四万十町を歩き、高知城に登り、鏡川の夕日を眺めた話
四国の鉄道路線が特急も含め3日間乗り放題になる「四国バースデイきっぷ」で四国を巡る旅行記、その5。今回からは土讃線編だ。
前回は朝の宇和島で天赦園を訪れたのち、トロッコ列車に乗って四万十町の窪川に到着したところまでを扱った。
今回はその続きで、窪川の町歩きからスタート。
四万十町をぶらぶら
窪川駅は平屋の駅舎と小さなロータリーがまさしく「田舎の主要駅」といった風情で、妙に落ち着く。

ちなみに四万十町に隣接する自治体として四万十市という市もあり、別々の自治体が同じ名前を名乗っているという珍しい現象が起きている。四万十市は四万十川の下流域に位置しており、中心部は古くから栄えた城下町である。前回の四国旅行では宿泊地の1つでもあった……が、中心部の観光はあまりできていなかったなあ。
駅前からいきなり狭い道へと吸い寄せられていく。裏路地大好き人間としては見逃せない狭さだった。

細い住宅道路の奥に見える、木造の小さなアーチ橋。

この湾曲具合がなんとも美しい。

そしてまた橋。今度は現代的なコンクリート橋だが、車が離合するのは難しそうな狭さだ。

この川はあと少しのところで四万十川に合流している。

それにしてものどかな景色で、時間の流れがゆっくりに感じられる。

その後、駅から少し離れた定食屋で腹を満たし、さらに南下。ツタに覆われた廃屋のような喫茶店を過ぎると……

田舎町に突然観光地っぽいエリアが出現。

岩本寺に到着。四国八十八ヶ所霊場の1つである。

そんな由緒正しい寺院だが、なにやらポップなイラストとトゥクトゥクが置かれている。このギャップ感がなかなか面白い。

白装束のお遍路さんらしき人たちの姿も見かけた。私も続いて参拝する。

前回のトロッコ列車ではリサーチ不足と判断ミスによりあまりマナー的によろしくない乗車方法を選択してしまったため、反省とともに懺悔した。

参拝を終えて町歩きを続けると、なにやら大きな古民家が目に入った。現在はカフェとして営業しているらしい。

小さな川沿いに猫を発見……とここで突然「ぶわっくしょん!!」と大きなくしゃみをしてしまう。

犯人はもちろん花粉である。前回の天赦園で「ちなみに、鼻は花粉の影響であまり効いていなかった。」と書いたように、元々朝から鼻の調子は悪かった……が、トロッコ列車で大自然の風を浴びるうちに許容値を越えてしまったようだ。

というわけでここからは、晴れて花粉症トラベラーとして旅を続けていくことになった。

そのまま駅へ戻ろうとしたがまだ少し時間に余裕があったため、駅周辺をもう一回りしてみる。

小さな神社を発見したので、こちらでも懺悔しておいた。

それにしても、田舎町の木々が生い茂る小さな高台にひっそりと鎮座する神社……なんとも趣深い雰囲気だ。

……といった感じで時間をギリギリまで使い、駅のホームに戻ってきたのは次に乗る便の発車5分前。ちょうどタイミングよく特急あしずりがホームに滑り込んできた。

これまでは車両の前寄りに座っていたが、今度は方向が変わったこともあり後ろ寄りに。宇和海と同じく1号車の一部が指定席で、それ以外は自由席という運用になっている。

宇和海の時はグリーン車からの普通車だったため設備の見劣りが目についたが、今度は鈍行列車(しかもずっと立ち)からの特急なので、なんて快適なんだろうと感動していた。
あしずりで高知へ
後ろの方に座ると、カーブで車体がぐいっと傾く感覚がよく伝わってきて面白い。並行する道路のカーブミラーと見比べると、かなり傾いている様子が見て取れる。

道中では、窪川駅を 45 分ほど先に出発していた観光列車「志国土佐 時代の夜明けのものがたり」を追い抜く。観光列車ゆえにビュースポットでの徐行やイベントなどが行われるため、高知にはこの特急あしずりの方が1時間近く早く到着する。……というか、純粋な所要時間で考えるとこの観光列車は鈍行列車よりも遅かったりする。

ちなみに四国バースデイきっぷは特急も乗り放題だが、観光列車は対象外。乗車券以外の部分は別途課金が必要になるため注意が必要だ。
……とここで突然、カーテンから虫が出てきてしまった。駅停車中に追い出そうとしたがなかなか捕まらず、最終的に完全に弱りきって倒れたところを紙ですくって車掌さんのところまで持っていき、運転席の窓から放り出してもらうという妙な連携プレーが炸裂した。まあ命は助からない気がするが、車内で力尽きるよりは自然に還る方が良いだろう……ということで徳を積んだということにする。

土讃線の一部区間では右側に土佐湾を望むことができる……のだが、左側の席を指定されてしまったため海は見えず。う~ん……やっぱり自分でシートマップを見ながらの座席指定ができないのは、バースデイきっぷの大きな欠点だなあ。

……などとバースデイきっぷの仕様に若干の不満を抱きつつ、高知駅に到着した。

最後まで車内はそこそこ空いていたので、右側の車窓を拝みたいなら指定席を放棄して自由席へ移ってしまうのが良かったかもしれないなあ。
高知観光
この日の宿は高知に取っており、宿にチェックインして身軽になった状態で高知観光スタート。

高知は以前の四国旅行でも泊まったことがあり、今回が2度目の訪問だ。私はなるべく再訪が発生しない旅程を組むため、実は旅行で同じ都市に2回宿泊するのはこれが初めてだったりする。
ビルの屋上に立つ謎の女神像を発見。一体何なんだ……。

