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【ショートショート】 失恋は土の中

ぼくは愛ちゃんにふられて、土の中にもぐりはじめた。

友だちのモグタが作ったドリル船にのって、ドンドンもぐっていく。

モグタは家でかっている動物のモグラだ。
でも、しゃべることができる。

「ショウちゃん、元気だして」
「わかっている」
「あと、1時間ぐらいかな」
「そんなにかかるの?」
「だって、誰にもわからない所に捨てるんでしょ」
「そうだよ」

僕は、"しつれん"と書かれたランドセルを背負ったままだった。
モグタはドリル船をうんてんしながら「ねえ」と不思議そうに顔をむけた。

「しつれん、ってなに?」
「しつれんかあ、それは、初恋、に敗れたときにできるんだ」
「はつこい? わかんないよ」

モグタはまだ2歳なので何もわからない。
答えるのをやめた。
そう思いながら、ぼくもお姉ちゃんからさっき聞いた言葉だった。

「それで、どこまでもぐるの?」
地のそこだよ。そこなら大人だって掘れないよ」
「すごいね」
「でも、ランドセル捨てたら困らない?」
「困るよ。でも、しつれんがあると悲しくなるんだ。胸がぎゅうっとなって」
「じゃあ、しつれんなんか、もらわなかったらいいのに」
「うまく言えない。いつか経験するよ」
「やだ。やだ。やーだ」

モグタは、大きく首をふって顔をしわくちゃにした。
ぼくは「行こう!」とモグタのぽんと背中をたたいた。

ドリル船は、ガーガー音を立てて、いさましく土の中をもぐり続けた。

「あれ? どうしたんだ?」

急に、土をくだく音が消え、静かになった。
船が水に浮くようにゆらゆらと揺れはじめた。

モグタがむずかしい顔をしながら、ドリル船の中のモニターをみた。
ドリルがから回りしている。

「なんだか粘土みたいな場所になったよ」

急にドリル船は沈みはじめた。

「モグタ、沈んでいくよ。これでいいの?」
「ちがう、ちがう。地のそこは、地図ではまだ向こうのほうだ」
「じゃあ、どうなってるんだ?」
「たぶん、マグマにむかっている。とけるよ」
「ええ?」
「どうすればいいんだ?」

モグタは、ドリル船のコンピューターにたずねた。

ーー 乗組員ノ重量オーバーデス。荷物ヲ捨テテ軽クシテクダサイ ーー

「ショウちゃん。ランドセルを捨てないと!」
「ここで捨てたら失恋を誰にも知られない?」
「わからない。でも、死んじゃうよ」
「どうしよう。どうしよう」
「ショウちゃん。急いで!」
「わかった」

ぼくは、ドリル船の砲台に"しつれん"と書かれたランドセルをいれた。

バキューン

ものすごい音がして、しつれんランドセルは粘土の中にズボッと音をたててめりこんだ。

「うわあ、どうしたんだあ!」

すごい勢いで、ドリル船が浮きはじめた。まるで風船が空に上がるように勢いよく。

そして掘った穴を通っていっきに地上まで吹き飛んだ。

モグタは目をまるくして言った。

「しつれんって、そんなに重いの?」

「ぼくもびっくりした。でも、お姉ちゃんが、それを"背負って生きていく"ことなんて重くてくるしいって」

「やだ やだ やだ。しつれん、なんかほしくない!」

「お前、やっぱり子どもだなあ」


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はやか-shirohira  (短編小説) 今後、原爆をテーマに小説を書きます。テーマ的に文学賞からの出版は厳しいと考えてます。出版費用にしたいです。応募よろしくお願いします。