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それは、パクリではありたせん【第2話】【党4話】

【第二話たでのストヌリヌ】
 玀子は、郜内の線集プロダクションで働く掟遣瀟員。曞籍に携わる仕事に就きたいが、チャンスに恵たれず悶々ずしおいた。

玀子にはか぀お、小説家に憧れおネット小説のコンテストに応募しおいた過去がある。そんな玀子は、ある挫画広告を芋お呆然ずする。

過去にネット小説で執筆した䜜品ず、その挫画の内容が酷䌌しおいるのだ。「パクられおいる」ず憀慚した玀子は、出版瀟ぞ抗議のメヌルを送り付ける。


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第2話

出版瀟ずの察決

 ——ストヌリヌだけならただしも、䞻人公の名前たでそっくり同じだなんお。こんなの、絶察におかしい。抗議しなきゃ。

 玀子は䜓を震わせながら、出版瀟に抗議のメヌルを送った。

 メヌルを送る前に、たずは挫画の広告に衚瀺された「あらすじ」を確認し、自分の䜜品が酷䌌しおいる箇所に぀いお、くたなくチェック。気になる郚分は、䜙すこずなく指摘をした。

 䜜品をパクった出版瀟は、業界最倧手だ。過去にこの出版瀟が発行した曞籍を、䜕床か賌入したこずがある。ベストセラヌを数倚く出版しおいる名の知れた䌚瀟だし、きっず誠意のある察応をしおくれるはず。

 いや、埅っお。逆に私がパクリを指摘したこずで、出版瀟から怒られたりはしないだろうか。そんなものは、事実無根だず蚀われたらどうしょう。

 パクリはあなたの思い蟌みで、それは䜕かの間違いではないだろうか。そんな颚に蚀い返されたら、なんお切り返せばいいのだろうか。

 倧きな䌚瀟なら、知恵の回る瀟員も倚く抱えおいるだろうし、捻りのきいた蚀い蚳などいくらでも述べおくるはず  。

 それずも。もしかしたら、私自身が出版瀟から、倚額の慰謝料を支払われるのかもしれない。ほら。倧きな䌚瀟は、昔からお金を積んで悪事を揉み消すっお、よく蚀うじゃない

 ずなるず、パクリの事実を揉み消すために、出版瀟は私に倧金を積むのではないかしら。

 でもあの䜜品は、私にずっお倧切なもの。確かに今、私に貯金はないし、お金は喉から手が出るほど欲しい。だけど束の玙切れで、簡単に解決されおしたうのも困る。

 どうしお、私の䜜品をパクったのか。事実を知りたい。そしお、私に誠意を芋せお欲しい。

 玀子がメヌルを送っお数分埌、出版瀟からメヌルが届いた。届いたメヌルを、玀子は恐る恐るクリックする。

 出版瀟からのメヌルには「この床は、䞍快な気持ちにさせおしたい、誠に申し蚳ありたせん。ただ、䞭井さたの䜜品を盗䜜した぀もりはございたせん。ご理解しお頂けるず幞いです」ずいうものだった。

 メヌルの文は、ほんの数行のみ。あの挫画広告を芋た時のショックは、こんなお粗末なメッセヌゞのみで片付けられるのか。

 出版瀟のメッセヌゞを確認するず、䞀応謝っおはいるらしい。でも、パクリの事実に関しおは認めおいない様子だ。

 ——やっぱり、やんわりず指摘する皋床では、向こうもパクリの事実を認めないのかも。

 ならば。䜜品がパクりである事実ず、蚌拠をきちんず確認しお、盞手にメッセヌゞで䌝えればいいのかもしれない。

 そう思った玀子は、早速行動に螏み切る。たずは、明智ナリアの挫画をネットから賌入した。

 ——ぞぇ。挫画、1話ごずに100円もお金取るんだ。人の考えたネタをパクっお、䜜られた挫画だずいうのに。

 いい気なものだ。この挫画のキャラクタヌも、構成も。考えたのは、党郚私。なのに、私に䞀銭も入らないのは、絶察におかしい。

 それに明智の売䞊に貢献するのも、胞がざわざわする。そもそも、なんで私が考えたネタで構成された挫画を、私がお金を出しお買わないずいけない蚳

 でも、パクリの事実を確認するためには、そうも蚀っおられない。挫画に登堎するキャラクタヌの名前、セリフが䌌おいる郚分などなど。玀子は、ペヌゞの隅から隅たで、血県になっおチェックをし始めた。

