【SCM基礎】調達④ 開発購買
こんにちは!サプライチェーン・マニアの瀬崎健です!
このシリーズでは、サプライチェーンの基礎を、なぜか時々バスケットボールになぞらえて解説しています。
前回は「見積もり・コスト構造」でした。
今回は「開発購買」。
「開発購買」なんて聞くと、なんだか難しそうですが、バスケで言えば「中学生の時からドラフトを狙ってスカウトする」ようなもの。
「この選手、将来うちのチームで活躍してほしい」と、成長段階(製品の設計段階)から声をかけ、一緒にトレーニングメニューを考え、アドバイスを送る。
そんな調達の真骨頂について解説していきます!
開発購買のメリット。上流工程が握る鍵
なぜ、製品が出来上がる前の「上流工程」にわざわざ首を突っ込むのでしょうか?
それは、「試合が始まってから(量産開始後)では、作戦変更がめちゃくちゃ難しいから」です。
想像してみてください。試合の第4クォーター残り3分、点差は10点。ここで「やっぱり身長2メートルのセンターを補強しておけばよかった!」と叫んでも、ベンチにいない選手は出せませんよね。
モノづくりも全く同じです。
実は、製品のコストの約80%は、設計段階で決まってしまいます。
図面が完成し、工場での量産が始まった後に、調達が「この材料、もっと安いのに変えてよ」と設計者に泣きついても、もう遅いよ!と言われておしまいです。
そこで、設計の段階から調達が入り込み、自分たちが買いたい品質・コスト・納期のものを摺合せを行うのです。
また、開発購買をしないと、他社との差別化ができません。
既製品のカタログから選ぶだけの調達だと、ライバルチームと同じスペックの選手しか揃いません。そうなれば、最後は「体力勝負(価格競争)」という泥沼にハマります。
設計段階からサプライヤーと協力して「オリジナルの武器」を作り込むことで、圧倒的なコスト競争力と独自性を持つチームが出来上がるのです。
まさに、勝つための「究極のチームビルディング」ですね。
開発購買のデメリット。仕様書発注でリスクコントロール
いいこと尽くめに見える開発購買ですが、実は「甘い誘惑には毒がある」のと同じで、落とし穴も存在します。
まず一つ目のリスクは、特定のサプライヤーと深く関わりすぎることで、「その人(会社)がいないと試合ができない」状態、つまりサプライヤーへの依存状態が発生することです。
これを調達の世界では「サプライヤー・ロックイン」と呼び、交渉力が弱まる原因になります。
二つ目は、「買取責任」の問題です。 自社専用にカスタマイズして作ってもらった部品は、世の中のどこにも売れません。
もし製品が想定通り売れ残ったら、その部品はすべてデッドストック(不良在庫)になり、チームの財布を圧迫します。
これらを防ぐためのディフェンス策が、「仕様書発注」によるリスクコントロールです。
特定のメーカー独自の技術(ブラックボックス)に頼りすぎない 「彼にしか投げられない魔球」を戦術の柱にしないことです。
誰でも作れる「標準的な仕様」を盛り込んでおく たとえAさんが欠場しても、Bさんが代わりに出られるような「プレースタイル(図面)」を担保しておきます。
責任の所在をハッキリさせる 「ここまではうちが保証する、ここからは君が頑張る」という境界線を、契約段階で明確にしておくのです。
「君にしかできない華やかなプレー」も魅力的ですが、監督(マネジャー)としては「誰がコートに入ってもシステムが機能する」という安定感も、同じくらい大切なのです。
開発購買の副次的効果。情報戦を制す
開発購買を続けていると、スカウト(調達)の手元には、「生きた情報」が集まってくるようになります。これがまた、隠れたボーナスポイントなんです。
サプライヤーと一緒に開発を深めることは、いわば相手のチームの作戦会議に混ぜてもらうようなもの。
「実は今、世界的にこういうセットプレーが人気ですよ」 「ライバルチームは、あんな選手に目をつけていますよ」 といった、カタログやニュースには載らない、コート外の情報戦で優位に立てるのです。
また、「ライバルにはどんな選手(部品)が行ったのか」という動向が分かるのも大きな利点です。敵の戦力を知れば、こちらはそれを封じ込めるカウンター戦術を練ることができます。
まとめ
開発購買は、単に安く買うための手段ではありません。 「どんなチームで、どんな勝ち方をしたいか」を、モノづくりの根っこから支える戦略的な活動です。
設計者(エンジニア)とスカウト(調達)がタッグを組めば、最強の布陣でシーズンに挑めるはずですよ!
さて、調達編もいよいよ後半戦に入ります。 どれだけ良い選手を揃えても、突然の怪我やトラブルは避けられません。
次回の中テーマは「リスクマネジメント」です。 「もしもの時」に備える、鉄壁のディレンス陣の作り方を解説します!
お楽しみに!
