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「創䜜倧賞応募」小説「ワシの道草」※30000字くらいです

2026幎版がありたすので以䞋をお読みくださいマセ。





※あらすじ
60代の䞻人公”ワシ”こずモモザワが、遞挙の投祚にいっお垰るたでの物語。”ワシ”は、遞挙の投祚にいく途䞭で孫ハルトに䌚っおピックマン人圢を買いにワタナベ商店にいくこずになる。ピックマン人圢を買っお投祚にいった公民通でゞンくんの兄ちゃんに䌚い、たたもや䞀緒にピックマン人圢を買いにいくこずになる。それから、高校の同玚生キヌ゚のために悪埳業者ず戊ったり新しい出䌚いに少しドキドキワクワクしたりしながら”ワシ”はたたワタナベ商店にいく。
※※



䞀

60代に入っおから、ワシは自分のこずを”ワシ”ず蚀うようにしおみたが、これが家族にすこぶる評刀が悪い。

特に劻はゞゞくさいからやめおくれず蚀う。しかし、60歳を過ぎたらゞゞむではないのか。くさいも䜕もない。ならば幎盞応に自分のこずを”ワシ”ず呌ぶのがワシの䞭では圓たり前のこずだった。

実際にワシが若い頃には、おそらく60歳以䞊のゞゞむは皆自分のこずを”ワシ”ず蚀っおいたものだ。

劻はここでも「そんなこずはない」ず蚀い匵ったが、およそワシの呚りではそうだった。確かにそうだ。きっずそうだった。

劻が嫌がる理由は、あたしたで䜙蚈に幎をずったように感じるから、ずいうこずらしい。劻はワシず同い幎だ。

しかし60歳も過ぎれば劻だっお、蚀っおしたえばババアではないのか。

ワシは劻に、お前も自分のこずを、”あたし”ではなく幎盞応に”このオババ”ずか”あたしゃ”ず蚀うようにしおみたらどうか、ず提案したら鬌の圢盞で怒り始めたので身の危険を感じお、その提案を取り䞋げた。劻は冗談が通じない。

それたでワシは、自分のこずを”私”ず蚀っおいた。

別に普通だ。

しかし、実は長い間”私”は自分のキャラクタヌには合っおいないず感じおおり、蚀うたびにぞその呚りが痒くなったものだ。

ワシは”ワシ”ずいう蚀い方にある皮の憧れがあった。

それは、ワシが子䟛のころ倧奜きだった母方の祖父が、自分のこずを”ワシ”ず呌んでいたこずが関係しおいるかもしれない。

祖父は熊本で生たれ育ったので、

「熊本では子䟛のころからみんなワシじゃよ」

ず、あるずきワシが聞いたずきに蚀っおいた。本圓かどうかは知らないが。ただ、祖父は菅原文倪に䌌たカッコいい男だった。

ずにかくワシの䞭では昔から、幎を取ったら皆”ワシ”ずいうのが圓たり前でワシも圓然そうなるものず思っおいた。

しかし、長幎の瀟䌚生掻のしがらみの䞭で、ワシはなかなか自分のこずを”ワシ”ず蚀うこずができなかった。

もちろん瀟䌚生掻䞊はそのこずで特に問題はなかったし、60代たでは”ワシ”ずいうのもワシのむメヌゞには合わなかったずいうこずもあった。

䌚瀟を退職しお、しかも60歳を過ぎたずき、ワシはもう堂々ずワシず蚀っおもいいはずだ、ず思った。

小銭を貯めお早期退職したので、今は面倒な”しがらみ”もほずんどないし、ここでは”私”こちらでは”ワシ”ず䜿い分ける必芁もない。ワシは”ワシ”䞀本やりで䜕も問題はなかったのである。

ワシは、ワシのこずを”ワシ”ず蚀い始めた。

「今時の60代はそんな幎寄りでもないんだから、”ワシ”なんおおかしいよ。呚りのお幎寄りでも”ワシ”なんお蚀っおる人いないよ。お父さん、もう無駄に幎寄りくさいからやめなよ。しかも䌌合っおないよ」

近所に䜏んでいる30代の長女ミナキにも蚀われたが、ワシがワシのこずをワシず呌ぶのに嚘ずはいえ、ずやかく蚀われたくない。

ワシはワシじゃ。

いろいろ蚀われたずころでワシは”ワシ”を倉える぀もりはない。

䜿い続けおいるず、ワシも”ワシ”以倖だず逆に違和感を感じるようになっおきおいる。やはりワシは”ワシ”なのだ。

”ワシ”ず蚀い始めお、ヶ月もするず呚りにもワシの”ワシ”も定着しおきおいるようだ。

時々、昔の仕事仲間から連絡が来たりしおワシが”ワシ”ず蚀うず「モモさん、ちょっず雰囲気倉わりたしたね」などず遠回しに突っ蟌たれたりもしたが、基本それ以䞊聞いおくる者はいなかった。

ただ”ワシ”ず蚀うようになるず、ワシはなんだか友達付き合いが億劫になっおきた。それは、ワシが”ワシ”ず蚀った時の盞手の埮劙な反応が、段々目に芋えぬストレスになっおきたからかもしれない。

”ワシ”ず蚀うようになっおみるず、䞍思議なこずに蚀葉遣いも䜕ずなくそれに合わせた感じになっおきた。

ワシは男じゃ。このような蚀い方は昔は絶察にしなかったが”ワシ”ず蚀うようになっおみるず「ワシは男です」ず蚀うより「ワシは男じゃ」の方がシックリくる。

ただ、この蟺りはただ付け刃ずいう感じなので、䜿っおいくうちに銎染んでいくのだろうず思っおいる。

最近では劻も諊めたのか、呆れたのかもう䜕も蚀わなくなった。

二

ずいうわけで、今日は遞挙の投祚日だ。

今ずなっおは毎日が日曜日だが、それでも本圓の日曜日は他の曜日ずは䜕かが違う。近所の雰囲気も平日ず違い忙しなさがない。

しかしは今日はい぀もの日曜日ずは違う。どこかはやる気持ちが倏の入道雲のように湧き䞊がっおくるのが自分でもわかる。

今日ワシは、調子に乗っおいる䞎党に鉄槌を食らわすために、怒れる囜民の䞀人ずしお重い重い䞀祚を投げ぀けおやろうず思っおいた。

長い間眠っおいたワシの倧和魂は芚醒し、振り䞊げた怒りの鉄拳を苊しんでいる囜民や未来ある子䟛たちのために振り䞋ろしおやるのだ。

劻は、遞挙に向けおワシがし぀こく䞎党がいかにずんでもないこずをしおいるかを、入れ歯が口から飛び出す勢いでしゃべるものだからワシは実際には入れ歯ではなかったが、もう政治の話になるず面倒くさそうにその堎を離れるようになっおいた。

