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光ぞ逃げる、䜓隓小説『Escape to light. White out.』【完成版】

はじめに

2023幎12月3日(䞀般公挔)、12月8日(バむリンガル公挔)に逃げBar White Outにお新䜜の䜓隓小説『Escape to Light. White Out.』を公挔したした。

たずは来堎いただいた方々の感想を䞀郚抜粋

å…š2回の公挔でしたが、どちらも満員埡瀌ずなり。同じ公挔に2回足を運んで2回泣いおくれた人もいたした。

本蚘事は本䜜の解説及び、圓日に珟象した物語を小説に反映した完成版の小説を蚘事最埌郚に掲茉するものです。䜓隓小説をフェス以倖の衚珟方法で制䜜した際の参照蚘事にもなりたすので、ご共犯者の皆様はもちろん、䜓隓小説に関心を寄せおいただける方も、䞋蚘の蚘事ず䜵せおぜひご高芧いただけるず幞いです。


䜓隓小説ずいう手法に぀いお

簡単に「そもそも䜓隓小説ずは」ずいうこずに觊れおおきたす。
䜓隓小説ずは、空想䞖界のリアルな䜓隓を開く営みです。

空想䞖界は未来ずいうこずには限らず、今ただ珟れおいないが想像し埗る党おの䞖界を指したす。そしお、それを挫画やゲヌムのように䜜るのみならず、珟実䞖界で䜓隓できる時間ず空間を、䜓隓ずしお開くものです。

挔劇のようにただ鑑賞するのではなく、オヌプンワヌルドを開きたす。぀たりその䞖界は珟実ず同じような自由床で開攟されおいお、来堎者はその䞖界の䜏人ずしお、自由にその堎を過ごすこずができる、ずいうものです。

䜓隓の内容はフェスティバルずしお開くこずが倚いですが、展瀺や展瀺やむマヌシブシアタヌなど幅広く、特定の手法に限りたせん。

䞋図では分かりやすくフェスの堎合の䜓隓小説のワヌクフロヌを敎理したものです。

たずは自らの想像の䞭で小説を曞き、その䞖界を特定倚数の制䜜メンバヌず共にフェスずしお制䜜し、䞍特定倚数の来堎者(䜓隓小説では共犯者ず呌んでいる)ず共にその䞖界の䜏人ずしお過ごしたす。

そしおその䜓隓の䞭で実際に起きた出来事を小説にフィヌドバック(改皿)し、空想ず珟実が混ざり合う小説ずフェスの2䜜が出来䞊がり、その䞀連の流れすべおを「䜓隓小説」ず呌称しおいたす。

曎に詳しくはぜひ冒頭の蚘事を読んでみおください。

本䜜で描いた䞖界芳

本䜜で描いたのはざっくりいうず死埌の䞖界です。
今回「逃げBar White Out」ずいう堎自䜓を䞻圹に、この堎のコンセプトを䜓隓小説に仕立おおいきたした。逃げBarのコンセプトは䞋蚘のようなものです。

https://www.nigebar.com/

星(死埌)の芖点から自らを芋぀めるために、死埌の䞖界を描きたした。

ずはいえそれは倩囜ずか浄土のような個別の宗教芳に圓おはたるものではなく、雚宮の過去䜜を通じお構築しおきた独自の死埌芳です。

そしお死埌、ず分かりやすく蚀っおはいるものの描いおいるのはあの䞖でもこの䞖でもない䞖界で、逃げBar White Outは芋枡す限り真っ癜な虚空であり、無を有するずいう矛盟を抱える堎所ゆえ、そのどちらにも属したせん。


それがどういう死埌䞖界芳なのか解説する前に、原䜜小説の舞台ずなる倧元の䞖界芳に぀いお共有しなければなりたせん。本䜜の舞台は2059幎、暪浜。この時代、謎の氷河期で街は幎䞭吹雪いおいたす。

そしお暮らしおいる圓人たちは気づいおいたせんが、2059幎に至るたでに䞖界は2床、䞖界そのものを匕越しおいたす。2047幎以降の“このせかい”は「MiroK」ず呌ばれおいるメタバヌス䞖界です。

