見出し画像

40年間の末路 第7章 短い同棲生活 ドキュメンタリー小説|自叙伝|20代

 その夜から、何かが変わった。
正確に言えば、何かが決定的になった。

「もう寂しい思いをさせないで!
 あなたナシでは生きていけないの!」

と仁美は泣きながら言った。

「じゃぁ、このアパートに僕も引っ越すよ」

僕は半ば強制的に約束させられた。

 しかし仁美のアパートは既に満室だった。
でも隣接するアパートに空室があったので、すぐそこへ引っ越した。

大学へは遠くなったが、そういう問題は二の次だった。

そしてすぐに僕は小中学生の学習塾でアルバイト講師を始めると、仁美も小さな出版社のパートに採用され、高円寺から駒込に通勤を始めた。
 こうして二人ともそれぞれ安定した新しい生活がスタートした。

 しかしすぐに仁美は光熱費を浮かせる口実で、ほぼ毎日僕の部屋に来て一緒に食事した。週末には朝来て、夜になっても帰らない日も増えた。

気づけば半同棲になっていた。

 当初は気にならなかったが、仁美の要求が増え、少しずつ何かがずれていった。
どこへ行くにも一緒で、大学やバイト先で、誰と何を話したかを確認する、ゼミで帰りが遅いとその理由を問い詰める。

仁美は「自立」とは程遠く「依存」が強くなり、愛情と独占の境界線が、じわじわと曖昧になっていった。
そして干渉が監視になり、もはやストーカーになっていった。

4月になって復学したある夜、仁美はこう言った。

「私のアパートの家賃もったいないから、
 解約してこの部屋に引っ越してもいい?」

 その瞬間僕の中で、何かがプチンと切れて、積もり積もってきた苛立ちが抑えきれなくなった。

「そもそもこのアパートは単身用だし、
 同居は契約違反でしょ」

「そんなのバレなきゃいいでしょ?」

自分勝手な仁美の言動に、ついに限界が来て、別れ話を切り出した。

仁美は激しく抵抗し、怒鳴り合いになった。
それでも僕は引かなかった。
最終的に仁美をアパートから追い出し、隣のアパートの仁美の部屋へ帰らせた。

 ドアにカギをかけて、一人になった。
 久しぶりの静けさだった。安堵と罪悪感と、それから正体のよくわからない疲労が、まとめてドッと押し寄せてきた。


 別れてから二週間が経った。

 このまま仁美の近くに住み続けるのは得策ではないと判断して、転居先を探すため、賃貸情報誌を広げ、大学近くのアパートを探していた時、

コンコン

誰かが部屋のドアをノックした。

 玄関を開けると、仁美が黙って立っていた。

 幽霊のようだと思った。血色が悪く、表情もなく、ただ虚ろな目で僕の顔を見た。
仁美から復縁を求め、謝罪の言葉が出ると思って、身構えた。

第6章   第8章

#創作大賞2026 #恋愛小説部門

いいなと思ったら応援しよう!

舘 徹人(熊猫ジィジ) 少しでも「いいな」と感じていただけたり、共感していただけたら、とても嬉しいです😊 よろしければ応援していただけると励みになります! いただいたチップは、今後の創作活動をより良くするために大切に使わせていただきます。心から感謝いたします✨