土曜日の倜、぀たり投祚日の前日、ワシは翌日の投祚に備えお早めに床に぀いた。

日曜日の朝は、6時に起き垃団の䞭で軜く身䜓をほぐした埌、心を平静に保぀ために目を閉じ瞑想をした。劻は別宀で寝おいるので、ワシはい぀もワシのペヌスで朝起きおいる。

幎をずるず朝が早くなるずいうが、ワシはもずもず仕事でも朝がかなり早かったので、退職しおからはむしろ少し起きるのが遅くなった。

劻は毎朝7時くらいに起きお朝食を䜜っおくれる。

以前はワシが朝が早すぎたので、劻は朝食を䜜るこずはほずんどなかったが、退職しおからは毎朝䜜っおくれるようになった。

8時過ぎに劻が䜜った朝食を食べ、9時には投祚に行けるように準備を敎えた。劻は片付けや掗濯などをしおから行くずいうこずなので、ワシは䞀人で家を出た。

投祚所は歩いお15分皋のずころにある公民通だった。

※

ワシは家を出お真っすぐ歩いおいた。

倩気は良いが、䜕しろ暑い。日䞭は今日もかなり暑くなりそうだ。

5分ほど歩いお、最寄りの小さな無人駅に向かう脇道を通り過ぎようずしたずころで、「お父さん」ず声をかけられた。

振り返るず長女のミナキず倫のタカシくん、それに小孊3幎の長男のハルトがこちらぞ歩いおくるずころだった。ミナキ達は近所には䜏んでいるが、たたたたで䌚うこずはそうそうない。これはかなり珍しいこずだった。

「暑いですねえ、、お矩父さん、投祚ですか」

タカシくんが人圓たりのいい笑みを浮かべながらワシに声をかける。

「ああ、君らもか」

ワシは蚀いながら可愛い孫にも声をかけた。

「ハルト、じいじじゃよ、もう倏䌑みかな」

「じいちゃん、ピックマン買っおよ」

ん、なにず聞き返そうずしたずきに、ミナキが「コラ」ずハルトを睚んだ。

「ピックマンだよお、売っおるんだよ、そこのワタナベ商店でぇ」ハルトがワシに蚎える。

「ん、キヌ゚さんずこでか」

ワタナベ商店は、駅前にある小さな駄菓子屋で、ワシの同玚生のキヌ゚さんがやっおいるお店だった。

「お父さん、いいのよ。気にしないで、この前買っおあげたんだから」

「あれはポックリマンでピックマンじゃないよお、オレが欲しいのはピックマンだよお」

珍しくハルトが駄々をこねおいる。䜙皋欲しいのだろう。その、、ピックリだかポックリだか知らないが、、。

「よくわからんが、オモチャくらいワシが買っおやるよ」

「お父さん」

「ダッタヌ」ハルトが歓声を䞊げる。

もう、キリがないのよ、ずミナキが心底呆れながら蚀った。

「お矩父さん、コレ」ずタカシくんが財垃からお金を出そうずしおいた。

「いいよいいよ」ワシは手を振りながら、じゃあハルト、おじいちゃんずワタナベ商店いくか、ず孫の頭を撫でながら蚀った。

投祚に行ったら家にハルトを連れお行くから、ず蚀っおワシはハルトの手をずっお無人駅がある脇道の方ぞ歩き出した。

じいちゃん、ありがずうずハルトは蚀っお柄んだ目でワシを芋䞊げた。

䞉

ピックマンずいうのは、少し前に流行ったゲヌムのキャラクタヌで今幎になっおその人圢を集めるのが、なぜか小孊生の間でブヌムになっおいるそうだ。

最近アニメ化されおテレビで攟送されおいるらしく、ブヌムに拍車がかかっおいるらしい。

ハルトの話だず、ミナキに買っおもらったのはポックリマンずいう敵のキャラクタヌずいうこずだった。

ミナキが、ハルトが欲しがっおいるので気を利かせお仕事垰りに買っおきおくれたずいうこずだ。それはそれでいいのだが、人気なのはやはりメむンキャラクタヌのピックマンらしい。

ピックマンは今非垞に人気があるため、店頭に䞊ぶずすぐ売れおしたうずいうこずだ。ハルトは、友達からワタナベ商店にピックマンの人圢を含めたグッズが売っおいるずいうこずを聞いお、それがどうしおも欲しいのだず蚀う。

ワタナベ商店は、小さな駄菓子屋だがちょっずした野菜や食品、日甚雑貚たで売っおいる。子どもの客が倚いずいうこずで子䟛向けのおもちゃもそれなりに眮いおいる。近くの無人駅を䜿っお孊校に行く高校生なども利甚しおいお、倕方近くなるず、䞋校しおきた高校生たちが店の前で駄菓子を食べながら集たっお話をしおいる。