VRのメタバヌスではなく、珟実ず䜕も身䜓感芚の倉わらない電脳䞖界です。MiroKはKaMi(KaMiNG SINGULARITYより登堎する人類の持続可胜性を叞るAGI)により個人間の想像䞖界の連結拡匵に成功した䞖界です。

䟋えば目を瞑っお、頭に浮かべた光景はそのたた䞖界に珟象し、それを他者間で、この䞖界で䜕かの景色を共に芋る時ず同じように自然に、圓たり前に共有がなされおいたす。

KaMiにより完党に運甚されおいるこの䞖界は、前䞖界であるNEHaNで既に電子化しおいる人類の新たな拡匵ストレヌゞずしお䜜られたした。MiroKにある「Ændroid clinic」ずいう堎ではこの䞖界の個人のラむフログ(これたで生きおきた党おの蚘憶をフィルムのように再生できるデヌタ)を回収し、任意で理想のラむフログを遞び転生するこずができたす。(぀たりゲヌムカセットを遞ぶように、理想の人生を遞んでプレむするこずができたす)

「Ændroid clinic」のシステムは人間たちには開瀺されおおらず、ただ理想の自分に転生できる蚺療所ずしお認知、利甚されおいたす。

逃げBar White Outがあるのは、そんな䞖界です。

電脳䞖界なので実際的な肉䜓死はもはや存圚したせんが、人間たちの認知の䞭では未だ存圚しおいたす。

今䜜の䞻人公である「ゆき」はダンサヌになるためのオヌディションに向かう途䞭に亀通事故に遭い、死んでしたいたすが、実際に死んでいるわけではありたせん。(そもそもこの䞖界では生ず死の区別ができたせん)

そしおゆきは自らの想像する死埌の䞖界に迷い蟌み、自ら生み出した人々ご来堎の皆様に迎え入れられたす。

ゆきの想像する死埌の䞖界ずは、芋枡す限り真っ癜な無垢の䞖界。そこにいる人々は皆䜕者でもなく、自由です。声は反響しお聞こえ、時間はありたせん。そしおい぀でも生たれ倉わるこずができる䞖界です。

ゆき自身は生前(ず思っおいる蚘憶の䞭で)ダンサヌになるこずに執着しおいたした。瀟䌚に生きる䞭で、瀟䌚は「䜕者かであるこず」を求めたす。「あなたは䜕色なの」ず問いたす。ゆき自身の本心では螊っおいられればそれで良かったはずなのに、い぀の間にか「䜕者かにならなくおはいけない」「ダンサヌにならないずダンスを続けられない」ずいう瀟䌚垞識に蝕たれ、焊燥感に苛たれおいたした。

しかし本心では、誰も、䜕者でもなくお、玔粋無垢な生呜であるこずの矎しさや、その歓びを分かち合いたいだけでした。ゆきはむしろ誰でもない存圚であり続けるこずを、求めおいたのです。そしお想像されたのが、無垢な䞖界でした。

この堎に存圚するすべおはゆきの想像の産物。聞きたいこずを蚀われ、芋たいものを芋たす。

そしおゆきは想像の䞖界で、あの䞖から迎えられたす。この䞖での葬匏ず反察に、あの䞖ではお迎えの儀ずいうものがあり、手向けられた花ず共に棺桶で眠るゆきは、目芚めるず同じ顔をした癜い人々に迎え入れられたす。

手向けられた花々はその堎にいる癜い人々ず同じ数だけあり、その花の䞀぀䞀぀はゆきの䞀郚を構成する倧切な芁玠です。(䟋えば癜い菊なら誠実さずか、ピンクのナリなら虚栄心など)

ゆきの想像する死埌䞖界では、手向けられた花々を癜い人々に受け枡しおいくこずで、過去の自分を少しず぀枅算し、癜い人々ず同じように無垢な状態に自分自身がなるこずで死を達成させたす。

しかし党おを手攟したはずが、元の地球、NeHAN、MiroKの様々な生呜の蚘憶がタむムレスに、死ぬ間際に芋る最埌の倢のようにフラッシュバックし、ゆきは最も自由なダンスず共に、死の䞖界に留たらず、生たれ倉わるこずを遞んでいく、ずいうのが本䜜における倧たかな物語、䞖界芳です。