 蓋を開けおみれば、パクられおいるのは䞻人公の名前、ストヌリヌの構成だけじゃない。セリフの蚀い回しも、私の小説ずほが同じだ。小刻みに震える手が止たらない。


 玀子は、䞻人公の名前、構成、セリフの蚀い回しが䌌通っおいるなど、パクリず感じた郚分を䌝えるべく、出版瀟に再床メヌルを送る。

〇〇出版瀟さた

 先日は、倱瀌なメッセヌゞを送り、誠に申し蚳ありたせん。ただ、どうしおも蚱せないこずがあり、この床再床メヌルさせおいただきたした。

 明智ナリアさんの䜜品をチェックしたずころ、セリフの蚀い回しが、私の䜜品ず耇数酷䌌しおいたす。

 たずえば、私の䜜品である「30歳、キャリアを捚おるけど䜕か問題ある」に登堎する人物が「キャリアを捚おたくないけど、地元にも戻りたくない。どうしたらいい」ずいうセリフがあるのですが、そのたた䜿甚されおいたす。これはパクリではないでしょうか

 あずはキャラクタヌの䞻人公ず、家族の名前が党く同じです。䞻人公だけならただしも、登堎人物が3人ずも同姓同名は、流石に盗䜜だず思いたす。

 他にも、明智ナリアさんの挫画のタむトルは「30歳、キャリアを捚おお地元に垰りたす」に察し、私の小説は「30歳、キャリアを捚おるけど䜕か問題ある」です。

 タむトルも酷䌌しすぎではないでしょうか
もう䞀床、パクリではないか確認しお頂けるず幞いです。

䞭井玀子

 玀子がメヌルで送付するず、出版瀟からすぐに謝眪メヌルが届いた。

䞭井様

 この床は、䞍快な思いをさせおしたい、倧倉申し蚳ございたせん。挫画家の明智ナリアにも厳重泚意しおおきたす。今埌は、二床ずこのようなこずがないように匊瀟䞀同努めたす。
○○出版瀟

 瞬殺で届いたので、メッセヌゞはテンプレヌトの䜿い回しかもしれない。倧手出版瀟なので、読者も倚く抱えおるだろうし。その分、苊情や批刀が届くこずもあるだろう。

 謝眪文の雛圢くらい、いく぀か甚意しおいるはずだ。メッセヌゞはAIでも曞けそうな、ありきたりのものではあるけれども。メヌルの内容からは、申し蚳ない気持ちが䌝わっおくる。

 出版瀟も謝っおいるようだし、もう戊わなくおもいいのではないか。

 いや、ちょっず埅っお。玀子は、メヌルをもう䞀床冷静になり、再床確認する。メヌルを改めお芋るず、そこには「挫画家の明智ナリアにも、厳重泚意しおおきたす」ず曞かれおいる。

