「聞こえない」ことが、「知らされない」ことになってはいけない――避難所で取り残されたろう者の声
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災害時、避難所にたどり着けば、ひとまず安心できる。
けれど、その場所で大切な情報が届かなかったらどうなるでしょうか。
秋田魁新報が紹介した「避難所ろう者に情報届かず 『見える方法で伝えて』」という記事は、熊本地震の避難所で起きた情報格差を伝えています。
周囲について行って、初めて分かった
熊本県宇城市の避難所で暮らしていた、ろう者の70代男性。
部屋にいた人たちが一斉に外へ出ていくのを見て、男性も「何だろう」と後を追いました。そこで初めて、パンやご飯が配られていることを知ったといいます。
支援物資の案内が音声だけで行われれば、聞こえない人には届きません。
食べ物が配られていることも、生活上の注意も、今後の予定も分からない。必要なものを受け取れず、困っていることを周囲へ伝えるのも難しくなります。
避難所にはいる。けれど、情報の輪からは外れている――そんな状況が生まれていました。
「大丈夫」という返事だけでは分からない
男性を手話で支援したのは、熊本県手話サークルわかぎ宇城グループの今泉洋子さんです。
今泉さんは男性に筆談ボードと血圧手帳を渡し、体調を尋ねられたときの伝え方を説明しました。
地震の後には、気にかかる人たちへ連絡もしています。しかし、「大丈夫」という返事を受け取って実際に訪ねてみると、自宅が傾いていたり、冷房のない場所で寝ようとしていたりする人もいたそうです。
言葉どおりに受け取るだけでは、本人が置かれている状況をつかめないことがある。直接会い、尋ね方を工夫する必要がある――今泉さんの経験は、支援する側に大切な視点を投げかけています。
必要なのは、特別な設備だけではない
ろう者へ情報を届ける方法は、手話だけではありません。
例えば、避難所からのお知らせを紙に書いて掲示する。ホワイトボードに物資の配布時間や場所を書く。筆談する。スマートフォンの文字入力を使う。身振りや絵を交えて伝える。
大切なのは、「音声で知らせたから、全員に伝わった」と考えないことです。
聞こえ方や普段使っているコミュニケーション手段には個人差があります。手話が分からない人もいます。まず本人に、どの方法なら分かりやすいかを尋ねる必要があります。
行政の支援資料でも、聴覚障害のある人には、文字や絵、手話、身振りなど「目に見える方法」で情報を伝えることが勧められています。
情報もまた、命を守る支援物資
災害時に必要なのは、水や食料、毛布だけではありません。
「何が起きているのか」
「どこで何を配っているのか」
「いつ、どこへ移動するのか」
「困ったとき、誰に相談できるのか」
こうした情報も、人の安全と健康を守る重要な支援物資です。
しかも、掲示や筆談による情報提供は、ろう者だけのためのものではありません。騒がしい場所で放送を聞き取れなかった人、日本語の音声を理解しにくい人、案内を聞き逃した人にとっても役立ちます。
誰かへの配慮として始めた工夫が、結果として避難所全体を分かりやすくするのです。
「見える方法で伝える」を避難所の標準に
災害が起きてから、初めて対応を考えるのでは間に合わないかもしれません。
避難所の運営訓練に、次のような確認を組み込んでおく必要があります。
音声で案内した内容を、同時に掲示する
物資の配布場所と時間を文字で示す
受付に筆談用具やコミュニケーションボードを用意する
手話、文字、身振りなど、本人が希望する伝達方法を確認する
新しい情報が本人に届いたか、個別に確かめる
どれも、決して大がかりなことではありません。
「聞こえない人がいるかもしれない」と想像し、伝え方を一つ増やす。その小さな行動が、災害時の孤立や深刻な体調悪化を防ぐことにつながります。
「聞こえない」ことが、「知らされない」ことになってはいけない。
記事にある「見える方法で伝えて」という訴えを、特別なお願いで終わらせず、避難所運営の当たり前にしていくことが求められています。
参考:
#防災 #避難所 #ろう者 #聴覚障害 #情報保障 #災害支援 #共生社会







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