みずほ銀行が9月14日から貯蓄預金の金利を2倍にする——100万円を預けて増えるのは954円、これは本当にお得なのか
みずほ銀行の預金金利ページには、2026年9月7日現在としてこう書かれている。
貯蓄預金、10万円未満は年0.400%。10万円以上30万円未満で0.410%。30万円以上0.420%、50万円以上0.430%、100万円以上0.440%、300万円以上で0.450%。
同じページの一番上、普通預金は年0.400%である。
つまり、いま復活したばかりのこの口座は、一番下の段では普通預金とまったく同じ金利で、一番上まで上がっても差は0.05%しかない。今回発表されたのは、この0.05%刻みの階段を、9月14日から12月13日までの91日間だけ2倍にする、というキャンペーンである。
何が起きたか
みずほ銀行は9月7日、貯蓄預金の金利を期間限定で2倍にすると発表した。同行のキャンペーンページによれば、金利アップ期間は2026年9月14日(月)から2026年12月13日(日)まで。エントリーは不要で、9月14日より前にすでに貯蓄預金へ預け入れている人も対象になる。
2倍後の金利は、公式ページに税引後の数字が併記されている。そこから逆算すると各段はこうなる。
10万円未満 年0.80%(税引後0.637%)
10万円以上30万円未満 年0.82%(税引後0.653%)
30万円以上50万円未満 年0.84%(税引後0.669%)
50万円以上100万円未満 年0.86%(税引後0.685%)
100万円以上300万円未満 年0.88%(税引後0.701%)
300万円以上 年0.90%(税引後0.717%)
報道が見出しに立てた「最大0.9%」は、この一番上の段のことである。税引後では0.717%になる。利息には復興特別所得税を含む20.315%の源泉分離課税がかかると、公式ページ自身が注記している。
もう一つの特典として、キャンペーン期間中に新規で貯蓄預金口座を申し込み・開設した人の中から、抽せんで3,000名にみずほポイント1,000ポイントが進呈される。申込期間は9月7日から12月13日まで、口座開設の完了も12月13日までが条件になっている。
背景として、日本経済新聞はこの貯蓄預金の復活を「3メガで初」「約16年半ぶり」と報じている。実際、三菱UFJ銀行の貯蓄預金は2022年11月11日に新規受付を停止しており、三井住友銀行のスーパー貯蓄預金は2006年に新規預け入れの取り扱いを止めている。そして両行の貯蓄預金は、いま残高がいくらであっても一律で年0.400%、つまり普通預金と同じ金利しかつかない。残高で金利が変わる出し入れ自由な口座が3メガバンクに存在するのは、9月14日から先はみずほだけになる。
91日間で、実際にいくら増えるのか
利息は「元本×年利×日数÷365」で計算できる。9月14日から12月13日までは、9月が17日、10月が31日、11月が30日、12月が13日で、合わせて91日。公式ページも「最大91日間」と書いている。
100万円を9月14日に預け、12月13日まで動かさなかった場合。適用されるのは100万円以上の段で年0.88%だから、
1,000,000 × 0.0088 × 91 ÷ 365 = 2,193円(税引前)
ここから20.315%が引かれて、手元に残るのは1,748円。
同じ100万円を普通預金(年0.400%)に置いたままだと、997円の税引前、税引後で794円。差額は税引後で954円である。91日間、100万円を動かさずに置いておくことの対価が、954円ということになる。
金額別に並べるとこうなる。いずれも91日間、税引後、普通預金に置いた場合との差額である。
10万円 83円
30万円 262円
50万円 456円
100万円 953円
300万円 2,980円
500万円 4,966円
そして、この差額には期限がある。12月14日以降について、公式ページは「キャンペーン金利適用期間終了後はみずほ貯蓄預金の適用利率に準じます」としか書いていない。通常の0.450%に戻れば、300万円を1年間預けても普通預金との差は税引後で年1,195円。100万円なら年319円になる。91日で2,980円という数字は、その91日限りのものだ。
金利より先に、残高の判定方法を読んでおいたほうがいい
