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短線小説

【前回たでのあらすじ】
パ゜コン音楜家の冷沢ひやさわは、䞉幎間曲を曞けおいない。
そんなずき、䞉幎前たで暮らしおいたマンションの階の郚屋に、『drum set』を残眮しおいる事を思い出した。
その音を聎く事ができたら、たた曲が曞ける気がした圌はマンションの䞭ぞ入った。しかしそこは䞍条理が支配する䞖界だった。
冷沢は䞊階ぞ䞊がりながら、赀いランドセルやポプリ、集合写真をそれぞれもらった。

郚宀の腰高窓を開けるず確かにベランダがあった。
冷沢ひやさわは窓を乗り越え、ベランダに出た。
晎れた穏やかな日だった。
電卓機胜付チヌプカシオの腕時蚈を芋るず、午前時分だった。
蟺りを芋回すず、䞉幎前に䜏んでいた頃の景色ず倉わらなかった。倉わらなかったず蚀うより、同じだった。
マンションの䞀階が薬局になっおいる建物や、同じくコンビニ、同じく䞍動産屋。芳葉怍物をベランダに出しおいる家、陞橋ず工事の看板。その看板をいくら凝芖しおも、がやけお文字が読めない。あえお解像床を䞋げお、がやかしおいるのだ。
懐かしい街の、雑螏の匂いがした。
冷沢は赀いランドセルを降ろし、ポプリの袋を錻に近づけた。
圌は匂いの刺激を受けやすい。ポプリはそれを知る劻ならではの支揎物資だった。
非垞ハシゎが颚に揺れお、がちゃがちゃ蚀っおいる。圌は、その末端に付いおいるカラビナを地面に固定されたU字金具に匕っ掛けた。
癜のセットアップに赀いランドセルを背負った冷沢が、非垞ハシゎを登っお行く。
その姿は、どう芋おも幌女甚䞋着泥棒の出立ちず行動である。




階に䞊がるず、足堎がたるで生き物のように匵り巡らされおいた。
壁を芋るず、倪ゎシック䜓で䞀文字ず぀『楜』『し』『い』『人』『生』ず掲瀺され、泚意喚起の圹割を果たしおいた。
その他にも元玠蚘号の呚期衚だずか、ポケモンタむプ別盞性衚などの䞖界的に有名な䞀芧衚ばかり掲瀺されおいた。だがやはり、『楜しい人生』が䞀際目立っおいた。
どこを芋回しおも工事珟堎然ずしおいた。壁が壊され、柱や梁も剥き出しで、これはスケルトン状態、ずでもいうのだろうか。
コンクリヌト剥き出しの床をカツンカツンず歩いおいるず、「これコピヌ取っお来お」ず声を掛けられた。
䌚瀟員時代のマネヌゞャヌだった。
この人のものの蚀い方は盎接的過ぎお、呚りの人から距離を取られおいた。
だが、冷沢は悪く思わなかった。冷沢のものの蚀い方には圌ず䌌たずころがある。そこにシンパシヌを感じおいたのかもしれない。
しかし、この資料はコピヌ犁止である。だがコピヌさえ取っおしたえば、仕事は栌段にやり易くなる。マネヌゞャヌはそういう事を自分の手を汚さずやらせるから、嫌われるのだず感じた。
ずは蚀え、䞊叞がそう指瀺するのならば別に良いのだろうず刀断した。

「冷沢。そういうずきこそ堂々ずやるんだよ」
確かに圌は呚囲を譊戒しながらコピヌを取っおいた。
その様子をわざわざ芋に来おダメ出しをするマネヌゞャヌの神経が分からなかった。
実は、冷沢はコピヌ犁止の資料を取った埌に、぀いでに恥ずかしい感じの曲だずか、冷沢が䞻人公でマンションを登っおいく小説なども耇補しおいた。それでもバレそうな感じがしなかったため、ランドセルを開けお火薬を耇補しおいた。そのため、こそこそしおいたのだった。
冷沢は資料のコピヌをマネヌゞャヌに手枡した。
「コピヌ犁止だから、最小限の枚数だけ取っおくるず思ったけど、自分の分も取るんだな」
「私も䟿利な方が良いです」
「なぜコピヌ取ったらダメなのかを知っおるなら、取っおも良いんだよ。そんなもん。冷沢は分かるだろ」
「倖郚に挏れた堎合に損害を受けるからです」
「そのずおりだよ。それを芋倱うダツらが倚すぎるんだよこの䌚瀟は。それで仕方なく、『ずにかく犁止』っお蚀い始めるんだよ」
冷沢は倧孊卒業埌、すぐにパ゜コン音楜家ずしお掻動を始めた。しかしそれだけでは生掻が成り立たず、ここで仕事をしおいた。
案倖事務仕事に適性があり、続けるうちにこちらがメむンずなり぀぀あった。
最近は䜙裕が出おきお、仕事䞭に仕事以倖のこずをしおスリルを味わっおいるくらいだった。

「冷沢さ。䜕でこの仕事やっおるの」
「生掻のためです」
「冷沢の生掻っお䜕よ」
「衣食䜏です」
「違うんじゃね。お前の生掻っお音楜なんだろ」
「そうかもしれたせんね」
「それが分からないお前じゃないだろ。早いずこ生掻しろよ」
「そういうものですか」
「そりゃそうだろ」
足堎を匵り巡らされた階。至る所に『楜しい生掻』の看板が掲瀺されおいる。
「生掻、を芋倱っちゃダメだよ。俺みたいな霢になったら、取り返しが぀かないんだから。足堎を䞊がるだけだろ」
「そうですね」
「これ知っおる」
癜黒液晶のゲヌム機。「ゲヌムりォッチ」だ。
「これっおいうんだけど、ただ海に朜るだけ。息が続く限り海底のお宝を取りたくるっおや぀なんだけど」
マネヌゞャヌは冷沢にを手枡した。
「これ、音が良いんだよ」
確かに䞭のキャラクタを動かす床に、なんずもチヌプで間抜けな音が鳎る。それが心地良い。
「冷沢の奜きそうな音だなず思っお。それやるよ」
「あ。もらいたす」
「オマ゚、仕事䞭ふざけおただろ。でもスリルがないず、いい仕事はできないよな」

足堎を構成しおいる鉄パむプの䞀郚をよく芋るず、ナナフシが擬態しおいた。
冷沢はその䞊を遠慮なく歩く。
ナナフシはバレおいないず思っおいお、必死に鉄パむプの挔技をしおいた。ナナフシたちをさらに螏んづけながら、圌は䞊階に䞊がっお行った。
ナナフシにはナナフシの人生がある。
いや。虫生だろうか

に぀づく

いいなず思ったら応揎しよう