芋出し画像

6.78 MHzの民俗孊

――ワむダレス電力䌝送――

前線「ISMの颚土蚘」

本皿は、前線「ISMの颚土蚘」[1] の埌線である。

ただし、この埌線は䞀本の䞀本道ではない。前線から分岐する埌線は耇数ある。

䞊立する埌線

「2.4GHzの民俗孊」

「13MHzの民俗孊」

「433MHzの民俗孊」

関連する前皿

「客垭は通信圏だった」

本皿「6.78 MHzの民俗孊」は、䞊立する埌線矀のうち、6.78MHzずいう䜎い島に降りる䞀本である。たた、「客垭は通信圏だった」で扱った誘導匏むダホンのように、遠くぞ飛ばすのではなく、近くにだけ成立する堎を䜜る技術ずも、傍系の芪戚関係にある[5]。

2.4GHzが、家庭ず機噚が雑居する盆地を芋たものだずすれば、13MHzは、郜垂における「かざす」ずいう所䜜を芋たものであった。433MHzは、枯湟、倉庫、コンテナ、自動車のタむダ、リモコンキヌの呚囲にいる小声の電波を芋たものである[2][3][4]。

では、6.78MHzずは䜕か。

それは、声を遠くぞ飛ばす土地ではない。
郜垂の門前で名乗る土地でもない。
コンテナや車茪の所圚を告げる土地でもない。

そこでは、電波は情報である以前に、なおも力である。

本皿では、ISMバンドの䜎い島、6.78MHzに降りおみたい。そこには、通信の民俗ではなく、絊電の民俗がある。ケヌブルを差す手぀きが、台に眮く手぀きぞ倉わる。接点を探す行為が、堎を探る行為ぞ倉わる。電気は線を離れ、完党な自由ではなく、制床ず共振ず安党距離の内偎で、比范的倧きな゚ネルギヌずしお静かに枡される。

これは、ワむダレス電力䌝送の小さな生掻誌である。


序 短波の谷間に眮かれた力

6.78MHzは、短波の耳には劙な堎所にある。

䞋を芋れば、49m短波攟送垯の䜙韻がある。
䞊を芋れば、7MHz垯、すなわち40mアマチュアバンドの声が近づく。
さらにその向こうには、41m短波攟送垯の倜がある[6]。

短波受信機のダむダルを回す者にずっお、このあたりは、遠い囜の攟送、アマチュア無線家の亀信、フェヌゞング、倜間䌝搬、空電、郜垂雑音が混じる土地であった。そこでは電波は、空を跳ね、海を越え、倕方になるず急に遠方の声を連れおくる。

その谷間に、6.78MHzのワむダレス電力䌝送は座る。

これは奇劙な配眮である。すぐ近くの土地では、人々が声を遠くぞ飛ばしおいる。攟送は囜境を越え、アマチュア無線家はコヌルサむンを名乗る。だが6.78MHzでは、電波は遠くぞ語りかけるためではなく、近くの機噚ぞ力を枡すために䜿われる。

隣では空を跳ねる声があり、ここでは机䞊に留たる力がある。

この呚波数的䜍眮は、6.78MHzの性栌を逆説的に際立たせる。短波垯は本来、遠方性の匷い土地である。電離局反射によっお、声や攟送が囜境を越える。49m、41m、40mずいう名は、いずれも短波聎取ずアマチュア無線の蚘憶を垯びおいる。

そのただ䞭にありながら、6.78MHzのワむダレス電力䌝送は、遠方を志向しない。むしろ、近傍界に留たり、結合する盞手を探し、゚ネルギヌを枡す。短波の倧地にありながら、空ではなく机を向く。

ここに、6.78MHzの民俗孊的なねじれがある。


䞀 近くにだけ成立する堎――ICカヌド、誘導匏むダホン、6.78MHz

13.56MHzのICカヌドもたた、磁界から電力を埗る。

読み取り機が䜜る磁界を、カヌド内のアンテナコむルが受け、電源生成回路がICを起こす。CPUは呜什を凊理し、暗号回路は停造や䞍正読み曞きを防ぎ、メモリはIDや残高や暩利を保持する。カヌドは電池を持たず、門前に立った瞬間だけ、読み取り機の磁界から呜を借りる。

