NIKKOR 58mm f/1.4G|あるいは高性能レンズは何を失ってしまったのか
あまり大きな声では言えませんが、僕は「レンズの違い」がよく分かりません。
特に数年前までは旅行用のズームレンズばかり使っており、友人にGMレンズを借りて使ってみても違いがよく分からないという審美眼の無さ。
そんな僕が初めて「このレンズはなんか違う」と感じたのが、2013年発売のニコンFマウント用レンズ「AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G」です。

58mm f/1.4Gの魔法
百聞は一見に如かずなので何枚か作例を。全てフィルム撮影です。




開放で撮った、このレンズらしい雰囲気の写真を選んでみました。
なんとなく普通のレンズとは違う描写だと感じませんか?
三次元ハイファイの謎
そもそも「NIKKOR 58mm f/1.4G」は他のレンズとは少し違った思想で造られたレンズです。
デジタルカメラの普及以降、収差や解像度などを極限まで磨き上げた「数値的に正しいレンズ」を良しとする風潮が広がったと思います。
そんな中、既存の性能評価では表しきれない「何か」を追求しよう、という理念のもと始まったのが「三次元ハイファイ」というコンセプト。
Nikonの公式サイトに詳しい理念が書かれていますが、その「何か」が具体的にどんなものなのかはイマイチ分かりません。笑
既存のラインナップよりも大幅に価格が高いくせに、一般的な性能スコアは低いというよく分からないレンズだったのですが、要は「現代のレンズが失ってしまった雰囲気がAFで撮れる」というざっくりした理解で良いかと。
特徴
冒頭にも述べたように、僕はレンズのことがよく分からないので、ここからは非常に抽象的な話になります。ニュアンスだけ伝わればと。
僕なりの理解ですが、このレンズの特徴は3つ。
1.動くボケ
注目してほしいのはこのボケ味。

迫力があるというか、絵の具を筆でかき混ぜたような背景の溶け方。
普通のF1.4のレンズで撮影した写真にもうひと手間フィルターをかけたような質感です。


2.開放でのふんわりとした描写
最近のレンズのレビューは「開放からキレのある描写」という文言がお決まりですが、このレンズは開放では非常に柔らかい、含みのある描写です。


ピントが合っている場所でも写りすぎていないというか。特に人の肌なんかでは重宝しそう。

3.ハイライトの滲み
これに関してはフィルム自体の特性もありますが、ハイライトは光が膨らんだような、薄いソフトフィルターのような質感になります。


マイナスポイント
このレンズは好き嫌いがはっきりと分かれるレンズだと思います。
いつも100点を出してくれると言うより、基本80点だけど時々150点の写真が撮れる、というレンズです。
まず、AFは元々使っていた「50mm F1.4G」と比べて迷うことが多く、外す確率も上がりました。
全く的外れな所に合ってしまう事もあれば・・・

よく見ると若干ズレてるパターンも。(これが一番多い)

また開放での独特な描写が逆にノイズになってしまう事も多いです。締まりのない、だらしない写真といいますか。フリンジもかなり出ます。


基本はF2.0位で使用し、ここぞというタイミングを見極めて開放を使う必要があります。
まとめ
正確さや安定感だけを求めるなら、このレンズを選ぶ必要はないと思います。もっと軽く、安く、よく写るレンズはいくらでもあります。
それでも僕が58mm f/1.4Gを持ち出すのは、ときどき自分が撮ったとは思えない写真を返してくれるからです。
今後カメラやレンズの技術がどんな風に進化していくのか、僕には当然分かりません。僕たちの予想もつかないような確変が起きるかもしれません。
でも、僕の中で、この「58mm f/1.4G」はカメラ技術のある種のベンチマークなのではないかという気がしてならないのです。
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