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条件はいいのに、仕事の話をすると元気がなかった

キャリアアドバイザーをしていると、いろんな人が相談に来ます。

もう転職すると決めていて、進め方を相談したい人。転職した方がいいのか、自分でも分からない人。話を聞いてみると、「これはかなり厳しい環境だな」と感じる人もいます。

その中に、今でも印象に残っている方がいます。

条件だけを聞いたとき、正直、

「この人、今は転職しない方がいいんじゃないかな」

と思った方でした。


残る理由はいくらでもあった

その方は、とても安定した環境で働いていました。収入もいい。福利厚生もかなり整っている。お子さんもまだ小さい。

転職すれば、今より条件が下がる可能性も当然あります。今の会社で働き続けることに、大きな問題があるようにも見えませんでした。

だから最初は、

「本当に今、転職する必要があるんだろうか」

と思っていました。

ただ、話していると、なんとなく元気がないんです。

今の仕事について聞いても、あまり楽しそうではない。ものすごく嫌な出来事があるわけでもないし、会社への強烈な不満を口にするわけでもない。

条件の話だけなら、残る理由はいくらでも出てくる。

なのに、その人を見ていると、

「このままでいいんですかね」

という感じが、どうしても残りました。


部活の話をしたときだけ、少し違った

学生時代の話になりました。スポーツにかなり打ち込んでいた方でした。

もともと、よくしゃべるタイプではなかったと思います。どちらかというと口下手でした。

でも、部活の話をしているときは少し違いました。

どんな練習をしていたのか。何を目指していたのか。どんなことを頑張ったのか。

話を聞いていると、誠実で、かなり努力のできる人なんだろうなというのが伝わってきました。

そして何より、今の仕事について話しているときより、明らかにイキイキしていました。

「あ、この人、こんな顔するんだ」

と思ったのを覚えています。


そこから、仕事についてもう少し聞きました。

何をしているときにやりがいを感じるのか。どんな環境なら頑張れそうなのか。仕事で何を大切にしたいのか。

今の仕事の話ではあまり出てこなかった言葉が、少しずつ出てきました。

そして部活の話に戻ると、やっぱりそのときの方が楽しそうでした。

最初に思った、

「今は転職しない方がいいんじゃないか」

という見立てが、少しずつ揺らいでいきました。


条件がいい。それでも元気がない

もちろん、だからといって「じゃあ転職しましょう」と簡単に言えるわけではありません。

家庭もある。お子さんも小さい。安定した収入もある。条件は無視できません。

自分も子どもがいる今なら、当時よりその重さがよく分かります。

一方で、このまま何年も働いて、この人は元気に働いていけるんだろうか。そんなことも考えました。

たしか面談の中で、

「今の働く姿を、お子さんに見せたいと思えますか」

というような話もしたと思います。

その人が、この先どんな顔で働いていたいのか。

そんな話になっていきました。


最終的に、自分が何と言ったのか、細かい言葉までは覚えていません。

ただ、部活の話をしていたときの表情がずっと印象に残っていて、

「部活をやっていた頃みたいに、イキイキ働ける場所を探してみましょう」

そんな話をした記憶があります。

転職した方がいい、と言いたかったわけではありません。でも、「これだけ条件がいいんだから、残った方がいい」とも言えなくなっていました。

面談の最初と最後で、自分の見立てが変わっていました。


今は、求人を調べることも、職務経歴書を作ることも、生成AIでかなりできるようになりました。

でも、あの方が必要としていたのは、情報を増やすことより、

自分がもう感じていることを、一度誰かと一緒に確かめることだったのかもしれません。

仕事の話をしていたときの、少し元気のない様子。

部活の話になったときの、イキイキした表情。

今でもときどき思い出す面談です。


※相談者が特定されないよう、個人に関する情報は一部ぼかしています。会話についても、当時の記憶をもとに趣旨を再構成しています。


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