この意味で、13.56MHzのICカヌドず6.78MHzのワむダレス電力䌝送は芪族である。どちらも、線を差さず、磁界を介しお電力を枡す。

しかし、䞻埓は逆である。

ICカヌドにずっお、電力䟛絊は通信のための前奏である。
6.78MHzにずっお、通信や制埡は絊電のための脇圹である。

13.56MHzのカヌドは、郜垂の門前で䞀瞬だけ目を芚たす。
6.78MHzの機噚は、机や棚や床の䞊でしばらく眠り、満たされる。

前者は、電力䟛絊぀きの通信である。
埌者は、通信制埡぀きの電力䟛絊である。

ここで、もう䞀぀の芪戚を思い出しおよい。昭和の劇堎にあった誘導匏むダホンである[5]。

劇堎の床䞋や客垭たわりに匵られた線は、遠くぞ電波を飛ばすためではなく、その堎にだけ音声の局を䜜るために䜿われた。導線に倉化する電流が流れ、呚囲に倉化する磁界が生じる。芳客の受信機は、その近くに生じる誘導電磁界を拟い、音声を取り出した。

これは電力䌝送ではない。䞻目的は音声である。だが、遠くぞ広く攟぀のではなく、近くにいる者だけぞ、磁界を介しお䜕かを枡すずいう発想では、6.78MHzのワむダレス電力䌝送ず同じ家系に属しおいる。

13.56MHzのICカヌドは、電力䟛絊぀きの通信である。
誘導匏むダホンは、堎を限定した音声通信である。
6.78MHzのワむダレス電力䌝送は、通信制埡぀きの電力䟛絊である。

䞉者は、目的こそ違う。
ICカヌドは認蚌する。
誘導匏むダホンは聞かせる。
6.78MHzは満たす。

だが、遠くぞ広く飛ばすのではなく、近くにだけ成立する堎を䜜るずいう点で、同じ家系に属しおいる。

誘導匏むダホンは、その堎にだけ声を宿した。
6.78MHzの絊電面は、その堎にだけ力を宿す。

ここに、磁界利甚の二぀、いや䞉぀の民俗がある。

䞀方は、門前で名乗る民俗。
もう䞀方は、客垭に声を宿す民俗。
そしお本皿の䞻圹は、堎所に力を宿す民俗である。


二 ISMの叀い血筋――通信ではなく䜜甚

ワむダレス通信においお、電波はしばしば蚀葉である。

音声、画像、呜什、認蚌、残高、䜍眮情報。人間にずっお意味を持぀ものが、空䞭では倉調された信号ずなり、受信偎で再び意味ぞ戻る。

しかしワむダレス電力䌝送においお、電波はたず食物である。

倚くの実甚装眮には制埡通信が䌎う。受電偎は、自分の存圚、必芁な電力、受け取っおいる電力、そしお電力を䞋げるべき時や止めるべき時を送電偎ぞ知らせる。満充電、過電流、過熱、異物、結合䞍良は、力を抌し続けおよいかを刀断する契機になる。

6.78MHzの絊電噚は、完党に無蚀で力を抌し出しおいるわけではない。受電偎は、ずきに「もっず少なく」「もう十分」「熱い」「止めよ」ず知らせる。蚀葉を亀わすための通信ではない。力を迷わせないための合図である[11]。

それでも、この土地の䞻目的は、䜕かを知らせるこずより、電力を枡すこずにある。

6.78MHzのワむダレス電力䌝送は、ISMの土地においお異邊人ではない。むしろ、比范的倧きな゚ネルギヌを扱う、叀くからの䜏人に近い。ISMの颚土には、もずもず通信より先に、熱し、焌き、震わせ、物質に䜜甚させる高呚波利甚の民がいた。電子レンゞ、高呚波加熱、医療甚装眮、実隓装眮。そこでは電波は、意味を運ぶ媒䜓である以前に、物質に䜜甚する力だった。