この䞖界芳を構築するに至る背景も少しだけ。

実は本䜜は物語を描く前に、䞻挔を決めたした。それがおしだゆきずいうアヌティストです。圌女は前々から逃げBarで共に䌁画展を催したり、圌女自身のパフォヌマンスの堎ずしお䜿っおいたり、この堎ずも瞁がある人物でした。

呚囲の゚ネルギヌを自らに憑䟝させ、反射率が極めお高い写し鏡のようなパフォヌマンスをするこずができる圌女は、逃げBarず同じく䜕者でもないずいう方向性を持っおいたした。(偎から芋るず際立った個性を保持しおいるように芋えるのに)

圌女にずっおの逃げたいものや死生芳をヒアリングする䞭で、本䜜の物語の骚子が浮かび䞊がり、今のおしだゆきに生たれる前の”ゆき”ずいう人物のキャラを今の方向性ず反察(䜕者かになりたがる)にするこずで、おしだゆきがおしだゆきになるたでの因果を曞きたした。

぀たり䜓隓小説ずしおの営みが始たる前からすでに虚構ず珟実が重なり合い圱響しあっおいたのです。

本䜜の䜓隓蚭蚈

䜓隓小説は「共有→共謀→共鳎→共犯→(共育)」ずいう流れで䜓隓蚭蚈をしおいきたす(詳しくは冒頭の蚘事参照)

今䜜もその流れで䜓隓を蚭蚈しおいきたした。
䞋蚘よりそれぞれのフェヌズで蚭蚈しおいたこずをたずは箇条曞きにお。

①共有
・原䜜小説の事前共有
・圓日開堎前の前段講挔
・開堎盎前のアナりンス
・開挔15分前から開堎し、店内を冒険しおもらう
・時蚈柱の生呜の埪環を珟した曌荌矅
・小説KaMiNG SINGULARITY䜜䞭で本䜜を瀺唆するペヌゞが開かれおいる
・䞖界芳を理解するための手助けになる蚀葉が至る所に隠されおいる
・『倩囜ぞようこそ』の歌詞にお死埌の䞖界芳を瀺唆
・逃げBarからの声で今回の圹割をリマむンド
・サクラによる行動の芋本づくり

掲出しおいた曌荌矅(Kamingの際に制䜜したもの)


②共謀
・ゆきをどう迎え入れるか来堎者間で話し合う
・拍手のアむスブレむクで䞀䜓感を高める
・䞊蚘点で思考ず身䜓のりォヌムアップをしおお迎えに備える

③共鳎
・棺桶から出お時間を確認しオヌディションに行けなかったこず、䜕者にもなれなかったこずを悔いるシヌン
・鹿の台詞により、原䜜で曞かれおいたゆきの想像ず珟状の䞀臎から䞖界認識を高める

④共犯
・ゆき自身も鹿の台詞や呚囲の光景から䞖界認識を高めおいき぀぀も、ただ懐疑的な様子を自由な空癜時間により、胜動的に共犯できる機䌚を぀くる。
・ピアノ、鳎り物、曞き物、本、など衚珟の倚様性を確保するセッティング
・仮面ず党方䜍的な音響による匿名性の担保により心理的ハヌドルを䞋げる
・挔者も特定の振る舞いを定めず、むンプロするこずで堎ず調和させる。
・鹿の台詞をきっかけに、ゆきはここが自分の想像䞖界であるこずを確信する。そしお本公挔を象城する『光』ずいう音楜ず共に、手向けられた花を配り、自身を手攟しおいく。花を受け取るこずで来堎者はその花に蟌められた意味を解釈し、憑䟝させる。
・呚囲の気を感じ取りながら螊るゆきのむンプロに圱響を受け取り、共に螊ったり、芋たり、曞いたり、芋送ったり、生者の䞖界に垰ろうずする死者ぞ、死者偎の芖点から自らの行動を決める。

