宇和島の天赦園を見てからトロッコ列車で四万十川を上った話
四国の鉄道路線が特急も含め3日間乗り放題になる「四国バースデイきっぷ」で四国を巡る旅行記、その4。これまで四国に上陸してからひたすら予讃線を巡ってきたが、今回はいよいよ予土線の出番だ。
前回は宇和島城に登り、チャリで市街を走った後に九島で夕日を眺めるという、なかなか王道感のある旅行記になった。
今回はその続きで、翌日の朝からスタート。
宇和島の朝
まずは宿泊していた宿の屋上から日の出を拝む……と思ったのだが、宇和島市街はすぐ東側に山がそびえ立つ地形になっている。山の向こう側はすでにオレンジ色に染まっているのだが、肝心の太陽はまったく顔を見せる気配がない。

そんなわけで、朝食を済ませたり歯を磨いたりしてから再び屋上へ。山の間から光が漏れ出しており、幻想的な光景だ。

そして宇和島駅を発着する列車もバッチリ見ることができる。……列車と言いつつ、1両編成だが。

こちらは特急宇和海。昨日、松山~内子・内子~宇和島で利用した時はどちらも2両編成だったが、この便はなんと4両編成。休日早朝というあまり需要の大きくなさそうな時間帯だが、この後の時間の利用を見越しているのだろうか。

日が山から顔を覗かせる直前、漏れ出た光線がゆっくりと広がっていく光の演出を楽しむことができた。

そして遂に顔を出した太陽……も美しかったのだが、地平線から出てくる日の出と違ってすでに昼間の明るさに近いため、残念ながら直視はできない。従って、写真もなし。

その後は昨日に続きチャリを借りて市街へ繰り出す。九島サイクリングの影響でチャリ用の筋肉はすっかり筋肉痛だが、今回の旅ではこれ以降チャリに乗らないので、筋肉を使い果たす勢いでペダルを回した。
宇和島市街を再びぶらぶら
まず向かったのが宇和島港。

朝から漁業関係者たちで活気があり、邪魔にならないようにしながら港の空気をこっそり吸ったりウロウロしたりしていた。

で、その後は港の近くにある宇和島市立歴史資料館へ。

前々回の内子でチラ見した内子町ビジターセンターと同じく元々は警察署として建てられ、国の登録有形文化財にも指定されている。

現在は資料館としてなんと無料で開放されている……のだが、開館時間前だったため外をチラ見するだけで終了。これまた内子町ビジターセンターと同じ流れなのが、妙におもしろい。

天赦園へ
で、再びチャリで少し走りたどり着いたのが天赦園。

宇和島藩の藩主が隠居所として整えた日本庭園で、なんと国の名勝にも指定されている。

8:30 という少し早めの時間から開園しており、朝型人間の私にとってはありがたい仕様である。

中央に大きな池がどんと構えている、いわゆる池泉回遊式庭園だ。

看板で存在を主張してきたのは、養老の滝。

だいぶ小規模な滝だが、心地よい水音を奏でていた。

こちらは春雨亭。

残念ながら中には入れないが、大きく開かれたふすま越しに楽しむことができる。

池のほうから眺めると、これがまたなかなか趣深い書院である。朝の光の中で見ると、建物そのものが庭の一部になっている印象を受けた。

ちなみにこんな早朝から訪れる観光客は私くらいのようで、人間が一切視界に入らないまま楽しむことができた……のだが、管理の人がブロワーで落ち葉などを掃除しており、ブオオオオオオオオオンという音が響いて耳的には風情が台無し状態だった。まあ、掃除するとしたら一番人の少ない時間にやるのが良いから、仕方ないことだろう。

そんなわけで、耳からの情報は一切シャットアウトして主に目で楽しむことにした。ちなみに、鼻は花粉の影響であまり効いていなかった。

池に沿ってぐるっと周っていく。

日本庭園らしい、落ち着きのある良い空間だ。派手な見せ場があるわけではないが、歩くたびに少しずつ変わっていく景色を楽しむことができる。

ちなみに竹・藤・菖蒲で有名らしいが、藤も菖蒲も開花時期ではなかったため少し寂しい感はある。

ただ、そのぶん今の状態は落ち着いており、これはこれで趣深い景色だ。

奥に見えるアーチ状の棚には白玉藤が咲くらしい。開花時期にもまた訪れてみたいものだ。

渡り石を発見。

渡った途端、池の鯉が一斉に集まってきて少し恐怖な光景に。園内で餌が売られており、観光客がよくばら撒いているのだろう。それにしても、石と石のわずかな隙間を大きな鯉が挟まりそうになりながら通り抜ける様子がなんとも面白かった。

天赦園からは宇和島城もバッチリ見える。隣接する公園の桜と相まって美しい光景だった。

……といった感じで天赦園の見学は終了。天赦園のすぐそばには、ゴリゴリの和風建築とレンガの壁という不思議な組み合わせの建物を見つけた。が、何か特別な建物というわけではなさそうだった。

