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【明日を掘る】変化の中で、次の足場を見つけるために

何でも調べられるようになったはずなのに、何を信じればいいのかは、前より難しくなった気がします。

何でも作れるようになったはずなのに、自分が何を作りたいのかは、簡単には見えてこない。

何でも選べるようになったはずなのに、次にどこへ足を置けばいいのかは、むしろ分かりにくくなっている。

情報は増えました。
便利なものも増えました。
学ぶ場所も、働く場所も、発信する場所も、以前よりずっと増えています。

昔なら専門家や大きな組織にしか扱えなかったものが、いまは個人の手元にも届くようになりました。

それ自体は、とても大きな変化です。

けれど、選択肢が増えたからといって、自分がどこに立てばいいのかまで見えやすくなったわけではないのかもしれません。

自分にとって本当に必要なものは何なのか。
何を選び、何を使い、何を手放せばいいのか。
これからの仕事や学びや暮らしの中で、自分はどこに足を置けばいいのか。

マガジンとしてまとめていくに当たり、今回はその問いから始めます。




「明日を掘る」という名前に込めたこと

マガジンの名前を、明日を掘るあすをほるにしました。

明日を見るあすをみる、ではありません。
明日を予測あすをよそくする、でもありません。
明日をつくるあすをつくる、と言い切るのも、少し違う気がしました。

しっくりきたのは、|掘る《ほる》という言葉でした。

未来は、いつも遠くにあるもののように語られます。

新しい技術が出てくる。
新しい働き方が生まれる。
新しいメディアが広がる。
新しい市場が立ち上がる。

でも、これからにつながる手がかりは、突然どこかから降ってくるわけではないのかもしれません。

過去に起きたこと。
いま足元で変わっていること。
誰かが試したこと。
一度忘れられた考え方。
まだ十分に言葉になっていない違和感。
小さな道具や、場所や、習慣や、記録。

そうしたものの中に、次に考えるための手がかりが埋もれていることがあります。

だから、明日を空想するのではなく、足元を掘る。
過去と現在の地層の中から、次に立てる場所を探す。

明日を掘るあすをほる」という名前には、そんな意味を込めています。

未来を予測するのではなく、過去と現在の中から、次の足場になる手がかりを掘り起こしていく。[JKMF編集部作成]

未来を予測するより、足元を掘る

このマガジンでやりたいのは、未来予測ではありません。

「これからはこの技術が来る」
「このサービスを使わないと遅れる」
「この働き方に乗り遅れるな」

そういう話は、もう十分すぎるほどあります。

もちろん、新しい技術やサービスを無視するつもりはありません。
生成AIも、AIエージェントも、ノーコードも、個人出版も、学び直しも、働き方の変化も、これから何度も扱うことになると思います。

ただし、それらを「新しいから」「便利だから」「話題だから」という理由だけで取り上げるつもりはありません。

見たいのは、その奥にある変化です。

それは、個人の仕事をどう変えるのか。
学び方をどう変えるのか。
創作や発信の場所をどう変えるのか。
暮らしやコミュニティに、どんな影響を与えるのか。
そして、自分が次にどこに立つのかを考えるうえで、どんな手がかりになるのか。

大事なのは、変化を追いかけることではなく、変化の中で自分のよりどころを見つけることだと思っています。

そのために、まずは足元を掘ってみたいのです。


最初の手がかりとして、ホールアースカタログを読む

このマガジンの最初の大きな手がかりとして、ホールアースカタログを読み直してみたいと思っています。

ホールアースカタログは、1960年代後半に始まった、アメリカのカタログ型の出版物です。

ただ、単なる商品カタログではありませんでした。

そこには、本、道具、技術、建築、教育、暮らし、コミュニティ、思想などが横断的に並んでいました。重要なのは、それらが単に紹介されていたことではなく、個人が自分の環境をつくるための入口として編集されていたことです。

いまでは、Whole Earth Indexを通じて、ホールアースカタログとその周辺出版物を実際に読むことができます。

このアーカイブを眺めていると、そこにあるのは「便利なものの一覧」ではなく、自分で学び、自分で選び、自分で暮らしや仕事や環境を組み替えていくための手がかりだったのではないかと思えてきます。

MoMAは、ホールアースカタログを、道具へのアクセスを開き、印刷物上のコミュニティを形づくる試みとして紹介しています。

Long Now Foundationも、ホールアースカタログを、読者が自分の環境を形づくるためのものとして紹介しています。そこでは、ホールアースカタログが “evaluation and access device”、つまり、価値を見きわめ、必要なものにたどり着くための装置だったと説明されています。

ここで掘り起こしたいのは、古い雑誌の懐かしさではありません。

個人が、自分の環境をどうつくるのか。
何を選び、何にアクセスし、どんなよりどころを持つのか。
その問いです。

現代の私たちは、ChatGPTやSNSやスマートフォンやnoteを、必ずしも道具として意識して使っているわけではありません。それらは、環境であり、習慣であり、仕事場であり、発信の場所であり、人との関係そのものでもあります。