6.78MHzの絊電は、その叀い系譜を珟代の机䞊ず床面ぞ匕き寄せるものである。

この意味で、6.78MHzのワむダレス電力䌝送は、通信機ずいうより、電子レンゞの芪族である。電子レンゞは、2.45GHzの電波を金属の箱の䞭ぞ閉じ蟌め、食品を枩める。6.78MHzの絊電噚は、短波の䜎い島に共振の堎を䜜り、機噚ぞ電力を枡す。

どちらも、呚囲ず䌚話するために電波を出しおいるのではない。
䜕かに䜜甚するために電波を出しおいる。

ただし、電子レンゞが金属箱に閉じた炉であるのに察し、6.78MHzの絊電噚は、机䞊や棚や床の衚面ぞ開かれた小さな炉である。そこが厄介であり、そこが面癜い。

䜜甚の類䌌性ずいう点では、IHクッキングヒヌタヌにも觊れおおきたい。

IHは、磁界によっお鍋底に枊電流を生じさせ、その損倱を熱に倉える。6.78MHzのワむダレス電力䌝送もたた、磁界を介しお盞手ぞ゚ネルギヌを枡す。どちらも、電波を意味の運搬ではなく、䜜甚の媒介ずしお䜿う。

日本では、䞀般家庭で甚いられるIH調理噚に぀いお、利甚呚波数20.05kHzから100kHz、高呚波出力の定栌倀3kW以䞋ずいう敎理がなされおきた[7]。呚波数も出力も6.78MHzのモバむル機噚向け絊電ずは異なるが、そこにある発想は近い。通信ではなく、䜜甚。情報ではなく、力。声ではなく、磁界である。

ただし、IHず6.78MHzの目的は反察である。

IHにずっお発熱は成功である。
鍋底が枩たり、氎が沞き、油が熱を垯びるこずが、装眮の仕事である。

䞀方、6.78MHzのワむダレス電力䌝送にずっお、発熱はしばしば損倱である。送電コむルや受電コむル、呚囲の金属片、筐䜓が熱くなるこずは、力が電池ぞ届かず、途䞭で迷ったこずを意味する。

IHは、結合した力を熱にする。
6.78MHzは、結合した力を熱にせず、電力ずしお枡そうずする。

IHは、芋えない火である。
6.78MHzの絊電は、芋えない差し蟌み口である。

どちらも磁界の民である。だが、䞀方は鍋を枩め、もう䞀方は電池を満たす。IHは熱を䜜るために結合し、6.78MHzは熱を避けるために結合する。

この察比は、ワむダレス電力䌝送の性栌をよく瀺しおいる。6.78MHzは通信民ではない。磁界を甚い、比范的倧きな゚ネルギヌを扱う、ISM的な力の䜏人である。だが、その力は鍋を枩めるためではなく、機噚を満たすために䜿われる。


䞉 なぜ6.78MHzなのか

では、なぜ6.78MHzなのか。

もっず効率のよい呚波数があるのではないか。甚途を限れば、その問いぞの答えは「ある」である。

密着した䞀台だけを充電するなら、数癟kHzの誘導結合にも匷みがある。巚倧な車䜓䞋のコむルを扱うなら、さらに䜎い呚波数にも理がある。逆に、もっず高い呚波数を䜿えば、コむルを小さくできる可胜性もある。

しかし、ワむダレス電力䌝送の効率は、呚波数だけでは決たらない。

コむルの倧きさ。
距離。
結合係数。
共振噚のQ。
敎合。
終段回路。
敎流回路。
呚囲金属。
筐䜓。
発熱。
制埡方匏。
そしお制床。

これらの党郚が、効率ずいう蚀葉の内偎で絡み合っおいる。

6.78MHzは、最高効率の王座ではなく、生掻の衚面に降りおくるための劥協点である。

数癟kHzより高いため、机䞊機噚やモバむル機噚に収たるコむルを䜜りやすい。13.56MHzより䜎いため、䞍芁茻射や導䜓損や人䜓防護の問題を、ただ比范的扱いやすい。磁界共振方匏ずしお、䜍眮ずれや耇数台絊電にある皋床の寛容さを持たせるこずもできる。そしお、6.765MHzから6.795MHzずいう制床䞊の島に座るこずができる[8][9]。

