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「流れぬ彗星/天昇る火柱」あとがき&参考文献【歴史小説】


あとがき

 この作品を書き始めたのは、思えばもう五、六年も前かもしれません。
 奈良に住むようになってから、この土地の歴史を少しずつ調べ始めていました。
 大和の戦国大名といえば、筒井順慶、という名前はよく知られていましたが、どう考えてもヒーロー性に富む人物ではない。
 しかしその筒井氏の過去を探っていくと、彼らに敗れて歴史の狭間に消えていったが、ある種の英雄性をまとっている、古市氏という一族に突き当たりました。
 彼らのことを調べ、その故地を訪ねているうちに、古市氏の共犯者とも言うべき、大乗院門跡の経覚という人物に出会ったのです。
 そうして書き進めていったのが、「花、散りなばと」から始まり、「流れぬ彗星」「天昇る火柱」と続いてゆく、「古市サーガ」とも呼ぶべき作品群でした。

 自分のライフワークのようになっていたこれらの作品たちですが、ここに全て完結し、みなさまの目に触れられることになり、人生の一つのサイクルが終わったような気持ちでおります。
 掲載中、みなさまからさまざまな励ましや、過分なまでのお褒めの言葉をいただいて、心から嬉しく、幸せを感じておりました。
 noteという場所と出会い、そこに掲載していくことができて本当に良かった。この作品も私自身も浮かばれた、と思っております。
 心から、感謝の言葉を申し上げたいと思います。
 本当にありがとうございました。

 さて、全編のエピローグ「藍紗」につきましては、ネット上の著作内容保護の観点からも、有料記事とさせていただいております。

 その最終局面で、「畠山長経」という人物が登場します。
 お読みになっていただいた方はおわかりかと思いますが、「流れぬ彗星」の主人公畠山卜山と、「天昇る火柱」の主人公赤沢長経の名前を、片方ずつ受け継いでいる人物です。
 いかにも創作的ですが、これがなんと実在する人物なのです。
 なぜ畠山卜山は、かつて遺恨もあり、自分の最後の宿敵となった赤沢長経の名を、自分の子とされている者に与えたのか。
 その名前を考えた時に、卜山の脳裏に、赤沢長経のことが浮かばなかったはずはありません。
 あるいは彼らの間には、友情とは言えないまでも、敵味方を越えた何らかの感情が生まれていたのではないか……
 そんな風に考えたのが、実はこの作品を書くきっかけの一つでもあったのでした。
 こういうことがあるから、歴史というのは本当に面白い。
「流れぬ彗星」「天昇る火柱」は、最初から次郎と新兵衛の物語だったのです。

 これからしばらくの間、noteに歴史小説を投稿するかはわかりませんが、手元にはまだまだたくさんの作品がありますので、あるいはまたそういう時がくるかもしれません。
 ただ今は、次郎や新兵衛、藍紗、鯨、宗益、澄胤、政元、与一たちと一緒に、静かにこの世界から立ち去ってゆきたいと思います。
 重ね重ねになりますが、本当にありがとうございました。

                         令和七年七月十九日
                              大純はる

参考文献

史料
辻善之助編『大乗院寺社雑事記 巻一~巻一二』 角川書店 一九六四年
塙保己一編『細川両家記』(『群書類従 第十三輯 合戦部』) 經濟雑誌社 一九〇〇年
近藤瓶城編『足利季世記』 君見ずや出版 二〇一六年

書籍
奈良市史編集審議会編『奈良市史 通史2』 吉川弘文館 一九九四年
朝倉弘 奈良県史編集委員会編『奈良県史 第十一巻 大和武士』 名著出版 一九九三年
福井県編『福井県史 通史編2中世』 福井県 一九九四年
安田次郎『中世の奈良―都市民と寺院の支配』 吉川弘文館 一九九八年
安田次郎『中世の興福寺と大和』 山川出版社 二〇〇一年
酒井紀美『人物草書 経覚』 日本歴史学会 二〇二〇年
弓倉弘年『中世後期畿内近国守護の研究』 清文堂出版 二〇〇六年
福島克彦『戦争の日本史11 畿内・近国の戦国合戦』 吉川弘文館 二〇〇九年
馬部隆弘『戦国期細川権力の研究』 吉川弘文館 二〇一八年
古野貢『中世後期細川氏の権力構造』 吉川弘文館 二〇〇八年
山田康弘『中世武士選書第33巻 足利義稙 戦国に生きた不屈の大将軍』 戎光祥出版 二〇一六年
藤井崇『中世武士選書第21巻 大内義興 西国の「覇者」の誕生』 戎光祥出版 二〇一四年
日本史史料研究会『室町幕府全将軍・管領列伝』 星海社新書 二〇一八年
山内譲『中世 瀬戸内海の旅人たち』 吉川弘文館 二〇〇四年
金谷匡人『海賊たちの中世』 吉川弘文館 一九九八年
小川雄『水軍と海賊の戦国史』 平凡社 二〇二〇年

論文
清水克行「室町期畿内における町場の構造―『経覚私要鈔』に描かれた大和国古市郷―」
(『比較都市史研究』30巻2号)二〇一一年
天野繁子「風呂の風流 : いわゆる林間の風流について」
(『法政史学』37)一九八五年
田中慶治「国人古市氏の馬借・関支配について―南山城を中心にして―」
(『高円史学』13)一九九七年
徳満悠「中世都市木津(山城国)の研究―15世紀を中心に―」
(『都市文化研究』第15号)二〇一三年
川岡勉「河内国守護畠山氏における守護代と奉行人」
(『愛媛大学教育学部紀要 第2部 人文・社会科学』30)一九九七年
馬場隆弘「畠山家における奉書の展開と木沢家の出自」
(『大阪大谷大学歴史文化研究』17)二〇一七年
小谷利明「河内国守護畠山氏の領国支配と都市―畠山政長・義就期を中心に―」
(『鷹陵史学』25)一九九九年
小谷利明「戦国期の河内国守護と一向一揆勢力」
(『佛教大学総合研究所紀要』別冊)一九九八年
鶴崎裕雄「細川千句考」
(『中世文学』27巻)一九八二年
田中克行「村の『半済』と戦乱・徳政一揆―戦国期京都近郊村落の連帯と武力動員―」
(『史学雑誌』102巻6号)一九九三年

創作
幸田露伴「魔法修行者」
(『露伴全集』第十五巻) 岩波書店 一九五二年
幸田露伴「雪たゝき」
(『露伴全集』第六巻) 岩波書店 一九五三年

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