高知のカオス建築と大歩危峡を見に行った話
四国の鉄道路線が特急も含め3日間乗り放題になる「四国バースデイきっぷ」で四国を巡る旅行記、その6。きっぷの有効期限としては最終日となる3日目だ。
前回は四万十町を観光してから特急あしずりで高知へ移動し、高知城・鏡川の夕日・ひろめ市場といった定番スポットを巡る話を書いた。
そして翌日早朝、南風2号に乗って北上する……かと思いきや、そのまま列車を見送るという謎の行動に出た。

これは私の頭がおかしくなってしまったからではない。たしかに、元々の旅程ではこの列車に乗る予定だった……が、徳島線で接続する特急が存在せずひたすら鈍行移動を強いられる事態になっていたのだ。

計画段階では「特急・グリーン車ばかりだとバリエーションが少ないので、鈍行列車も入れて緩急付けてみるのも面白そう」と思い、徳島線の鈍行を許容しつつ、高松から琴平まで琴電を使う旅程を組んだ。
しかし、予土線をひたすら鈍行列車に乗ってみて鈍行列車欲はすっかり満たされてしまった。すると今度は「特急乗り放題なのに鈍行や私鉄に乗るのは虚無なのでは」という気分に。そこで、高知に着いてから急遽旅程を変更したのである。

こういう場当たり的な柔軟さこそ、フリーきっぷ旅行の強みである。最終的に私が乗るのは2時間後の南風6号となった。ではなぜこんな時間に駅へ来ているのかというと、こちらの鈍行列車に乗るためである。鈍行列車欲は満たされたと言ったそばからの矛盾であるが、行きたい場所が特急の止まらない駅なので仕方なし。

そんなわけで特急南風の数分後に鈍行列車も出発。

東の空は薄い雲が覆っており、日の出前の赤焼が淡いグラデーションをなしており大変美しい。

川を渡ると、まもなく次の駅に到着。

高知駅の隣、薊野駅にて下車。休日早朝ということで静まり返っていた。

周りは住宅街となっている。空の色の移り変わりを楽しみながらしばらく歩いていくと……

道路の奥になにやら異質な雰囲気の建物を発見。

高知のカオス建築、沢田マンションだ。
沢田マンションを見学
素人の夫婦が建築した鉄筋コンクリートの集合住宅で、長い年月の中で何度も増築を繰り返したことから複雑な構造を成しており、日本の九龍城とも呼ばれている建物だ。

実は以前香港を訪れた時から日本のカオス建築についても興味が出ており、沢マンというのが高知にあるというのも認知していた。今回旅程を組み替えるにあたってその存在を思い出し、急遽訪れてみることにしたのである。
入口付近にはなにやら解説があり、普通に観光スポット化していそうな雰囲気すらある。このバス停はもちろん本物ではない。

実際に訪問してみて初めて知ったのだが、昼の時間帯であれば内部の見学ができるほか、民泊という形式で宿泊することもできるらしい。もしまた高知を訪れる機会があれば、泊まってみるのも面白そうだ。

なお、現在も多くの人が普通の生活を営んでいる集合住宅である。見学の際は当然ながら迷惑にならないよう注意が必要だ。

それにしても、すごい構造になっているな……。2階部分へ自動車でアクセスするためのスロープが付いているという、一般的な集合住宅では全く見られないカオスっぷり。

屋上からはニワトリの元気な鳴き声が響いていた。こんな集合住宅、沢マン以外ではありえないだろう。

ちなみに至近の県道沿いにはヤマダ電機や小僧寿し・はるやまなど典型的な地方のロードサイド店が立ち並んでおり、さらにスタバも近くにある。この典型的・均質な郊外の光景と、異質なカオス建築が並び立っている様子が実に趣深かった。

一応駅も徒歩圏内ではあるし、デカいイオンモールもギリギリ歩けなくはない距離にあるので、意外にも便利な立地だったりする。
高知駅へ
……といった感じで沢マンを外から見学した後、とほとほ歩いて宿へと戻り、朝食を摂取してチェックアウト。

