【大樹町/広尾町】林業が生物多様性を守る。北海道南十勝・史春森林財団の現場を訪ねて
環境省 環境創造室|令和8年度良好な環境を活用した観光モデル事業 期初訪問レポート
木を伐ることが、森を豊かにする。この言葉が、北海道南十勝の森で実践されています。令和8年度良好な環境を活用した観光モデル事業において、令和7年度から北海道大樹町・広尾町にて事業を行っている一般財団法人史春(ふみはる)森林財団を、担当者が現地訪問いたしました。
▶「良好な環境を活用した観光モデル事業」とは

はじめに
「史春森林財団」とはどのような団体か
一般財団法人史春森林財団は、北海道大樹町・広尾町を拠点に、林業経営と生物多様性保全の両立を実践している非営利の財団です。収益を生物多様性の保全や地域経済のために再投資するという「非営利徹底型」の運営方針のもと、計画的な伐採によって森に草原環境を生み出し、多様な動植物の生息地を確保する取組を長年にわたって続けています。
その取組は、自然共生サイト「生花の森」「上トヨイの森」として認定されており、OECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)にも該当しています。
2026年3月にはエクアドルで開催されたIPSI-10(SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ)において「Experience our "OECM" certified sites」と題して取組の紹介とエコツアーへの参加を呼びかけ、国際的な先進事例として発信にも取り組んでいます。
🌿 自然共生サイト・OECM とは
国立公園などの保護地域に指定されていないものの、生物多様性の保全に実質的に貢献している地域を環境省が認定する制度です。史春森林財団が管理する「生花の森」、「上トヨイの森」はこの認定を受けており、林業地でありながら希少種を含む多様な動植物が生息する環境として評価されています。
SPOT 01
北海道大樹町 /生花の森(自然共生サイト)

最初に訪問したのは、大樹町にある自然共生サイト「生花の森」です。適度に暖かく一年を通じて適度に雨も降る十勝の気候は人工林を育てますが、手入れをしないまま放置すると、光が届かず生物多様性が減少してしまいます。
そのため、史春森林財団では、計画的な伐採によって林内に草原環境を意図的につくり出し、エゾシカ・キタキツネをはじめとする野生動物、希少昆虫、多様な鳥類が生息できる「モザイク状の景観」を維持しています。
訪問時は、地域の皆さんもアルバイトとして参加される植栽作業を前に準備が進められており、地域の人々の暮らしと森林経営の繋がりも感じることができました。
🌲 「生花の森」の環境的特徴
国立公園(日高山脈)と隣接する林業地として、国立公園区域との連続性を意識した森林経営を実践。林業生産活動を通じて多様な野生動植物の生息環境を維持する取組により、自然共生サイトに登録されています。
SPOT02
北海道広尾町 / 上トヨイの森

翌朝、広尾町内に移動し、「上トヨイの森」で、実際にモニターツアー等でご案内いただく際の解説を交え、国立公園の「原生的な景観」と史春森林財団の森の「人が手を入れながら守る景観」を現地で体感してきました。
十勝ならではの雄大さや透き通った空気を感じながら、自然共生サイトを訪れることにより得られる気づきや満足感は旅の喜びにも直結するものだと感じました。
「上トヨイの森」は、国立公園(日高山脈)に楔状に入り込む形で位置する林業地です。周囲を国立公園に囲まれた地形的特性から、この森が国立公園の連続性を担保する保残帯として機能しており、林業経営を続けながら生態系のつながりを守るという役割を同時に果たしています。
国立公園の「原生的な景観」と、史春の森の「人が手を入れながら守る景観」を対比して体験できる点が、エコツアーとしての教育的・体験的な価値を持つ大きな要素です。
🌊 豊似川と「山から海へ」の生態系
広尾町を流れる豊似川は、南十勝の森林から太平洋へと注ぐ清流です。森で育まれた栄養分が川を通じて海へと届き、海の生態系や昆布漁業などの沿岸漁業を支えます。史春森林財団のエコツアーでは、このような「森林から河川、そして海へとつながる生態系の連鎖」を、北海道特有の雄大な平地林の景観とともに体感できるストーリー立てが計画されています。
令和7年度の取組
エコツアーの基盤を整えた1年間
史春森林財団は、令和7年度の取組として、自然共生サイト「生花の森」等での森林作業体験プログラムの観光コンテンツ化と多言語対応を進めてきました。英語対応の体制整備、英語版の普及啓発資材・プロモーション動画の作成、IPSI-10(国際会議)への参加など、国際的な情報発信の基盤構築に重点が置かれた年度となりました。
また、森林作業・鳥類・昆虫・魚・草花などの専門知識を持つガイド候補者の体制整備も進んでおり、地域に根ざした案内人が観光客をアテンドできる体制の構築が着実に進んでいます。
台湾の旅行会社を招聘したモニターツアーなど、インバウンド誘客に向けた準備も進められています。
📌 史春森林財団の取組の特徴
非営利徹底型の法人として、ツアー収益はガイド料として地元の担い手に支払われ、地域経済への還元と担い手育成を同時に実現する仕組みを構築しています。「収益を生物多様性と地域のために再投資する」という財団の理念を「良好な環境の保全と観光の好循環」モデルの1つとして広めてまいりたいと考えています。
訪問を終えて

「林業地」という良好な環境の可能性
南十勝の森は単なる木材生産の場ではなく、管理の方法によって豊かな生態系を育む「良好な環境」として機能しています。自然共生サイトの認定を受けた林業地、国立公園の連続性を担う保残帯、河川を通じて海の生態系へとつながる森は、北海道南十勝という地域が持つ固有の環境資源です。
環境省では、こうした地域の「良好な環境」を活用した観光地域づくりを引き続き支援し、保全と活用の好循環の実現に向けて取組を進めてまいります。
(報告/SAKA)
🌲 北海道の森が育む、生物多様性と地域経済の好循環
一般財団法人史春森林財団の取組の詳細は、環境省の事業ウェブサイトでご覧いただけます。自然共生サイトの概要や令和7年度の活動報告も掲載しています。

掲載情報は環境省公開ウェブサイト・令和7年度公開報告に基づきます。令和8年度の事業計画の詳細については今後公開予定です。
良好な環境を活用した観光地域づくり|環境省
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ー環境を「守る」だけでなく、「活かすことで守る」
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