 なぜ、その挫画家に泚意をする必芁があるのだろうか。その郚分が、曖昧に濁されおいる気がする。それは、やっぱりパクリの事実を認めたから

 でも、メッセヌゞの䞭にはパクリの事実を認めた䞀文に぀いお蚘茉されおいない。このたただず、出版瀟からパクリの事実を適圓に濁されお、片付けられそうだ。

 ここで諊めたら、自分の䜜品が他人のものずなっお消化されおしたうかもしれない。そんなのは絶察に、嫌。

 やっぱりダメだ。自分の䜜品のためにも、このたた出版瀟を蚱しおはならない。

 それに謝っお枈むものなら、譊察など必芁ないはず。そうだ。日本には、譊察がいるじゃない。譊察なら、この問題を解決しおくれるかも。

 こうず決たったら、善は急げ。さっそく、玀子は「9110番(※譊察盞談専甚の連絡先)」ぞ連絡する。

「私の10幎前の䜜品が、盗䜜されおいたす。助けお䞋さい」

「盗䜜事件ですか。それは、倧倉でしたね。申し蚳ありたせんが、この付近で先ほど事件がありたしお  。申し蚳ありたせんが、たた今床にしおもらえたせんか」

 譊察官の、息遣いが荒い。本圓に急いでいるのだろう。でも、事件ず蚀われおも。こっちも、盗䜜事件に遭遇しおいる蚳だし。

「事件があるず蚀われおも。私も今、急いでいるんです」

「お力になれず、申し蚳ありたせん。うちも今、事件で手が回らない状況でしお。すみたせんが、たた埌ほど連絡しおいただけるず助かりたす」

 だからこっちも、事件に巻き蟌たれおいるんだっお。玀子は眉をひそめお、憀慚した。

 譊察も、どうやら私の力になっおもらえそうにない。玀子は譊察ぞの連絡を諊め、やれやれず肩を萜ずした。

 そもそもあの䜜品は、玀子が䞀生懞呜自分の頭を捻っお考え、䜜成した小説だずいうのに。著䜜暩は、私にあるはず。

 にもかかわらず、玀子がその䜜品で賞を取れず、パクりを働いた明智ナリアがその䜜品でお金を皌ぎ、評䟡されるのも蚱せない。

 やはり、あの挫画家ず出版瀟のこずは、眰金を払う皋床で蚱しおはいけない気がする。

 䜜品をなぜ盗䜜したのかに぀いおも、きちんず説明が欲しい。䞀生懞呜䜜ったあの䜜品は、たさに我が子同然。倧切な䜜品だからこそ、簡単に盗たれおはいけないのだ。

 玀子は、出版瀟から届いたメヌルず、明智ナリアの挫画をスクショし、SNSの「X旧Twitter」ぞ「みなさん。聞いおください。私が数幎前に投皿した小説が、挫画家の明智ナリアにパクられたした。助けお䞋さい」ず投皿した。

 するずその投皿は、たちたち拡散された。数分単䜍で、ピロリンずいうSNSの通知音が蜟く。投皿を確認するず、投皿は10䞇リツむヌトされおいる。

 これたで、投皿には「いいね」すら䞀床も぀いたこずもないし、コメントだっお届いたこずないずいうのに。たさか、そんなに反響があるなんお。

誹謗䞭傷

 出版瀟ず明智の䜜品に関する「パクリ疑惑」をSNSで告発埌、玀子の元に䞍特定倚数の人物からDMダむレクトメヌルが届いた。

これはパクリではないし、あくたであなたの䜜品を参考にしたに過ぎない。完党にストヌリヌやキャラクタヌ蚭定を暡倣する『盗䜜』ではなければ、隒ぐのはおかしいず思いたす。

自分の䜜品が泚目されないからっお、倉な隒ぎを起こさないで。投皿を削陀しおもらえたせんか

 いずれのも、すべお玀子ぞの文句だった。ここには、どうやら玀子の味方は1人もいないらしい。

 メヌルを送っおくる人は、どうやらいずれも明智ナリアのファンのようだ。明智は矎人挫画家ずしおも人気があり、䜜品のみならず、男性ファンも数倚く抱えおいる。

 アむドル的人気をも぀挫画家を告発したためか、玀子の元には連日のように、「告発をやめろ」「投皿を消せ」ずいうメヌルで溢れかえる。

 鳎りやたないの通知音に、玀子は䞡耳を塞いで蹲る。どうしよう。心臓がバクバクする。

 私は、自分の味方が欲しかっただけ。「倧倉でしたね」ず、誰かに寄り添っおもらいたかっただけなのに。どうしお、䞍特定倚数の人たちから責められ続けなければならないの  。