今日は日曜日なので、お店はやっおないかもず思ったが、ワタナベ商店は営業しおいた。孊校はもう倏䌑みだず思うが、だからこそ子どもたちがお店に来るこずもあるのだろう。

ハルトは、入口の匕き戞をもどかしそうに開けるず店内に入り、目圓おのピックマンずやらをりロりロしながら探した。店内は埮劙にクヌラヌが効いおいる。

レゞのあるカりンタヌを芋るず、い぀もキヌ゚さんが座っおいるむスに芋慣れない女性が座っおいた。

どこずなく面圱がキヌ゚さんに䌌おいるので、ワシはおそらく嚘ではないかず芋圓を぀けた。

「じいちゃん、コレコレ」

ハルトが興奮した様子でワシを呌んだ。

「これ買っおいい」

ハルトは、ビニヌルの袋に入った赀っぜい人圢をワシに芋せ぀けおきた。

「これがポックリか」

「違うよ、ピックマンだよ」

赀い䜓で目が飛び出おいる埗䜓のしれない人圢で、䜕がいいのか党くわからない。こんなものが人気あるのか。

ワシはその赀い人圢をハルトから受け取り、レゞカりンタヌに眮いた。

「これを」

「ハむ、ありがずうございたす」

その女性は、30代くらいだろうか、やはり若い頃のキヌ゚さんによく䌌おいるように思った。

キヌ゚さんは結婚しお実家を離れおいたが、い぀ごろからか母芪ず同居するようになったらしい。キヌ゚さんは離婚しおいるらしいので、それがきっかけなのかもしれない。

キヌ゚さんの母芪は、ワタナベ商店を営業しおいおお店ず別にある実家を行き来しながら生掻しおいたようだが、病気で具合が悪くなりお店は䞀旊閉店した。

父芪はすでに亡くなっおおり、母芪もその埌入院するこずになったようだが、そのうちキヌ゚さんがワタナベ商店を営業するようになった。

「今日はキヌ゚さんは」

ワシはレゞにいるその女性に聞いおみた。

「ああ、母はちょっず具合が悪くお、家で寝おるんです」

「そうですか」

キヌ゚さんが䜏んでいる家は、ワタナベ商店から7,8分ほどのずころにある䞀軒家で、公民通に行く手前にあった。

キヌ゚さんに嚘がいるこずは知っおいたが、東京の方に出おいったず聞いおいた。

「キヌ゚さんの嚘さんかな」

少し銎れ銎れしい感じもしたが、ワシは圌女に聞いおみた。

「あ、そうです。、、ちょっず今垰っおきおお、、」

たたたた垰省しおいるずいう意味だろう、圌女は蚀った。

キヌ゚さんずは同玚生でね、ずワシは蚀いながら人圢の代金を支払った。

「そうですか、、」ず圌女は蚀っおやんわり埮笑んだ。

袋にお入れ、、ず圌女が蚀いかけた時にはハルトが、赀い目が飛び出たその人圢をふんだくっおいた。

ワシは苊笑いをしながら、手を軜く振っお袋が必芁ないこずを圌女に䌝えた。

「ありがずうございたした」ず圌女は、きれいな声で蚀った

ワシずハルトは、ワタナベ商店を出お、来た道を歩いお戻り始めた。ハルトは満足そうに赀い人圢のビニヌル袋を手に持っおいた。

歩きながら気が付いたが、ハルトは赀い人圢、ピックリが描かれたTシャツを着おいた。そんなに奜きなのか。ならば、手に入っおよかったな、ハルト。

ワシずハルトは元の道に戻り、ミナキ達ず䌚ったあたりたで来た。それから二人で公民通の方ぞ歩いお行った。

ハルトずは手を繋ぎながら歩いた。倚くはないがこの道は車も通る。

公民通で投祚しお、垰りにハルトをミナキの家に送り届ける぀もりだったが、よく考えたらミナキ倫婊も投祚で公民通に行くのなら、おそらく途䞭で投祚を終えたミナキ達ず䌚うはずだな、ずワシは思った。

ワシずハルトは信号のある亀差点を越え、公民通の方ぞ歩いお行った。遞挙に行く人だろうか、チラホラ人が公民通の方ぞ歩いおいる。

ハルトは人圢を買っおもらったこずに満足したのか、喋らずに喜びを嚙みしめるように歩いおいた。

四

道路沿いにある、玄関前にシルバヌの軜自動車が停たったこじんたりずした䞀軒家の前たで来た。

道路から芋える玄関の衚札には「枡蟺」の文字がある。キヌ゚さんの家だ。道路に面した郚分にはフェンスがあり、庭の方はよく芋えなくなっおいる。

ワシは芋るずはなしに、フェンス越しに䞭を芋ながら歩いおいた。

庭の方に人の気配がしお、ワシが「ん」ず思っおいるず、

「ひゃあ」

ず女性の声がした。キヌ゚さんの声のような気もしたが、違う気もした。ワシはキヌ゚さんのそんな声を聞いたこずがなかったから。

ワシは、ハルトず顔を芋合わせフェンスの䞊から䞭を芗いおみた。

フェンス越しに芋える庭には、小さな畑があっお野菜らしき䜕かが敎然ず怍えられおいた。畑の脇のずころに濃い茶色っぜいカヌディガンを矜織ったキヌ゚さんが尻もちを぀いおいた。

「キヌ゚さん」

ワシはハルトず䞀緒にフェンスを回り蟌んで庭に座り蟌んでいるキヌ゚さんに駆け寄った。

「モモザワさん」

キヌ゚さんがワシを芋おいった。

「倧䞈倫ですか」

「あ、ええ、庭のトりガラシを獲ろうずしたらフラッずしちゃっお、、」

「䜓調が悪いずきは動かないほうがいいですよ」

ワシは、キヌ゚さんの身䜓を支えながら起こしお、玄関の方たでゆっくり寄り添っおいった。

「ありがずうございたす。もう、倧䞈倫です、、」

玄関を入り腰を降ろしたキヌ゚さんは申し蚳なさそうに蚀った。

ワシは、぀いさっきワタナベ商店に寄っおきたこず、キヌ゚さんが具合が良くないず嚘さんに聞いたこずをキヌ゚さんに䌝えた。

ハルトが、これ買った、ず蚀っお赀い人圢をキヌ゚さんの前に掲げた。

「そうでしたか、倧したこずないんですけど、嚘が䌑めっお蚀うもんで、、」

少し埮熱があるくらいなんですけど、ずキヌ゚さんは蚀った。

「無理はしないで䌑んだほうがいいですよ、倏颚邪はし぀こいずいいたすし」

蚀い終えるず「では」ず蚀っおワシはハルトず玄関のドアを開けお倖に出ようずした。

「あ、あの、、」

キヌ゚さんの声に、ワシは振り返った。

「あの、ありがずうございたす」

いえ、ず蚀っおワシはハルトず玄関を出た。

五

「ワタナベ商店のおばちゃん、危なかったね」

ハルトが、歩きながら少し興奮したように蚀った。

「そうじゃな」ワシは蚀いながら、考えおいた。

ワシは、キヌ゚さんのこずをキヌ゚さんずいうが、キヌ゚さんはワシのこずをモモザワさんず蚀う。

以前からだが、なんずなくバランスの悪さを感じる。

キヌ゚さんずは、高校の同玚生で同じクラスだった。クラス内にワタナベさんが人もいたので、他の二人ず呌び分けるために皆キヌ゚ず名前で呌んでいた。ワシは呌び捚おするこずはできなかったが、そもそも名前を呌ぶこずもほずんどなかったず思う。女子には”キヌちゃん”ず呌ばれたりもしおいた。

ワシは、この圓時キヌ゚さんに淡い恋心を抱いおいたが、孊校を卒業しお離れ離れになるず自然ず忘れおいった。

人生の喧隒の䞭で、ワシはキヌ゚さんのこずを思い出すこずもあたりなかったが、たたたた閉店しおいたワタナベ商店が、たた再開したず聞いおなんずなくフラッずお店に寄っおみた。

このずきにはキヌ゚さんのこずはすっかり忘れおいたが、実は高校の時にワシはこっそりワタナベ商店の堎所を芋に来たこずがあった。どこで聞いたのかは芚えおいないが、キヌ゚さんの家が隣町に䌚っお、お店を営んでいるず知っお、若気の至りだが芋に来たのだ。

わざわざ隣町から自転車で芋に来たので、圓時はそれなりにやはり恋心があったのだろう。今ならストヌカヌず蚀われおしたうのかもしれないが。

ずにかくそこで、本圓に久しぶりにキヌ゚さんず再開した。もちろん高校の同玚生ずしお。キヌ゚さんは昔の面圱を残しながらも、やはり幎盞応になっおいた。

ワシは、時の流れずずもに自分の感芚の倉化を感じおいた。昔ず違っお実に気安く話せる自分に、若干驚いおもいた。そもそもそんなに話をする関係性ではなかったが、これが時の流れず同玚生の気安さずいうものだろうか。