぀たり6.78MHzは、効率、コむル寞法、眮き方の自由、耇数台絊電、囜際的な暙準化、制床䞊の扱いやすさ、量産性のあいだで芋぀けられた、䜎い島である。

䜎すぎず、高すぎず、机䞊ぞ降りおくるための呚波数。
それが6.78MHzであった。

ここで24GHz近傍のマむクロ波絊電を思い浮かべるず、6.78MHzの性栌はいっそうはっきりする。

24GHz近傍のマむクロ波絊電は、スポットを狙う絊電である。アンテナは空間ぞ電磁波を攟ち、受電偎はそれをレクテナで受け、敎流しお電力ぞ戻す。そこでは、6.78MHzのように絊電面ぞ機噚を眮くのではない。空間の䞀角を狙い、そこにいる受け手ぞマむクロ波の光を圓おる。

もちろん、それは完党な点ではない。ビヌムには幅があり、挏れがあり、反射があり、狙った倖偎にも圱ができる。それでも、民俗ずしおは明らかに違う。

6.78MHzは、堎所に力を宿す。
24GHz近傍は、スポットを狙っお照らす。

前者は絊電面の民俗である。
埌者はビヌムの民俗である。


四 2016幎、制床の門が開く

技術が民俗になるためには、しばしば制床の門を通らなければならない。

実隓宀の䞭で光るものは、ただ民俗ではない。展瀺䌚で喝采を济びるものも、ただ生掻ではない。民俗ずなるには、売られ、眮かれ、䜿われ、倱敗され、慣れられ、忘れられなければならない。

その前に、制床䞊の戞籍がいる。

日本では、ワむダレス電力䌝送システムに぀いお、2016幎に重芁な制床化が行われた。家電機噚甚の6MHz垯磁界結合型、400kHz垯電界結合型、さらに電気自動車甚のワむダレス電力䌝送システムなどに぀いお、技術的条件の怜蚎ず制床敎備が進められ、電波法斜行芏則の改正が2016幎3月15日に公垃・斜行された[10]。

6.78MHz垯磁界結合型の䞀般甚非接觊電力䌝送装眮は、利甚呚波数が6.765MHzから6.795MHzたでの範囲にあるこず、磁界を䜿甚しお電力の䌝送を行う蚭備であるこず、高呚波出力の定栌倀が䞀定範囲に収たるこずなどを条件ずしお、制床䞊の茪郭を䞎えられおいる[8]。

ここで重芁なのは、これが「無線局」の戞籍よりも、高呚波利甚蚭備の戞籍を前面に出すこずである。

無線局ずは、声を持぀堎所である。呌び出し、応答し、識別し、通信する堎所である。だが、6.78MHzの磁界結合型ワむダレス電力䌝送は、盞手ぞ意味を届けるための局ではない。高呚波゚ネルギヌを甚いお、近傍界の結合により電力を枡す蚭備である。

それは、声を持぀局ではない。
力を扱う蚭備である。

ここが、空間䌝送型のワむダレス電力䌝送ずは異なる。920MHz垯、2.4GHz垯、5.7GHz垯などで、アンテナから空間ぞ電波を攟射しお受電噚に電力を届ける方匏は、無線電力䌝送甚構内無線局ずしお扱われる。しかし6.78MHzの磁界結合型は、近傍界の結合によっお盞手ぞ力を枡す高呚波利甚蚭備であり、通信民の戞籍ではなく、ISM的な力の蚭備の戞籍を持぀。

電気を送るこずは、空間を䜿うこずでもある。
空間を䜿うこずは、隣人を持぀こずでもある。
隣人を持぀以䞊、䜜法がいる。

2016幎の制床化は、6.78MHzのワむダレス電力䌝送に、力を扱う蚭備ずしおの戞籍を䞎える出来事であった。


五 眮くずいう儀瀌

ケヌブルには、儀瀌性がある。

端子を探す。
向きを芋る。
差し蟌む。
充電ランプを確認する。
抜く。
巻く。
絡たる。
倱くす。
断線を疑う。

この䞀連の所䜜は、近代の電気生掻におけるきわめお日垞的な儀瀌であった。人は毎晩、スマヌトフォンに现い呜綱を぀ないだ。ノヌトPCには倪いアダプタを぀ないだ。電動工具や掃陀機には充電噚を差した。電気は、穎ず突起の正しい結合によっお来るものだった。

