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言語化ブーム?草間彌生を発見した男は、なぜ絵を描き始めたのか?

書くこと、好きですか?

東京・京橋のアーティゾン美術館で開催中の「瀧口修造 書くことと描くこと」展を見ました(〜2026/10/4)。

…6月にね。
書くの、おそ。2ヶ月経ってしまった。

でもその理由は以下です。

「書く人」がある日、書くのをやめた

瀧口は1950年代、美術批評を書きまくっていました。
画廊の作家選定まで手がける、いわば「言葉で美術界を動かす人」。

その人が1960年頃から評論の筆を控え、代わりに絵を描き始めます。

「批評家から表現者への昇華」みたいに美談としても捉えることができますが、もっと身も蓋もない読み方をしてみたい。

一番ことばで美術を語れる人間が、「言葉では届かない」と認めたのかなと。
これって、言語の敗北宣言じゃないでしょうか。

「言語化しろ」と言われ続ける私たちへ

このSNSやAIの時代、「言語化」が正義って雰囲気があります。

でも考えてみてください。
もし言葉が本当に万能なら、言語のプロ・瀧口は批評を書き続けていたはず。なのに彼は、それを脇に置いて、違う表現方法を選びました。
60年以上前ではありますが。

これは「言語化できる人だけが、言語化を手放す権利を得る」という、ちょっと残酷な構造もあるかもしれません。

評する側から、評される側へ

展覧会の会場には、瀧口が「デッサン」と呼んだ造形作品が並んでいます。技法は一つに定まらず、実験が繰り返されています。

長年、他人の作品を読み解き、言葉に変換することを生業にしてきた人が最後に選んだのは、

「書く」ことから「描く」ことへ、表現方法の変化というだけなのか?
あるいは「評する側」から「評される側」へ、立場を入れ替えたかったのか?

展覧会にある草間彌生の作品

ちょっと話は違いますが、「言語化」についての本を書くって難しそう。
だって、その本自体の言語化力を問われますからね。

昔、「集客講座」へ行ったら受講者が5人くらいしかいなくてドン引きしたことあります。

さらに言えば、「言語化」本の読者は、アマゾンレビューを書きにくそうですね。
その本でどれだけ言語化を学んだのか、レビュー文で発揮しなきゃいけないから。

瀧口は評される側へまわる覚悟を見せたのかな。

無理に言語化しなくていい…のか?

ここまで書いてきてなんとなく
「無理に言語化しなくて良いじゃないか」
「言語化は万能じゃないよね」
という無難な?結論へ向かう気もしたのですが、

この記事自体、瀧口とは逆に、展覧会の感想を一生懸命に言葉にしています。皮肉な話です。

私は今も、「表現すること」そして「伝える力」は必要で、重要であると考えます。
ただ、それが「書く」の場合もあれば「描く」の場合もあるかなと。

分かりやすいところでいえば、ビジネスシーンなどでは図解すれば一瞬で分かることを、ダラダラと言葉で説明する必要はないのです。

「言語化」が重要というより、「表現すること」「伝わること」が重要であると感じます。

ちなみに、チームラボ代表・猪子さんはこう言ってます。

「言葉でしか良さを説明できないものはウンコ」

"非言語"が生む新しい価値とは?

「言語化」じゃなく「記号化」になっていないか?

現代の「言語化」の多くは、「分からないものを、分かった気にするための整理整頓」として機能しがちです。

短くまとめられたニュースを読み、SNSの短いキーワードやショート動画で何やら盛り上がってるネタを知り、長文やAIに要約させて内容を把握し、身近な人とのやり取りもLINEなどの短いやり取りで済ませる。

瀧口ならもしかしたら、こう問いかけるかもしれません。

「君たちが『言語化』と呼んでいるものは、言葉によって対象を開くことではなく、ラベルを貼って閉じ込めてしまう『記号化』ではないのか?」

記号化は便利です。一瞬でそれが何なのか把握できるから。

けど未知のものに出会ったときの興奮や感動、恐怖や不快感、あるいはそれらの「あわい」こそが人間の思考の豊かさであるのに、

それを性急に「映え」「ヤバい」「萌え」「推し」など既存の語彙を当てて終わらせてしまう風潮には、言語化を手放した瀧口でさえ、寂しさを覚えるかもしれないなと。

「分からないこと」「白黒つけないこと」のおもしろさ

いろいろ書きましたが、うまく着地できそうにありません。
言語化力「不足」かも。

瀧口の展覧会について「書くこと」はとても難しい。
書いたり、削除したり、の繰り返しで、なかなか投稿できません。

しかし、ああでもないこうでもないとMacBookの上で指と頭を動かしまくるこの時間も、展覧会の鑑賞体験の続きであると感じられます。

こうして考えるキッカケとなるアート展は、価値があると思うのです。

…って、ここまで書いた全ては、2ヶ月も経ってようやくnoteを書いた言い訳かもしれません。

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