積もる話もなくはなかったが、共有できる話も少なく、近況を少し話す皋床で、それでもしかし、ワシは春のように静かな喜びを感じおいたのも事実である。

「モモザワさんも”ワシ”っおいうお幎になったのね」

ず蚀っお面癜そうに笑うキヌ゚さんに、幎甲斐もなくたた恋をしそうになった。

「じいちゃん、公民通行くんじゃないの」

ハルトの蚀葉で我に返った。芋るずワシらは公民通の前たで来おいた。䞀人だったら通り過ぎおいたかもしれない。

「そうじゃった」

ワシはハルトの頭を撫でながら蚀った。

そういえばミナキ達ずすれ違わなかったな。キヌ゚さんのずころに行っおいるずきに行き違ったか。なら、ハルトをミナキの家たで送り届けないずな。

公民通の入口は道路の裏手にあり、ワシらは建物を回り蟌んで歩いおいった。

投祚を終えた人であろう䜕人かの人ずすれ違ったが、やはりミナキ達はいなかった。

「じいちゃん、ちょっず投祚しおくるからハルトはここで埅っおおくれな、暑かったら䞭に入っおおもいいから」

公民通の入口前でワシはハルトに蚀っお、公民通の䞭に入っおいった。

六

投祚を終えた。なんずなく街の空気ずしお䞎党に察する怒りを感じおいたワシは、投祚所の静かな雰囲気に少し拍子抜けしおいた。

なんずいうか、皆怒りに燃えおいるず思っおいたのだ。しかし考えおみるず、投祚所を運営する人たちが、そんな怒りに燃えおいるはずもなかった。

投祚所は至っお静かで、厳かな雰囲気さえ挂っおいた。

ワシは平静を取り繕いながら怒りの祚を投祚箱に入れ、䞀瀌をしお投祚所を出た。

入口のずころではハルトが、、、ん いない。どこに行った

埅ちきれずに、そこら蟺で遊んでいるんだろうずも思ったが、時間にしお分も立っおいないはずだ。しかし、こんなずころで䜕も起こりようがないはずだが。

ワシは衚の道路の方に出おみた。

しかし、ハルトの姿はない。じんわりず汗がにじむ。

どこに行った

ワタナベ商店で売っおるんだよ、ずいうハルトの声がさっきたでいた公民通の入口の方から小さく聞こえた。

ワシは、入口の方ぞ足早に戻った。䜕もないずは思ったが、姿が芋えないずやはり心配になる。

入口のずころで、ハルトずハルトよりも身䜓の倧きい䞭孊生くらいの少幎が、話をしおいた。

「だから、ワタナベ商店で買ったんだよ。いけば、たぶんただあるよ」

ハルトは、その倧きな少幎に、ホラ、駅前のお店、ず蚀いながら身振りも亀えお説明しおいた。

「ぞえ、いいなあ」

氎色のTシャツに半ズボンのその倧柄な少幎は、倧きな身䜓の割にどこか子どもっぜい喋り方をしおいた。

あ、じいちゃん、ずワシに気づいたハルトが蚀った。

「ハルト、どこにいたんじゃ。探したぞ」

「ごめんなさい。ゞンくんの兄ちゃんが、、」

「こんにちわヌ」

ゞンくんの兄ちゃんずいわれた、その身䜓の倧きな少幎がワシに倧声で挚拶した。

「ハむ、こんにちは」

ず挚拶を返しお、ワシはその”ゞンくんの兄ちゃん”を芋た。

䞭孊生にしおも、倧きい方ではなかろうか。それにしおも䞍思議な雰囲気を持った子だ。

ワシは、ゞンくんの兄ちゃんになぜか軜くうなづいお、ハルトに蚀った。

「お母さんが心配するずいかんから、垰るよ」

たぶん、入れ違いで先に家に垰っずるよ、ず蚀いながらワシはハルトの頭を撫でた。

「じいちゃん、ゞンくんの兄ちゃんもピックマンが欲しいんだっお、さっきからワタナベ商店にあるっお蚀っおるのに、、」

ハルトが、もどかし気に蚀った。

「そうか、、ピックリの人圢なら駅前のワタナベ商店にあるよ」

ワシは、倧きな少幎を芋お蚀った。

「いいなあ、ピックマン。オレもほしいなあ」

なにか埮劙な䌚話のズレを感じながらワシは

「だったらワタナベ商店の近くたで䞀緒にいくかい どうせ垰り道じゃし」ず蚀っおみた。

「うん」

倧きな少幎は元気に頷いた。

ワシは、友だちなのか、ずハルトに聞いた。

「だから、ゞンくんの兄ちゃんだよ」

ハルトは、さっき蚀ったじゃん、ずでも蚀いたげにワシに答えた。

たあ、いいか。ワシは玍埗しお、䞉人で歩き始めた。

䞃

キヌ゚さんの家の前たで来た。

ワシは芋るずはなしにキヌ゚さんの家の玄関の方を芋おみたが、特に倉わった様子はない。

ゆっくり䌑んでいるずいいんじゃが。ああいう人は動いおないず萜ち着かんみたいじゃからな。ワシは、キヌ゚さんの家の前を通り過ぎながら考えおいた。

ハルトずゞンくんの兄ちゃんは、なにやらピックマンに぀いお話しおいるようだが、どこか話がずれおいるようで、ハルトは少しむラむラしおいるようだ。

「だから、それはポックリマンじゃなくお、プックリりヌマンだよ、それ敵だからね、味方じゃなくお」

「ああ、プックリりヌマンも奜き。ホントはやさしいんだ、プックリりヌマンも」

ワシは、なんの話をしおいるかさっぱりわからなかったので、盞槌も打ちようがなかった。ただ、このゞンくんの兄ちゃんもどこか危なっかしい感じがしたので、気を抜かないように泚意しながら歩いおいた。

たさか、いきなり道路に飛び出すこずはないず思うが、そう思わせる気配があっおワシは歩いおいお、気が抜けなかった。

「あ、兄ちゃん」

信号のある亀差点たで来たずき、暪からハルトず同じくらいの男の子の声がした。

「ゞンくん」ハルトが声の方を芋お蚀った。

じいちゃん、ゞンくんだよ、ずハルトは蚀っおワシの腕をポンポンず叩いた。

「兄ちゃん、䜕しおるんだよ 勝手にいくなよ」

癜いTシャツに短パンのその少幎”ゞンくん”は少し怒っおいるようだった。

「ピックマンを買いにいくずころ」

ゞンくんの兄ちゃんは、特に悪びれる様子もなくゞンくんに蚀った。

「遞挙終わったらばあちゃんチに行くっおお母さんが蚀っおただろ」

ゞンくんの蚀葉でワシは倧䜓䜕があったのかを理解した気がした。

぀たり、ゞンくんの兄ちゃんも家族で投祚に来おいお、おそらく家族が投祚しおいる間に、ゞンくんの兄ちゃんだけ家族ず逞れおしたったのだ。そしお、ゞンくん家族はこれからおばあちゃんの家に行くこずになっおいる。

「兄ちゃんがすいたせんでした」

ゞンくんは私に䞁寧に頭を䞋げた。

いいっお、いいっお、ずワシの代わりにハルトがゞンくんに手をヒラヒラず振った。

兄ちゃん、いくよ、ずゞンくんがゞンくんの兄ちゃんを促すず、ゞンくんの兄ちゃんは

「ピックマン買いに行く」

ずガタむの倧きさに䌌合わない子どもっぜい仕草で地団駄を螏んだ。

皆んな埅っおるんだよ、兄ちゃん、ずゞンくんは蚀っお、ワシにたた「すいたせん」ず頭を䞋げた。

「ワタナベ商店はもうすぐそこだから、ピックリだけ買っおいったら」

ワシはゞンくんに提案した。この感じで無理やり家族の元に連れお行っおも、よくないだろうずワシは思った。

「でも、兄ちゃんお金持っおないんで、、」

いいよいいよ、ずワシが蚀うずゞンくんの兄ちゃんは嬉しそうにダッタヌず蚀っお、小さく倧きな身䜓を暪に揺らした。

「すいたせん」

ゞンくんは、本圓に申し蚳無さそうに頭を䞋げた。

「気にしなくおいいんじゃよ、欲しいものは欲しいずきに手に入れるのが䞀番いいしな、なあ」

ゞンくんの兄ちゃんは満面の笑みだ。

いいっおこずよ、ずハルトがゞンくんの肩を叩くず、ゞンくんは少し照れたような笑みを芋せた。

「でも、時間は倧䞈倫なのかい ワタナベ商店はすぐそこじゃが、、お母さんたちは、、」

「倧䞈倫です。家で埅っおるだけだから」

あヌ携垯電話があれば連絡できるんだけどなあ、ずゞンくんは蚀っおいたが、ゞンくんの衚情から、おそらくそんなにキッチリした予定ずいうわけではないのだろうずワシは思った。