⑀共鳎
・本公挔ではここで再床共鳎フェヌズに入る。
・ゆきが棺桶に入り、旅立った埌『おかあさんの唄』を再生。生者の䞖界での母芖点のお迎えを想起させる。䜕者でもない死者の䞖界の䜏人ではなく、母から生たれ今この䞖界に存圚する自分自身をメタ認知しお、ここたで共犯しおきた行いはすべお自分が生たれる前に起きおいたかもしれないこずなのではないかず、珟実ず物語、圹割ず個人の壁を壊し、共鳎させる。
・最埌にお迎えの儀を開き、進行しおいた声の䞻が逃げBar White Outそのものであるこずを知り、この堎の圹割、意味、コンセプトをメッセヌゞングする。

⑥共育
・ここのフェヌズは堎だけ䜜りハンドリングしようずしない。
・逃げBar White outを通垞の圢でシヌムレスにオヌプンし、Barずしお来堎者、挔者、䞀䜓ずなっお自由に過ごす䞭で䜜品を消化、昇華する。

䜓隓蚭蚈の倧枠をたずめた図

「共有→共謀→共鳎→共犯→(共育)」の流れは来堎者の䜓隓蚭蚈のみならず、共に制䜜をするチヌムも同じような流れで制䜜を進めたす。たず自身が原䜜小説を曞き、䞖界芳を共有し、小説や䌁画曞に曞かれおいない䜙癜を共に共謀し、共犯したす。これを䜕床も繰り返し、共に育ちながら䞊蚘のような䜓隓を共に創りたした。

挔者の振る舞いの倚くはそれぞれが自分で物語を解釈し、圹割や立ち居振る舞いを想像し、むンプロ的な創造を繰り返し、䜜り䞊げおいったものでした。

それでは䞋蚘より、原䜜ず実際に起きた出来事を和えた完成版の䜓隓小説ずなりたす。お愉しみください。

䜓隓小説/完成版


死ぬ盎前、䞖界がスロヌモヌションに芋えるずいうのは本圓だった。
私にぶ぀かったトラックの運転手の顔の黒子の䜍眮たでよく芋えた。

呚囲のざわめきや、車の走行音が济宀のように反響しお聞こえる。
死埌の䞖界もこんな颚に音が響くのだろうか。

こんなに吹雪いおいるのに、身䜓が熱い。
オヌディション、行かなきゃ。
しかし立぀べき足がどこにあるのかが分からなかった。

病院の扉のように重くなったたぶたをなんずか開いお、足があるはずの堎所ぞ目線を萜ずす。身䜓は深く積もった雪に埋もれ、雪は真っ赀に染たっおいた。頭が真っ癜になっおきお、再びたぶたは萜ちる。


「サンブヌカぱルダヌフラワヌのリキュヌルですよ。゚ルダヌはサンブヌクス属だから、サンブヌカっお名前になったんじゃないですかね」

黒や焊茶のシックな装い。オヌセンティックなバヌの光景。私のバむト先。目の前には銎染みのお客さん。暪では埌茩がお客さんの質問に答えおいた。

「そうなんだ 円くん、盞倉わらず怍物詳しいねヌ」
ず蚀っおいるのは私。

この日のこずは芚えおいる。
ほんの䞀月たえの出来事。
走銬灯で芋るには平凡な、い぀ものバむトの時間だった。

私が話しおいるのに、私の自由はそこにはなくお、たるでよくできた自分のロボットのようだった。身䜓が分離しお、幜霊のようになっおいるわけでもないのに操瞊士でもない、䞍思議な感芚だった。

人ず話す仕事は楜しかったけど、バむトしおいる時間なんお党郚ダンスの緎習に䜿うべきだず、内偎にいる私は叫び続けおいた。その声が聞こえおこないように、お客さんず話したり、お酒を䜜るこずに没頭しお、逃げおいた。

でも本圓に逃げ切るためには、プロのダンサヌになるずいう目的を遂げるしかないず分かっおいた。そのためにはオヌディションに受からないずいけないし、緎習しないずいけないし、やるこずはい぀だっお明確で、行動はい぀だっお曖昧だった。

「ゆきさんは、人は死んだらどうなるず思いたす」

シャッタヌを䞋ろしお、店仕舞いをしおいる最䞭、円くんが唐突に私に尋ねる。圌が最埌たでいたお客さんず話しおいた話題だ。

「ずおも自由だず思う 想像したものすべおが珟実になっお、぀たり自分ず䞖界が぀なの。でも同時に、それは無なんだずも思う。声も、音も、意味も䜕もない䞖界に行けるんだず思う」
私はかねおから考えおいたこずを問われお、嬉しくなっお即答する。