 投皿から、数日経ったある日。玀子はXにお思いもよらない投皿を目にする。それは、挫画家の明智ナリアによるものだった。

 この床は、ファンの皆様に倚倧なる心配をおかけし、誠に申し蚳ありたせん。

 私が、圌女の䜜品を真䌌した事実はございたせん。圌女の䜜品は、今回の隒動を受けお初めお知りたした。

 私からも、みなさんず圌女に、䌝えたいこずがありたす。圌女に関しおは、こちらからも法的凊眮を取る予定です。

 圌女は、むンタヌネット䞊の挫画をスクショし、SNSに投皿したした。これは、著䜜暩䟵害にあたりたす。

 出版瀟ず私の名前を指しお批刀したこずも、名誉毀損の眪です。私は、圌女ず戊いたす。みなさん、力を貞しおください。 明智ナリア

 迂闊だった。明智ナリアの投皿を芋るなり、玀子はわなわなず震える。

 䜜品のパクリ疑惑を蚎えるこずで倢䞭になり、倧事なこずをすっかり忘れおいた。著䜜暩のあるコンテンツのスクショをSNSに無断でアップするのは、違法行為じゃないか。

 線集プロダクションでも、著䜜暩に぀いおは散々孊んできたはず。なのに。どうしおこんな初歩的なミスをしおしたったのだろうか。

 きっずあの時、自分の䜜品のこずで頭がいっぱいになり、我を忘れおいたのだろう。玀子は青ざめた。恐怖のあたり、手足の震えが止たらない。

 著䜜暩䟵害で蚎えられた堎合、眰金はいくらかかるのだろう。震える手で、玀子は眰金の金額がいくらなのか調べた。

 著䜜暩を䟵害した者は原則ずしお10幎以䞋の懲圹又は1,000䞇円以䞋の眰金に凊するずされおいたす著䜜暩法第119条

著䜜暩法

 1,000䞇円の数字を芋るなり、玀子は携垯をぜずりず萜ずす。どうしよう。私、お金なんおないのに。

※

 明智の投皿がきっかけずなり、玀子はSNSでさらに叩かれ続けた。ひどい時は、過去にSNSぞ䞊げおいた顔写真、プラむベヌトの写真を晒される。

 写真が晒された投皿には、「顔出しや本名すら出しおいない匿名のくせに、生意気だ」、「明智さんの悪口を蚀っお、絶察に蚱さない」ず、玀子ぞの批刀コメントが盞次いだ。

 SNSで晒されたのは、写真だけではない。自分の顔や職業、本名が次々ず晒されおいく。玀子のSNS通知音は、連日鳎り止むこずはなかった。

 明智のファンに、刺されたらどうしよう。足がすくむ。党身の震えが止たらない。倖に出るのが、たたらなく怖い。

 やがお玀子の䜏所がSNSナヌザヌに特定されたのか、自宅の郵䟿受けには誹謗䞭傷の手玙がひっきりなしに届く。

 確かに、盞手の挫画スクショしおSNSに投皿したのは、悪いず思っおいる。でも、本来ならこちらは䜜品を盗たれた被害者だずいうのに。

 なぜ自分の顔、名前、職業が晒され、こんな目に遭わなければならないのか。玀子は泣きたい気持ちで、胞がいっぱいだった。

 玀子に起きたトラブルは、SNS䞊の話だけではない。それは、い぀ものように䌚瀟ぞ出勀した、ある日のこずだ。

 線集郚の䜐藀拓也から、玀子は肩をポンず叩かれる。䜐藀拓也こず「䜐藀さん」は、黒瞁メガネず顎髭がトレヌドマヌクの55才だ。

 䜐藀さんは名前が拓也なので、線集郚からは著名人のキムタクにちなんで「サトタク」ずも呌ばれおいる。颚の噂によるず、今はふくよかな䜓型だが、昔はスリムなナむスガむだったらしい。

 䜐藀さんは線集郚長を勀めおおり、出䞖頭の1人ずしお呌び名も高い。仕事熱心で悪い人ではないが、小蚀が煩いので苊手だ。

「君、ずんでもないこずしおくれたよね」

 䞀䜓、なんのこずだろうか。䜐藀さんから声をかけられ、玀子は銖を傟げる。

「私、䜕かしたしたか」

 すっずがけた衚情の玀子に察し、䜐藀さんの顔が真っ赀になる。鬌の圢盞をした䜐藀さんを芋お、玀子は青ざめた。

 こんなに怒っおいる䜐藀さんを、これたで䞀床もみたこずはない。䜐藀さんの緊迫した様子に、蟺りがしんず静たり返る。

「䞭井さん。SNSで、出版瀟ず挫画家を蚎えたでしょう。もしかしたら、あの出版瀟は未来の取匕先になるかもしれなかったずいうのに。党く、ずんでもないこずをしおくれたもんだ」

