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心臓手術とカップラーメン。綱渡りで駆け抜ける!特別な日本の夏休み。



日本への帰国を2週間後に控えた日、担当医はようやく「許可」を出してくれました。

条件はひとつ。

カナダに戻り次第、すぐに心臓の血管移植手術を受けること。


***


長男はカナダで、先天性心疾患を持って生まれました。

毎年、夏休みに日本の小学校へ通うことは我が家の何よりの楽しみですが、いつも出発直前まで、先生の判断を祈るような気持ちで待つことになります。
今年も、例外ではありませんでした。

本来なら、夏休み前にカテーテル処置を済ませ、万全の状態でカナダを出発するはずでした。
けれど病状は予想以上に進んでいて、カテーテルだけでは難しい状況になっていたのです。
それでも担当医は、私たちの願いを汲み取り、「日本で、最高の思い出を作っておいで」と背中を押してくれました。


そうして辿り着いた、7月の日本。
容赦ない暑さもお構いなしに駆け出す子どもたち。元気な姿は嬉しい反面、付き添う親の体は悲鳴を上げ、熱中症にならないかと気が気ではありません。
息子はずっと楽しみにしていた小学校へ通い、お友達と再会しました。
給食のおかわりを、ジャンケンで勝ち取ったこと。休み時間にドッジボールをしたこと。小学生らしく、社会と国語が好きじゃないと文句を言いながらも、学校での出来事を楽しそうに話してくれました。

夏休みに入ると、友人やいとこ、祖父母と一緒に大好きなイルカショーを観に水族館や、科学館へ行きました。
それから、暑い遊園地で遊び疲れて食べる冷たいソフトクリームは、最高の思い出です。

そんな眩しい日常の真っ只中で、一通のメールが届きました。
病院の事務からのメールで、タイトルは「手術の日程について」。

メールを開く指が動かず、深呼吸が必要でした。そして、そこには

手術日は、カナダに帰国した2日後に決まりました。

覚悟はしていましたが、具体的な日付が決まると、ザワザワと動揺する心が止まらなくなる。
過去の手術で脳梗塞になったときの絶望感。
術後、脈が安定しなくて毎日ペースメーカーと緊張のにらめっこ。
辛かった記憶が溢れ、どんどんと不安が押し寄せる。

そんな時、私は不安と向き合う。
正々堂々と。
何が怖くて何に不安なのか。心の中を書き出すように、とことん考える。
誤魔化して、強がらない。
自分の気持ちを認めてあげる。
これが、私の不安の乗り越え方。


それから、それを振り払うように「よしっっ!決まった!気合い入れ直すぞー!!」と声に出す。

それを聞いた長男は「あ、手術決まった?入院中に食べるカップラーメン、俺が選ぶね!何個買って帰ろっかなー?」と、特別な日にしか食べられない大好きなカップラーメンをカナダへ持って帰る作戦を提案して、私を笑わせてくれました。

ありがとう。

あなたのその底抜けの明るさが、私に「大丈夫」だと信じさせてくれる。




「今、この瞬間を心から楽しませてあげたい」という願い。
「絶対に体調を崩させてはいけない」という、重い責任感。その相反する感情のバランスを保つことは、私にとって綱渡りをするような難しさ。
花火やお祭りなど、特別な日の夜更かしが続きすぎて体調を崩してしまわないか。
遠出で外食が増え、栄養バランスが崩れないか。
真剣に、慎重に進めたいけれど、私が穏やかに笑っていなければ、この夏は完成しません。

私の度量が試される夏休み。


***



夏休み前半が終わり、私の両親である祖父母とお別れをする日。
祖父母は、他の兄弟たちよりも長く、祈るように長男を抱きしめてくれました。
その腕に込められた、言葉にならない想い。
「どうか無事で」という無言の切実な願いが、私に勇気をくれました。


私たちは、何度も経験してきた。
何度も乗り越えてきたから、今回も、大丈夫。

私たちは、攻略法を知っている。

無事に過ごす毎日も、かけがえのない幸せ。
けれど、それ以上に、一緒に心から笑い合える『思い出』が欲しい。
その純粋な願いを、病気を理由に諦めたくない。
息子が命を懸けて教えてくれた『人生を操縦する勇気』を胸に。

さあ、残りの日本を楽しむ作戦を立てようか。








私たち家族が乗り越えてきたこと。長男の強さを綴っています。ぜひあわせてご覧ください。

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