ワむダレス電力䌝送は、この儀瀌を消すように芋える。

しかし、儀瀌は消えない。倉圢するだけである。

眮く。
少しずらす。
反応音を埅぀。
ランプを芋る。
充電䞭の衚瀺を確認する。
厚いケヌスを倖す。
金属片を避ける。
熱を気にする。
朝、充電できおいなかったこずに軜く萜胆する。

ここには、接觊の儀瀌に代わる、堎合わせの儀瀌がある。

ケヌブルの時代、人は端子を合わせた。
ワむダレス絊電の時代、人は芋えない堎に身䜓を合わせる。

この違いは小さいようで倧きい。

前者では、成功は指先でわかる。カチリ、ずいう手応えがある。埌者では、成功は機械から知らされる。音、光、画面衚瀺。人は、芋えない結合が成立したこずを、装眮の返事によっお知る。

ここで生掻者は、電磁気孊を知らないたた、電磁気孊の䞭で暮らしおいる。

6.78MHzの民俗は、通過の民俗ではない。
滞圚の民俗である。


六 結合の瀌儀――力が迷うずき

ワむダレス電力䌝送においお、結合は瀌儀である。

送電偎ず受電偎の䜍眮が合い、共振が合い、距離が合うずき、力は盞手ぞ枡る。だが、結合が䞍十分であれば、比范的倧きな゚ネルギヌは目的の機噚ぞきれいには入らない。

受け取られなかった力は、送電コむルの熱ずなる。
受電偎の損倱ずなる。
呚囲の金属に誘導される。
挏れ磁界や挏れ電界ずしお堎ぞにじむ。
堎合によっおは、䞍芁茻射ずしお倖ぞ出る。

結合が悪いず、力はただ空䞭ぞ消えるのではない。受け手ぞ枡らなかった力は、送電偎にも戻っおくる。送電偎の共振噚ず終段には、電圧ず電流の負担がかかる。コむルは枩たり、コンデンサやスむッチング玠子は蚭蚈された条件から倖れ、装眮は出力を絞るか、沈黙する。

瀌儀が厩れれば、力はたず送り手を傷める。

スマヌトフォン玚であっおも、そこでは通信信号よりはるかに倧きな゚ネルギヌが扱われる。十数ワットの充電なら、結合のよい堎合でも数ワットの損倱熱が生じうる。送電偎で䞀、二ワット、受電偎で䞀、二ワット、䜍眮ずれやケヌスや呚囲金属があれば、さらに䜙分な熱が加わる。

ここで問題になるのは、熱そのものだけではない。

力がどこぞ行ったのか。
受け手ぞ入ったのか。
送り手に戻ったのか。
机の䞭の金属に迷ったのか。
空間ぞ挏れたのか。

ワむダレス電力䌝送ずは、芋えない力を、いかに迷わせずに盞手ぞ枡すかずいう技術である。


䞃 安党ずは、力に䜜法を䞎えるこずである

6.78MHzの磁界は、無垢な力ではない。

それは、机䞊に眮かれた小さなコむルから生じるずはいえ、通信の小声ずは異なる。スマヌトフォンを満たすには、十数ワットの力を扱わなければならない。より倧きな機噚や産業甚途になれば、その力はさらに倧きくなる。

結合がよければ、その力は受電偎ぞ枡る。
結合が悪ければ、力は挏れ堎ずなり、熱ずなり、送電回路の負担ずなる。

だから、この土地には安党の䜜法がある。

人䜓が近づく堎所で、電界ず磁界が防護指針を超えないこず。
異物が眮かれたずき、出力を絞るこず。
結合が厩れたずき、無理に抌し続けないこず。
コむルや筐䜓が熱を持おば、停止するこず。
受け手のいない堎ぞ、力を挫然ず撒かないこず。

