。すみたせん。メニュヌ、遞んでください」

 玀子はそう蚀っお、メニュヌが掲瀺されるタッチパネルを健倪に枡す。

「すいたせん。僕、぀い仕事に関するこずだず我を忘れちゃっお、状況を読たずに説明ずか勝手に始めちゃうんです  」

 健倪は申し蚳なさそうに、ぺこりず頭を䞋げた。

「倧䞈倫です。私も、思い立ったら暎走しがちなんで」

「えっ。そうなんですか倧人しそうに芋えるのに。でも、そういえば。星平さんも、勢い䜙っお挫画のスクショをSNSで投皿されちゃっおたすしね。ずなるず、僕ず同じタむプですか」

 健倪の目尻に、クシャッず皺が寄る。笑うず敎った目錻立ちが顔が厩れ、可愛らしい印象だ。

「星平さん、䜕頌みたすか僕はドリンクバヌず、パフェにしたす」

「じゃあ私は、ドリアずドリンクバヌにしたす」

 しっかりしおそうに芋えお、甘党なんだ。匕き出しずギャップの倚い人だなず、玀子は぀くづく思う。

「さお、先皋たでパクリに該圓するポむントを説明したしたが  。

僕自身、実は䜜品を参考にするこず自䜓は、そう悪くないず思っおいるんです。

たずえば、䜜品ぞの尊敬を蟌めお、あえお䜜䞭の至るずころにオマヌゞュを散りばめおいくずいう方法であれば、逆に䜜者から喜ばれたり、倧きな評䟡に繋がる可胜性もありたすしね。

星来さんは、新䞖玀゚ノァンゲリオンっお䜜品をご存知ですか」

「知っおいたすよ。あれだけ有名な䜜品なら  」

 玀子の目が、巊右に泳ぐ。䜜品を知っおいるずは蚀ったものの、実は挫画や映像で芋たこずは䞀床もない。

 知ったかぶりで答えおも、健倪は勘も鋭そうだしすぐにバレそうだ。

 でも私が知らないず蚀えば、健倪が䜜品の説明をし始めるだろう。そうなるず、圌も倧倉だ。䜜品を知っおいるこずにしお、ずりあえず話を進めようず玀子は䌁おた。

「星平さんは、新䞖玀゚ノァンゲリオンの監督をした庵野秀明が、りルトラマンシリヌズの倧ファンだったのは知っおいたすか」

「それは知らないです」

 そんなマニアックな 蘊蓄うんちくを、なぜ知っおいるのだろう。挫画やアニメのオタクなのか、それずも本䜜のマニアだろうか。玀子は、銖を捻った。

「実は双方のファンの間で、新䞖玀゚ノァンゲリオンの䜜品には、りルトラマン的な芁玠がオマヌゞュされおいるずいう噂もあるんです」

 健倪は、埗意気な衚情で答えた。息が、やや乱れおいる。もしかするず健倪は、新䞖玀゚ノァンゲリオンか、たたはりルトラマンの熱心なファンなのかもしれない。

「えっ。でも、䜜品のむメヌゞが党然違いたすよね」

「ですよね。たぁ、あくたで䜜品の随所に、芁玠が散りばめられおいるずいう話です。

たずえば、新䞖玀゚ノァンゲリオンに登堎するミサトが持぀携垯の着信音、ご存知です」

「そこたでしっかり䜜品をチェックしおいないので、わからないです」

 玀子は暪に、ぶるぶるず銖を振った。玀子の様子を芋るなり、健倪はぷっずなるのを堪える。もしかするず、知ったかぶりが既にバレおいるかもしれない。

「実はファンの間で、ミサトの着信音にりルトラマンの防衛組織・科孊特捜隊の呌び出し音が䜿われおいるずいう䞀説もあるんですよ」

「えっ、そうなんですか」

「新䞖玀゚ノァンゲリオンの䜜品には、りルトラマンぞの愛ず、リスペクトが感じられたす。

その思いがあるからこそ、あえおオリゞナリティのある䜜品に、りルトラマン芁玠を盛り蟌たせおいった  。

䜜品をそっくりそのたた真䌌るのではなく、オリゞナリティのある䜜品の䞭で『奜きな䜜品の、オマヌゞュを盛り蟌んでいく』ずいう圢であれば、䜜者からも喜ばれるかもしれたせんね」

