IBJ加盟店は増えすぎ? ピップエレキバンの結婚相談所参入で感じた「コンビニ化」
ピップまで結婚相談所を始めていた
先日、ピップエレキバンやスリムウォークで知られるピップ株式会社が、結婚相談所を運営していることを知った。相談所名は「P!っと縁結び」。IBJの正規加盟店である。
調べてみると、開業したのは最近ではない。2024年7月、新規事業として婚活支援事業に参入しており、すでに2年が経っている。にもかかわらず、婚活業界を長く見ている私ですら最近まで知らなかった。大手ヘルスケア企業と結婚相談所では事業イメージがあまりにも離れており、そもそもピップが婚活事業を手がけていると想像しにくかったこともあるだろう。
もちろん、異業種参入自体が悪いわけではない。むしろ、大企業だからこそ、個人経営の相談所よりコンプライアンスや個人情報管理がしっかりしている可能性もある。婚活業界に長くいることと、仲人として優秀であることもまた別の話だ。
それでも気になったのは、婚活者は何を理由に「P!っと縁結び」を選ぶのか、という点だった。
「100年企業だから安心」は婚活支援の強みなのか
公式サイトによれば、強みは大きく3つある。
①IBJ加盟店として10万名超の会員と出会えること、②システム検索に加え、専任カウンセラーが「プロフィール交換会」で直接相手を探すこと、③100年を超える老舗企業が運営していることである。
このうち②については、少し印象が変わった。
単にIBJのシステムを提供して、「あとは自分で検索してください」ではなく、カウンセラー同士のつながりで手づくりのお見合いを組もうとしている。
プロフィール交換会とは、カウンセラー同士が担当会員の情報を持ち寄り、「この人とこの人なら合いそう」と紹介し合う場のことだ。検索条件だけでは拾われにくい会員にも出会いの可能性が広がるため、サポート面で一定の強みはあるだろう。
ただ、こうした取り組みをしている加盟店は他にもある。「P!っと縁結びでなければならない理由」としては、決定的とまでは言いにくい。
そこで最後に残るのが、③の「老舗企業の信用力」である。
確かに、聞いたこともない個人事業主より、「あのピップが運営している」と言われたほうが安心する人はいるだろう。
しかし、企業として100年続いていることと、結婚相談所としてノウハウがあることは当然ながら別の話だ。
婚活者が本当に知りたいのは、「この担当者はこれまで何人の婚活を支援してきたのか」「プロフィール作成は上手いのか」「申し込みが通らないときにどんな戦略を考えてくれるのか」「交際中に問題が起きたとき、適切な助言ができるのか」——こうした部分ではないだろうか。
ピップエレキバンを長年販売してきた実績は、企業への信頼にはつながっても、そのまま婚活支援能力には変換されない。企業の信頼性が欲しいなら、老舗の婚活専業大手を選ぶという手もあり、むしろその方がノウハウの蓄積も期待できるはずだ。
そう考えると、「数ある相談所の中から、あえてここを選ぶ理由」としては、現時点ではやや弱いように感じる。
IBJ加盟店は「コンビニ」に似てきた
考えているうちに、現在のIBJ加盟店は同じくフランチャイズ経営のコンビニに似ていると感じた。
ファミリーマートでファミチキを買いたいとき、駅前でも自宅近くでも職場近くでも、ファミマであればどの店舗でも買える。店舗ごとに接客の違いはあっても、「ファミチキを買う」という目的だけなら店はどこでも構わない。
IBJ加盟店も同じ構造だ。どこの加盟相談所に入っても、利用するのはIBJのプラットフォームであり、IBJ会員の中から相手を探すことになる。担当者の力量に差はあっても、IBJ会員と出会うことはできる。
極端に言えば、IBJがコンビニ本部で、各相談所が加盟店、IBJのデータベースがファミチキのようなものだ。「IBJ会員と出会いたい」という目的だけなら、加盟店ならどこでもよく、実際に入会してサポートを受けるまで、相談所ごとの違いは見えにくい。
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オンライン化で、相談所はコンビニ以上の超激戦区に
しかも、結婚相談所はコンビニよりも差別化が難しい面がある。コンビニなら、同じ商品でも、「自宅から一番近い」「駅の改札を出てすぐ」「会社の1階にある」といった立地そのものが強い競争力になる。
