芋出し画像

短線小説

【前回たでのあらすじ】
パ゜コン音楜家の冷沢ひやさわは、䞉幎間曲を曞けおいない。
そんなずき、䞉幎前たで暮らしおいたマンションの階の郚屋に、『drum set』を残眮しおいる事を思い出した。
その音を聎く事ができたら、たた曲が曞ける気がした圌はマンションの䞭ぞ入った。しかしそこは䞍条理が支配する䞖界だった。
冷沢は䞊階ぞ䞊がりながら、小孊校時代の友達から赀いランドセルを、劻からはポプリを、先茩たちから集合写真ずゲヌムりォッチをそれぞれもらった。

⚠3000文字くらいありたす

事務の仕事は嫌いじゃなかった。
マネヌゞャヌずもりマが合っおいたし、居心地も悪くなかった。
でも、ただそれだけだった。

階は敎地䜜業だけが終わった、なにかの建蚭予定地のような、だだっ広い空き地だった。
そこから、冷沢ひやさわの頭がにょきっず出おきた。
そしお順番に、胞、腹、䞋半身が出おきお、圌は地面に立った。
すぐそばに珟堎䜜業員の䌑憩堎所のような、二階建おのナニットハりスがぜ぀んず蚭眮されおいる。冷沢はその二階郚分ぞ続く倖階段を登っお行く。
埐々に気分が悪くなっお来た。
忌わしい思い出。

背氎の陣の぀もりで、冷沢は仕事を蟞めた。
睡眠ず食事ず散歩の時間以倖は、党お音楜䜜りに費やした。あず、トむレず颚呂の時間も。そういうずきでも圌は、ルヌチンを厩すこずはしなかった。
プレハブニ階のアルミサッシの匕戞を開けるず、䞭から玫色の瘎気がもくもくず足元に纏わり぀き、それが次第に拡がっお、぀いには芖界が党お玫色になった。
鳩尟みぞおちに黒いものが蠢いた。
「これもやらないずいけないのか」ず独りごちた。
右偎のドアを開けるず、䞀番奥にぬらりずした、人を倀螏みするような目぀きの男が座っおいた。
瘎気はこの男から発せられおいお、この郚屋は䞀際濃い玫色が倩井たで満たされおいる。
冷沢が最も生理的に嫌悪した男で、宮嵜みやざきず蚀う名前だった。
「うヌん。それはルヌル違反でしょう」
出し抜けに圌はそう蚀った。
䜕のルヌルが定められおいるのかさえ、冷沢には理解できなかった。
「あなたはこの䞀週間でこの成果物を䜜成した。そういう理解で良い」
圓たり前の事を蚀っおいるだけだが、気色が悪くお背筋がずずずっ、ずした。
宮嵜の蚀っおいる内容は、い぀も的を射おいた。ただその粘着質な蚀葉遣いや仕草に、吐き気がした。
埓っお、感芚的な冷沢には眠っおいおもらい、論理的な冷沢が極力窓口に立った。
だが、仕事の打ち合わせは感芚的な冷沢がやらざるを埗ないため、悪寒が止たらなかった。
宮嵜は毎回、成果物を二皮類甚意させた。
そしお、自信のある方を「案」ずしお提出するように求めた。
だが、採甚されるのは必ず「案」だった。

あるずき、我慢できずに冷沢は蚀った。
「今回は特に案を掚したい」
「その根拠は」
「本胜である」
「その説明で䞊叞に䞊がれたすか提案なら怜蚎したすけど根拠のない提案は提案ずは蚀えたせん。案を受け取っおから、怜蚎しお、報告するたでが私の仕事です。提案たでなら受け付けたす。こういうこずを今曎蚀われるような霢でもないよね」
冷沢はこの人が倧切にするものは䜕なのだろうず思った。音楜ではない事だけは明癜だった。
その割には知識が豊富で、それがたた薄気味の悪さを助長しおいた。

宮嵜は垞に自分の持ち物に名前を曞いおいた。
昌食のおにぎりやデスクの䞊に転がっおいるボヌルペンにたで名前を曞いおいた。
誰も聞いおいないのに「孊校で、持ち物には名前を曞きたしょうず習ったからね」ず蚀っおいた。
冷沢はその蚘名行為すら気分が悪かった。もう䜕をしおも薄気味悪さしか感じなくなっおいた。
冷沢は宮嵜の事を意識から倖したかった。だが気にしない、ずはどうすれば良いかも分からなくなっおいた。
そうしおいる内に、垞に「気にしない」に぀いお考えるようになっおしたった。
四六時䞭冷沢の脳裏は、ぬらりずした宮嵜の目぀きに支配された。集䞭しお仕事に着手できる環境ではなかった。
ぬらぬらしお食事も喉を通らなくなった。そうするずたすたす思考力は䜎䞋し、目先の課題を陀去しようず躍起になるだけで、完党な悪埪環に陥った。
぀いに、冷沢は宮嵜を殺害しようず考え始めおいた。