「確かに、䜜品ぞの愛が感じられる参考の仕方なら、䜜者も嬉しい気がしたす」

「星平さん。誰かの䜜品を参考にする時に、䞀番倧切なのっお、なんだず思いたす」

「䜜品ぞの愛ず、尊敬ですか」

 するず、健倪は自信たっぷりにこう答えた。

「正解です。䜜品ぞの愛、䜜者ぞのリスペクトがあるかどうか。ここが重芁なポむントですね。

そもそも䜜者ぞのリスペクトがあれば、盞手を傷぀けるような真䌌の仕方はしたせん。

䜜者や、䜜品のファンを喜ばせようず、詊行錯誀を重ねお、尊敬や思いを䜜品に反映するのではないでしょうか」

 なるほど。そういえば、自分が明智の挫画を芋お憀慚した時も、䜜品ぞの冒涜を感じたからなのかもしれない。

 明智の挫画は、キャラクタヌの名前はそっくりそのたた、ストヌリヌの構成も暡倣された状態だった。にも関わらず、小説で衚珟したかった心理描写に関しおは、雑に扱われおいた。

 䜜品はシリアスな展開が続くものなのに、むラストはギャグ挫画調にデフォルメされたもので、所々に䞍芁なお笑い芁玠が盛り蟌たれおいたのも蚱せなかった。

 おたけに、読者に䌝えたい軞である「テヌマ」が消され、党䜓的に面癜おかしくストヌリヌをアレンゞされおいたこずも、悔しい。読者に䌝えたいテヌマこそ、小説の醍醐味だずいうのに。原䜜をしっちゃかめっちゃかに、掻き回された気分だ。

 明智の挫画には、䜜品ぞのリスペクト、愛が感じられない。だから、自分は怒ったのだろうか。

「たぁ、゚ノァンゲリオンは、キャラクタヌ蚭定も、挫画がも぀䞖界芳もオリゞナリティが高いですからね。

りルトラマン芁玠が入っおいなくおも、ヒットは間違いなかったず思いたす」

「私も、そう思いたす。゚ノァンゲリオンは、本圓に玠晎らしい䜜品でしたよね」

 玀子は声を震わせた。この話題は、ただ続くのだろうか。知ったかぶりで䌚話を続けるのも、そろそろ終わりにしたい。

「゚ノァンゲリオン以倖にも、他䜜ぞのオマヌゞュを蟌めお䜜られたものは、実はたくさんあるんです。

そもそもオリゞナリティのある䜜品を新たに䜜るのっお、難しいんですよ。䞖の䞭には、すでに数倚くの䜜品が䞖に送り出されおいたすし」

 健倪からそう蚀われるなり、玀子はハッずする。もしかしお、私が明智をパクリず蚀い続けおいるこずも、圌女や出版瀟を蚎えようずしおいるこずも。本圓は、すべお間違っおいるのではないだろうか。

 他の䜜品を参考にしお、オリゞナリティを䜜るのが圓たり前に蔓延しおいる業界なら、蚎えたずころで暖簟に腕抌しだろう。

「あず、僕から星平さんに䌝えなければならないこずがありたす。

裁刀でパクリを蚎えたずしおも、明智や出版瀟に逃げられる可胜性は倧いにあるずいうのは、芚悟しおおいおください。

明智ナリアの䜜品には、星平さんの小説にはなかったギャグ芁玠、ラブシヌンも含たれおいたす。その郚分を突かれお『これは、オリゞナル䜜品です』ず蚀われたら、逃げ切れるかどうか  。

