【小説紹介】尾八原ジュージ『みんなこわい話が大すき』
『よみごさん』が活躍するホラーシリーズの第一弾!
本作は第8回カクヨムWEB小説コンテスト〈ホラー部門〉大賞を受賞した作品です。
『よみごさん』と呼ばれる特殊な霊能者である〈シロさん〉が心霊の引き起こす事件を解明するストーリー。
本作はとにかく様々な魅力を持ったホラー作品に仕上がっているので、その魅力をお伝えしていきたいと思います。
あらすじ
『こわい話』が大嫌いだと語る、小学校四年生の森宮ひかり。彼女は四年二組の女王様的な存在だった椿ありさに学内で迫害されることに。
そんなひかりには『ナイナイ』とという名前の秘密の友達がいた。押入れの中に住んでおり、お化けの一種ではないかと思われる。
そんなナイナイとひかりのいる家にありさがやってきたことで、事態は一変することに。ナイナイは姿を消し、以後ありさは何かとひかりの親友として振る舞うようになっていき……
数年後。『シロさん事務所』という霊能者事務所の所長である志朗貞明のもとに相談者が現れる。
神谷実咲と名乗る女性は、姉の晴香と甥の翔馬が心中する事件を起こしたこと、その裏には森宮歌枝という女の呪いが関与しているのではないかと疑っていることを話す。
そして歌枝は晴香の夫である工藤昌行の先妻であると説明する。
話を聞いてすぐに、志朗はその件が自分の手に負える問題ではないと依頼を断ることになり……
登場人物
志朗貞明
『シロさん事務所』の所長。『よみご』という厄落としを生業とする霊能者。『よみご』は志朗の故郷における霊能者の呼び名であり、よみごになる人間は代々目が見えなかったとされている。
黒木省吾
『シロさん事務所』の所員。身長190センチ、体重108キロの巨漢だが臆病な性格。
加賀美春英
志朗の霊能者仲間で、霊的な問題で悩む人間に志朗を紹介するなどをしている。
神谷実咲
志朗の事務所を訪れた女性。姉の晴香と甥の翔馬が心中した件で相談に現れ、二人の死の原因は森宮歌枝の呪いが原因ではないかと疑っている。
森宮ひかり
藤見が丘中学に通う女子生徒。母子家庭で、母である森宮歌枝と二人で暮らしていた。
小学校四年の時にクラスの女王様的な存在だった椿ありさに目を付けられ、いじめに遭うようになる。
しかし、家にいる『お化け』のナイナイを紹介するとして家に招いた後、椿ありさは人が変わったようになる。
椿ありさ
ひかりの同級生。西小の四年二組では女王様的な存在だったが、「怖くないお化けがいる」という話を聞いて『ナイナイ』を見に行くことになった後、なぜか人が変わったようにひかりを慕うようになってしまう。
森宮歌枝
ひかりの母。そして志朗の師匠である森宮詠一郎の娘。交通事故の影響で左腕を失っている。
ナイナイ
ひかりの家の押し入れに住んでいた存在。『お化け』と思われるが正体不明。
本書の魅力
構成が絶妙
小学生だった森宮ひかりとナイナイの物語から始まり、数年後に霊現象の相談を受ける〈シロさん〉こと志朗のパートへ、その後は図書委員としてひかりと知り合うことになる高田瑞希の物語になるなど、複数の視点を通して一個の物語を紡ぎ出していく構成が絶妙。
森宮ひかりが語る『お母さん』、神谷実咲が語る『義兄の先妻』、シロさんの語る『師匠の娘さん』などのキーワードが一つに結び付き、絡み合った人間関係が見えていく展開はパズルのようで面白い。
霊的な世界観の設定が独特で面白い
『よみごさん』と呼ばれる霊能者の設定が独特で、『代々目が見えない人間であること』などが提示される。シロさんも『とある事故』によって視力を失うことになり、その果てで師匠と出会って霊能者になっていった過程などが描かれるパートも。
そうしたシロさんが霊能者となるに至った過去エピソードがまた数奇な感じでぐいぐい読まされる。
同じく『きょう』と呼ばれる作中の霊現象。それらが一種の呪いのように機能し、祓うためにはどんな条件を踏む必要があるか。
単なる強い霊能者が悪霊を祓うような展開にならず、作中のルールに従ってシロさんが策を講じ、更には呪いの内情を探るようになっていく展開が読者をとにかく惹き込んでくれます。
シロさんの個性の強さ
霊能者なのだけれど、『目が見えないのでいつも杖をついている』、『三十代くらいなのだけれど白髪頭』、その上で『女性にだらしない』という性質を持っており、かつては霊能者の『師匠』の娘さんに手を出してしまった過去などもある、という。
そんな霊能者サイドのキャラの濃さ。そしてひかり・ありさ・ナイナイら少女や怪異たちを巡る怪奇なドラマなど、魅力的なポイントが多数存在する。
とにかく褒めるところがいっぱいある作品
パズルのように読み解けていく人間関係と物語の全体像。よみごさんたち霊能者の世界の設定。ナイナイとひかりのドラマ。
色々な魅力の詰まった作品で、セールスポイントはどこか一つ選べと言われたら迷ってしまう。
そんな様々な個性と魅力が凝縮され、一個に紡ぎあげられたホラー作品。少女たちが学校内で味わう閉塞感だったり、霊能者の数奇な物語だったり、霊と対抗するための戦いだったり、少女と〈おばけ〉の友情だったり、ナイナイの正体に迫るミステリー展開だったり、読み応えたっぷりの一作です。
