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運動を始める前に知ってほしい、ケガをしないための準備|元スポーツ用品店長より

「健康のために運動を始めたい」。そう思い立って、ランニングやジム通い、宅トレを始める方は、一年を通してたくさんいらっしゃいます。とても素敵なことです。

ところが、せっかく始めたのに、早々にケガをして続かなくなってしまう。そんな残念なケースも、売り場では数えきれないほど見てきました。

20年以上スポーツ用品店に立ってきた経験から言えるのは、運動を始めたばかりの時期こそ、ケガに気をつけてほしいということです。最初でつまずかなければ、運動はぐっと続けやすくなります。

ケガをして痛い思いをすると、運動そのものが嫌になってしまいます。「やっぱり自分には向いていなかった」とやめてしまう方を、これまで何人も見てきました。本当はあと少し気をつけるだけで防げたケガも多く、そのたびにもったいないなと感じていました。

だからこそ、始める前にほんの少し知識を持っておくことが、その後の運動人生を大きく左右すると思っています。

この記事では、これから体を動かそうとしているあなたに向けて、ケガをせず長く続けるための準備と心がけを、元店長の目線でお伝えします。難しいことではなく、知っているかどうかで差がつくポイントばかりです。


なぜ、始めたばかりの人はケガをしやすいのか

まず知っておいてほしいのが、運動初心者がケガをしやすい理由です。

いちばん多いのが、張り切りすぎです。久しぶりに体を動かすと、気持ちは若い頃のままでも、体は思った以上に動きません。なのに最初から飛ばしてしまい、筋肉や関節が悲鳴をあげる。これが、始めたての方に本当に多いパターンです。

「早く成果を出したい」という気持ちは、よく分かります。ですが、体が運動に慣れるには、ある程度の時間が必要です。最初の数週間は、物足りないくらいで止めておくのが、結果的に長続きの秘訣だと、私はいつもお伝えしています。

運動から長く離れていた方ほど、慎重に始めてほしいと思います。焦らず、体を慣らしていく期間だと考えてください。

もう一つ多いのが、フォームが整わないまま負荷をかけてしまうケースです。正しい動きを覚える前に重さや回数を増やすと、体の一部分にだけ負担が集中して、痛めてしまいます。最初は鏡で自分の動きを確認したり、動画で正しいフォームを学んだりしながら、ていねいに体に覚えさせるのがおすすめです。

それから、年齢とともに筋肉や関節の柔らかさは少しずつ変わっていきます。昔やっていたから大丈夫、と過信せず、今の自分の体と向き合って始めることが、何より大切だと感じています。

ウォーミングアップとクールダウンを省かない

ケガ予防でいちばん大切なのに、いちばん省かれがちなのが、準備運動と整理運動です。

冷えて固まったままの筋肉を急に動かすと、肉離れや関節の痛みにつながりやすくなります。運動の前には、軽く体を動かして筋肉を温め、関節をほぐしておくことが大切です。

ご相談に来られるお客様にも、「運動の前後、ちゃんと体をほぐしていますか」とよくお尋ねします。多くの方が、本番の運動だけして、前後のケアをしていないのですね。時間がないと、つい飛ばしたくなる気持ちも分かりますが、ここを省くとケガのリスクがぐっと上がってしまいます。

運動のあとのクールダウンも同じくらい大切です。使った筋肉をゆっくり伸ばしてあげると、疲れの残り方が変わり、翌日のだるさも軽くなります。たった数分のことですが、この習慣があるかないかで、ケガのリスクは大きく変わります。

準備運動は、ただ伸ばすだけでなく、これから使う動きに近い軽い動作で体を温めるのが効果的だそうです。たとえばウォーキングの前なら、その場で軽く足踏みをして関節を動かしてから歩き出す、といった具合です。寒い季節や朝の運動では、特に念入りに行ってほしいところです。

元同僚で運動指導の経験がある人間も、「ケガをする人の多くは、準備運動を軽く見ている」と言っていました。地味で面倒に感じる部分こそ、実はいちばん効いているのですね。