その後は宿に戻ってチェックアウトを済ませ、宇和島駅に到着。ここからは再び乗り鉄の旅が始まる。

改札を抜けると……おや?何やらトロッコという表示が。

向かいのホームには発車を待つ特急宇和海……と、その奥に見慣れぬ車両。

ちなみに宇和島駅は行き止まり式のターミナル駅。この車止めが終着駅感を出していて、なかなか良い雰囲気。

で、こちらがこれから乗る予土線の車両……なのだが、この日はトロッコ列車を牽引して「しまんトロッコ」としての運用に入っているようだ。

予土線ではしまんトロッコ以外にも0系新幹線を模したホビートレインなど、レジャー需要を意識した車両が走っている。ローカル線でありながら、遊び心はかなり強い。

いやしかし……私が調べた時はこの便は普通列車での運行だったはずなのだが、土日だとトロッコが付随するのか。あまりもリサーチ不足すぎる。
しまんトロッコに乗車
トロッコの影響か車内はそこそこの乗車率で、座席もほとんど埋まっている状況だった。予土線はロングシート車ゆえに、乗客の多い状態で車窓を楽しむのは難しい。というわけで、今回は前面展望を選択。

北宇和島駅で予讃線と分かれると、線路に草が生い茂るなど一気にローカル線の様相と化す。

予土線は四国一周を構成する路線の1つながら、特急列車も走らない完全なるローカル線だ。

対向列車とすれ違い。特急列車がないならせめて普通列車はクロスシートにしてほしいものだが、いろいろな事情があるのだろう。

沿線は見事な田舎景色。のどかだなあ。

菜の花畑を発見。黄色い絨毯のようになっており、美しい景色だ。

川を渡る橋もどこか心細い感じがして面白い。

しばらくすると広見川という川に合流。

ここからは川に沿って一気に山間部へと分け入っていく。

沈下橋を発見。

沈下橋というのは洪水などの増水時に水面下へ沈む橋のことで、低コストで比較的楽に作れることから、水害の多い山間部などで採用されていた建築方式だ。増水時の潜水を想定しているため橋の構造は大変シンプルで、流木や土砂が引っかからないよう欄干も設けられていない。

……と、以前の四国旅行で四万十川を巡った時の旅行記から自己引用。
そして江川崎駅に到着。反対側には0系新幹線のホビートレインが。

トロッコ車両も江川崎から利用可能となり、停車時間も少し長めに取られているためホームに出て写真を撮っている人が多かった。

ホビートレインの中はこんな感じ。鉄道車両の中に鉄道模型が展示されているというのは、なんかマトリョーシカ的で面白いな。

で、ここから私もトロッコに移動……と言いたいところだが、トロッコ列車の存在を認知できていなかったため当然ながら指定席券を購入できていない。車掌さんは「江川崎で席が空いていれば座っていいですよ~」と言っていたが、江川崎では他にも席を購入していない人の対応でわちゃわちゃしていたため、ひとまずは前面展望を続けることに。

存在意義の怪しい短すぎるトンネルを通過。

広見川に変わってここからは四万十川を上っていく。ちょうど見えている長生沈下橋は、前回の四国旅行で訪れた場所だ。

で、有名な半家駅を出たあたりで振り返ると車掌さんも手が空いていたため、声をかけてトロッコへ移動……したは良いものの、進行方向を向いた窓側席がちょうど埋まってしまっていたため、微妙な感じに。

立って利用しても良いか伺ったところ大丈夫とのことだったので、見どころに合わせて車内をうろつくスタイルを選択した。

沿線は左右どちらにも絶景ポイントがあるため、両方楽しむなら立ち利用が強かったりする……のだが、車端部には観光案内のアテンダントさんが乗っているため、中央の通路をうろうろしないといけない。

写真だとトロッコ側面の棒が写ってしまい微妙な見映えになってしまうが、四万十川の雄大な景色を窓ガラスなしで楽しむことができるのは大きい。

……がしかし、やはり他の乗客の視界を遮ることにはなるため、許可が下りているとはいえ迷惑な行為には変わりなかった。猛反省である。

赤い鉄橋。後ろに写る山々の緑との対比が美しい。手前に写り込んだ棒は気にしてはいけない。

またしても沈下橋。現代でもこのような橋が残っているというのは、やはりすごい。昔ながらの生活の知恵が、そのまま景色として残っているわけだ。

その後はトンネルを連続で通り、山の中を突き抜けていく。

そして土佐大正に到着。トロッコ乗車区間はここまでとなる。

それにしても、トロッコ列車の乗車体験が非常に微妙なものとなってしまった(他の乗客に迷惑をかけたのも含め)のは、今回の旅行で最大の失敗となった。事前リサーチの網をなぜかすり抜けていたのはもちろんだが、それ以上にトロッコ列車だと判明してからのリカバリーが最悪だった。
席が空いていれば乗れるとわかった時点で、e5489 などでシートマップを確認して江川崎でさっさと席を確保してしまえば良かった(または無駄な出費になるが予約してしまうとか)のだが、運に賭けてしまったのが最悪手。
……この反省は次に活かすとしよう。
窪川へ
で、ここからは一般車に移動して再び前面展望。川奥信号所にて四万十くろしおラインが合流。

そして予土線の運行上の終点となる若井駅にて、けっこう降りていく人がいた。若井駅自体はただの田舎駅だが、中村方面へ乗り継ぐ客がそれなりにいるのだろう。
で、この便は次の窪川駅にて終点となる。実は若井~窪川は三セクの四万十くろしおラインに属するため、18きっぷ利用の場合は課金が必要だ。バースデイきっぷはここも乗り放題区間に含まれるため、問題なし。

そんなわけで窪川駅に到着。ちょうど入れ替わりで中村行きの気動車が出発していった。窪川での乗り換え時間は用意されていないため、乗り継ぐ場合は先ほどの若井駅を利用することになるわけだ。

トロッコ列車の乗客は駅構内のレストランに吸われていったが、私はせっかくなので街歩きを楽しむことにする。

……といったところでだいぶ分量も増えてきたため、一旦ここで区切ろうと思う。
というわけで次回に続く!
