営業は絶好調。でも誰が支援する?AIでは埋められない登録支援機関の次の壁
これから登録支援機関の成長を止めるもの。
って何やと思います?
求人が集まらないこと。
候補者が見つからないこと。
営業力が弱いこと。
どれも経営上の大きな課題です。
これから登録支援機関が直面する壁はそこだけちゃうんです。
紹介した外国人材を支える人が足りない。
営業が順調であればあるほど、この壁にぶつかる可能性があります。
「新しく3社、話が進みそうです」
営業担当からこんな報告があれば、本来はうれしい話です。
新しい企業と出会える。
外国人材を紹介できる。
売上も増える。
会社として、前に進んでいるように見えます。
ところがこれからの登録支援機関はその報告を聞いた支援責任者が、
笑顔のまま管理システムを開き始めるかもしれません。
「今、誰が何社を担当していたっけ」
「この3社が増えたら、あと何人支援できるんや」
「地域も離れているけど、ほんまに対応できるんかな」
営業担当からすれば、
「いや、せっかく仕事を取ってきたのになんでそんな顔するんですか」
となります。
その気持ちも分かります。
僕も営業ですから案件が決まれば、そらうれしいです。
ただ管理システムで支援人数を数えることはできても、
支援担当者そのものを増やすことはできません。
AIに面談記録を要約してもらうこともできます。
相談履歴を一覧にすることもできます。
担当数が上限へ近づいたらアラートを出すこともできるでしょう。
でもね、どれだけAIが発達しても、
「支援担当者が足りません。3名、自動生成します」
とはならないんです。
そこだけはどれだけ画面を連打しても出てきません。
支援担当者の担当上限
この見直しは、業界内で支援キャップと呼ばれることがあります。
正式な制度名ではありませんし、まだ聞き慣れない方も多いと思います。
分かりやすく言うと支援担当者の担当上限です。
育成就労制度の運用開始と特定技能制度の適正化等は2027年4月1日に施行される予定です。登録支援機関については支援業務を行う事業所ごとに、常勤の役員または職員の中から支援責任者と支援担当者をそれぞれ1名以上選任する体制へ変わります。
支援担当者1名が担当する範囲について、
特定技能所属機関が10機関未満
特定技能外国人が50人未満という要件が設けられます。
一人の支援担当者が担当する上限の目安は、
受入企業9機関、外国人材49人。
人数か企業数のどちらかだけを見ればいいわけではありません。両方です。
これ、登録支援機関の動き方をかなり変える出来事なんです。
9人しか支援していなくても上限に近づく
たとえば支援担当者一人が9社を担当しており、
それぞれの会社に外国人材が一人ずついるとします。
支援人数はまだ9人です。
人数だけを見れば、
49人までならまだ40人も余裕あるやんと思いますよね。
でも、企業数ではすでに上限の目安へ達しています。
反対に一社で40人を支援している場合は、
企業数には余裕がありますが人数では上限へ近づきます。
同じ40人でも一つの会社に40人いるのか。
複数の会社に分かれて40人いるのか。
支援担当者の負担は同じではありません。
私たちクリエが支援に関わっている地域はかなり広いです。
関東では、茨城県、千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県。
東海では、愛知県、岐阜県、三重県。
関西では、大阪府、兵庫県、京都府、滋賀県。
中国地方の岡山県、広島県。九州は福岡県まであります。
同じ地域の一社で40人を支援する場合と、
北関東から九州まで複数の企業に分かれて40人を支援する場合。
数字の上ではどちらも40人です。
これ、現場では全然同じちゃうんですよ。
企業担当者も違う。
勤務時間も違う。
就業規則も違う。
業種も違う。
相談内容も違う。
訪問が必要になれば移動時間も交通費も変わります。
支援業務をしているのか、
乗換案内を極めようとしているのか、
分からなくなる日もあります。
新大阪駅で新幹線に乗りながら、
「今日は岡山で、次は広島。その次は福岡か」となる。
関東では、
「茨城→千葉→埼玉。これはさすがに一日では無理やな」となる。
地図では近そうに見えても、実際に移動すると遠いんです。
日本地図は見るのと回るのとでは、だいぶ表情が違います。
見るべきは人数だけではない
支援担当者の負担を考えるとき、
人数だけを見ても実態は分かりません。
何社を担当しているのか。
どの地域にあるのか。
どの業種なのか。
何語で相談対応する必要があるのか。
夜勤のある職場なのか。
外国人材本人だけでなく、企業側との調整がどの程度必要なのか。
同じ一人の支援でも、必要な時間は違います。
生活相談が少なく、自分で手続きを進められる人もいます。
一方で、日本語、住居、家族、送金、職場の人間関係、病院への同行など、複数の支援が重なる人もいます。
数字の一人と現場の一人は、必ずしも同じ重さではないんです。
今回の見直しは、
「49人までなら49人ぎりぎりまで担当させても大丈夫」
という話ではないんです。
その人数をきちんと支えられる体制があるのか。
そこを見られるようになるという話なんです。
制度上もこの担当上限は1号特定技能外国人への支援の質を確保するために設けるものだと説明されています。
この数字の基準って?
