見出し画像

【真庭/備前/笠岡】里山と里海が、ひとつにつながる。岡山県真庭・備前・笠岡の3市がつなぐ「良好な環境を活用した観光地域づくり」

環境省 環境創造室|令和8年度良好な環境を活用した観光モデル事業 期初訪問レポート

 岡山県の山あいに湧く鍾乳洞の水は、川を伝い栄養塩を運びながら瀬戸内海へと注いでいます。里山の間伐材が牡蠣いかだに生まれ変わり、牡蠣殻が田んぼの肥料として里山へと還っていく。

 真庭市北房、備前市日生、笠岡市白石島の三つの地域が「里山と里海の連環」をテーマに手を結んだ「Okayama Sustainable Satoyama / Satoumi University(OSSU)」が、一般社団法人北房観光協会を中心とした地域の関係者によって実施されています。

 今回は、環境省の「令和8年度良好な環境を活用した観光モデル事業」の期初訪問として創造室担当者が現地を訪問いたしました。

▶「良好な環境を活用した観光モデル事業」とは

SPOT 01

岡山県真庭市 / 里山里海交流館しんぴお • 鍾乳洞・ほたる館

鍾乳洞から湧き出す清流と、初夏に乱舞するホタル。北房の自然が育む「音風景100選」の環境。

 東京を朝早く出発し、新幹線で岡山へ。駅から山あいの道を1時間ほど走ると、真庭市北房に到着しました。北房地域の「諏訪洞・備中川のせせらぎと水車」は環境省が「残したい日本の音風景100選」に選定し、美しいせせらぎの音が多くの観光客を魅了しています。

 鍾乳洞から染み出た栄養塩が、川に生息するカワニナやホタルなど川の生き物を育み、水質が安定し、その水が海の牡蠣やアマモに届く。この里山から里海への「山から海へ流れる栄養塩の連環」はOSSUプロジェクト全体を貫くテーマとなっています。


観光地化されていない天然の鍾乳洞。

 鍾乳洞は観光地化されていない天然の鍾乳洞であるため、見学できるのは手前部分だけですが、すこし足を踏み入れると一気に体感気温が下がります。鍾乳洞の近くにはホタルについて学べる「ほたる館」(真庭市施設)があり、真庭市北房地域で天然記念物に指定されている各種ホタルについて、模型や動画を中心に学ぶことができます。

 備中川にゲンジボタル、谷尻川にヘイケボタル、鍾乳洞周辺にはヒメボタルが生息しており、毎年有名な「HOTARUFes」も開催。3種ものホタルが舞う初夏の情景は、清流と里山が一体で守られてきたこの地域ならではのもので、良好な水環境が保たれている証でもあります。

北房ほたる公園では、例年6月にゲンジボタルやヘイケボタルの美しい光が見られます。ホタルが見られる「良好な環境」を保全し観光地として創出していくことが必要です。

🌿 北房エリアの「良好な環境」
真庭市北房は「残したい日本の音風景百選」に選定されており、ホタル3種が生息する希少な環境が残されています。里山の間伐材を日生の牡蠣いかだ用に出荷するなど、里山と里海をつなぐ取組も進んでいます。令和7年度は体験プログラムの試行・整備が進められました。

 鍾乳洞やほたる館を訪問した後は、コバウッズの小林さんの案内のもと、森林管理やフィールドワークの現場に訪問。針葉樹よりも広葉樹が多い森の手入れの課題や、産業としての在り方についてご説明をいただきました。適切な森林管理によって生み出される豊かな栄養塩が、森から川へ、川から海へと流れる。

 この流域全体を保全することを意識し、実際に海との具体的な連携まで実践できている取組は、まだ全国でも多くありません。森の宝石と呼ばれる鳥「ブッポウソウ」の巣箱の設置や田んぼの観察会など、地域の子どもたちと一体となった活動が展開され、今年度もより深い取り組みが計画されています。