で、とほとほ歩いて坂を登っていくと……

高知城に到着。

高知城は前回の四国旅行でも訪れたが、オタク成分の薄い集団での旅行だったのに加え、旅程の都合もあって天守の中をじっくり見学することは叶わなかった。というわけで今回リベンジしに来たというわけだ。

そんなわけでさっそく天守へ。前日に訪れた宇和島城と同じ現存天守だが、建物の規模も観光客の数も全く異なる。この対比がなんとも面白い。

本丸御殿から中へ入っていくと、典型的な書院造りの部屋が並ぶ。

現存する本丸御殿というのは極めて珍しく、天守のみならず本丸の構造物が全て現存しているのは高知城が唯一である。

そして本丸御殿からぬるっと天守へ入っていく。こちらは石落とし。

外から見るとこんな感じ。周囲には忍び返しと呼ばれるトゲトゲが生えており、当時のものがそのまま現存するのはこれまた国内唯一。

で、最上階からの眺めはこんな感じ。

高知市街には高い建物も多いが、城自体がかなり高い位置に建っているので視界はぐっと開ける。

それにしてもここの足場はやたらと滑りがよく、しかも絶妙に外側へ傾斜しているような気がして、少しひやひやした。

高所恐怖症の人だとやや厳しいかもしれない。

それにしても、まじで山に囲まれた地形だな……。

ちなみに中心部の方を向くと手前に見える横長の建物は、高知県立高知城歴史博物館。

……とここでビルの隙間から路面電車を発見。すかさず撮影した。

などといった感じで見学を終え、帰路につく。現存天守ゆえの急な階段をゆっくりと下りていく。

ちなみに天守の規模が大きいこともあり、展示されている資料なども充実していた。私はけっこう読み込んでしまった。

天守と繋がっている櫓にもおまけ的な展示が並んでおり、じっくり楽しむことができた。本丸御殿に入ってからの所要時間は 40 分ほどで、ちょうど閉館時間のタイミングだったため人も捌けて良い感じ。

閉館後であれば天守から展望している人もいないため、撮影するならこのタイミングが一番良いかもしれない。

それにしても、改めてその規模の大きさに驚かされる。これが江戸時代から現存しているというのだから、本当にすごい。

というわけで麓まで下りてきた。日も少しずつ傾いてきて、こちら側からは完全に逆光に。

で、続いては先ほど上から眺めた歴史博物館に突撃。

有料エリアの3階まで上っていく通路はガラス張りになっており、まだ寒さも残る時期にも関わらず灼熱地獄だった。

で、有料エリアへ。博物館ということで資料は大変充実しており、思っていた以上に見応えがあって楽しむことができた。

企画展ではさんごを題材にした展示もあり、高知とさんごの結びつきを初めてちゃんと認識した。こちらもなかなか面白かった。

「死語だけどエモい」……あれ?エモいって死語だったのか。地味に一番の衝撃だった。

博物館の展望スペースからは高知城をバッチリ拝むことができる。

夕日に照らされる高知城を、あえてのド逆光で撮影。

その後はぶらぶら移動しつつ路面電車を撮影。

ごめん行き。謝りながら走る路面電車は世界でもここだけではなかろうか。

そして高知市街を流れる鏡川にて夕日を迎える。見事なグラデーションが描かれており、なかなか幻想的な光景だ。

ガタンガタンという音で振り返ると、1つ向こうの橋を路面電車がゆっくりと通過していた。

もちろん現代的な低床車よりは昔ながらの車両が多数派なため、昭和を感じる光景も撮ることができる。背後の現代的なタワマンとの対比が面白い。

そして地平線へ沈んでいく夕日を撮影……したかったのだが、ちょうど地平線付近に分厚い雲が待ち構えており、その向こうへと行ってしまった。なんと、前々回の宇和島と同じパターンである。雲め……!

そんなわけで完全に日没。

この日の最後はひろめ市場へと突撃した。

高知といえばかつおということで、美味しくいただいた……が、やっぱり観光地ゆえに「パッケージされた体験」感は拭えなかった。前回の四国旅行で、久礼大正町市場で偶然食べたかつおの方が感動は大きかったかも。

なお、休日ド真ん中ということもあり中は大混雑。テイクアウト系の店が多いため、席を確保してから注文に行くのが良いだろう。

席の確保は複数人旅行の方が連携しやすくて有利である……が、立ち食い用のテーブルなど1人の方が利用しやすい場所もあるため、うまく機を見計らって行動すればなんとかなる。ちなみに私はけっこう空き席を求めてさまよってしまった。
翌日
そして翌日。まだ日も昇らぬ時間に宿を出る。

まずは道中見かけた神社に参拝。

東の空がじんわりとオレンジ色に染まっていく様子を眺めながら歩いていき……

早朝の高知駅に到着。

本シリーズの第一回に軽く写真を載せていたが、実はこの3日目が一番鉄道の移動距離が長い日になる。高知を早朝6時に出発し、徳島や高松、琴平、丸亀など四国の東半分をぐねっと移動することになるのだ。

というわけで南風2号に乗車……

かと思いきや、なんとこれを見送る!

明るくなってきた東の空を背景に、列車は高知駅を出発していった。

私はというと、完全に置き去りである。

一体何が起きたのか、旅の疲れが出てきて頭がおかしくなってしまったのだろうか……と引っ張ったところで、今回はここまで。
次回に続く!