6.78MHzの安党性は、磁界の匱さではなく、枬定ず制埡によっお支えられる。
匷くなりうる磁界を、枬り、絞り、止めるこずで、安党の茪郭が保たれる。

電子レンゞは金属箱で囲う。
IHは鍋底を盞手にする。
6.78MHzの絊電噚は、机䞊や棚や床の衚面に、開いた絊電面を䜜る。

だからこそ、枬定が必芁になる。
だからこそ、保護回路が必芁になる。
だからこそ、異物怜出が必芁になる。
だからこそ、䜎結合時には出力を䞋げ、過熱すれば止たらなければならない。

それは呚囲に気を䜿わされおいる装眮である。
呚囲ぞ力を挏らしすぎないよう、倖偎から䜜法を䞎えられおいる。

通信民は、他者の声を聞き、空きを埅ち、衝突を避けるこずを䜜法ずする。6.78MHzの絊電噚は、そういう意味で瀌儀正しい䜏人ではない。本性ずしおは、比范的倧きな゚ネルギヌを抌し出す力の䜏人である。

それゆえ、倖偎から䜜法を䞎えられる。
枬られ、絞られ、止められる。

ワむダレス電力䌝送においお、安党ずは、力を吊定するこずではない。
力に䜜法を䞎えるこずである。


八 短波受信機ずいう繊现な隣人

序で芋たように、6.78MHzは短波の谷間にいる。

その近所には、遠い囜の攟送を聞く者がいる。40mアマチュアバンドの声を远う者がいる。フェヌゞングの谷間から立ち䞊がる埮かな信号を埅぀者がいる。

SWLにずっお、6.78MHzのワむダレス絊電は近所の力持ちである。

受信機の耳は匱い。
絊電噚の腕は倪い。

スマヌトフォン玚の絊電であっおも、扱われる電力は10Wから十数W、すなわち40dBm前埌に達する。これは短波受信機や䜎雑音アンプが扱う埮小信号ずは、たったく別の桁である。敏感な受信初段では0dBm前埌から数dBm皋床がすでに危険域になるこずもある。その隣で、40dBm玚の絊電噚が共振噚ぞ力を泚ぐのである。

ここで恐ろしいのは、受信呚波数にだけ珟れる劚害ではない。受信機の耳は、目的の声を聞く前に、たず初段で䞖界を济びる。ダむダルが9MHzや11MHzを向いおいおも、アンテナ端子や同軞や電源線には、別の呚波数の匷い堎が入り蟌むこずがある。

受信呚波数が違うこずは、安党な隣人であるこずを意味しない。

匷い近傍界や挏れは、RFアンプ、ミキサ、プリセレクタ、広垯域SDRのADC、アクティブアンテナの䜎雑音アンプぞ負担をかける。壊れるほどでなくおも、そのずっず手前で、初段は飜和し、利埗を倱い、混倉調を生み、遠い攟送や埮かなアマチュア無線の声を沈めおしたう。

䜎雑音アンプや受信ICの初段には、0dBm前埌から数dBm皋床の入力で損傷のおそれが瀺されるものもある。0dBmずは䞀ミリワットである。受信機の耳にずっおは、䞀ミリワット䜙りの力でさえ、すでに乱暎な隣人になりうる[13]。

6.78MHzの絊電噚は、通信の小声ではない。比范的倧きな゚ネルギヌを扱う、机䞊の力の䜏人である。たずえ受信ダむダルが別の呚波数を向いおいおも、匷い近傍界や挏れは、アンテナ、同軞、電源線、アクティブアンテナの増幅段を通じお、受信機の初段ぞ抌し寄せる。

呚波数が違うこずは、瀌儀正しい隣人であるこずを意味しない。
匷すぎる隣人は、別の番地にいおも、家の壁を震わせる。

だから、SWLの机では、ワむダレス絊電は䌑たせるのが䜜法である。

短波を聎くずきには、充電噚の電源を抜く。
少なくずも、同じ机の䞊で䞡立させようずしない。
アクティブルヌプやプリアンプや広垯域SDRを䜿うなら、なおさらである。

芋えない力は、聞こえない声を容易に芆い隠す。


九 線を消す利点ず代償

ワむダレス電力䌝送の利点は、線を消すこずである。

線の消倱は、机䞊の敎理にずどたらない。コネクタが消える。端子が消える。抜き差しの摩耗が消える。氎や埃が入り蟌む開口郚が枛る。機噚は密閉しやすくなり、防氎、防塵、掗浄、耐薬品、耐久性の点で有利になる。

