「安定したい」の奥にあるもの。
「次は、安定した会社がいいです」
キャリア相談で、よく聞く言葉です。
そんなとき、私は、
「どんな会社が安定していると思いますか?」
と聞くことがあります。
すると、
「潰れなさそうな会社」
「ちゃんと賞与が出る会社」
「やっぱり大企業ですかね」
「正社員で働けるところ」
そんな答えが返ってきます。
どれも分かります。
経営基盤がしっかりしていて、毎月の給料がちゃんと入る。賞与も出る。雇用も守られやすい。
そりゃ、不安定な会社より安心です。
ただ、もう少し話を聞いていると、
「会社が安定していること」と「自分が安定して働けること」は、少し違うのかもしれないな
と思うことがあります。
大手に入れたら、それで安心?
例えば、大手企業に入れたとします。
会社は潰れそうにない。待遇もいい。
でも3年後、まだ子どもが小さい中で、
「県外への転勤をお願いします」
と言われたらどうでしょう。
家族で引っ越すのか。
単身赴任するのか。
配偶者の仕事はどうするのか。
そこで私は、
「会社は安定しているかもしれないですが、こうなると“安定”の意味が少し変わりますよね?」
と話すことがあります。

返ってくるのは、
「確かに」
くらいだったりします。
でも、それでいいと思っています。
「大手に入る。だから安定する」
と考えていたところから、
「自分にとってはどうなんだろう」
と、一歩だけ考えてもらえれば十分です。
今の会社を辞めたい理由と、次の「安定」
例えば、中小企業で営業をしている人。
給料がなかなか上がらない。
オーナー企業でトップダウン。
現場の意見も通りにくい。
いろいろ不満はある。
話を聞いていくと、その中でも特に、
「自分なりに考えて提案しても、全然意見が通らないことがしんどい」
という話が出てきたとします。
でも次の希望を聞くと、
「今度は安定した大手がいいです」
となることがあります。
もちろん、大手だから意見が通らないとは限りません。
ただ、会社が大きくなれば、部署が細かく分かれていたり、意思決定に時間がかかったり、縦割りで動きにくかったりする会社もあります。
今の会社を辞めたい一番の理由が「自分の意見が通らないこと」なら、次の会社では規模だけでなく、
自分で考えて動ける余地があるのか
も見た方がいい。
転職相談をしていると、「会社が潰れないか」「賞与が出るか」といった会社側の安定はよく気にされます。
でも、もう一つ見ておきたいのが、
「自分がまた辞めたくならないか」
です。
今の会社を辞めたい理由が、次の会社でも繰り返されそうなら、会社がどれだけ安定していても、自分にとっては長く働ける場所にならないかもしれません。
「自分にはスキルがないから、大手なら安心」
こんな話もあります。
「自分には特別なスキルがないので、次は大手に入って安心したいです」
これも、すごく分かります。
自分に何ができるのか自信がない。
また転職することになったら怖い。
だから、なるべく大きな会社に入って、もう動かなくていいようにしたい。
でも、もし不安の根っこが、
「この会社を出たら、自分には何が残るんだろう」
なのであれば、大手に入るだけで、その不安が全部なくなるとは限りません。
会社の規模だけでなく、
「そこで何を経験できるのか」
「何ができるようになるのか」
も、本人にとっては安定を考える材料になります。
「安定したい」は、まだ少し大きい
経営基盤や待遇、雇用形態は、会社を選ぶうえで大事な条件です。
でも、
「安定したい」
という一言だけでは、まだ少し大きい。
ある人にとっては、転勤せず家族と暮らせることかもしれない。別の人にとっては、自分で考えて仕事を進められること。あるいは、もし会社を離れても次に生かせる経験を積めることかもしれません。
同じ「安定したい」でも、中身は人によって違います。
「安定した会社」を考えるとき、私は二つを見るようにしています。
その会社が続きそうか。
そして、
自分がそこで続けられそうか。
この二つは、同じようで少し違います。
だから、
「安定した会社はどこですか?」
を考える前に、
「あなたにとって、安定って何でしょう?」
を一緒に考える。
私は、そこから始めることが多いです。
会社の条件はいい。それでも迷う。そんな面談についても書いています。