ピックリを買っおも倧した時間はかからないだろうから、問題ないずワシも刀断した。

そういえば、ワシも携垯電話を家に眮いおきたようだ。退職埌はあたり䜿わないので、぀い家に眮いたたた出かけおしたう。

じゃあ、いこうか、ずワシは蚀っお歩き始めた。

ワシずハルト、それにゞンくんずゞンくんの兄ちゃん。ワシらは人で信号を枡った。

ワシずハルトに続いお、ゞンくんずゞンくんの兄ちゃんは埌ろから付いおきおいた。芋るず、ゞンくんはゞンくんの兄ちゃんず手を繋いでいる。

八

ワシ達たち4人は無人駅ぞの脇道ぞ入り、ワタナベ商店の方に歩いお行った。

ワタナベ商店の前たで来るず、入口のずころに自転車が䞀台停たっおいた。ワタナベ商店は、正盎客がいる印象があたりないので、ワシは珍しいなず思った。

ハルトが入口の扉をガラガラず開けた。ゞンくんずゞンくんの兄ちゃんがハルトに続いお店内に入る。

ワシも店内に入るず、レゞカりンタヌの前にワシず同じくらいの幎に芋える男性が立っおいた。

男性は、キヌ゚さんの嚘さんず話をしおいたようだが、こちらをチラッず芋お、子䟛だけじゃなく倧人もいたのか、ずいうような顔をした。この蟺りでは芋かけない顔だ、少なくずもワシは芋たこずがない。

「あ、いらっしゃいたせヌ、あら」

キヌ゚さんの嚘さんが、ワシに気付いおニッコリず埮笑んだ。

ワシはハルトたちを指さしお苊笑したような顔をしおみせた。事情はなんずなく䌝わったのか、キヌ゚さんの嚘さんは察したように口元を抌さえお笑った。

ハルトは、目圓おのポックリのある堎所をゞンくんたちに教えおいる。

「ほら、ゞンくんの兄ちゃん、ここにピックマンあるよ」

ホントだ、ずいうゞンくんの兄ちゃんの声が聞こえる。

兄ちゃん、プックリりヌマンもあるよ、ずゞンくんの少し興奮したような声も聞こえおきた。

レゞ前の男性はワシをチラッず芋おから、特に気にする颚でもなくキヌ゚さんの嚘さんず話を再開した。

「じゃあ、キヌちゃんは今日は家で䌑んでるの」

「そうなんです」

キヌ゚さんの嚘さんが答える。

「じゃあ遞挙はいけないのかなあ、このあいだ行くっお話しおたのに」

男性は少し残念そうに蚀った。

「䜓調次第ですけど、いけそうなら母はたぶん投祚にはいくず思いたすよ。そういうのは欠かしたこずがないんで」

「そうだよねえ、キヌちゃん色々怒っおたからねえ、でも倧䞈倫なの」

聞くずなしに聞いおいるずワシは、この男性ずキヌ゚さんの関係が少し気になっおきた。なんずなくキヌ゚さんに察する銎れ銎れしさがある。”キヌちゃん”などず呌んでいるし、同玚生ずかなのだろうか。もしそうなら、ワシずはポゞション的には同じはずだが。いや、別に匵り合っおいるわけではないが。

「ちょっず熱があるくらいなんですけど、最近疲れおいるのか䜓調があたり良くないっお蚀っおたんで、、。今日もここに来ようずしおたんですけど、無理しないでっお止めお、、たあ少し䌑めば回埩するずは思うんですけど、、」ず、キヌ゚さんの嚘さんが男性に答える。

「トモちゃんは投祚は」

「あたしは向こうで期日前で枈たせおたんで、、」

キヌ゚さんの嚘さんがそう蚀うず、男性は「そっかそっか」ず蚀っおカりンタヌの暪に眮いおあるパむプ怅子に座った。

ワタナベ商店には、近所の高霢者が暇を持お䜙しおキヌ゚さんず話しに来るので、カりンタヌの暪にパむプ怅子が2぀眮かれおいた。

男性がこちら向きになったので気が付いたのだが、男性は黒地に黄色い文字で「終掻」ずプリントされた埮劙な䞈のTシャツを着おいた。

ワシが、ちょっずギョッずしたようにそのTシャツを芋おいたのに気が付いた男性は、自分の来おいるTシャツをチラッず芋お、

「これ、孫がプレれントしおくれたもんでね」

ず照れるでもなくどこか誇らしげに、ワシに向かっお蚀っお笑った。

「あ、ああ」

ワシは話しかけられるずは思っおいなかったので、少し動揺しお曖昧に頷いた。

「じいちゃん、コレ」

ハルトが暪から人圢を差し出しながら声をかけおきた。ゞンくんずゞンくんの兄ちゃんも笑みをたたえながらハルトの埌ろに立っおいる。

「ゞンくんの兄ちゃん、ピックマンじゃなくおやっぱりプックリりヌマンにするんだっお」

「プックリ、、」

「やっぱりプックリりヌマンの方が本圓はやさしいから、プックリりヌマンの方がいいんだ」

ゞンくんの兄ちゃんが蚀った。

「そうか、わかった」ず蚀っおワシは、ビニヌル袋に入った名前の通りプックリした䜓圢のピンク色の人圢を受け取った。

䞀䜓どこがそんなに子どもたちを惹き぀けるのだろう、ずワシはたじたじずその䞞っこい人圢を芋おみた。

倪ったおばちゃんがSM女王のような恰奜でムチを持っおいる。ピンク色のデザむンじゃなかったらワシはなかなか教育䞊よろしくないような気がした。いやピンク色でも、よろしくないんじゃないか。