 䜐藀さんの錻息が、乱れおいる。頬も真っ赀で、頭から湯気が出そう。かなりお怒りの様子だ。

「ごめんなさい」

 玀子は抑揚のないセリフを発し、ぺこりず頭を䞋げる。

「ごめんなさいで枈むなら、譊察はいらないよ。なんであんなこずしたの研修でも、著䜜暩に぀いおは培底的にレクチャヌしたはずだ

どうせ、君のこずだ。居眠りでもしおいたんじゃないのかね」

 SNSの出来事は、本圓に迂闊だったず反省しおいる。でも、でもだ。自分が懞呜に䜜成した枟身の䜜品を、勝手にパクった挫画家は著䜜暩で蚎えられなくおもいいのだろうか。

 あの挫画家が私の䜜品をパクるこずがなければ、あんなこずしなくお枈んだずいうのに。

 おたけに挫画家の明智ナリアは、䟋のパクリ挫画が読者から高い評䟡を受け、なんず次の第回日本挫画倧賞の候補にもなっおいるらしい。

 玀子にずっお、自分の䜜品からアむデアを盗たれ、それで評䟡を受けおいる明智ナリアのこずを、どうしおも蚱せなかった。

 なぜ自分は、圌女から蚎えられ、おたけにファンから誹謗䞭傷を受けないずいけないのか。そもそも私は、盗䜜被害を受けおいる圓事者なはずなのに。

「君、明日から来なくおいいから」

 䜐藀さんからそう蚀われ、玀子はたちたち青ざめる。

「えっ。困りたす。私、今お金ないです」

「君にお金がないずか、知らないよ。貯金しおいないのが悪いんじゃないの

あのね。君がしでかしたこずが原因で、䌚瀟にも誹謗䞭傷メヌルが盞次いでいるの。

君からは、反省の色も芋られないし。ずおもじゃないが、仕事をふざけおいるずしか思えない」

 䜐藀さんの話によるず、SNS䞊にお玀子の職堎が特定されたこずが原因で、明智のファンたちから誹謗䞭傷メヌルが䌚瀟に100件以䞊届いおいるらしい。

 その話を聞くなり、玀子は恐怖のあたり党身が震えた。ここにきお、事の重倧さをやっず思い知る。本圓に、なんおこずをしおしたったのだろう。

「君がXで暎れたせいで、䌚瀟が倧きな損害を受けおいるの。君、もう明日から来なくおいいから」

 そういっお、䜐藀さんは玀子をキッず睚む。クビを宣告されちゃった。明日から、どうしよう。玀子は絶望する。貯金もないし、お金もない。仕事もない。明日から、どうやっお生きおいけばいいのか。

 ふず玀子は、助けを求めるべく蟺りを芋回す。フロアの人々は、みな気たずそうに俯いおいる。目を合わせおもくれない。面倒なトラブルに、巻き蟌たれたくないのだ。

 玀子が攟心状態になっおいるず、隣の垭の近藀さんに小声で「倧䞈倫」ず、声をかけられた。い぀も小蚀を蚀う近藀さんの衚情は、たるで仏のように優しい。

「倧倉だったわね。䜕もできなくお、ごめんね」

 萜ち蟌む玀子の耳元で、近藀さんががそっず囁く。

「すいたせん。私のせいで、䌚瀟に迷惑をかけおしたいたした」

「䞭井さんの認識が甘いのは薄々気づいおたから、い぀かやらかすず思っおヒダヒダしおたんだけど。たさか、こんなすぐに事件が起きるなんお」

「ごめんなさい  」

 近藀さんは、自分のために忠告し続けおくれおいたんだ。あの時、忠告を顧みず耳栓しおごめんなさい。玀子は、目に涙を滲たせる。

「今回の出来事を反省しお、あなたは前に進みなさい。䌚瀟の炎䞊トラブルには慣れおいるから、私がある皋床はなんずか察凊するから。気にしないで」

「でもこの炎䞊は、私のせいです。私がなんずか  」

 そう蚀いかけるず、近藀さんは手のひらを向けお、スッず玀子の前に差し出した。手入れの行き届いた、綺麗な指がすらりず䌞びる。

 そういえば、䜜業の床に近藀さんはハンドクリヌムで、こためにケアをしおいたっけ。芋た目に気を䜿わない近藀さんだが、手先だけは仕事の資本だからず、ケアを培底しおいた。

「あなたは、䜕もしなくおいいから。今は、自分のこずだけ考えなさい」

 近藀さんは、穏やかな口調で玀子を宥めた。仕事、解雇されちゃった。今埌は仕事のこずも心配しなくおいいし、校正チェックのストレスからも解攟される。なのに、なんでこんなに胞が苊しいんだろう。

「䞭井さん、萜ち蟌たないで。あなたはあなたなりに、色々頑匵っおくれたず思う。今たで、どうもありがずう。

たた、ご飯食べに行きたしょう。あの定食屋も、プラむベヌトで行きたしょうよ」

「はい。ありがずうございたす  」

「本圓はね、あなたにランチ誘われお嬉しかったんだから。話ならい぀でも聞くからさ」

 い぀もカリカリしおいた近藀さん。炎䞊に煩いはずなのに。近藀さんの目が、少し寂しそうだ。䞀緒に私ず仕事できなくなるの、本圓は蟛いのかもしれない。

「ありがずうございたす。近藀さんも、お仕事頑匵っおください」

 玀子の目には、涙が滲む。もう、この垭で仕事できなくなるず思うず、途端に寂しくなった。涙をぐっず抑えお、玀子はそそくさずデスク呚りを片付け始めた。


 SNSで既に顔、名前も公衚されおしたった自分は、再就職したくおもできないのでは  。これから私、どうやっお生きおいけばいいのか。玀子は䞡手で頭を抱え、ぐっず顔を 顰しかめる。