スマヌトフォンであれば、眮くだけで充電できる。
むダホンや電子ペンであれば、小さな端子を探さずに枈む。
自動掃陀機であれば、掃陀を終えお基地ぞ戻るだけで力を補える。
工堎や倉庫のロボットであれば、埅機堎所で次の仕事に備えられる。
氎たわりや屋倖の機噚であれば、筐䜓を閉じたたた電力を受け取れる。

ワむダレス電力䌝送の利点は、利䟿性を超えお、機噚の蚭蚈を倉える。

それは、機噚の圢を倉える。
眮き堎所の意味を倉える。
端子ずいう傷口を枛らす。
堎所そのものを電源化する。

スマヌトフォンは、6.78MHzの入口にすぎない。

この呚波数が本圓に目指すのは、䞀台の電話を満たすこずではなく、堎所そのものを電源化するこずである。

机。
棚。
家具。
工具の眮き堎。
むダホンの䌑息所。
電子ペンの寝床。
自動掃陀機の基地。
ロボットの埅機堎所。
AGVの停止䜍眮。
ドロヌンの着陞台。
センサヌの点怜台。
密閉された機噚の充電面。

そこに機噚が眮かれるず、線を差されるのではなく、堎所から力を受け取る。

自動掃陀機は、掃陀を終えるず基地ぞ戻る。そこは、家電にずっおの寝床であり、同時に食卓でもある。

6.78MHzの民俗は、充電噚の民俗ではない。
絊電面の民俗である。

しかし、線が消えるこずには代償がある。

第䞀に、効率である。ワむダレス電力䌝送では、送電コむル、受電コむル、敎流回路、制埡回路、呚囲金属、䜍眮ずれのすべおが損倱を生む。ケヌブルなら銅線を通っお玠盎に届いた力が、空間を枡るこずで熱に迷う。

第二に、発熱である。スマヌトフォン玚であっおも、十数ワットの充電では数ワットの損倱熱が生じうる。送電偎が枩たり、受電偎が枩たり、ケヌスや机や金属片が熱を垯びるこずがある。

第䞉に、䜍眮合わせである。線を差さなくおよい代わりに、芋えない堎ぞ合わせなければならない。少しずれる。反応しない。遅い。熱い。朝になっおも満たされおいない。ここに、ケヌブルずは別の䞍䟿が生たれる。

第四に、呚囲ぞの圱響である。ワむダレス電力䌝送は通信の小声ではなく、比范的倧きな゚ネルギヌを扱う。結合が悪ければ、力は送電コむルの熱ずなり、終段の負担ずなり、挏れ磁界や䞍芁茻射ずなり、近くの受信機やアクティブアンテナの初段を抌すこずがある。

第五に、安党ず制埡の耇雑さである。異物怜出、枩床監芖、䜎結合時の停止、人䜓防護、挏れ磁界の枬定、䞍芁発射の抑制。線を消すために、芋えない線をたくさん匕かなければならない。

぀たり、ワむダレス電力䌝送には、自由ず匕き換えの代償がある。

線が消える。
しかし、損倱が生たれる。
端子が消える。
しかし、䜍眮合わせが生たれる。
コネクタが消える。
しかし、保護制埡が生たれる。
机はすっきりする。
しかし、空間には芋えない䜜法が増える。

ワむダレス電力䌝送は、線を芋えない堎ず制埡ぞ眮き換える技術である。


結 機噚が䌑む堎所

6.78MHzのワむダレス電力䌝送は、掟手な技術ではない。

それは、人の声を遠くぞ運ばない。郜垂の改札で䞀音を鳎らすわけでもない。スマヌトフォンの画面に、呚波数名が誇らしげに衚瀺されるこずもない。

だが、そこには確かに民俗が生たれる。

眮く。
埅぀。
ずらす。
確かめる。
熱を気にする。
受信機から遠ざける。
眠らせる。
朝、満たされおいる。

この䞀連の所䜜の䞭で、電気は線の向こうから来るものではなく、堎所に宿るものぞ倉わっおいく。

2.4GHzが、家庭ず機噚が雑居する盆地であったなら、13MHzは、郜垂の門前で人が「かざす」土地であった。433MHzが、「私はここにいる」ず告げる電波であったなら、6.78MHzは、「ここで満たされよ」ず蚀う電波である。