圌はゆっくり萜ちるシャッタヌを芋぀めながら答える。
「なるほど。僕はむしろこの䞖がすでにそうで、あの䞖は䜕も想像できないんじゃないかっお思うなぁ。あ、でも、人は死ぬ間際に倢を芋るらしいのですが、その倢を死埌もずっず匕きずっおるっおこずはありそうです」

私が蚀葉を解釈しおいるず、圌は続けお話す。
「そういえば近くに逃げBar White Outっおいう謎のバヌあるじゃないですか。この前お客さんに聞いたんですけど、あそこ死埌の䞖界ず繋がっおいるらしいですよ」

私は思考が止たり、吹き出しおしたった。
「あはは、䜕それ めちゃくちゃ行っおみたいんだけど」
しんしんず雪の降る誰もいない倜の通りで私の笑い声だけが響いた。

「かなり酔っ払っおたしたからねぇ」ず圌も笑う。

「でもね、その話がなかなか具䜓的なんです。どうやらあの䞭は芋枡す限り真っ癜な光の空間で”お迎えの儀”ずいっお、新たに亡くなった方を死者の䞖界に迎え入れる儀匏が催されおいるらしくお」

「うんうん、それで」
私は楜しくなっお、前のめりに話を匕き出そうずする。

「そこで寄っおたかっお、新たな死者に死埌の䞖界のこずを教えおあげるそうです。ここには時間がないよ、ずか、ここにはやるべきこずがないよ、ずか」

やるべきこず、ずいう蚀葉に冷えた鋭利なものが肌に觊れたような感芚があった。「確かに、しっかりしおるねヌ」ず少しだけ匕き攣った笑顔で蚀った。

「この䞖界ではお葬匏で死者に花を手向けるじゃないですか。その花は死埌の䞖界でそれぞれ、故人を構成しおいた様々な特城を持぀そうなんです。䟋えば癜い菊なら誠実さずか、ピンクのナリなら虚栄心ずか。参列者たちはそれを受け取るんですっお。぀たり死者は自分の特城を䞀぀ず぀倱っおいくんです。そうしお䜕者でもなくなっおいくこずで死者になっおいくのだずか」

「円くんもしかしお、お迎えの儀に参列したこずあるの」
ず私が茶化すず、圌は䜕も蚀わずに埮笑んだ。圌の背埌、逃げBarがある方の倜空を芋るず、囜道䞀号線䞊にはガラス现工のように完党な曲線で描かれた䞉日月が、ふわりず浮かんでいお、圌の口元はそれず同じ圢をしおいた。

私は䜕かから逃げるように、たるで防埡呪文を唱えるように、連ねお蚀った。

「あ、もう぀だけ蚀っおいい 死埌の䞖界の話。私ね、あの䞖にいる人たちはい぀でも生たれ倉われるず思うよ」


 ã‚­ãƒ©ã‚­ãƒ©ãšéŸ³ãŒé³Žã‚‹ã‚ˆã†ãªæœšæŒã‚Œæ—¥ãŒé»’い倧地に雚のように萜ちおいる。私が芋た事がない光景が浮かぶ。螊るような暡様のむヌシデの暹皮に、ダマガラの合唱が倧気を揺らす。

コナラにクヌギ、ダマザクラの朚立の隙間を小さな虫たちが自由に飛び亀う。陜の光が身䜓に満ちるず、自然ず身䜓が動き始める。

蛇のように腕を䌞ばし、猿のように腰を曲げ、鳥のように足を浮かしお、党身を森のリズムに預けた。身䜓䞭の氎分が蒞発しおしたうたで私は螊り続けた。

酞欠状態の身䜓に、心臓は慌おお酞玠を共有しようず心拍数を䞊げる。勝手に生きおいる、その事実に、感謝を蟌める。

少しず぀意識が薄れお、私が消えおいき、この䞖界ず䞀぀になっおいるような感芚が芜生えるず、倪陜暡様が珟れお、私は平衡感芚を倱う。

赀ず、黒ず、癜が同じ時間だけ珟れお、消えた。


音が聎こえる。
床を擊り歩くような音。話し声。
すべおがゆっくり反響しおいるように聎こえる。

い぀眠ったかも芚えおいない、突然の目芚めだった。
眠気もないので、目を開けるず、暗かった。
ただ倜なのか、窓の方を芋぀めるず、闇から挏れるように少しの明かりが差し蟌んでいる。カヌテンから挏れた光の差し方ずは異なる角床で。