いずれにしおも䜕がいいのか、ワシにはたるでわからなかった。

ワシは、そのプックリをレゞカりンタヌに眮きながら「じゃあ、これを」ず蚀った。

九

「それ今人気あるんですよねえ」

パむプ怅子に座っおいた「終掻」男が蚀った。

「そうみたいですね」

ワシは䜜り笑いをしながら「終掻」男に蚀った。ワシはなぜだかこの男性ずは絡みたくなかった。

「プックリりヌマンは本圓はやさしいんだよなあ」

ず「終掻」男はゞンくんの兄ちゃんに話しかけた。

「うん、プックリりヌマンはやさしいんだ」

ワシは、これほど短い時間で「プックリ」ずいう蚀葉がこんな䌚話に出おくるこずがあるだろうか、ず考えおいた。

「プックリりヌマン、、、」

考えおいたらなんずなく呟いおしたったが、生きおるうちにこんな蚀葉をが口から出おくるこずがあるずは、ワシは想像もしたこずがなかった。

「でもピックリじゃなくおいいのかい」

ワシは䞀応ゞンくんの兄ちゃんに聞いおみた。

ピックマンね、ず蚂正した埌、

「オレも蚀ったんだけど、ゞンくんの兄ちゃんプックリりヌマンがいいんだっおさ」

ず、ハルトがワシに蚀った。

プックリの人圢の支払いを枈たせるず、ゞンくんずゞンくんの兄ちゃんが揃っお「ありがずうございたす」ず頭を䞋げた。

ワシが2人に「よかったな」ず蚀っお店を出ようずしたずき埌ろから、

「キヌちゃんのお芋舞いでも行っおみようかな」

ずいう「終掻」男の声が聞こえた。ワシは振り返っお思わず、

「キヌ゚さんはたぶん寝おいるので、そっずしずいたほうがいいず思いたすよ」

ず蚀っおしたった。

「終掻」男がワシを芋お、

「あ、キヌちゃんを知っおるの」

ず蚀った。

咄嗟のこずで少し動揺したワシが「あ、あ、」ず答えあぐねおいるず「終掻」男は、

「そっか、確かに具合が悪くお䌑んでるのにいきなり蚀っおも迷惑なだけか、、」

ず蚀っお少し考えるようにむスを座り盎す玠振りをした。

キヌ゚さんの嚘さんが、ワシを芋ながら

「お母さんの同玚生なんですよね」

ず蚀っお「終掻」男を芋た。

「え、そうなの 幌銎染みですかあ」

「終掻」男がワシに、問いかけるような問いかけおいないような埮劙な感じで蚀った。

ワシは「高校の同玚生です」ず蚀っお、そちらはず気になっおいたこずを聞いた。

「あ、高校の、、、私はキヌちゃんが東京にいた時の知り合いなんです。実家がこちらの方で、キヌちゃんのずこずたたたた近くで、、隣町なんですけど」

今はこっちにいるんですけどね、ず蚀っお「終掻」男はキヌ゚さんの嚘さんをチラッず芋た。

「サカキさんは父芪の友達で、向こう、、東京ではけっこうお䞖話になっおお、、ちょっず前にこちらに戻っお来られお、お母さんず仲良くしおくれおるんです」

キヌ゚さんの嚘さんの蚀葉に、ワシは”仲良く”がちょっず気になり぀぀「そうですか」ず答えた。

「じいちゃん、いこうよぉ」

ハルトが手を匕っ匵るので、ワシは、

「キヌ゚さんはたぶん䌑んでいるず思うんでそっずしずいたほうが、、」

ず、もう䞀床「終掻」男に蚀っお、店を出おいこうずした。

その時、レゞカりンタヌの方で携垯電話の着信音が鳎った。

ワシが振り返るず、キヌ゚さんの嚘さんがどこからか携垯電話を取り出し画面を芋お「お母さん」ず小さく蚀っお、携垯電話を耳に圓おた。

十

ワシは、少し心配そうな顔の圌女を芋お、䜕事かあったのかず芋぀めおいた。

「終掻」男サカキさんず䞀瞬目が合った。サカキさんも少し心配そうな顔をしおいる。

「お母さん、どうしたの、、、え、、うん、、うん、え 泥棒 どこに 、、、今、、そこにいるの 廃品回収 え、二人いるの、、ち、ちょっず埅っお埅っお、よくわからないけど、、垰ろうか 、、わかった、、今戻るから埅っおおよ、すぐ垰るから」

キヌ゚さんの嚘さんは携垯電話を切っお、レゞを閉めたりバタバタずカりンタヌの䞭で動き始めた。

「トモちゃん、お母さん䜕かあった」

サカキさんがキヌ゚さんの嚘さんに聞いた。

「、、よくわからないんですけど、家に泥棒がいるっお、、廃品回収だっお蚀っおるらしいんですけど、垰っおくれないらしくお、、」

私ちょっず行っおきたす、ず蚀っおキヌ゚さんの嚘さんは付けおいた゚プロンをはずした。

「僕もいくよ」

サカキさんは勢いよく立ち䞊がった。Tシャツに曞かれた「終掻」の黄色い文字が倧きくワシの目に飛び蟌んできた。

「ワシも行きたすよ、盞手が本圓に泥棒ならみんなで行った方がいい」

ワタナベ商店のおばちゃんどうしたのず、ハルトたちも䜕かあったず感じお䞍安そうな顔をしおいる。

「倧䞈倫じゃよ、ちょっず蚀っおくるからお店で埅っおくれな」

ワシはできるだけ䞍安にさせないように優しく蚀っお、少し緊匵したような衚情のハルトずゞンくんの肩に手を眮いた。

ゞンくんの兄ちゃんは先に店の倖に出お、プックリの人圢を芋おいる。

ワシは、ゞンくんずゞンくんの兄ちゃんは、二人で垰っおもらっおもいいかなずも思ったが、もし泥棒の話が本圓ならちょっず物隒な感じもしたので、ワタナベ商店で埅っおおもらうこずにした。

「トモちゃんはお店にいおよ、僕ずこの人でちょっず様子を芋おくるから、子䟛たちだけだずちょっず、、なんで、ね」

サカキさんが、なるほどずいうこずをキヌ゚さんの嚘さんに蚀った。ワシも、

「なら、悪いんだけどゞンくんの芪に連絡しおくれんかね、携垯電話を眮いおきおしたっお、、、迎えに来おくれるのが䞀番いいが」

ず蚀っおゞンくんを芋た。

電話番号が、、ずゞンくんが蚀った。「わからんのか」ず蚀うずゞンくんが頷いた。

「でも、すぐ近くだから、螏切りの向こう偎のちょっずいったずころだから、、」

ず、ゞンくんは蚀うがゞンくんの兄ちゃんもいるし、ワシはちょっず心配だった。

キヌ゚さんの嚘さんが「もし心配だったら、この子は私が家たで送っおいきたしょうか」ず蚀っおくれた。

倧䞈倫だよ、い぀も通っおる道だから、ずゞンくんが蚀っお、店の倖にいるゞンくんの兄ちゃんをチラッず芋た。

「ずにかく早くいきたしょう」

サカキさんが蚀っお店の倖に出る。

ワシは「わかったよ、でも䜕かあったら倧倉だから。すぐ戻っおくるから少し埅っおおくれな」ずゞンくんに蚀い、ハルトにも埅っおるように声をかけ、サカキさんの埌に続いた。

ワシは、目の前のサカキさんの背䞭に

”死ぬ気で生きる”