自分の体に合った負荷から始める

運動の強さや量も、最初が肝心です。

メーカーの担当者の方とお話ししても、「初心者向けの道具は、軽い負荷から無理なく始められるように作られている」とおっしゃいます。道具選びの段階から、自分のレベルに合ったものを選ぶことが、ケガ予防につながるのです。

たとえば筋トレなら、いきなり重い負荷ではなく、正しいフォームを保てる軽さから。ランニングなら、長い距離をいきなり走らず、歩くことを混ぜながら少しずつ。体が「もっとできそう」と感じるくらいで止めておくのが、ちょうどいい塩梅です。最初の一か月は土台づくりの期間と割り切ると、気持ちも楽になります。

痛みや強い疲れを感じたら、その日は無理をしない。これも大切な判断です。頑張ることと無理をすることは違う、と覚えておいてください。

回数や重さを増やすときも、一気にではなく、少しずつが鉄則です。体が慣れてきたと感じても、増やすのは前回の一割ほどにとどめるくらいが安全だといわれます。急に負荷を上げた翌週に痛みを訴えて来店される方は、本当に多いのです。

「物足りないくらいでやめておく」。最初のうちは、これを合言葉にしてほしいと思います。余力を残して終えると、翌日も気持ちよく取り組めて、自然と続いていきます。

こんなサインが出たら、立ち止まってほしい

運動を続けるうえで、体が出す危険信号を知っておくことも大切です。次のようなサインが出たら、いったん立ち止まってください。

一つは、運動した部分の痛みが、休んでも引かないときです。筋肉痛のような心地よい張りとは違い、特定の関節や一点がズキズキ痛む場合は、無理に続けないでください。

もう一つは、同じ場所が繰り返し痛むときです。これはフォームや道具、負荷のかけ方に原因があることが多く、放っておくと慢性的な不調につながりかねません。

そして、めまいや息苦しさなど、いつもと違う体調の変化を感じたときも、すぐに運動を中止してください。これらは、道具や心がけだけで解決できる問題ではありません。気になる症状が続くときは、自己判断せず、整形外科や内科など専門家に相談することを強くおすすめします。

足元と床を整える

意外と見落とされがちですが、足元の環境もケガ予防には欠かせません。

運動に合った靴を選ぶことは、足や膝への負担を大きく減らします。普段履きのスニーカーで走ると、クッション性が足りずに膝を痛めることもあります。何をするかに合った一足を選んでほしいところです。靴底がすり減った古い靴も、クッションやグリップが落ちているので、運動用には新しいものをおすすめします。足に合わない靴は、靴ずれだけでなく、フォームの崩れやケガにもつながります。

宅トレやヨガを床で行う場合は、トレーニングマットを敷くことを強くおすすめします。硬い床に直接座ったり寝転んだりすると、膝や腰、背骨に負担がかかります。適度な厚みのマットが一枚あるだけで、体の痛みも、階下への音も、ぐっと軽くなります。フローリングでの腹筋や腕立て伏せで、尾てい骨や肘を痛めて来店される方も少なくありません。

床が滑りやすいと、それ自体がケガのもとです。安定して動ける足元を整えることは、安全に運動を続けるための土台になります。

シューズは、サイズだけでなく、用途に合っているかも見てほしいポイントです。ランニング用、ウォーキング用、屋内トレーニング用では、底の作りもクッション性も違います。何にでも一足で済ませようとすると、どこかに無理が出ます。店頭では、何をされたいかをうかがってからおすすめするようにしていました。

マットも、薄すぎると床の硬さが伝わってしまい、厚すぎると今度は不安定になります。行う運動に合った厚みを選ぶことが、快適さとケガ予防の両立につながります。このあたりは、後ほどご紹介する記事で詳しく触れています。