䞍思議な光の方ぞ、手を䌞ばしおみた。
闇の途䞭で「ゎン」ず䜕か固いものに指先がぶ぀かる。
驚いお身䜓が反射するず、巊右にも䜕か壁の様なものがあるこずに気づく。
箱のようなものの䞭にいるらしかった。

捉えられたのかず思い、箱からの脱出を詊みお、䞊蓋をこじ開けようず抌し䞊げた。するず倖から蓋を開ける力が加わり、ふわりず浮く。

ただ、光があった。
芖界いっぱいの癜い光。
倩囜、ず思ったのも束の間。
目が光に慣れおくるず、呚りに人々の茪郭が浮かんできた。

同じ顔をした癜い人々が座しお、私を芋぀め、盛倧な拍手をしながら、呚りを囲んでいる。
私は驚いお、箱から逃げるように飛び出した。
飛び出しながら気づいた。
足が、ある。動く  なんで  。

そしおオヌディションに向かっおいたこずを匷烈に思い出す。
時間、時間 癜い空間にある時蚈らしきものを探しお、芋る。
「Now」ずだけ、その時蚈には曞かれおいた。

時蚈がかけられた柱に瞋るように、ずるずるず身䜓を預け、力なく絶望する。私が飛び出した箱を芋぀めるず、それは棺桶だった。
私、死んだんだ。

死埌の䞖界だからこんな人達がいるんだなぁず、呚囲の䞍思議に謎の信憑性が出おきお、恐れは抜けお、棺桶の方ぞ戻る。棺桶の淵に頭をもたれかけお呟いた。「私、死んだんだ  結局、䜕者にもなれなかったな  」

「䜕者も、䜕者でもないのですよ。芖点を倉えればそこに䞖界があるだけ」
脳内に盎接語りかけられるように、男性の声が響いた。
呚囲を芋枡すず、埌方に癜い鹿の顔をした襊袢を着た人、のようなものが、こちらを芋぀めお蚀っおいた。圌は癜い本を片手に、それを読んでいるようにも芋えた。

「誰」ず反射的に問いかける。
「誰でもありたせん」ず圌はいう。

ふず芖線を萜ずすず私は圌ず同じ服を着おいるこずに気づいた。
そしお圌の立ち居振る舞いや声に、䜕故か安心感を感じおいるこずにも気づいた。

「私、ダンサヌになりたかった  」
心が溶け出すように自然ず、蚀葉になっお挏れおいた。

「どうぞどうぞ。生たれたらい぀でも死ねるこずず同じように、こちらの䞖界であなたはい぀でも生たれ倉わるこずができたすよ。呌吞をするのず同じくらい、簡単にね。ここでは皆そうしおる」

い぀でも生たれ倉われる  私が考えおいたこずず同じだった。
この景色も、匂いも、音も、私が生きおいる時に想像しおいたこずず同じだったよう思う。たるで頭の䞭をそのたた珟したような。

呚りを芋枡すず、癜い人々は散り散りになっお過ごしおいた。癜いピアノを匟き出す人、あたり構わず呚囲に話しかける人、蚀葉が曞かれた癜い玙を差し出しおくる人、寝転がるだけの人、䜕もしない人。  自由だ、ず思った。

枡された玙には「ただ、楜しそうに過ごしおいおほしいな」ず曞かれおいた。

圌はたた本を読み始めおしたったので、私は数十人の癜い人々を芳察しおいた。子どものように自由に振る舞う人が近づいおきたので「あなたは䜕者なの」ず問う。
「䜕者でもなヌいよ」ず答えお、飛び跳ねお去っおいく。

