【決算チェック】くすりの窓口、好決算で投資仮説を確認―以前紹介した医療DX銘柄の成長力を改めて検証する―
以前、私は「くすりの窓口」について、以下の記事で取り上げました。
「良い企業を、魅力的な株価で買う」という視点から、同社を単なる薬局検索サービスの会社ではなく、薬局・医療機関・介護施設をつなぐ医療DXプラットフォーム企業として評価した記事です。
今回、そのくすりの窓口が2027年3月期第1四半期決算を発表しました。
結論から言うと、今回の決算はかなり良い決算だったと思います。
以前の記事で書いた投資仮説が、今回の決算で一歩確認された形です。
この記事で分かること
この記事では、今回の決算について以下を整理します。
・2027年3月期第1四半期決算の評価
・売上高、営業利益、ストック粗利の成長
・ヘルスケアオートメーション事業の強さ
・厚労省関連リスクの現状
・みんなのお薬箱事業の注意点
・基幹システム事業とM&Aの評価
・今後の注目ポイント
1.決算全体はかなり強い
まず、今回の第1四半期決算の数字を確認します。

売上高は前年同期比25.0%増、営業利益は24.6%増です。
売上だけでなく、営業利益もしっかり伸びています。
単なる増収ではなく、利益を伴った成長になっている点は評価できます。
また、会社資料では、連結売上高、連結ストック粗利、連結営業利益がいずれも過去最高を更新したと説明されています。
これはかなり良い内容です。
2.通期計画に対する進捗も順調
通期予想は据え置きです。

1Q時点で売上高、営業利益、経常利益はいずれも進捗率25%です。
会社側も「ほぼ計画通り」と説明しています。
第1四半期としては、かなり順調なスタートだと思います。
3.一番評価したいのはストック粗利の成長
今回の決算で、私が一番評価したいのはストック粗利の伸びです。
連結ストック粗利は10.69億円となり、前年同期比26.4%増でした。
ストック粗利は、くすりの窓口を見るうえで非常に重要な指標です。
同社は、薬局や医療機関、介護施設に対してシステムやプラットフォームを提供しています。
一度導入されると、月額利用料やシステム利用料などの継続収入が積み上がります。
つまり、単発の売上よりも、
ストック売上が増えているか
ストック粗利が増えているか
導入施設数が増えているか
を見ることが重要です。
今回、ストック粗利が過去最高を更新した点は、同社の収益基盤が着実に拡大していることを示しています。
4.ヘルスケアオートメーション事業が強い
今回の主役は、ヘルスケアオートメーション事業です。
これは、以前の「メディア事業」から名称変更された事業です。
名称変更といっても、単なる看板の付け替えではありません。
会社は、薬局検索や処方箋予約だけでなく、集患、予約、受付、問診、会計、事務業務までを一気通貫で自動化する方向へ事業領域を広げようとしています。
この事業の売上高は前年同期比37.3%増。
ストック粗利は前年同期比57.3%増でした。
これは非常に強いです。
特に注目したいのは、処方箋ネット受付数です。
処方箋ネット受付数は前年同期比で40万件増加し、201.2万件となりました。
施設保有数も24,694施設まで増加しています。
さらに、会社資料では、処方箋枚数約9.0億枚に対し、同社の処方箋ネット受付シェアはまだ約2.0%とされています。
ここが重要です。
国内最大級の規模まで成長しているにもかかわらず、市場シェアはまだ約2%。
つまり、成長余地はまだかなり残っています。
以前の記事で私が注目したのも、まさにこの点です。
くすりの窓口は、すでに一定の事業基盤を持ちながら、まだ市場浸透率が低い。
この構図は、中小型成長株として非常に魅力的です。
5.厚労省関連リスクは、現時点ではかなり後退
くすりの窓口については、厚労省関連の事務連絡を気にしていた投資家も多かったと思います。
今回の決算説明資料では、この点についてかなり丁寧に説明されています。
会社は、処方箋予約サービスに関するアンケートおよびポイント付与をすでに終了していると説明しています。
また、厚労省への説明や全地方厚生局への通知も行い、特段の問題や指摘がなかったことを確認したとしています。
さらに、処方箋予約サービス自体が患者誘引として指摘を受けたことはなく、今後もサービスを継続する予定としています。
会社側は、業績への影響は軽微であり、処方箋ネット受付件数、薬局契約数、解約率に顕著な変化は確認されていないと説明しています。
これはかなり大きな安心材料です。
もちろん、ヘルスケア領域は制度や行政対応の影響を受けやすい業界です。
そのため、規制リスクが完全になくなったとは言えません。
ただし、現時点では、事業継続に重大な支障が出ている状況ではないと判断しています。
6.みんなのお薬箱事業はやや注意
一方で、すべてが完璧だったわけではありません。
みんなのお薬箱事業は、売上高が前年同期比7.8%増となりました。
一方で、ストック粗利は前年同期比8.0%減でした。
ここだけを見ると、少し弱く見えます。
ただし、会社は不動在庫サービスの倉庫移転に伴う一時的な業務遅延があったと説明しています。
この影響を除けば、売上高・利益ともに前年同期比で増収増益とされています。
KPI面では、施設保有数が19,552施設、前年同期比1,533施設増。
流通額も前年同期比62.54億円増となり、過去最高を更新しています。
したがって、私の評価は、
表面上のストック粗利減は注意。
ただし、KPIは強く、一時要因を除けば事業の方向性は悪くない。
というものです。
ここは2Q以降に回復を確認したいポイントです。
7.基幹システム事業も好調
基幹システム事業も良い内容でした。
売上高は前年同期比25.9%増。
ストック粗利は前年同期比31.2%増となり、過去最高を更新しました。
この事業では、2026年5月からテクノネットワーク社が連結対象に加わっています。
テクノネットワーク社は、日医標準レセプトソフト「ORCA」の認定事業所であり、電子カルテや医療情報システムの導入支援を行う会社です。
これにより、くすりの窓口は従来の薬局向けサービスに加えて、医療機関向けの電子カルテ・医療情報システム領域にも展開しやすくなります。
基幹システムの施設保有数は9,743施設まで増加しました。
対象施設は約25万施設、同社シェアは約3.8%とされています。
こちらも、まだシェアは低く、成長余地があります。
8.M&Aは成長ドライバー。ただし、のれんには注意
くすりの窓口は、M&Aを活用しながら事業領域を広げています。
今回の決算では、テクノネットワーク社とケイングが新たに連結範囲に含まれました。
さらに、後発事象として、株式会社blankpadの完全子会社化も決議しています。
blankpadは、パーソナリティ診断とAI分析技術を活用した人材マッチングプラットフォームを展開する会社です。
くすりの窓口は、薬剤師求人転職株式会社も有しているため、薬剤師の採用支援領域でシナジーを狙うものと見られます。
この戦略は面白いです。
薬局業界では、薬剤師不足や採用難が大きな課題です。
医療DX、薬局DX、医薬品流通、人材マッチングまで取り込むことで、薬局経営を幅広く支援する会社へ進化しようとしています。
一方で、M&Aにはリスクもあります。
貸借対照表を見ると、のれんは前期末の8.70億円から、1Q末には11.96億円へ増加しています。
今後は、買収した会社が本当に利益貢献しているか、既存顧客へのクロスセルが進むかを確認する必要があります。
9.自己株買いもポジティブ
株主還元面では、自己株買いも評価できます。
会社は自己株式取得枠を拡大し、取得上限を40万株、総額8億円としました。
これは、自己株式を除く発行済株式総数の**3.51%**に相当します。
さらに、2026年7月31日までに216,400株、5.24億円を取得済みです。
成長投資を進めながら、自己株買いも行っている点は株主目線で評価できます。
配当予想も年間40円で据え置きです。
10.中期計画も魅力的
中期経営計画では、2030年3月期に、
ストック売上高200億円
営業利益50億円以上
を目指しています。
現在の2027年3月期通期予想は、売上高144億円、営業利益31億円です。
ここから2030年3月期に営業利益50億円以上を目指すということは、まだ利益成長余地があるということです。
また、顧客基盤については、2030年3月期末までに10万施設を目指しています。
現在の顧客基盤は55,253施設です。
この計画が実現できれば、くすりの窓口は今より一段大きな医療DX企業になる可能性があります。
11.今回の決算で、以前の投資仮説はどうなったか
以前の記事で、私はくすりの窓口について、
薬局検索会社ではなく、医療DXプラットフォーム企業として見るべき
と書きました。
今回の決算を見る限り、その投資仮説はかなり前進したと思います。
理由は、以下の通りです。