正直な本音も言います。
この基準を見たときの感想は、
「この数字の算出って誰基準なん?」
支援未経験の担当者を基準にしたのか。
平均的な担当者なのか。
全国一律で線を引きやすい数字を置いたのか。
その算出過程は僕ではよう分かりませんでした。
僕の前職時代から一緒にやっている右腕の支援担当者がいます。
その担当は西日本エリアで約50社、100人を見ていた時期がありました。
もちろん、めちゃくちゃ大変です。
ほとんど事務所にいてません。ずっと動いてます。笑
だから誰でも同じようにできるとは思っていません。
僕が同じ数を持ったら、新幹線の予約でつまずく可能性があります。
ただね、経験や能力、企業との関係、社内の連携体制によって、
担当できる範囲は変わるんですよね。
これってどんな仕事でも一緒やと思いません??
9人でも厳しい人はいる。
49人以上でも、きちんと見られる人はいる。
「この数字、ちょっと取ってつけた感じせえへん?」
そう感じた業界の方もいてるんちゃうかなと思います。
上限を設ける考え方自体を否定するつもりはないんです。
でも枠の中に収めたら支援の質が確保されるというほど、
この仕事は単純とちゃうで。とも思ってます。
結局問われるのは、数字ではなく、
その担当者が一人ひとりを本当に見られているかですよね。
なんか偉そうな表現に聞こえたらすみません。先に謝っておきます…
営業がアクセルなら支援体制はエンジン
外国人材ビジネスに営業力は必要です。
企業を開拓できなければ、求人は増えません。
求人がなければ、外国人材を紹介できません。
候補者を集められなければ、企業の採用課題にも応えられません。
営業も集客も絶対に必要です。
営業だけが強くても継続的には伸びません。
営業がアクセルなら支援体制はエンジンです。
アクセルを強く踏んでも、
エンジンが追いつかなければ前には進みません。
支援が「今の体制でこれ以上は難しいです」と言っているのに、
「あと一社だけ!今回だけ二人追加やから」と案件を載せていく。
そのあと一社が、何回続くねんという話です。
営業側から見れば一社。
支援担当者から見れば、
外国人材との面談。
企業との連絡。
支援記録。
生活相談。
在留関係の確認。
緊急時の対応。
全部が増えます。
企業との契約は一枚です。
その契約の後ろには何人分もの生活があります。
ここは忘れたらあかんと思うんです。
僕も営業数字を追う側
僕は支援だけを担当しているわけではありません。
企業へ提案もします。
求人もつくります。
候補者とも面接します。
在留関係の進行も確認します。
支援責任者として入社後の状況にも関わります。
営業数字も見ます。
案件が増えれば、そらうれしいです。
新しい企業から相談をいただけば、
何とか応えたいと思います。
外国人材に新しい就職先を紹介できればもうれしい。
同時に案件が決まったとき、支援担当者の顔も浮かびます。
「この会社は誰に担当させようか」
「人材が入国した後、誰が継続して見るんやろ」
「企業からの相談あったとき、この分野はすぐに動けるんかな」
売上が増えることは大切です。
会社ですから利益も必要です。
支援する人を支えるのも支援体制
僕はうちの支援スタッフが、
夜の時間帯でも支援者のLINEに返信してくれていることを知っています。
勤務時間の外でも面談をしてくれていたり、タイムカードには写らない仕事を自分の役割として引き受けてくれていることも知っています。
それを当たり前にしたらあかんと思っています。
スタッフにはできるだけ出勤時間をずらしたり、
別の日に時間を調整したり、負担が偏らないように配慮はしています。