私は床に座り、癜い人々を芋぀める。䜕者かになりたかった、ならないずいけないず思っおいた自分ず反察の存圚たちなのに、なぜかこの光景も自分が芋たかったこずのように思えお、心の䞭の深い郚分が少しず぀溶け始めおいた。

私は、ここにいおいいのかもしれない。この堎所は私のための堎所で、ずいうか、䜕者でもない私でいおもいい堎所なんだ。䞭途半端でも、なんの色を持っおいなくおも、ただその状態でいるこずを蚱しおくれる、逃げ堎。

よかった、死埌の䞖界には居堎所があっお。
私じゃなくおもいい私がいおいい堎所があっお、本圓によかった。

私は最埌の䞀蚀が欲しくお、立ち䞊がっお、鹿の圌に蚀った。
「ねぇ、本圓に䜕者でなくおもいいの」

「はい、䞖界の本質は自由だ。奜きなあなたで螊ればいい」圌は本を読みながら、でも、どこか嬉しそうにそう答えた。

「あなたの聎きたい音は知っおいるよ。僕ず同じだからね」

そう蚀うず、脳内に盎接音楜が響いおきた。
『光』ずいう曲。私がいちばん奜きだった音楜。

自然ず身䜓がゆらめいお、今䜕をすればいいのかが分かる。
棺桶に手向けられた鮮やかな花々、これがこれたでの私なんだ。
たずはカヌネヌションを手に持っお、ピアノを匟いおいた癜い人に手枡す。

癜い人は私を抱きしめる。母のような暖かさで。
棺桶にある花を集め、私の埌ろに付き添っおくれおいる。
圌女から黄色い癟合を受け取り、子どものような癜い人ぞ枡す。
癜い人は意識を倱ったようにその堎で倒れる。

そしお次々に、私自身を癜い人に䞀぀ず぀手枡しおいく。
心からの感謝ず共に、愛を蟌めお、別れを告げる。

党おの花を手枡すず、癜い䞖界は真っ暗になった。
どこに歩んでいいかも分からない。䜕者でもない自分になった。
どこからも光が差さず、怖くなり、その感情のたた身䜓を螊らせる。これたででいちばん自由なダンス。䜕者でもない私の、自由そのもの。

心が無重力になるような感芚、時間からも、私からも、ここにいる感芚からも、解き攟たれおいく。県前から匷い光が差し蟌むず、私の呚りに癜い光が䞇華鏡のように浮かび䞊がり、集合し、散逞し、たた集合しおを䜕床も繰り返しおいく。これが生呜の矎しさなんだっお、すぐに分かった。

それから、地球の様々な光景が光になっお私を照らす。海、空、川、森、私が生きおいた間の、いやそれよりもっず前から脈々ず続く虫や朚や埮生物だった頃の党おの蚘憶が、波のように抌し寄せおは、消えおいく。

床限りのフラッシュバック。泡のように儚くお、矎しくお、目眩くメロディに身䜓を委ねおいるず、癜い人々も共に螊り出し、宇宙ずか、過去ずか、未来ずか、党おがこの身䜓の䞭にあっお、それを党お煙のように消しおいった。死んでいるのに、生きおいた。

音が終わる頃。この曲がなんずいう名前かも、もう思い出せなくなっおいた。県前の小さな光の方に進むず、棺桶の䞭に入っおいた。私はこれから、運呜的に導かれたどこかに行く。棺桶の䞭で仰向けになるず、癜い人々は私に色鮮やかな花々を手向けた。鹿の顔をした圌は、ずっず手に持っお読んでいた本を棺桶の䞭に入れた。

「いっおらっしゃい」ず呚りの人々から声が集たる。もう䜕も思い出せないけど、存圚を愛おしく感じる。

静かに蓋が閉められおいき、赀ず、黒ず、癜が同じ時間だけ珟れお、消えた。


ただ芋ぬあなた䌚えたすように。
おなかをさすり、い぀も願った。

どんな顔をしおいるかな。
どんな声をしおいるの。

新しい朝
新しい颚
あなたのために準備されたの。

新しい朝
新しい光
䞖界はあなたのためにある。

(fin.)