ず黄色い筆文字で倧きく曞かれおいるのを芋぀けお、たたギョッずなった。

前面の「終掻」ずなんずなく関連しおいるようでよくわからない。たあ、孫にプレれントされれば䜕でもうれしいからな、ずワシはちょっず䜙蚈なこずを考えながら倖に出た。

店の前でプックリの人圢を芋おいたゞンくんの兄ちゃんに、ワシは「ちょっず行っおくるから、お店の䞭に入っお埅っおなさい」ず匷い口調にならないように気を付けお蚀った。

はヌい、ずゞンくんの兄ちゃんは蚀っお玠盎にお店の䞭で入っおいった。

サカキさんが店の前に停めおある自転車に跚りながら

「じゃあ、埌ろに乗っおください、ええっず、、」

ず蚀うので、ワシは「モモザワです」ず答えお埌ろの荷台に跚った。自転車の埌ろに乗るのは少し躊躇したが、サカキさんが圓然のように蚀うので迷う玠振りを芋せないように気を付けた。

じゃあ行きたしょうモモザワさん、ず蚀っおサカキさんはペダルを挕ぎだした。

十䞀

サカキさんの腰に手を回すのはやはり抵抗があったので、ワシは荷台の前偎を䞡手で掎んで身䜓を支えた。自転車がバランスをずりながらゆっくり動き出す。

自転車の二人乗りなんお䜕幎ぶりだろう、いわば緊急事態ずもいえるような状況でワシはなんだか呑気なこずを考えおいた。が、いや今はそんなこずを考えおいる堎合ではない、ず自分を奮い立たせた。

ゞゞむの二人乗り。考えたくはないが、どうしおもこのよくわからない状況を滑皜に捉えおしたう。

今日初めお䌚ったゞゞむ二人が、䞭孊生のカップルのように自転車に仲良く二人乗りしおいる。

ドキドキする、ずいうず䜕か違った意味にずられおしたうかもしれないが、自転車の二人乗りずいう行為自䜓が久しぶりだからか、呑気なのに劙にドキドキしおしたう。自転車のスピヌドが意倖に遅いのもなんだかモダモダしおいた。

緊急事態の割には、景色も倏の日垞をのんびりず珟わしおいた。気枩も䞊がっおきおいる。

よくわからんが、キヌ゚さんが倧倉なんじゃから。ワシはなんずか気を匕き締めようずした。

”死ぬ気で生きる”

目の前のサカキさんの背䞭に曞かれた黄色い文字をワシは䜕床も心の䞭で読み䞊げた。

そうしおいるうちに、なんだか心に倉な高揚がありワシはこんなこずで自分自身におかしな充実感が湧き䞊がっおくるこずに驚いおいた。

信号のある亀差点の赀信号で、サカキさんは自転車を止めた。

ワシは「倧䞈倫ですか」ずサカキさんに聞いた。䞀息぀いおサカキさんは倧䞈倫です、ず頷いお「しかし暑いですね」ず続けた。

「あら、あんた䜕しおる」

ふず暪を芋るず、劻がワシを䞍思議そうな顔をしながら立っおいた。

「あ、お前こそ、、」

ワシは少し動揺した。ワシは䜕をしおいるのだ

「あたしは遞挙、遞挙でしょ、あんたは 投祚いったんじゃなかったの」

劻はキョトンずしながら、サカキさんを芋た。

どうも、ずサカキさんは軜く頭を䞋げた。

「投祚はもうしおきた」

ず、ワシが答えたずころで信号が青に倉わった。サカキさんが、モモザワさん、行きたすよ、ず蚀っお自転車を挕ぎ始める。

ワシは

「埌で話す、急いどるんで」

ず片手をあげお蚀い残した。劻は䞀瞬いぶかしげな衚情をしたが、すぐに関心をなくしたように手に持ったハンカチで顔の汗をぬぐった。

「奥さんですか」

自転車を挕ぎながら、サカキさんが背䞭越しにワシに蚀う。

ええ、ずワシは答えた。

「遞挙ですからね」ず蚀っお、サカキさんはハアヌず息を吐いた。

もう少し行ったずころの庭に軜自動車が停たっおいる家です、ずワシは蚀った。

「そうですね」

サカキさんは、そこがキヌ゚さんの家であるこずを知っおいるずいうこずをほのめかすように、たた圓然のように蚀った。

十二

しばらく行くず、キヌ゚さんの家の前に軜トラックが1台停たっおいるのが芋えた。若干車線にはみ出しおいるが、通る車は倚くないのでこの蟺りでは党く問題ない。

サカキさんは、キヌ゚さんの家の庭に自転車を乗り入れお停めおあるシルバヌの軜自動車の暪に停めた。ワシは、自転車が停たるず同時に降り、玄関の方を窺った。

玄関の方からは蚀い争うような声が聞こえた。

䜕もありたせんから、それよりその空気入れを返しおください。ハむヒンカむシュヌ無料デス。もういいですから、いいかげんにしおください。自転車、タむダ、ナンデモカむシュヌデキマス。

玄関の方にいくず、2人の黒っぜいキャップを被った䜜業服の男が、玄関の前に立っおいた。玄関の匕き戞は党開になっおおり、キヌ゚さんが䞭から男たちを家に入れさせないように防いでいるように芋えた。

「キヌ゚さん」

「キヌちゃん」

ワシずサカキさんはほが同時にキヌ゚さんに声をかけた。

「あ、モモザワさん、サカキさん」

キヌ゚さんは、我々を芋おホッずしたのか、額に手を圓おフラフラず玄関に座り蟌んだ。

「あんたたち、䜕ですか」

ワシは2人の男に倧きな声を出した。

「ハむヒンカむシュヌデス」

男の䞀人が答えた。倖囜人っぜい蚛りがある。顔は日本人ぜく芋えるが、どこかに違和感がある。 もう䞀人は浅黒い肌の東南アゞア系の顔をしおいた。

違いたす、その人たち泥棒です、そこの空気入れを盗もうずしたした、ずキヌ゚さんがハアハアずどこか苊しそうに蚀った。

浅黒い方の男は、手に自転車の空気入れを持っおいた。

「あ、勝手に持っおいくなよ」

男の暪たで来たサカキさんが、浅黒い男から空気入れを取り䞊げた。

「倧䞈倫ですか キヌ゚さん、もう倧䞈倫だから家ぞ入りたしょう」

ワシは、玄関口にぞたり蟌んでいるキヌ゚さんを家の䞭ぞ促した。

「モモザワさん、キヌ゚さんを䞭たで連れおいっおあげおください」

サカキさんの蚀葉にワシは頷いお、お邪魔したす、ず蚀っおキヌ゚さんを支えながら家の䞭ぞ入った。居間には垃団が敷いおあり、キヌ゚さんはあ、ありがずうございたす、ず蚀っお暪になった。

キヌ゚さんが暪になったのを芋お、ワシはすぐに玄関の方に戻った。

「あんたたち、廃品回収っお蚱可ずっおるのか」

サカキさんが2人の男に聞いおいる。圹所に聞いおみるよ、あるいは譊察に、、ず蚀ったずころで抜け目のない目をした䞭囜人らしき男の方が、フラヌず埌ろの軜トラックの方ぞ歩いおいった。そしお、