気持ちではしているつもりです。
本音を言えば十分ではないかもしれません。
なんでかって言うと支援の仕事って、
数字に出る業務だけちゃうんですよね。
外国人材から届いたメッセージを見て、
「いつもと少し違うな」と感じる。
面談が終わったあとも、
「あの返事でほんまに大丈夫やったかな」と考える。
そういうタイムカードには写らない気遣いで支えられている部分。
じつはかなりあります。
僕はうちの支援スタッフにほんまに頭が上がりません。
偉そうに支援体制の話をしていますが、
実際に日々の関係をつないでくれているのは、
現場で対応しているスタッフ達です。
皆さんや企業さん、外国人材に対して、
「人と人との関係が大切です」と言いながら、
社内ではスタッフの善意や成長に乗っかっている。
人と人というのは外国人材と支援担当者の間だけちゃう。
僕と支援スタッフの間でも同じです。
相手の負担に気づく。
やってくれていることに感謝する。
無理が続いているなら、働き方を調整する。
支援する人を大切にできてこそ、外国人材にも良い支援が続けられる。
僕はそこを忘れたらあかんと思っています。
AIで支援担当者は代用できない
これからAIや管理システムはもっと必要になります。
誰が何人を担当しているのか。
次の面談はいつなのか。
在留期限はいつなのか。
どのような相談があったのか。
どの企業でどのような問題が起きているのか。
こうした情報を担当者の頭の中だけで管理するのは危険です。
人は忘れます。
僕もよく忘れます。
あとで確認しようと思ったことほど、きれいサッパリ忘れます。
そこはAIや管理システムに助けてもらったらいいんです。
システムができるのは情報を見えるようにするところまでです。
外国人材の表情を見て、感じること。
企業担当者の話を聞いて、考えること。
両者の言い分を聞きながら、関係を壊さずに必要なことを伝えること。
そこは絶対に人の仕事です。
AIは支援担当者の代わりにはなりません。
システムで事務作業を減らして人にしかできない支援へ時間を戻す。
その使い方が大事なんやと思います。
増やす前に守れるかを考える
これから登録支援機関が考えるべきなのは、
何社まで営業するかだけではありません。
どの企業と長く関係をつくるのか。
一社あたり、どのくらいの採用計画を一緒につくるのか。
どの地域へ集中するのか。
いつ支援担当者を採用し、育て始めるのか。
紹介して終わりではなく、
入国前教育から入社後の定着まで、誰が関わるのか。
そこまで考えないと、営業が順調な会社ほど支援体制が苦しくなります。
新しい企業を増やすことを否定しているんちゃうんです。
僕も増やしたいです。(本心)
クリエからより多くの企業と外国人材をつなぎたいと思っています。
ただ、その成長の裏側で支援担当者が疲弊する。
企業が十分な支援を受けられない。
外国人材が相談できないまま、一人で悩む。
そんな状態はつくりたくありません。
支援担当者の担当上限が突きつけているのは、
単なる数字の問題ではないと思います。
あなたの会社は、何人紹介できますか?ではなく、
紹介した人たちの、その後まで見られますか?ということです。
営業力で入口を広げる。
支援する人と時間を確保してその先を守る。
どちらか一方では足りません。
増やすことと、守ること。
この二つを同じテーブルで話せる登録支援機関だけが、
これから生き残っていくんやと思います。
──外国人材、現場からは以上です。
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