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🟢【うるさい!かんもくちゃん】服屋の店員と秒速鬼ごっこ編



「かんもくちゃん」は、外で話すことができません。


体も時々固まってしまいます。



そんな緊張気味な「かんもくちゃん」、今回は街へ冒険しに行きました。


目的地は、駅ビルにあるオシャレな服屋さん。


服屋に入った瞬間、命懸けのバトルが始まります____


◆◆◆


そこは、田舎の親しみやすい風貌とは打って変わっていた。


そこら辺のスーパーくらいにしか行かない私は、「ザ・都会」の風体に圧倒された。

ギラギラの服屋さん


恐る恐る足を踏み入れると、まばゆいばかりの「都会の波動」が五感を襲う。



天井からは、無駄にオシャレな間接照明の光がレーザービームの如く降り注いでいる。


「キラキラ」どころの騒ぎではない。


「ギラギラ」である。



床は、自分の顔が映るんじゃないかというくらいピカピカに磨き上げられた大理石。


店内全体に蔓延するのは、おばあちゃん家の香りとは全然違う、甘くツンとした臭い。


店内で流れる 何を言っているのかわからない洋楽が、耳を刺激してくる。



…まるで訳がわからない。一体ここはどこなんだ。




「もう嫌だ、帰ろう」と踵を返そうとした瞬間、奴は現れた。



「いらっしゃいませ〜♪」





で、出た。


無駄におしゃれな布をまとったハンターのお出ましだ。



ニコニコと眩しい笑顔で、すうっと距離を詰めてくるハンター。


しかし、その笑顔の裏の顔を、私は知っている。


獲物を捉えようとギラギラ光らせるその瞳を見て、私は目くらみをした。



私は心の中で叫ぶ。

(や、やめろ〜!来るな〜!!)



必死の祈りは虚しくも叶わず、ハンターはぐんぐん近づいてくる。




私はとっさに、目の前にある「ヒョウ柄のTシャツ」を手に取り、ものすごいスピードで素材を確かめるフリをした。


無理がある



どう考えても、その服は私には似合わない。

(ふんふん、いい服ですなー…)




すると、私の心の声を読んだのか、ハンターが口を開く。

「それ、今人気の新作でぇ、残り一点なんですよ〜!」




ギョッ。


何を言い出すかと思ったら、こんな華美な服が人気だと?


こんなのを田舎で着たら、皆から見世物にされる。


都会の人はよく分からない。




都会への愚痴に花を咲かせている私に、ハンターは容赦なくトドメの一撃を放ってきた。

「とってもお似合いになりそうです〜!ぜひあちらで試着してみてくださいっ♪」



私の都会への憧れは、音を立てて崩れた。


都会がこんなにクレイジーで危険なところだなんて、全然知らなかった。




「大丈夫です」のたった5文字がどうしても喉から出てこない。


私は、完全にハンターの呪術にハマっていたのだ。


言われるがままに、試着室へと連行されていく。

(もう嫌だ、帰りたいよ~)




外から見れば「店員さんの勧めに快く応じる、ノリノリな女子」。


しかしその実態は、都会の物騒さを知る由もなかった、哀しき戦闘員なのであった。




カーテンを閉められ、ついにハンターの視線から逃れた避難所。


しかし、手元には例の「ヒョウ柄Tシャツ」。


これを着なければ、ここから出ることはできない。



泣く泣く着てみる。


そして、鏡に映った自分を見る。


(…誰だお前は??)


おばちゃん



鏡の向こうにいるのは、「大阪の強めなおばちゃん」


まだ10代なのに、たった一枚の布によって、おばちゃんへと変貌した。



カーテンの外からは、ハンターが「いかがですか〜?見せてください〜♪」とプレッシャーをかけてくる。


…見せたくない。




しかし、声が出せない私は、「サイズが合わなくて…」と断ることもできない。


恐る恐るカーテンを開く。


おばちゃんのお出ましだ。



するとハンターはすぐさま、「わぁ〜、お似合いですぅ〜!」と声高に褒めた。


嘘をおっしゃい!


君は何を見ているのだ。


こんなおばさんくさい布をまとった10代が、田舎のどこにいるのだ。




「お会計なさいますか〜?」



来た。最後の希望が。


今まで散々な目に遭ってきたが、ここで「いいえ」と首を横に振れば、断ることができる。


終わりよければすべてよしだ。


私は固まった体を懸命に動かし、かぶりを振った。



しかし。


「お会計ですね、かしこまりました〜!」



終わった。


私の都会への憧れは、音を立てて崩れた。(二回目)


都会がこんなにクレイジーで危険なところだなんて、全然知らなかった。(二回目)




私は全てを諦め、ハンターと共にレジへ向かう。


都会のハンターがこんなにも厄介だとは、思いもよらなかった。


田舎では通った「必殺首振り」も、都会のハンターには通用しなかった。



液晶には、地元のデパートならTシャツが何枚も買えるお値段が表示された。


震える手でお札を差し出し、ついに決済が完了する。


私のお小遣いが、跡形もなく無くなった。



「ありがとうございました〜♪」



私はそそくさと店を出る。


そんな私を励ますかのように、爽やかな風が吹く。



…私はこのままタダで引き下がる訳にはいかない。


今回は惨敗だったが、次は。



いつか喋れるようになって、次こそは堂々と「大丈夫です (キリッ)」と断ってやる。



私の心の中では、リベンジを誓う熱い闘志が、沸々と燃え上がっているのであった。

次こそは!




ちなみに、ヒョウ柄Tシャツは現在、タンスの奥底で眠っている。






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