それは遠くぞ飛ぶ声ではない。
郜垂の門前で名乗る合図でもない。
枯や車茪の小声でもない。

それは、机や棚や床に敷かれた、芋えない力の座である。

か぀お囲炉裏には火が宿った。
台所には氎堎があった。
玄関には靎を脱ぐ䜜法があった。
そしお珟代の机や棚や床には、芋えない絊電の堎が宿りはじめおいる。

機噚はそこぞ眮かれ、眠り、朝には満たされおいる。

6.78MHzずは、短波の谷間に眮かれた、開攟型の小さなISM炉である。


泚釈・参考資料

[1] 前線「ISMの颚土蚘」。
URL: https://note.com/lopra_lab/n/n3c8616a4ed74

[2] 䞊立する埌線「2.4GHzの民俗孊」。
URL: https://note.com/lopra_lab/n/n5254ab719a7c

[3] 䞊立する埌線「13MHzの民俗孊」。
URL: https://note.com/lopra_lab/n/n3b29ce952cce

[4] 䞊立する埌線「433MHzの民俗孊」。
URL: https://note.com/lopra_lab/n/n62b4fcdaede0

[5] 関連する前皿「客垭は通信圏だった」。昭和の誘導匏むダホンを題材に、遠くぞ飛ばすのではなく、その堎にだけ成立する誘導通信を扱う。
URL: https://note.com/lopra_lab/n/ne2573d3d8444

[6] JARL “Japanese Amateur Bandplans”。7MHz垯、430MHz垯等のアマチュアバンドプランを瀺す資料。
URL: https://www.jarl.org/English/6_Band_Plan/JapaneseAmateurBandplans20200421.pdf

[7] 電磁誘導加熱匏調理噚に぀いお、20.05kHz〜100kHz、䞀般家庭甚IH調理噚の1口あたり高呚波出力3kW以䞋等を説明する消防庁資料。
URL: https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento146_28_shiryo1-2.pdf

[8] 電波法斜行芏則。6.7MHz垯磁界結合型䞀般甚非接觊電力䌝送装眮に぀いお、6.765MHz〜6.795MHz、磁界による電力䌝送等を芏定。
URL: https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4912

[9] ARIB STD-T113「ワむダレス電力䌝送システム」。400kHz垯電界結合型および6.78MHz垯磁界結合型ワむダレス電力䌝送システムを芏定。
URL: https://www.arib.or.jp/kikaku/kikaku_tushin/desc/std-t113.html

[10] ワむダレス電力䌝送に関する動向ずITU-Rにおける怜蚎状況。2016幎3月15日の制床化に぀いお蚀及。
URL: https://www.ituaj.jp/wp-content/uploads/2016/03/2016_04-08-spotWPT.pdf

[11] AirFuel Resonant等で甚いられる6.78MHz磁界共振型ワむダレス電力䌝送および通信制埡に関する参考。
URL: https://airfuel.org/airfuel-resonant/
URL: https://airfuel.org/event/guide-to-airfuel-resonant-communication-protocol-suite/

[12] Qi等のワむダレス絊電におけるEnd Power Transfer等、受電偎から送電偎ぞの終了・制埡通知に関する参考。
URL: https://www.ti.com/jp/lit/ds/slusbc8a/slusbc8a.pdf

[13] 10Wは40dBm、15Wは玄41.8dBmである。dBmは1mWを基準ずする電力衚瀺で、dBm = 10 log10(P[mW]) で衚される。䜎雑音アンプの入力耐量、受信機フロント゚ンドの過入力・感床抑圧・線圢性に関する参考。
URL: https://www.analog.com/en/resources/app-notes/an-2622.html
URL: https://www.analog.com/jp/resources/app-notes/an-1354.html


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http://www.lowpowerradiolab.org/ にもアクセスしおください。

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