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意外性のある言い切りで引きが強く、「現場でしか書けない視点」が一行で伝わるため

葬儀の値段は「悲しみが深いほど」上がる 元葬儀屋が見積もりの席で見てきたこと

葬儀の値段は、悲しみが深いほど、上がりやすい。

15年この仕事をしていて、私はずっと、そう感じていた。

亡くなったばかりの家族が、見積もりの紙を前にして、ペンを握る。その手が、少し震えている。

ついさっきまで、病院で泣いていた人が、数時間後には、金額の並んだ紙とにらめっこをしている。

考えてみれば、これはずいぶん酷な話だ。いちばん冷静でいられないときに、いちばん大きな買い物をする。

「いちばん良いもので、お願いします」。そう言う人が、思っているよりずっと多かった。

私は地方の葬儀社で働いていた。式の進行も、遺族対応も、見積もりの席にも、何度も立ち合った。

正直に言うと、私はその見積もりの席が、いちばん苦手だった。

そこで気づいたことがある。人はお金の話を、深い悲しみの中では、うまく考えられない。

たとえば、棺。いちばん安いものから、何十万円もするものまである。

「お父さんに、安い棺は申し訳ない」。そう言って、家族は上のものを選ぶ。

花も、料理も、返礼品も、同じように、少しずつ積み上がっていく。

最初に聞いた金額と、最後の請求が、ずいぶん変わることもあった。

しかも、表に出にくい費用がある。

ご遺体を運ぶ車。安置する場所の料金。ドライアイス。式場を使う料金。

こうしたものは、最初の案内には小さくしか書かれていないことが多い。

家族はプランの大きな数字ばかり見て、こうした費用の存在に、あとから気づく。

それから、もう一つ。葬儀は、待ってくれない。

亡くなったその日のうちに、いくつもの決断を迫られる。

ゆっくり比べる時間も、他の会社に相談する余裕も、ほとんどない。

その「時間のなさ」も、金額が上がる理由の一つだった、と私は思っている。

悲しみと、罪悪感と、見栄。その三つが重なって、財布のひもは、ゆるくなっていく。

そして、こうも思う。葬儀社も、商売なのだ。

高いものを選んでもらえれば、売り上げは上がる。それは、隠しようのない事実だ。

良心的な担当者もいれば、そうでない人もいた。同じ会社の中でも、人によって、ずいぶん違った。

だから、いちばん安いプランは、こちらから聞かないと、わざわざ説明されないこともあった。

別に、だましているわけではない。ただ、聞かれなければ、上から順にすすめる。それだけのことだ。

でも、悲しみの中にいる家族に、「それは聞かなかったあなたが悪い」とは、私には言えなかった。

だからせめて、私は、聞かれる前に安いほうも並べて見せるようにしていた。

それで売り上げが落ちると、上の人にいい顔はされなかった。けれど、後悔だけはしたくなかった。

葬儀が終わったあと、請求書を見て青ざめる家族を、何度も見てきたからだ。

あるとき、こんなことがあった。

ご主人を亡くした奥さんと、その娘さんが、見積もりの席に座っていた。

奥さんは、気が動転していて、すべて「いちばん良いもので」と言い続けていた。

すると、隣にいた娘さんが、震える声で、こう言った。

「お父さんは、派手なことが嫌いな人でした。だから、いちばん質素でいいんです」。

その一言で、席の空気が、すっと変わった。

見栄ではなく、故人を思って選ぶ。家族の顔つきが、そこから落ち着いていった。

私はそのとき、これでいいんだ、と心から思った。

高いお金をかけることが、愛情の証ではない。

故人が何を望んでいたか。それを家族が知っていることのほうが、ずっと大事だった。

お金の話をするのは、不謹慎ではない。むしろ、元気なうちに、少し話しておくほうがいい。

最近は、元気なうちに葬儀社へ相談に行く人も増えた。

事前に話を聞いておくと、いざというとき、慌てて高いものを選ばずに済む。

何にいくらかかるのかを、落ち着いた頭で一度知っておく。それだけで、ずいぶん違う。

縁起でもない、と思う人もいるだろう。気持ちはよくわかる。

でも、その「縁起でもない話」を避けたせいで、あとから苦しむ家族を、私はたくさん見てきた。

「自分のときは、こうしてほしい」。たった一言、家族に伝えておくだけでいい。

それだけで、残された人は、迷わずに済む。お金で悩まずに、見送りに集中できる。

あの娘さんのように、故人の人柄を一言知っているだけで、家族は迷わなくなる。

派手にしてほしいなら、それでいい。質素がいいなら、それもいい。

大事なのは、金額そのものではなく、家族が納得して選べることだ。

あなたは、自分の葬儀に、どれくらいのことを望むだろうか。

立派さだろうか。それとも、静けさだろうか。

正解はない。ただ、一度、考えてみてほしい。

その思いを家族に伝えておくことは、きっと、残される人への、やさしさになる。

もしこういう話に興味があれば、またここに書きます。

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