だからこそ、ホールアースカタログをそのまま現代に置き換えるのではなく、そこにあった考え方を掘り起こしてみたいのです。

日本語でホールアースカタログの概要をつかむうえでは、下記の『ホール・アース・カタログ』概論も参考になります。

このマガジンでは、ホールアースカタログを文化史としてだけ読むのではなく、変化の中で次の足場を探すための参照点として読み直していきたいと思います。

ホールアースカタログは、商品一覧というより、個人が自分の環境をつくるための入口を編集したメディアだった。[JKMF編集部作成]

このマガジンで掘っていくもの

明日を掘るあすをほる」で扱うものは、ひとつの分野には閉じません。

技術、情報、メディア、出版、仕事、学び、創作、暮らし、場所、習慣、コミュニティ、制度、思想、人物、失われたもの、これから残りそうなもの。

ただし、何でも扱うという意味ではありません。

大事にしたいのは、それが次の足場を考える手がかりになるかどうかです。

これまで私は、「繰り返される個の時代」というマガジンで、ガラケー文化、mixi、GREE、ケータイ小説、GitHub、Hugging Face、AIエージェントへとつながる流れを見てきました。

そこで気になっていたのは、単に新しいサービスや技術が出てきたということではありません。

個人が、自分の発信や制作や学びの場所をどう持つのか。
プラットフォームの中で、どこまで自分の場所をつくれるのか。
大きな流れに乗るだけではなく、自分の手元に何を残せるのか。

そういう問いでした。

たとえば、ガラケー文化について書いたときも、見ていたのは懐かしい携帯電話の話だけではありませんでした。

小さな画面の中に、自分の場所をつくる。
投稿する。
読まれる。
つながる。
そこに、現在の個人発信やAI時代の制作環境につながる何かがあったのではないか。

明日を掘るあすをほる」では、そうした問いをさらに広げていきます。

技術やメディアだけではありません。
仕事の仕方、学び方、暮らし方、記録の残し方、考えるための環境、誰かとつながる場所、続けるための仕組み。

そうしたものを、次の足場という視点から掘っていきたいと思っています。


やらないことも決めておく

長く続けるためには、何をやるかだけでなく、何をやらないかも決めておく必要があります。

このマガジンでは、流行を追いかけるだけの記事にはしないつもりです。

新しいサービスを紹介するだけ。
AIはすべてを変える、と煽るだけ。
昔はよかった、と懐かしむだけ。
成功者の逸話を並べるだけ。
稼げるノウハウに寄せるだけ。
不安を煽って、何かを売るだけ。
便利さだけで、ものごとを評価するだけ。

そういう方向にはしないようにしたいと思っています。

もちろん、便利なものは扱います。
新しい技術も扱います。
過去の文化やメディアも扱います。
仕事やお金や続けるための仕組みも扱います。

ただ、そのときに見たいのは、表面的な新しさや便利さではありません。

それは、次に考えるためのよりどころになるのか。
自分の判断を支えてくれるのか。
生活や仕事や学びを、自分の手元に取り戻す助けになるのか。
あるいは逆に、便利さの名のもとに、自分が立つ場所を見えにくくしていないか。

そういう視点を忘れないようにしたいと思っています。


本文は無料で読める形が基本

明日を掘るあすをほる」マガジンの本文は、できるだけ無料で読める形にしたいと思っています。

入口になる考え方や、主要な論点は、誰でも読める場所に置く。
途中から読んだ人にも、何を考えているのかが分かるようにする。
誰かが次の足場を探すときの、手がかりになるようにする。

一方で、こうした記事を続けるには、調査や資料確認、構成づくりにも時間がかかります。本文に入れきれなかった資料や、記事にする前のメモ、採用しなかった論点も残ります。

そのため、有料記事やメンバーシップで、調査メモ、編集の裏側、次に掘るテーマ候補などを共有していくことを視野に入れています。

これは、本文の大事な部分を有料に隠すためではありません。

無料で読める本文を続けていくために、その裏側にある調査や制作過程も別の形で残していきたい、という考えです。

公開された記事と、その裏側にある調査や判断の記録。
その両方を持つことで、「明日を掘る」を長く続けていける形にしたいと思っています。

技術、情報、仕事、学び、創作、暮らし。扱う対象は広くても、見る軸は「次の足場になるか」に置く。[JKMF編集部作成]

変化の中で、次の足場を見つけるために

変化は止まりません。

技術も、情報環境も、働き方も、学び方も、発信の場所も、これからさらに変わっていくと思います。

でも、変化をただ追いかける必要はないのかもしれません。

遠くの未来を眺めるだけでは見えないものがあります。
足元を掘ることで見えてくるものがあります。
過去と現在の中に、次の足場になるものが埋もれていることがあります。

明日を掘るあすをほる」では、そうした手がかりを少しずつ掘っていきます。

ホールアースカタログから始めるかもしれません。
パーソナルコンピュータを読むかもしれません。
インターネットや個人投稿文化を振り返るかもしれません。
生成AIやAIエージェントを、別の角度から見直すかもしれません。
仕事や学びや暮らしの中にある、小さな違和感を掘るかもしれません。

大事なのは、何を扱うかではなく、そこから何を見つけるかです。

いまの私たちは、何を掘り起こし、何を次の足場にできるのでしょうか。

ここから、少しずつ掘っていきたいと思います。


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