 また、里山里海交流館しんぴお内の多目的ホール「ほたるび」ではOSSU事務局長の坂本さんをはじめ、地域の皆さまや真庭市役所の方々と里山里海の繋がりについて学びました。立体映像装置による環境循環動画の鑑賞や、北房小学校のこどもたちによる環境学習、環境保全の様子や北房ホタルっ子ミュージカルの様子など、地域一丸となって環境保全活動を進めている様子が伝わってきました。

【北房ホタルっ子ミュージカル】
岡山県真庭市北房地区で長年続けられている子ども達の環境学習活動とホタル保護活動、環境保護活動の実践をテーマに、OSSU事務局長の坂本さんが地域のみなさんと作り上げていくホタル保護啓発のミュージカル。子ども達自身が故郷の素晴らしさを発信することで郷土愛を育み、環境保護の実践と学びを主にしている取り組みです。ーー編曲・サウンド制作 里山里海交流館しんぴお館長  坂本信広

真庭産の食材を豊富に使った名物「ほたる御膳」

   また、里山里海交流館しんぴお内の「北房ほたる庵」では、生産者の顔が見える食材を使用した「ほたる御膳」が提供されています。特産品である牡蠣殻を砕いた肥料で育った真庭産の「里海米」、瀬戸内海で育った海の幸が味わえる釜めし、里海米からできた米粉を使用した真庭産野菜の天ぷらからは、北房エリアの大地の恵みが感じられます。

SPOT 02

岡山県備前市 / ひなせうみラボ・日生町漁港

アマモ再生の全国先進地として知られる日生。研究者・漁業者・地域が一体となった取組が続く。

 その後、北房から車で1時間半かけ瀬戸内海沿いの備前市日生(ひなせ)へ。近年、ブルーカーボンや藻場の再生が注目されていますが、ここ日生は35年以上も前からアマモの再生に取り組む全国の先進地です。

 「ひなせうみラボ」では、NPO法人里海づくり研究会議の研究員である広瀬さんから、日生の海洋環境と里山・里海の連環について、地域との関わりを含め丁寧にご説明いただきました。

説明の後は、日生町漁業協同組合の方に船を出していただき、ツアーの中心となるアマモ場や牡蠣養殖場の確認も実施

 日生では、1950年に590haあったアマモ場が1985年に12haまで減少し、漁獲量が減ってしまった現状をなんとかしようと日生漁業協同組合の漁師たちの手によってアマモ場再生活動が始まりました。

 自然災害によって懸命に再生したアマモ場が消失するなど多くの苦労がありましたが、カキ殻を使った底質改善など日生の漁師のみなさんの熱い思いが実を結び、12haまで減少していたアマモ場は、2015年に250haまで回復したのです。

 この取組により、日生は「アマモ再生の先進地」として知られるようになりました。更なる回復を目指してまだまだ取り組みは続きます。

 北房の山から流れる栄養塩が流域の生物多様性を支え、海の豊かな牡蠣の養殖につながる。里山と里海がひとつながりであることを、現場で肌感覚として実感できる時間でした。
 
 令和7年度にはOSSUとしてのウェブサイト・英語版の開設や、国内外の方々を対象としたモニターツアーが実施されており、日生の海はその体験の核となるエリアです。

🦪 日生エリアの「良好な環境」
備前市日生は「令和の里海づくり」モデル事業の対象地でもあり、アマモ場再生の全国有数の場所として注目されています。牡蠣殻を粉砕して里山の田んぼの肥料とする「里海米」の取組など、海と山を物質として循環させる仕組みが実践されています。

SPOT 03

岡山県笠岡市 / 白石島(笠岡諸島)

笠岡の伏越港から金風呂丸に乗り込み、瀬戸内海の多島美を抜けて白石島へ。

 そして最後は、三つ目のエリアである笠岡市へ。笠岡市はカブトガニの生息地としても知られており、古くから環境の象徴として保護活動が行われてきました。今回は観光モデル事業のメインとなっている白石島へ、定期船「金風呂丸」に乗り込み向かいます。