みずほ貯蓄預金の商品内容欄には、適用利率についてこう書かれている。「毎日の最終残高により、みずほ銀行所定の方法により表示する金額階層別の金利を適用」。
つまり判定は日ごとである。平均残高でも、月末残高でもない。100万円を入れておいても、途中で30万円を引き出してその日を終えれば、その日の適用金利は100万円以上の0.88%ではなく、50万円以上の0.86%になる。翌日戻せば翌日は0.88%に戻る。段の差が0.02%ずつしかないので影響は小さいが、「残高に応じて金利がステップアップ」という説明が何を見て決まっているかは、知っておいたほうがいい。
利息の受け取り方も普通預金と違う。毎月第2日曜日(該当日の翌日が法定休日となる場合はその法定休日)を利息の決算日とし、その翌営業日に支払うとキャンペーンページの注記にある。半年に一度ではなく毎月入るので、増えている実感は得やすい。
そして、この口座は給与や年金の受け取り、公共料金の口座振替には使えない。商品概要にはっきり書かれている。生活費の口座を丸ごと移すという使い方はできず、あくまで普通預金の隣に置く「分ける先」である。
手数料が上乗せ分を食う条件が、はっきりある
普通預金と貯蓄預金のあいだで自動的にお金を動かす「スイングサービス」には、月110円(消費税等を含む)の手数料がかかる。しかも公式ページの注記によれば、振替の有無にかかわらず月間110円である。年に直すと1,320円。
先ほどの計算を思い出したい。キャンペーンが終わったあと、300万円を1年預けて普通預金との差は税引後1,195円だった。年1,320円の手数料は、これを上回る。300万円を預けたうえで店舗のスイングサービスを申し込むと、通常時の上乗せ分は手数料で消える計算になる。
ただし、みずほ銀行アプリを使った振替は手数料無料だと商品ページに明記されている。自分でアプリから動かすぶんには費用はかからない。有料なのは、店舗で申し込む「自動で動かす」機能のほうだ。
もう一つ、日付の問題がある。貯蓄預金の口座開設について、キャンペーンページは「口座開設のお申し込みから完了には3営業日程度(最大7営業日)がかかります」と告知している。加えて商品ページには、普通預金口座を新規に開いた場合はアプリの初回登録から約2〜4日後でないと貯蓄預金を申し込めない、とある。9月14日の初日から91日をまるごと使いたいなら、動くのは今週である。
みずほの0.90%より高い普通預金が、すでにある
この0.88%や0.90%という数字が高いのかどうかは、他行の店頭表示と並べれば分かる。
あおぞら銀行のBANK支店は、円普通預金の金利を1円以上100万円以下で年1.0%、100万円超の部分で年0.65%としている(2026年9月1日現在)。同じ100万円を91日置いた場合、税引後で1,987円。みずほのキャンペーン金利0.88%で得られる1,748円より、239円多い。しかもこちらは91日限定ではなく、変動金利として現在適用されている水準である。
みずほ自身の定期預金も比較対象になる。スーパー定期の1年物は年0.500%。300万円を1年預ければ税引後11,953円で、貯蓄預金の通常時0.450%(税引後10,757円)を上回る。ただし満期日まで原則引き出せない。貯蓄預金が売りにしているのは金利の高さそのものではなく、「いつでも引き出せるのに普通預金より少し高い」という位置取りのほうだ。
日銀の無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標は、2026年6月16日の決定会合で1.0%程度に引き上げられている。政策金利1.0%に対して、メガバンクの普通預金が0.400%、貯蓄預金のキャンペーン上限が0.900%。この位置関係が、いま預金者が置かれている場所である。
まだ決まっていないこと
12月14日以降にどうなるかは、公表されていない。公式ページの記述は「終了後はみずほ貯蓄預金の適用利率に準じます」だけで、延長するとも、しないとも書かれていない。
キャンペーン期間中に金利が変わる可能性も、みずほ自身が明記している。「期間中に貯蓄預金の金利の変更があった場合、本ページに掲載されている金利が実際の適用金利と異なる可能性があります」「金融情勢によっては普通預金との利率の差、または残高の段階別の利率の差が付かない場合があります」。貯蓄預金は変動金利であり、2倍という倍率は約束されていても、元になる金利のほうは固定されていない。
