芸術と精神医学(7): 天才?奇人?狂人?芸術家サルバドール・ダリを精神医学的に考察!【後編】
<前編までのあらすじ>
"芸術家は変わり者"という現代のステレオタイプを決定的なものにしたサルバドール・ダリについて精神医学的に解説いたします。
前編ではダリの生い立ちと生涯、奇行、精神病理についてご紹介いたしました。
後編ではいよいよサルバドール・ダリの精神医学的診断について触れたいと思います!
【サルバドール・ダリの精神医学的診断諸説】
ダリの奇抜な作品や狂気じみた振る舞いを「計算」「演出」とみなす評論家も多いようです。
たしかに、サービス精神旺盛ともいえる過激かつ奔放なパフォーマンスの数々は、彼を当時の前衛美術の「アイコン」に祭り上げました。
しかし、彼の芸術や言動の背後に"病理"を見出し、ダリを精神医学的に診断しようとする者たちが現れました。
「異形の作品、了解不能な奇行は、狂気の所産ではなかろうか…?」
こうした風評が彼の名声とともに広まり、遂には精神医学や心理学の領域において、ダリは"研究対象"となったのです。
この章では、彼の精神医学的診断に関するさまざまな論考をひもとき、ダリをめぐる精神医学的諸説を整理していきましょう。
↓ダリのポストカードセット、正直言って欲しいです。
<1.パラノイア(妄想性障害)説>

ダリが妄想に苦しんでいたことを示唆するエピソードが数多くあります。
例えばフランスの振付師モーリス・ベジャールがダリを驚かせようと"抜き打ち"でダリを訪ねたところ、ダリは身を震わせ「お前は私を暗殺しに来たのだ!」と叫んだそうです。
また【サルバドール・ダリの奇行】でもご紹介しましたが、彼は飛行機を主に交通手段として利用していましたが、周囲には自分がいつどの飛行機に乗るかは秘密厳守にしていました。
その理由は、「もし自分が乗客であることが知られたら、誰かが飛行機に爆弾を仕掛ける」と思い込んでいたそうです。
ダリは食事に対しても過剰な警戒を見せました。
例えばホテル滞在中に出された全ての食事を運転手に"毒味"させた後に食べていたそうです。
このようにダリは複数の被害妄想を抱いていたため、パラノイア(妄想性障害)説は病跡学の中では支持されている説なのです。
ちなみにダリの作品には"妄想的な顔(Visage paranoïaque:図6)"や"パラノニア(Paranonia, 1935)"など、妄想(パラノイア)と名のつく作品がいくつかあります。
そもそもダリは偏執狂的批判的方法*(Paranoiac Critic)と自ら称する技法を用いていたので、偏執狂(パラノイア)の自覚はあったのかもしれません…。
<2.自己愛性パーソナリティ障害説>

”毎朝目を覚ますと、私は再び最高の喜びを感じます-それはサルバドール・ダリであるという喜びを!”
これはダリの名言の一つですが、この言葉からもわかるようにダリはメチャクチャ自分大好き人間だったのです。
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