もちろん、まだ確認すべき点はあります。
M&A効果を除いた実力成長。
みんなのお薬箱事業のストック粗利回復。
厚労省関連の追加リスク。
買収先とのシナジー。
のれんの増加。
これらは今後も確認が必要です。
それでも、今回の決算は、以前の投資仮説を否定するものではありません。
むしろ、投資仮説を補強する決算だったと見ています。
12.投資判断
今回の決算を受けた私の評価は、かなりポジティブです。
売上高、営業利益、ストック粗利がそろって大きく伸びています。
通期進捗も順調です。
厚労省関連の懸念についても、会社は必要な対応を完了し、現時点で事業への顕著な影響は確認されていないと説明しています。
さらに、自己株買いも進んでいます。
一方で、注意点もあります。
今回の増収にはM&A効果と法改正特需が含まれています。
みんなのお薬箱事業のストック粗利は、一時要因があるとはいえ減益です。
また、M&Aによりのれんが増加しているため、今後は買収先の利益貢献を確認する必要があります。
総合すると、私の判断は以下です。

今回の決算で、くすりの窓口は改めて面白い銘柄だと感じました。
短期的には、決算期待をどこまで株価が織り込んでいたかによって、株価は上下する可能性があります。
好決算でも、材料出尽くしで売られることはあります。
しかし、中長期で見ると、今回の決算はかなり良い内容です。
特に重要なのは、
処方箋ネット受付の市場シェアがまだ約2%
薬局店舗シェアは約39.3%
基幹システムのシェアは約3.8%
2030年3月期にストック売上高200億円、営業利益50億円以上を目指している
という点です。
まだ成長余地は残っています。
今回の決算は、以前紹介した投資仮説を確認するうえで、非常に心強い内容でした。
今後も、M&A効果を除いた実力成長、みんなのお薬箱事業の回復、厚労省関連リスクの再燃有無を確認しながら、引き続き注目していきたいと思います。
※本記事は、企業が公表した決算資料および決算説明動画をもとにした個人的な分析・見解であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の投資方針・リスク許容度に応じて、ご自身の責任でお願いいたします。