段の数え方にも小さなずれがある。報道は「6段階」と伝えており、キャンペーンページの表示も6段階だが、預金金利ページには7行が並んでいる。300万円以上1,000万円未満と1,000万円以上がどちらも0.450%で、金利としては同じだからだ。1,000万円を超えても、それ以上は上がらない。
そして、日銀が次にどう動くかは、この記事の範囲外である。直近の公表は2026年7月31日の「当面の金融政策運営について」で、6月16日以降の誘導目標の変更は公表されていない。預金金利がこの先どうなるかについて、確定した材料はない。
見えているもの
「金利2倍」という見出しは正しい。0.450%は0.900%になる。倍率としては嘘がない。
ただ、2倍になっているのは、もともと普通預金との差が0.05%しかない階段のほうだ。倍にしても、100万円を91日預けて普通預金との差は954円にしかならない。そしてその954円は、91日で終わる。
この発表でいちばん確かなのは、金利の数字ではなく、口座そのものの復活のほうだと考えている。三菱UFJは2022年に、三井住友は2006年に、残高で金利が変わる出し入れ自由な口座を店じまいした。低金利では商品として成り立たなかったからだ。それを16年半ぶりに開け直したということは、預金を集めることに、また値段がつくようになったということである。
91日のキャンペーンは12月13日に終わる。終わったあとに残るのは、0.450%と0.400%という0.05%の差だ。その0.05%が次に動くとき、預金者が受け取るのは954円ではない別の数字になる。見るべきは倍率ではなく、階段そのものが今後どこまで上がるかのほうだ。
参照した一次資料・報道
みずほ銀行「【2026年9月14日月曜日から金利2倍!】いつもの口座と分けて管理できる!貯蓄預金キャンペーン!」(金利アップ期間・最大91日間・税引後金利・利息の決算日・諸条件) https://www.mizuhobank.co.jp/campaign/2026savings_account/index.html
みずほ銀行「円預金金利」2026年9月7日現在(貯蓄預金の6段階金利・普通預金0.400%・スーパー定期) https://www.mizuhobank.co.jp/rate_fee/rate_deposit.html
みずほ銀行「みずほ貯蓄預金」商品内容(毎日の最終残高による階層判定・スイングサービス月110円・給与受取や口座振替に利用不可) https://www.mizuhobank.co.jp/deposit/chochiku/index.html
三菱UFJ銀行「円預金金利」2026年9月7日現在(貯蓄預金は全階層0.4000%・2022年11月11日に新規受付停止) https://www.bk.mufg.jp/ippan/kinri/yen_yokin.html
三井住友銀行「円預金金利」2026年9月7日現在(スーパー貯蓄預金は全階層0.400%・2006年に新規取扱停止) https://www.smbc.co.jp/kojin/kinri/yokin.html
あおぞら銀行「金利一覧」2026年9月1日現在(BANK円普通預金 100万円以下 年1.0%) https://www.aozorabank.co.jp/bank/kinri/
日本銀行「金融市場調節方針の変更について」2026年6月16日(無担保コールレート・オーバーナイト物を1.0%程度に) https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260616a.pdf
日本経済新聞「みずほ銀行が『貯蓄預金』復活 3メガで初、預金額に応じ金利上乗せ」2026年9月7日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0713U0X00C26A9000000/
時事通信「貯蓄預金、期間限定で金利2倍 最大0.9%―みずほ銀」2026年9月7日 https://news.yahoo.co.jp/articles/3a78298fe1ab35930c5fb7c85a90122205574920
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