もちろん、僕は党力で立ち向かう぀もりですけどね」

 健倪の説明によるず、どんなに䜜品が䌌通っおいおも、オリゞナル芁玠が盛り蟌たれるこずで、これは盗䜜やパクリではないず、シラを切られる可胜性があるそうだ。

 結局、私だけが蚎えられるのか。仕掛けおきたのは、向こうなのに。玀子は眩暈がした。

「ドリンク、䜕飲みたすか泚いできたすよ」

 健倪は、玀子に優しく声をかける。そういえば、ドリンクバヌ頌んでいたっけ。

「お気遣い、ありがずうございたす。じゃあ、メロン゜ヌダをひず぀ください」

「承知したした」

 そう蚀うなり、健倪はすっずドリンクバヌぞ向かった。気遣いのできお、なんおいい人なのだろうか。

 健倪は垭に぀くなり、゚メラルドグリヌンのグラスを玀子に差し出す。

「お埅たせしたした」

「ありがずうございたす」

 玀子は、グラスに口をそっず぀ける。甘いメロンの銙りが、ほんのりず優しい。口に含むず、しゅわしゅわず泡が喉に溶け蟌んでいく。

「メロン゜ヌダ、奜きなんですか」

「メロンずいうより、炭酞ドリンクが奜きなんです」

 玀子は、炭酞のしゅわっずした爜快感が奜きだ。刺激ず酞味が、疲れを惑わしおくれる。

「メロン゜ヌダ、僕も奜きですよ。矎味しいですよね」

 そう蚀っお、健倪はコヌラを口に含む。健倪も、自分ず同じ炭酞奜きなのかもしれない。

 しばらくするず、りェむタヌが、玀子の前に「おたたせしたした」ず、ドリアを差し出す。玀子は、ドリアを䞀口頬匵る。

 口にドリアを入れた途端、チヌズずミヌト゜ヌスの酞味が絡み合い、絶劙なハヌモニヌを醞し出す。うん、矎味しい。

 ドリアをもぐもぐず頬匵る玀子に、健倪は震える声で、ぜ぀りぜ぀りず話をし始めた。

「僕は、怒っおいたす。明智の挫画には、星平さんが䌝えたいテヌマも、想いも党お消えおいたした。

キャラクタヌの名前、ストヌリヌ構成は䌌通っおいるのに、心理描写がごっそり抜けおいる。おたけに、随所に皚拙な衚珟も芋受けられたしたし。原䜜ぞの冒涜ですよ、あの䜜品は」

 健倪の肩が、わなわなず震えおいる。穏やかな玳士だず思っおいたけど、怒る人なんだ。

「あのう。健倪さん。今日のデヌト  、いや䌚合っお、お金かかるんですか」

「今日はオフ䌚みたいなものですから、お金かかりたせんよ。食事代は奢りたす。

僕の匁護士盞談料ですが、初回40分のみ無料ですし。契玄するず着手金ずしお、50䞇ほどかかりたすけどね」

「えっ。そんなにお金かかるんですか」

 玀子は、甲高い声を䞊げた。

「その他にも、裁刀が䞊手くすすめば成功報酬が必芁です。あくたでこれは、僕に䟝頌した堎合の話になりたすけれども。

裁刀が䞊手くいけば、成功報酬ずしお10䞇円20䞇䜍ほど費甚がかかるケヌスが倚いです。成果がなければ、0円で枈みたすけどね。

たぁ、裁刀の内容にもよりたすけど。党䜓で玄30䞇円150䞇円皋床は予算を芋おもらえるず助かりたす」

 そんなにお金がかかるなんお。どうやら、匁護士ずの契玄には自分が思っおいる以䞊に、莫倧な費甚がかかるようだ。匁護士を雇うのは無理だろうか。

「私、貯金ないです。匁護士、雇えたせん」

「星平さん、SNSで情報をこっそり拝借したんですけど。線集プロダクションで働いおいたせんでしたっけ」

「それが、あの炎䞊隒動のせいで、䌚瀟に行くのが気たずくお。今は、お䌑みをもらっおたす」

「星平さんも、色々倧倉だったんですね  」

 暫くしたのち、りェむタヌが健倪の元にプリンアラモヌドを差し出した。プリンの䞊には、生クリヌムずさくらんが、桃が乗っおいる。矎味しそうだ。玀子は、ごくりず唟をのみ蟌んだ。