関節を守り、痛みのサインを見逃さない

体を動かすと、どうしても負担がかかりやすい場所があります。特に膝は、ランニングでもスクワットでも酷使されやすい関節です。

膝に不安のある方や、負担の大きい運動をする方は、サポーターを上手に活用するのも一つの手です。サポーターは関節を支え、安心して動ける助けになります。ただし、サポーターはあくまで補助であって、痛みを治すものではありません。

ここで大切なお願いです。運動中や運動後に痛みが続く場合は、決して我慢しないでください。「そのうち治る」と運動を続けて、悪化させてしまう方を何人も見てきました。痛みは体からのサインです。続く痛みや違和感があれば、整形外科など専門家に相談してください。

道具やサポーターはケガの予防を助けてくれますが、すでにある痛みを判断するのは専門家の仕事です。そこは、はっきり線を引いておきましょう。

サポーターを使う場合も、締めつけすぎないことが大切です。きつく締めれば効くというものではなく、血流を妨げてしまうとかえって逆効果になります。適度に支えてくれる、自分に合ったサイズと強さのものを選んでください。これも、用途やお悩みをうかがいながら選ぶのがいちばんです。

膝のほかにも、腰や足首、肩など、運動によって負担のかかる場所は変わります。自分がどこに不安を感じやすいかを知っておくと、予防の道具選びもしやすくなります。

ケガなく、長く続けるために

最後に、運動を長く楽しむための心がけをお伝えします。

いちばんは、休む日をつくることです。毎日頑張りすぎると、体が回復する間もなく疲れがたまり、ケガにつながります。運動と休養はセットだと考えてください。

そして、体調が悪い日や、強い疲れを感じる日は、思いきって休む勇気も大切です。続けることは大事ですが、無理をして体を壊しては元も子もありません。休むこともトレーニングの一部だと考えると、罪悪感なく体をいたわれます。

もう一つ大切なのが、頑張りすぎない目標を立てることです。「毎日1時間」のような高いハードルは、達成できない日が続くと、それ自体がストレスになります。「週に2回、30分でも体を動かせたら上出来」くらいの、ゆるい目標から始めるほうが、長続きします。

SNSのDMでも、「どうすれば運動が続きますか」というご相談をよくいただきます。そのたびにお伝えするのは、ケガをしないことが、続けるための最大のコツだということです。痛い思いをすれば、誰だって嫌になってしまいますからね。

体を動かすことが楽しいと感じられれば、運動は自然と生活の一部になります。そのためにも、最初にケガをしない準備を整えておくことが、遠回りのようでいちばんの近道なのです。

まとめ:最初の慎重さが、楽しい運動習慣をつくる

運動を始めるときに大切なのは、張り切りすぎないこと。準備運動と整理運動を省かず、自分に合った負荷から始め、足元と床を整える。関節は道具で守りつつ、痛みのサインは見逃さない。そして、しっかり休む。

どれも特別なことではありませんが、知っているかどうかで、ケガのリスクは大きく変わります。最初の慎重さが、その後の楽しい運動習慣をつくってくれます。

運動は、本来とても気持ちのいいものです。体が軽くなり、気分も前向きになり、毎日に張りが出ます。その楽しさを長く味わうためにも、どうか最初の一歩を、ていねいに踏み出してください。急がば回れ、という言葉のとおりです。

あなたの新しい挑戦が、ケガなく、長く続きますように。準備や道具で迷ったときは、遠慮なくお店のスタッフを頼ってくださいね。

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ケガ予防に役立つ道具の具体的な選び方は、こちらの記事も参考にどうぞ。

膝を守りたい人へ。膝サポーターのタイプ別の選び方

床トレ・ヨガの土台に。ヨガマットの厚みと選び方


筆者のプロフィール

元大手スポーツ用品店マネージャー・佐伯
20年以上にわたり、大手スポーツ用品店にて販売員からエリアマネージャーまでを歴任。数千種類以上のギアに触れ、初心者からプロアスリートまで、延べ10万人以上のお客様の道具選びをサポートしてきた経験を持つ。現場で培った豊富な知識と確かな目利きで、あなたのスポーツライフを格段に向上させる逸品を厳選します。


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