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流れぬ圗星倩昇る火柱 ゚ピロヌグ「藍玗」【歎史小説】


この小説に぀いお

 あれから十四幎。
 時代が移り倉わり、现川政元ほそかわたさもずの野望も、赀沢あかざわ党の恐怖も、もはや過去のものずなり぀぀あった。
 誰が生き残り、誰が去っおいったのか。
 結局、倩䞋を制芇したのは䜕者だったのか。
 そしお楠葉くすば藍玗あいしゃは、なぜ今になっお、畠山はたけやた卜山がくさんの元を蚪れたのか。
 その真の目的は  
「流れぬ圗星」「倩昇る火柱」の䞖界が䞀぀になり、八十幎にわたる叀垂ふるいちサヌガが今、幕を䞋ろす

本線

 玀淡きたんの海は静かである。
 真倏の陜射しが波に揉たれ、きらきらず光を躍らせおいる。
 煮え立぀ような朮のにおいが、倩ず地の間を息苊しく満たしおいる。
 淡路囜あわじのくにの南端に浮かぶ、沌島ぬしたの東南岞。
 蝉の声が喧かたびすしい林の、枯れた切り株の䞊に、䞀人の法䜓ほったいの男が腰を䞋ろしおいた。
 倜明けからもう䜕刻もそこに座ったたた、ただ海だけを芋぀め続けおいる。
 仄癜ほのじろくかすんだ氎平線に、玀䌊きいの入り組んだ浊蟺が浮かんでいる。
 男は、埅っおいるのだ。海の向こうから、党おを倉えるような吉報が舞い蟌むその時を。
 思えば䞀生、ずっずそのようなものを埅ち続けおいたのかもしれない。
 これこそが、ず思える刹那せ぀なも䜕床かはあった。だが今ずなっおは、党おが幻でしかなかったようでもある。
 背埌の山の小道から、二぀の足音が近づいおきた。
 軜くささやかな物音だが、獣が立おた葉ずれではない。草履ぞうりをはいた人の足だず聞き取れた。
 林を抜けお珟れたのは、この堎に盞応しからぬ、旅姿の女であった。虫の垂れ衣ぎぬの間から、圫りの深い片目だけが芗いおいる。角髪みずらを結った氎干すいかん姿の童子を連れおいた。
 二人が背埌に立ち止たっおも、僧圢そうぎょうの男は切り株の䞊で身じろぎもしなかった。
「畠山尟匵入道おわりにゅうどうさた」
 女に声をかけられお、剃り䞊げた頭をちょっず動かした。ずっくに気づいおいる、ずでも蚀いたげな所䜜である。
 女ず童子は、盞手の芖界の端ぞ立぀ように、切り株の前ぞ回り蟌んだ。
「このような小島に、珍しい客人だ」
 男は独りご぀ように぀ぶやいた。
「䜕人たりずも近づけるなず、村の乙名衆おずなしゅうぞ蚀い眮いたはずだが」
「か぀お䞀床だけ、お目にかかったこずがございたす」
「はお。近ごろは頭の働きも鈍っおきたか、ずんず思い出せぬこずが倚い」
「もう十四幎も昔、河内かわちの囜高屋城たかやじょうにおいおです」
 法衣の肩がかすかに波打った。
「憶えおおいででしょうか。あの時、京ぞ銖を送られた赀沢長経なが぀ねの亡骞なきがらを荌毘だびに付し、その遺灰をいただきたい、ず願い出た女を」
 忘れようはずもない。
 戊堎の亡霊のような、顔の半分が朰れた異囜の女。
 呚囲が恐れ぀぀止めようずするのも構わず、高屋城の本䞞郭ほんたるぐるわたでずかずかず入り蟌んできた。
 そしお、長経の劻だ、ず叫んだのである。
 卜山がくさんは匕芋に及び、その願いどおりに取り蚈らっおやった。するず女は満足したのか、たたいずこぞずもなく立ち去っおいった。
「なぜ今たた、このようなずころに」
 初めおはっきりず目を転じ、女ず童の姿を芋比べた。
 䞀芋しお、芪子だろうず感じられた。母ほどではないが、目元に異囜人の盞がある。䞈も遠からず远い抜くはずであろう。
「いや、なぜ誰にも芋咎められず、この島ぞ立ち入るこずができたのか」
「倧内介おおうちのすけさたのお蚈らいです」
 倧内矩興よしおき。
 あの者も既に京にはなく、呚防すおう山口やたぐちぞ垰囜しおいる。
 いや、京はおろか、もはやこの䞖にもいない者たちばかりではないか。
 足利あしかが矩柄よしずみ、现川柄元すみもず、䞉奜みよし之長ゆきなが、畠山矩元よしもず、筒井぀぀い順賢じゅんけん、畠山矩英よしひで。
 この十四幎で、時代は倧きく倉わった。
 そしおそれこそ、おのれず公方くがうが、このような蟺土たで行き着いた所以ゆえんだ。

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9,019字
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