再び高知駅へ。

現代的な高架駅で発車を待つ南風ととさでんの組み合わせが面白い。

というわけでホームへ。

南風の発車数分前に、隣へあしずりが滑り込んできた。この早朝便は 2700 系による運行でグリーン車付き。この日は4両編成での運行だった。

時間ギリギリになったところで、いよいよ乗り込む。

外側は完全にアンパンマンに支配されたラッピング車両だが、グリーン車は通常の車両と変わらない。

そんなこんなで列車は高知駅を出発した。
土讃線を北上
しばらく平野を走り抜けてから、一気に山間部へと突入。

右へ左へと車体を傾けながら、ディーゼルエンジンの力強い音を響かせて山を一気に登っていく。

土讃線はここから香川県に抜けるまでひたすら山が続くが、実は標高的には山に入って2駅目の繁藤が最高地点だったりする。つまりここからは基本的には下り坂だ。

最高地点を越えてからは穴内川に沿って北上し、やがて吉野川に合流する。

今回の旅では、ここから徳島までひたすら吉野川に沿って下っていくことになる。

トンネルも多いが車窓はかなり面白い。基本的に川の右岸を走るため、岡山・高松方面の場合は進行方向左の席がおすすめだ。
大歩危を観光
……といった感じで車窓を楽しんでいると、列車は高知県を抜けて徳島県に突入。県境を越えて1駅目の大歩危駅にて下車した。

大歩危小歩危で有名だが、かなりの難読地名ではある。

ちなみにここから祖谷のかずら橋まではバスが発着しており、30 分ほどでアクセスできる。

……といっても祖谷のかずら橋は前回の四国旅行で訪問済みなので、今回は大歩危の景色をのんびり眺めるのが目的だ。
駅舎はこんな感じ。

そして吉野川を渡る橋へ。

下を覗いてみるとけっこうな高さ。

大歩危小歩危は古くから観光地として知られており、国の名勝にも指定されている絶景だ。

反対側はこんな感じ。日の当たり方も相まって、ガラッと雰囲気が変わるのが面白い。

高くそびえ立つ遺構は旧道の橋脚とのこと。大自然の中でボロボロになった大きな人工物が残っている光景は、人類滅亡後感があってなんとも趣深い。

で、ここからは対岸の国道をとほとほ歩いていく。歩道はかなり狭いので車には注意が必要だ。

20 分ほどで道の駅に到着。

川岸に突き出した展望台があったので、先の方から景色を眺める。

ゴツゴツと岩が連なっている様子がなんとも美しい。

そして奥の方には観光遊覧船の乗り場が。ゴツゴツした岩肌の渓谷にコンクリート造の人工物がそびえ立っている様子が妙に面白い。

道の駅の中はこんな感じ。

妖怪屋敷という謎の博物館もあったが、今回は時間の都合でスルー。

地下が駐車場になっているのだが、そこからさらに下ることができる。

コンクリートの破片が大量に転がっており行き止まりかと思ったが、このまま川の近くまで下りれるようになっていた。

それにしても、ゲームの世界に入り込んだかのような不思議な雰囲気だ。

で、下まで来た。先ほど遠目に見た遊覧船乗り場と同様に、この道の駅もコンクリートが崖下から国道の位置までぐぐっと伸びた構造になっている。

草をかき分けていって……

最下層の広場に到着。ポツポツと謎の出っ張りがあり、魔法陣でも描いたら何かが召喚できそうな空間だ。

吉野川の景色はこんな感じ。見事な大自然だ。

反対側はこんな感じ。ゴツゴツと岩が目立つ。

なお、この場所からでも川まではまだそれなりの距離がある。この岩を至近で眺めるには遊覧船に乗るしかないようだ。

先ほど景色を眺めた展望台を下から見上げる。

といった感じで景色を眺めていると次の便の発車時刻も近づいてきたため、そろそろ駅へと戻る……ってそうか、これ登らないといけないのか。

バスがあれば帰りは乗ろうかなと思っていたが、残念ながら接続する便がなかったためまたしても細い歩道を歩いていく。国道からは木々が生い茂っているため川を見ることはほとんどできないのだが、一部開けているところを発見した。