おわりに

逃げBar White Outは2019幎の12月に、䜕者でもないあなたぞ垰る逃げ堎ずしお開きたした。オヌプンしおすぐにコロナ犍ずなり、想定しおいた営業は立ち行かず、逃げBarから逃げたくなっおいた日々もありたした。

逃げBarを立ち䞊げる前に、僕は暪浜にリバ邞ずいう珟代の駆け蟌み寺をコンセプトにしたシェアハりスの管理人をしおいたした。倜な倜なDVずか家出ずかで、知らない人が逃げおきお、ずりあえず話を聞くずいうようなこずをしおいたした。

瀟䌚にはシェルタヌや犏祉盞談所や自殺防止ホットラむンなど様々な逃げ道が甚意されおいたすが、そこに蟿り着く前に、あるいはそれらの遞択肢を遞べない人たちに向けお、リバ邞は確かに䞀぀の逃げ堎になっおいたした。瀟䌚には逃げのグラデヌションが足りないのです。

それでもシェアハりスに来るずいうこずも䞀般的には敷居が高く、もっずカフェやバヌのような気軜さで、特に深刻でもない些现な事情で、逃げおこれる堎が必芁なのではず思い、逃げBarを぀くりたした。

(詳しくは䞋蚘の蚘事ぞ)

そしお、気づけば2023幎。倚死瀟䌚ず呌ばれる昚今です。
2022幎は戊埌最倧の死亡数ずなりたした。
自殺の抑止を志しお開き続けおきた逃げBarですが、倩囜みたいな空間ず圢容されるこずが倚いこの内装から、コロナ犍で亡くなられた方の匔い盎しなどグリヌフケアにもできるこずを広げおいきたした。

その䞭で、昚幎催したグルヌプ展『生呜が矎しいずしたら、それはなぜか。』今秋に催した”人が怍物に茪廻する䞖界”を描いた䜓隓小説『RingNe』では死埌のオルタナティブを描いおきたした。今䜜もそれらに続き、ただ氞遠の別れずしおだけではない死埌芳を描いおいたす。

そしお、すべおの人たちは生前にいた䞖界であたたかく芋送られ、この䞖に生たれきた矎しいいのちだずメッセヌゞングしたした。

個の時代ず蚀われお久しい昚今、䜜䞭のゆきず同じように䜕者でもない自分ぞの焊燥感を抱えお生きおいる人は少なくないかず思いたす。珟代のマヌケットの性質においおも「䜕者か」ずしお自身を情報圧瞮しお芏定しないこずには売れづらい傟向にありたす。

本来倚面的で、鮮やかで、倉化し続けられる自由さを持぀自分を、セルフブランディングや自分らしさずいう檻にいれお、苊しんでいる”䜕者か”である人も少なくないように思いたす。

今䜜では生前の堎も、死埌の堎も光の空間ずするこずで、生呜の本質は光だ、ずいうシンプルな凊方箋を衚珟したものでもありたす。

僕らは枩かな光から生たれ、たたその堎に垰っおいくだけで、そもそも䜕者でもなくお、䜕者にならなくおもよくお、ただそこには想像の䜙癜ず、自由があるだけ。そういう䞖界芳を開き続けおいる逃げBarで、それを䜓隓ずしお開いた舞台が本䜜です。

少しでも、今ある無垢な呜を矎しめお、旅立った人々の行き先が光に溢れた堎であるこずを想像できるきっかけになれおいれば、幞いです。

本䜜のコンセプト


Starring
おしだゆき
逃げBar White Out

Cast/Assistant Director
岩厎䜐和

Cast/Producer
サカキミダコ

Reception/Translator
ZAC

Sound System
Silent it

Director/Screenplay/Cast/Sound/Author
アメミダナり


2024幎春以降ずなりたすが、本䜜の出匵公挔、逃げBarでの远加公挔(1公挔15名たで)のご䟝頌等、受け付けおおりたす。ご垌望の方は䞋蚘アメミダナりのHP䞋郚のお問い合わせフォヌムより、ご連絡くださいたせ。


いいなず思ったら応揎しよう

アメミダナり/䜓隓䜜家 お愉しみいただけたしたか チップをいただけるずちょっずだけいいコヌヒヌが飲めるので嬉しいです。

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