 白石島は、笠岡港から約16㎞離れた場所にあり、笠岡諸島の中央部に位置する島です。花崗岩でできた島が遠くから見ると白い雪をかぶったように見えることから「白石島」という名前になったという説があります。穏やかな瀬戸内海の多島美をぬけて「かさおか島ラボ」へ向かいます。

 白石島は人口200人程度で、近年高齢化率も高くなってきている島です。おもな産業は漁業と観光業であり、島の漁業担い手や海洋教育により未来につながる人材の育成、島の活性化のための活動をするために令和4年に「かさおか島ラボ」が設立されました。

 株式会社MIZUBEの松田さんをはじめ、かさおか島ラボで海洋研究と地域活性化に取り組むみなさまと活動内容について議論を交わしました。

 ここでは、未利用の漁港施設を活用した施設を中心に、西日本初の海洋研究拠点として産学連携の海洋研究の実証実験や渚の交番施設がこれから建設されます。観光事業においては海洋牧場などを活用した各種学習体験プログラムを展開しており、海洋保全活動が盛んに行われています。

笠岡エリアでは、これから里山と里海のつながりを感じられる新しい取り組みに挑戦します。島の港から望む瀬戸内海の穏やかな多島美と、島の方々が環境保全に注ぐ真摯な取組。白石島には、観光と環境保全を両立させる小さな島ならではの確かな営みがありました。OSSUプロジェクトのコアメッセージである「岡山の山から海へ、アマモがつなぐ栄養の旅」を感じられた訪問でした。

🦀 白石島・笠岡エリアの「良好な環境」
笠岡諸島の白石島は、国の天然記念物であるカブトガニが生息する保護海域を有しており、海洋牧場事業による生物多様性の回復に取り組んでいます。アマモ再生のポット植え付けは、里海づくり研究会議の指導のもと地域住民・来訪者が一体となって取り組む保全活動です。令和7年度は国内外のメディアでも取組が紹介されるなど、情報発信基盤の整備も進んでいます。

まとめ

「山・海・島」をつなぐ、岡山ならではの物語

 2日間、真庭市・備前市・笠岡市の3エリアを巡り、OSSUプロジェクトが描く「里山から里海への栄養塩の連環」について、活動者の皆さんが環境保全と観光を結びつけるために地道に積み上げてきたものの厚みを、訪問を通じてあらためて感じました。

 令和7年度は、モニターツアーの実施やOSSUウェブサイトの開設により、企業団体会員10件を達成するなど、環境保全に取り組む企業などとのコミュニティ形成の土台を着実に構築してきました。3市にわたる広域連携という難しさを抱えながらも、「山の北房・海の日生・島の笠岡」という三点を結ぶストーリーは、他の地域にはない唯一無二の魅力を持っています。令和8年度も環境省が引き続き地域の皆様と一緒になって取り組んでまいります。

報告/Nao
環境省 環境創造室にて、「良好な環境を活用した観光モデル事業」および広報を担当。学生時代は無人島で鳥類の生態研究を行いつつ環境教育に従事。出版社、地方公務員などを経て現職。ご当地の自然観察マップを手掛けるのが趣味。鳥の絵描き。

🌊 岡山の里山と里海を、旅という形で体験しに来ませんか

OSSUプロジェクトは、山・海・島をつなぐ岡山ならではの環境保全体験型コミュニティです。 企業の研修・教育旅行・インバウンドなど、さまざまな形で参加の機会を用意しています。 詳細は事業ウェブサイト、またはSNSでご確認ください。

🔗 北房観光協会の取組を見る(環境省WEB)


環境省 水辺の環境活動プラットフォーム、各種SNSもよろしくお願いいたします!

最後までお読みいただき、ありがとうございます。良好な環境は、地域の豊かさを支えるとともに、産業・文化・教育にも広く関わる地域の貴重な資源です。

ー環境を「守る」だけでなく、「活かすことで守る」

このnoteでは、今後も各地の取組事例や現場の声、「良好な環境」に関するコラムなどを発信していく予定ですので、身近な水辺や地域の環境に少しでも目を向けていただけたら、私たちにとって何より嬉しいです。

ぜひフォロー、応援よろしくお願いします!