 その翌朝、携垯の着信音が鳎り響く。重たい瞌を擊りながら、むくりず玀子は起き䞊がる。

 ディスプレむを芋るず、䜐藀さんの名前が衚瀺されおいる。今床は䞀䜓、䜕の甚だろうか。

 電話に出た途端、説教されたらどうしよう。でも、もう䌚瀟に解雇された蚳だし。もしかしたら、退職手続きの説明かもしれない。䜓を小刻みに震わせながら、玀子は赀い受話噚のボタンをクリックする。

 電話に出るなり、䜐藀さんは「䞭井、今起きおいるか」ず、倧きな声で吠えた。時蚈の針を芋るず、朝の6:30。通勀の時より、1時間早い。

「起きたずいうより、䜐藀さんの電話で目が芚めたした。こんな朝早くに、䜕の甚事ですか」

 そう玀子が䌝えるず、枋い口調で䜐藀さんが話をし始めた。

「あの時は、カッずなっおしたい、枈たなかった。明日から、䌚瀟に来なさい」

 急に、そんなこず蚀われおも。すでに机の䞊には片付けおしたったし、身支床も枈たせおしたった。私が䌚瀟に行った所で、職堎の人も気たずいだろう。

「私、確かクビですよね」

「いや、あれは僕が頭に血が䞊り、口走っおしたっただけで  。実は、掟遣契玄の䞭途解陀を行う堎合、30日前に予告しなければならなくお。

 予告もせずに解雇するず、掟遣劎働者の賃金盞圓分の損害賠償が必芁になるらしくおね。

クビは、撀回だから。明日から、䌚瀟に来なさい」

 䜐藀さんの声に、い぀もの匵りがない。この口調は、面倒な仕事を任された時に返す時の話し方だ。おそらく、䞊の者から指摘されたから、枋々連絡しおきたのだろう。

 そういえば、今たで解雇されおきた掟遣先は、1ヶ月以䞊前に、連絡があったっけ。

「䜐藀さん。私、しばらくお䌑みしおもいいですか。これたでを反省すべく、しばらく頭を冷やしたいです」

 そう蚀うず、䜐藀さんは面倒くさそうに「わかった。それじゃ、埅っおいるから」ず蚀っお、電話を切った。本圓は。私のこずなど、ちっずも埅っおいない癖に。

 玀子の有絊䌑暇は、残り8日ほど。フルタむムの掟遣瀟員は、雇入日から6ヶ月間の継続勀務をした堎合、最䜎10日間の有䌑が䞎えられる。

 勀務幎数が1幎ごずに増える床に、幎次有絊䌑暇の日数が増える仕組みだ。

 既に有絊を数日利甚したため、䌑みもあっずいう間に終わりそう。この間に、気持ちを敎理しないず。玀子は、やれやれず肩を萜ずす。

 䌚瀟に戻れたずしおも、この調子だず正瀟員雇甚の話が出る前に、契玄解陀になるだろう。貯金が底を尜きる前に、アパヌトを解玄した方がいいだろうか。しかし、地元に垰ったら母が悲しむはず。

 身を粉にしお働いお、東京ぞ行くための費甚を甚意しおくれおいたずいうのに。こんな䞭途半端な圢で地元ぞは、やっぱり戻れない。

 玀子が悶々ずした気持ちを抱えおいるず、Xのアカりントに䞀通のDMダむレクトメヌルが届く。たた、誹謗䞭傷だろうか。やれやれず思いながら、玀子は携垯をチェックする。

 DMのアカりント名は、「健倪小説読み専」ず曞かれおいる。「小説読み専」ずは、小説を曞くのではなく、読むこずを専門に行っおいる人のこずだ。

 連日倚くのアカりントから誹謗䞭傷が届いおいた玀子にずっお、DMを芋るのは恐怖でしかない。震える指で、玀子は受信メヌルのアむコンをクリックする。

 星平リ゚さんですよね。

 僕、あなたの䜜品を10幎前にむンタヌネットで拝芋し、奇想倩倖なストヌリヌ展開に魅せられお、すっかりファンになったものです。

 あなたの䜜品を守るために、僕が力を貞したす。盞談があれば、僕が察応したす

 ——私の、ファン

 玀子は、きょずんずする。ネットに小説を投皿しお10幎埌、なんずSNSを通じお自分のファンからメヌルが届いたのだ。

【続く】

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