しばらく待っていると南風が2両編成でガタガタと走っていった。都会的な雰囲気を持つ 2700 系が大自然の中を走り抜けていく様子が面白い。

というわけで駅の方へ戻ってきて、先ほどの橋からもう一度吉野川を眺める。渓谷になっているがゆえに日の傾きで陰の様子も変わりやすく、時間の経過とともに様々な顔を見せてくれそうだ。

駅に戻ってきたのは発車5分前……だが、そのわずかな時間を利用してホーム脇の展望スペースに下りてみた。

先ほど景色を眺めた橋を今度は下から見上げてみる。これもまた美しい。

……といった感じでギリギリまで時間を使い果たし、再び南風に乗車。

続いては車窓からの大歩危を楽しむ。遊覧船もバッチリ目撃。

そして大歩危から小歩危へと移り変わるあたりで、土讃線は吉野川を越えて左岸へと移る。

それにあわせて私も右側へ移動!

小歩危からは吉野川が右側に来るため、高知から大歩危までは左側の席を取り、大歩危からは右側の席にしていたのである。そして大歩危から小歩危の間は、デッキから左側の景色を眺めるというなかなか落ち着きのない行動をしていた。

前日のあしずりでは車窓が微妙な席を指定されてしまったこともあり、今回は車窓を楽しみ尽くそうという執念がにじんでいたのだろう。
徳島線を乗りつぶす
で、列車はまもなく阿波池田駅に到着。土讃線はここから吉野川に別れを告げて香川へ向かうが、私は徳島線に乗り換えるため下車。

駅前にはアーケードがある……が、一般的な商店街とは異なり普通に車がガンガン通行する道路となっている。

小さな野外ステージも発見。駅から徒歩1分という抜群のアクセス性。

……といった感じでわずか 10 分の乗り換え時間をフル活用して駅周辺を散策し、またしてもギリギリにホームへと戻ってきた。ここからは徳島線の特急剣山に乗車だ。

この便にはゆうゆうアンパンマンカーという、子供用のプレイルームが設置された車両が連結されている。

が、私は一般車の指定席を取ったため隣の何の変哲もない車両へ……っておおおおい!!前が壁の席じゃあないか!

一番前だと窓の景色もぐいっと首をひねらないと見づらいため、なかなか苦しいところである。

それにしても、この便はみどりの窓口で左側の窓席を指定したのだが、まさかこんなことになるとは……やはりシートマップを見て自分で席を選べる方式にしてほしいところだ。

……などとバースデイきっぷの仕様に文句を言いつつ吉野川を下っていき、やがて高徳線が合流。複線のように見えるが単線が2つ並んだ単線並列となっており、この便はこのまま右側通行で進んでいく。

といった感じで徳島駅に到着。これにて徳島線の乗りつぶしは完了だ。

キリが良いので、今回はここまでとしたい。
おわりに
今回観光した沢マンと大歩危は前日にいきなり旅程を組み替えて急遽決定したものだったが、事前リサーチ不足の状態でもしっかりと楽しむことができ、満足度は非常に高かった。一方でどちらもあまり多くの時間は取れず消化不良感は否めないため、また機会があれば再訪したいところである。
また、今回のようにバースデイきっぷでの四国特急旅にチャレンジする場合は、徳島線が意外とボトルネックになるので留意しておくと良いだろう。徳島線と土讃線は同じ吉野川に沿った路線だが、比較的市街を通る徳島線は普通列車が主体だ。一方の土讃線は大自然を走るが、岡山~高知の大動脈を結ぶ特急街道ということで1時間に1本の特急が確保されている。両路線の役割の違いを実感できる旅となった。
というわけで、次回に続く!