ところが現在は、入会面談や活動中の相談をオンラインで行う相談所も多く、自宅や職場の近くを選ぶ必要性は以前ほど高くない。通いやすさが仲人のサポートを受けやすくする面はあるが、年に数回の面談であれば、さほど近隣にこだわらなくてもいい。
つまり、IBJ加盟店は同じ会員データベースを共有しながら、コンビニの強力な武器である「立地」の優位性まで小さくなっている。結果として、地方の小さな相談所も、ピップのような大企業も、全国数千のライバルと同じ土俵で比較される。新規参入する側からすると、かなり厳しい市場ではないだろうか。
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「IBJ加盟です」は、すでに差別化ではない
結婚相談所のホームページには、「IBJ正規加盟店」「10万人を超える会員の中から探せます」といった文言をよく見かける。しかし、加盟店が増えれば増えるほど、それは相談所独自の強みではなくなっていく。
全店舗でファミチキを販売しているのに、「当店ではファミチキが買えます」と宣伝しているようなものだからだ。
もちろん、IBJへの加盟には意味がある。会員数トップのネットワークを使え、身元確認された会員と出会えることは安心材料だ。しかし、それは「IBJを使うかどうか」の判断材料にはなっても、「数あるIBJ加盟店の中からこの相談所を選ぶ理由」にはならない。
では、何で差別化すればいいのか。
料金が圧倒的に安い相談所、40代・再婚・地方婚活など特定層への支援に詳しい相談所、プロフィール作成を強みにする相談所、担当者自身の経験や交際中の細かなサポートを売りにする相談所——こうした部分こそ、相談所固有の商品のはずだ。
「IBJに加盟しています」ではなく、「数多くの加盟相談所の中で、なぜ自分の相談所に入るべきなのか」を説明できなければならない。
私は、仲人の人柄やSNS上の知名度だけで相談所を選ぶのは危険だと思っているが、「大企業だから」というだけで選ぶのも同じことだ。重要なのは看板ではなく、その内側で何が提供されるかである。
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加盟店が増えるほど、IBJは強くなり、加盟店は苦しくなる
この構造を考えると、面白いことに気づく。
IBJ本部にとって、加盟店が増えることは大きなメリットだ。加盟金やシステム利用料が入り、IBJというブランドの地位も強固になる。一方、個々の加盟店にとっては、同じIBJの看板を掲げ、同じ会員ネットワークを利用する競合が増えるだけである。
この競争激化は今に始まった話ではない。元IBJ加盟店のカウンセラーであるsumidaさんは、2020年7月時点で、「IBJ全体で毎月約2500人が入会する一方、加盟店は約2400社あり、単純計算では1社あたり月1人程度の入会になる」と指摘していた(出典:sumidaさん「結婚相談所の独立開業を成功させる方法を元プロが教える」)。
直営店や大手加盟店に入会者が集中することを考えれば、「毎月の新規入会者がゼロ」という小規模相談所も少なくなかったという。
そして2026年7月末時点で、IBJの加盟結婚相談所は4,818社まで増えている(出典:IBJ公式X)。会員数全体も増えているため単純比較はできないが、同じ会員ネットワークを使うIBJ加盟店同士の競争相手は、6年前のおよそ2倍になっている計算だ。
つまり、IBJというプラットフォームが巨大化するほど、独自の強みを持たない加盟店も増え、コモディティ化しやすくなる。
そして、その競争の厳しさは小規模相談所に限った話ではない。
ピップほど知名度のある企業でさえ、参入しただけで広く認知されるわけではないからだ。4,800社を超える加盟店の中では、大企業の看板さえ「数あるIBJ加盟店の一つ」に埋もれてしまうことがある。
また、結婚相談所は、入会前にサービスの実態が見えにくい。だからこそ、「大手だから」「IBJ加盟だから」といった分かりやすい看板だけで判断しがちだ。
ただ、7社の相談所を渡り歩いた私からすると、入会して初めて気づいた違いがいくつもあった。相談所選びで見落としやすい「6つの落とし穴」については、以下の記事で詳しくまとめている。これから相談所を選ぶ人には、契約前に一度確認してほしい。
※模倣・無断転載・無断引用は固く禁じます。
※本記事は2026年8月27日に執筆・公開しました。
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