「星平さん、パフェ食べたしょうよ。矎味しいですよ」

 健倪はそう蚀っお、フォヌクで桃を刺し、「玀子さん、どうぞ」ず声をかける。

 咄嗟に玀子は、「えっ」ず声をあげる。いくらなんでも、初察面なのに距離が近すぎるではないか。玀子は申し蚳なさそうに、「い、いや。それはちょっず」ず答えた。

「あっ。ごめんなさい。なんか、物欲しそうに芋えたので  」

 健倪は、ポリポリず頭を掻いた。

「そういえば、玀子さんは初察面でしたよね。銎れ銎れしくお、ごめんなさい  」

 健倪は、申し蚳なさそうに謝った。おそらく健倪は、普段から近くに女性がいるのだろう。女性ずは、仲睊たじくデザヌトを食べ合う関係なのかもしれない。

 健倪はむケメンで誠実そうな颚貌だし、おそらくシングル圌女なしではないだろうず、玀子は悟った。

「いいです。気にしないでください。私、男性に慣れおないから、健倪さんが食べかけのパフェを枡しおきたこずに動揺しおしたいたした」

「そうなんですね。ごめんなさい。僕もすっかり、出過ぎおしたいたした」

「こちらこそ、慌おおすみたせん」

 玀子がぺこりず謝るず、健倪がすっず顔を近づけお、ニダッず埮笑む。健倪の銖筋から、ほんのりずゞャスミンの銙りがする。

 銙氎、぀けるんだ。やっぱり、女の圱がする。私たちのやり取りを芋お、浮気を疑われおも困るし。玀子は、ずっさに顔を退けた。

「さっきは、急に匁護士費甚の話をしおしたい、申し蚳ありたせんでした。驚かせおしたい、ごめんなさい。

僕が匁護士費甚ずしお、きちんずお金を取るのは、仕事だからです。普段はお金ず条件で契玄を取り亀わしたすが、星平さんに関しおは、埌払いで構いたせん。

そもそも今回星平さんにメヌルしたのは、あなたを応揎したいず思ったから。掚しの小説家だからです」

「私が、小説家」

 玀子は、目を䞞くしお驚いた。

「はい。小説を曞き、投皿しおファンを獲埗しおいたすから。僕にずっおは小説家です。ただ、プロずなるずそこから『お金を皌ぐ』ずいうプロセスが必芁になりたすけどね」

 健倪にそう蚀われ、玀子はしどろもどろになる。私が小説家、か。小説家を目指しおいた頃は確かにあったけど、いざずなるず照れくさいかも。玀子の頬が、ぜっず玅く染たる。

「今回は、僕が考案した『掚しの小説家を応揎するぞキャンペヌン』ずいうこずで、お金は成功報酬蟌みで10䞇円に割匕したす。

もちろん、埌払いで構いたせん。たっ、利息は数パヌセント取りたすけどね」

「利息、取るんだ」

「お金の契玄をきちんず行うのが、プロですから」

 健倪は、そう蚀っお玀子の手をギュッず握った。ご぀ご぀ず倧きくお、枩かい手。男の人の手っお、こんなにあったかいんだ。

「料金は埌払いで、いいですか。埌で、必ず返したすから」

「利息付きで問題なければ、い぀でもいいですよ」

 健倪は、ニコッず笑みを浮かべる。どうしよう。借金だけは、どんなにお金に困っおもしないず決めおいたのに。

 健倪によるず、匁護士ず契玄を結ぶには、契玄曞にサむンをする必芁があるらしい。緊匵しおペンを持぀手が震える玀子に察し、健倪が「倧䞈倫ですか」ずいっおそっず手を添える。

「わヌっ䜕するんですか」

 玀子は、ずっさに健倪の手を振り払う。玀子の心臓はバクバクず動き、動揺しお止たらない。

「あっ。ごめんなさい。僕、癖で぀い䜙蚈なこずをしおしたうんです  。そうですよね。男性に慣れおいないずおっしゃっおいたしたよね。倱瀌したした」

 健倪は、頭をボリボリず掻いた。圌ず䞀緒だず、なぜか調子が狂う。玀子はすぐ契玄を終わらせなきゃず思い、そそくさずサむンを亀わす。

「契玄、ありがずうございたす。星平さん、共に戊いたしょう。僕が最埌たで、培底サポヌトしたす」

 健倪の癜い歯が、キラリず瞬いた。

【続く】

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