宮嵜は、冷沢がそんな状況に陥る所たで想定しおいた。あた぀さえ単玔な奎、ず小銬鹿にさえしおいた。

「じゃ、案で」
ある小説の映画化に䌎う、挿入歌の仕事だった。
宮嵜はい぀も通り淡々ず成果物を遞んだ。
悔しさの䞭で、冷沢はある事に気が付いた。
䞍泚意で「案」ず「案」が入れ替わっおいたのだ。
宮嵜は習慣で、倧しお聎きもせず「案」を採甚したのだった。
その案が圓たった。

それが、『曙矎の玉朰し』である。

冷沢は宮嵜の事を思い浮かべながら、呪詛のようにこのフレヌズを叫んだ。
「案」はその玠材に、安っぜいDelayをガンガンにかけお仕䞊げたものだった。
宮嵜の䌚瀟は莫倧な利益を䞊げ、宮嵜は昇進した。

今、宮嵜ず冷沢はデスクを隔おお向かい合っおいる。
「昇進おめでずう」
「キミに蚀われおも䜕も感じない」
冷沢は数秒間だけ逡巡したものの、赀いランドセルに満茉された火薬を取り出しお、宮嵜のデスクに茉せた。

「宮嵜の玉朰し。さよなら」

着火具で火を点けた瞬間、冷沢の芖界は玫から癜に倉わり、衚皮が剥がれお顔面の筋肉が䞞芋えになった。
それず同時に巊の錻の穎から癜い錻ちょうちんがぷくヌヌっずたろび出お、そこに目錻口耳が浮かび䞊がった。錻ちょうちんから芋䞋ろした冷沢の姿は党身真っ赀で、血が吹き出しおいた。宮嵜は爆発の衝撃で銖の骚が折れ、頭ごず背䞭偎に倒れおいた。
錻ちょうちんはそのたたゆらゆらず浮かび䞊がり、曎に䞊ぞ䞊ぞず昇っお行った。小さなきのこ雲がもくもくず膚らんだ。
それは、小芏暡な栞爆発だった。
ナニットハりスは完党に消倱し、曎地になった。

冷沢の新しいボディが、か぀おナニットハりスがあった堎所で点滅しおいる。
錻ちょうちんはそれを芋぀けるず、右錻の穎に滑り蟌んだ。
銖が埌ろに折れた宮嵜の思念が圷埚いおいる。
冷沢はランドセルからゲヌムりォッチ『scuba』を取り出しお、宮嵜の思念をそこに入れた。宮嵜は絶察に死なないタむプの生き物だった。それは悲しい事だず思った。
初めお冷沢は宮嵜に同情した。

玫色の瘎気は䟝然ずしお濃かった。
人間ずは、぀たり自己実珟だ。そこに他者の介圚する䜙地など元々なかった。
躓きの入口はい぀も曖昧で、他者の介圚䜙地があるものず誀認する所から始たる。"宮嵜"ずはその隙間に入り蟌む単なるバグだった。
冷沢は、「意味のない出䌚い」ずいうのもあるのだず思った。その瞬間、冷沢は新冷沢になった。ただし、芋た目は特に倉わらなかった。

新冷沢以䞋、「冷沢」ずいう。の目の前に䞀蟺五十センチ皋の䞉角圢が珟れた。その䞉぀の頂点はそれぞれR、G、Bず蚘茉されおいた。その䞉角圢を指先でなぞるず、瘎気の色は、目たぐるしく倉わった。
最埌に䞉角圢の重心郚分を指し瀺すず、🪑←このタむプの怅子が珟れた。冷沢は怅子に座った。するず、その四隅から綱が珟れ、その他端は気球に繋がっおいた。
冷沢の頭頂郚から出る熱がスタヌリング゚ンゞンの熱源ずなり気球は浮いた。瘎気を寄せ付けない気球は曎に浮かび䞊がり、倩井をすり抜けた。




すり抜けた先は、冷沢が少幎時代に虫取りをした懐かしい空き地で、その䞭倮郚だけ草が綺麗に刈り取られおいた。
冷沢はそこに着地した。

぀づく

いいなず思ったら応揎しよう