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ショートショート|Mr.ポエミー~ピンクのレンズが「官能」の世界を語る

洗面所で、歯ブラシの上に歯磨きチューブを絞った。
…にゅるにゅると白いモノがでてくる。オレはギュっと力をいれた。

歯磨きチューブの射精した。大量のモノが歯ブラシにぶちまけられる。
歯ブラシはなすがままだ。抵抗することもなく受け入れている。
白いモノがだらりと垂れた。

歯磨きチューブを握りしめたまま、オレの股間も絶頂に達していた。

鏡には、ピンクのレンズが入ったサングラスをかけたオレがいる。
オレは、Mr.ポエミー。奇妙なサングラスを試してる男だ。


馴染みの小さなメガネ屋に、定休日を忘れて訪問したことがきっかけだった。面識のない白い顎ヒゲの店員に手招きされて、奥の部屋へ入った。

そして『感情フィルター』を備えた特殊なサングラスを試すことになったんだ。それはレンズの色ごとに、異なる『ポエミー要素』が含まれているという。

効果を1時間に制約された一日のレンタル。詩人になりたいオレは、「官能」のポエミー要素に特化したピンクのサングラスを借りた。


今朝、オレはピンクのサングラスをかけた。

突然、淫靡な気持ちが沸きあがってきた。睾丸がぎゅっと掴まれたようだった。オレは洗面台で、歯磨きチューブを絞っただけで昇天した。

買い物のために玄関で靴を履く。
右足を靴に挿入した。足にピッタリとまとわりつく靴の感触。
挿入行為の快感がオレを貫いた。こんなのはじめてだ。
挿入した足を抜いて、またそっと入れる。
靴は黙ってオレを受け入れる。次は激しく。
そして左足も挿入した。右と左で挿入行為が繰り返される。
オレはまた果てた。

下着を着替えて、靴との行為を抑えながら、玄関のドアに手をかける。
奇妙な興奮がオレの中を駆け巡っていた。
オレはこれから、靴に足を挿入した状態で外を歩くのだ。
きっと皆がオレをみる。いや、見て見ぬフリをする。
恥知らずな変態行為への第一歩だ。オレの股間が膨らんだ。
玄関のドアと同時に、心の底に閉じていたドアも開いた。

外には、とんでもなくいやらしい世界が広がっていた。

太陽の光が「裸になれ」と、人間の身体を火照らせてくる。
信号機がエロい目線でウィンクを投げかけてくる。
オレは撫でまわすように、乳首みたいな歩行者ボタンを押した。

若い母親たちは「私がセックスをした証拠です。ごらんください」とばかりに、子供の手をひいて歩いている。

誰もが洋服の下に裸を隠して歩いていた。
誰もがすました顔で靴を履いて歩いていた。
エロに飲み込まれた変態だらけのソドムの町。

通りすがりのお婆さんが駅への道をオレに訊ねた。
わかってるよ。駅なんて口実なんだろ。
でも、今はダメだ。靴の相手でいっぱいいっぱいなんだよ。
駅で好きな人を選んでくれ。
オレは駅への道をやさしく教えた。ウィンクを添えて。

川沿いの道を歩けば、いやらしい音が聞こえてくる。
川のせせらぎは、まるで女体の入り口からあふれてくるようだった。
もうダメだ。オレは股間を押さえて座り込んだ。
朝から何度も果てたせいで、空砲を撃った。

思わず顔を覆ったとき、指先がメガネのつるにある小さな突起に触れた。レンズの濃淡を変えるボタンだ。

濃色のうしょくだったレンズの色を薄くすると、睾丸をぎゅっと掴んでいた手が離されたように、エロがすっと薄まっていった。
そして、言葉が降りてきた。


■ピンクのポエム
エロは手頃なものがいい
愛はエロのふりかけになる
いつでも手頃に楽しめて 賢者になったらさようなら
どこかに手頃なエロはおらんかね
イイ感じのエロはおらんかね
白馬に乗ったエロ様はおらんかね
配信動画を楽しんでから またあとで


オレは顎髭の店員にサングラスを返して、できたばかりの詩をみせた。
彼は何も言わず、鼻先でフンっと笑った。

◆「Mr.ポエミー」シリーズ
『ポエミー要素』付きのサングラスを試した男が、日常を見るショートショート。

Mr.ポエミー~ブルーのレンズが「感傷」の世界を語る 
Mr.ポエミー~ピンクのレンズが「官能」の世界を語る ←今回
・Mr.ポエミー~イエローのレンズが「楽しい」の世界を語る(準備中)



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