SANAE TOKENの資金追跡、「絶対不可能」と言った有識者の話
2026年2月末から界隈を騒がせている「SANAE TOKEN($SANAET)」
現職首相がわざわざ否定声明を出すという異常事態に発展し、価格は暴落。案の定、運営元が「実は僕たちでした」と名乗り出るドタバタ劇を見せているが、この騒動の裏で、もっと失笑ものの「事件」が起きている。
自称有識者による「高度な匿名化技術により、資金追跡は絶対不可能」という大嘘だ。
「複雑そうに見える言葉」に騙されるな
そのポストの内容を要約するとこうだ。「NEAR Intentsを経由し、Zcashシールド(秘匿送金)を使っている。DEXブリッジで足跡を消しており、これはプロの計画犯。追跡はほぼ無理」……。
一見すると専門用語が並んでいて「へぇ、そうなんだ」と思ってしまいそうになる。だが実際にオンチェーンを触ったことがある人間からすれば、この主張は「銀行振込をした後に『ネットバンキングを使ったから俺の住所は特定できないはずだ』と言い張る」レベルの支離滅裂な論理だ。
ブリッジは「隠れ蓑」ではない、むしろ「記帳代行」だ
そもそも、LiFiやdeBridge、今回のNEAR Intentsといった主要なブリッジプロトコルには、専用のエクスプローラーが存在する。
「ブリッジして追跡を困難にした」? 逆だ。ブリッジのコントラクトは、チェーンを跨いだトランザクションを紐付けるために存在している。アドレスをひとつ放り込めば、送信元のEthereumから、経由地のNEAR、着地先のSolanaまで、親切丁寧に一本の線で繋いで表示してくれる。
「追跡不可」と言われたトランザクションの正体はこれだ。
NEAR Intentsのエクスプローラーはこちら
- 日時: 2026年2月22日 7:27 AM
- 送金元: 0x51b7fedba6d56558e6e23095b0fc52edc4f1482e(Ethereum)
- 金額: 0.03 ETH(約$59)→ 0.6876 SOL(約$58)
- 受取先: 6ytB6pX3d6avtgzCkRjsyd1jkUJCutyCoc83ZeoVTC6c(Solana)
- Etherscan、NEARblocks、Solscanそれぞれのトランザクションリンクも全部記載
しかもRubicというDEXアグリゲーター経由のため、リファラルログまで残っている。Zcashなんて影も形もない。
URLをひとつ開けば数秒でわかる事実を、「追跡不可」という言葉で煙に巻こうとする。これが「有識者」を自称する人間の正体だ。
70万円のためにZcashを使う「プロ」がいるか?
さらに笑えないのが、論理の自己矛盾だ。
そのポストは「Zcashを使った完全犯罪だ」と言いながら、最後には「抜かれたのは4700ドル(約70万円)だし、素人の仕業だろう」と締め括っている。
高度な秘匿技術を駆使して足跡を消す「プロ」が、わざわざリスクを冒してまで飲み代程度の70万円ぽっちで満足して逃げるわけがない。「精巧な金庫破りのツールを揃えた強盗が、金庫の中の小銭入れだけ盗んで帰った」と言っているようなものだ。プロの犯行説と素人の犯行説を同じ文章にぶち込んだ結果、どちらの説得力も死んでいる。
仮にZcashシールドを本当に使っていたとしても、法執行機関が動いた場合の話は全然違う。入金前と出金後はパブリックチェーンに記録が残るし、Chainalysisのような専門ツールにKYCデータやIPログを組み合わせれば、民間の「追跡不可」判定など簡単にひっくり返る。2022年のAxie Infinityハックでも、Tornado Cashを経由した資金がLazarus Groupに紐付けられた実績がある。「おそらくZcashを使っていると思う」という推測を根拠に「追跡絶対不可」と断言するのは、分析ではなく憶測だ。
なぜこれが「有識者」として流通するのか
技術的な無知もさることながら、最大の問題は「もっともらしい言葉を並べれば、大衆は騙せる」という発信側の慢心だ。
NEAR Intents、ブリッジ、シールド……。知らない人には呪文のように聞こえるだろう。だがブロックチェーンの基本は「Trustless(信じるな、検証せよ)」だ。誰かが「追跡不能」と言ったら、まずエクスプローラーを叩いてみる。その一歩をサボった人間が、デマを拡散し、不必要な諦めを煽っている。
自称有識者の発信を読むとき、「実際に手を動かして確認しているか」「推測と断言を区別しているか」という基本的なフィルターが必要だということを、今回の件は改めて示している。
焦点は「誰がやったか」から「どう責任を取らせるか」へ
金融庁の調査はすでに入っている。株式会社neuのCEO松井健氏がトークンの企画・設計・発行を認め、NoBorderの溝口氏も対応に追われている今、焦点は「誰がやったか」ではなく「どう責任を取らせるか」に移っている。
資金決済法違反の観点では、4700ドルを売り抜けた個人より、総供給量の65%を運営側が保有して段階的に売却する設計でトークンを発行した側の方が問題は重い。無登録での暗号資産交換業にあたる可能性が指摘されており、「炎上案件では済まない」という見方が出始めているのはそういう背景がある。
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「追跡絶対不可」? そんな寝言は、せめて自分の手でエクスプローラーをひとつ叩いてからにしてほしい。
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本記事を執筆中、@antsu_0jisun 氏および @qash_nft 氏がすでに同様のトランザクション追跡を行っていたことを確認しました。両氏の検証に敬意を表します。
2026年3月4日時点の情報に基づく。捜査の進展によって事実関係が変わる可能性がある。
最後までありがとうございました。
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