「〇△✕✕☆△」

ず、どこの蚀葉かわからない倖囜語で浅黒い男に蚀うず、浅黒い男もスタスタず軜トラックの方ぞ歩いおいった。

「あ、こら埅お」

ずサカキさんが远いかけようずした時、持っおいた空気入れが足に絡たったのか、ガチャッず音がしおサカキさんはバランスを厩した。

サカキさんの背䞭の”死ぬ気で生きる”ずいう文字がフラフラず巊右に揺れたたあず、うわあず蚀っおサカキさんは庭の畑の方ぞ倒れこんだ。

「あ、サカキさん」

ワシは慌おおサカキさんに駆け寄った。

むテテテテ、ずサカキさんは蚀っお「モモザワさん、あい぀らを」ずワシに叫んだ。

ワシは「おのれ」ず蚀いながら、浅黒い男を远いかけた。もう䞀人の男の方はすでに軜トラックに乗り蟌み゚ンゞンを掛けおいる。

浅黒い男は、もうなりふり構わずに軜トラックに走っおいき、動き始めおいる車の助手性に飛び乗った。荷台に積たれた自転車やら家電などがガシャガシャず音を立お、軜トラックはスピヌドを䞊げ道路を走っおいった。

ワシは道路たで走り出たが、なすすべもなく軜トラックを悔しい気持ちで芋送った。少し、走っただけだがワシは、ハアハアするほど息が切れおいた。

「あら、あんたたたここで䜕しおる」

埌ろから声がしお振り返るず、たた劻がびっくりした顔で芋おいた。

キヌ゚さんの家は、投祚所である公民通たでの道の途䞭にあるので、劻がここを通るのも圓然なのだが、息が䞊がったワシは䜕ずなく決たりが悪い気持ちになった。いや別に䜕もやたしいこずはないのだが。

「おのれ、コ゜泥め」

ワシは決たりの悪さを誀魔化すように、小さくなっおいく軜トラックを再び芋お少し芝居がかったセリフを吐いお、時代劇のように芋埗を切った。

十䞉

「なに、どうしたの なにかあったの」

劻が今床は少し心配そうに蚀った。

ワシは息を敎えながら

「いや、埌で話すから、遞挙に行っお、そっちも倧事だから」

ず蚀っお劻を促すように手を振った。

ワタナベさんずこ 倧䞈倫なの ず劻は庭の方をちょっず芗きこんだが、すぐに思い盎したように公民通の方ぞ歩いお行った。

は ワシはサカキさんのこずを思い出し、庭の方を振り返った。サカキさんは、倒れこんだ畑を囲うブロックに腰かけおいた。Tシャツの「終掻」の文字が歪んでシワになっおいる。

「サカキさん、倧䞈倫ですか」

ワシはサカキさんに駆け寄りながら蚀った。

「ああ、逃げられたしたな」

最近、倚いんですよああいうの、ず蚀っおサカキさんはむテテテず腰をさすった。

「ああいうの、本来は蚱可がいるんですよ。無料ず蚀いながら䟝頌するずお金を請求したりね。知り合いがし぀こくされお困ったっお聞いたこずがありたすよ」

「倖囜人でしたな」

ワシは、2人の抜け目なさそうな目぀きを思い出しお、さらに悔しさが蟌み䞊げおきた。

「サカキさん、、」

玄関の方から声がしお、キヌ゚さんがフラフラず出おきた。

「あ、キヌちゃん、倧䞈倫倧䞈倫、そこにいお」

サカキさんが慌おおキヌ゚さんを制止する。ワシは、立ち䞊がろうずするサカキさんを支えた。

キヌ゚さんは、申し蚳なさそうな顔をしながら頭を䞋げた。

※

キヌ゚さんの話によるず、ワシずハルトがキヌ゚さんの家を出た埌、しばらくは暪になっお䌑んでいたが、やはり䜕ずなく退屈で、身䜓のダルさはあったが少し動きたくなった、ず。

トりガラシを獲ろうずたた庭に出ようずしたずころに、さっきの二人組が玄関のずころにいたのだずいう。

二人組は「ハむヒンカむシュヌデス、無料デス」ず蚀っお䜕でもいいから䞍甚品はないかず蚀っおきた。最初は断っおいたキヌ゚さんだが、二人がし぀こいので、そういえば壊れた扇颚機があったなず思い出しお郚屋の抌し入れにある扇颚機を取っおこようずした。

玄関の匕き戞を䞀旊閉めおから郚屋の奥に行こうずした時、䜕気なく匕き戞のガラス越しに二人を芋るず、玄関先に眮いおあった自転車の空気入れを䞀人が勝手に持っおいこうずしおいた。

泥棒だ、ず思ったキヌ゚さんは怖くなっおワタナベ商店に代わりにいっおいる嚘のトモミさんに電話した。

二人は空気入れだけでなく、玄関先で䜕やら物色しおいる気配があったので、キヌ゚さんは勇気を出しおやめるように蚀った。二人は「ハむヒンカむシュヌデス」の䞀点匵りで、玄関から家の䞭たで入っおきそうな勢いだったので、ずおも怖かった、ずキヌ゚さんは少し震えながら蚀った。

「キヌちゃん、倧倉だったねえ」

サカキさんが垃団の䞊で身䜓を起こしお座っおいるキヌ゚さんに蚀った。

「本圓に助かりたした、ありがずうございたした、モモザワさんも」

いえ、捕たえられなくお、、ずワシが蚀うず、キヌ゚さんは「いえいえ、怪我がなくお本圓によかったです」ず蚀っお小さく息を吐いた。

「僕もコケちゃっお、、幎をずるずダメですね、足がも぀れちゃっお」

ずサカキさんが蚀う。

畑に倒れこんだサカキさんの背䞭の”死ぬ気で生きる”ずいう黄色い文字を、ワシは思い出した。

サカキさんずは、話しおいるうちに、やはり同い幎だずいうこずもわかり、䜕ずなく距離が近づいた感じがしおいた。

ワシは、サカキさんは最初のあたり絡みたくない印象から、そんなに悪いダツではなさそうだな、に倉わっおいるのに気が付いた。

「そういえば、お店の方は倧䞈倫かな 子どもたちは、、」

ずサカキさんが蚀った。

トモミに電話しおみたす、ずキヌ゚さんが携垯電話を取り出した。

十四

「それで、そのサカキさんがワタナベさんが投祚に行くのに付き添っおいったっおわけね、じゃあ、あの䞀緒にいたのがサカキさんか」

劻がワシに歩きながら蚀った。劻ずはキヌ゚さんの家の前でたたもやバッタリ䌚った。ワシは劻に事情を説明しながら、孫のハルトが埅っおいるワタナベ商店に向かっお歩いおいた。

「キヌ゚さんは䞀人で倧䞈倫だず蚀っおたんじゃが、サカキさんが心配しおな、、たあ、ワシも䜓調が悪いなら無理しなくおもず蚀いたかったんじゃが、今回の遞挙にはなるべく行っおほしいずいうこずもあっおな、キヌ゚さんも行きたがっおいたし、じゃあサカキさんが䞀緒に付き添うっお話になっお、、、ワシはハルトをワタナベ商店に埅たせおいたからな」

ワシが蚀うず、劻は「はヌん」ずよくわからない声を出した。

「ただ、ワシはキヌ゚さんがどこに投祚するかは知らんけどな。サカキさんはもしかしたら知っおるのかもしれんが、、色々話をしおいたらしいからな」

「ほヌん」

劻はたたよくわからない声を出した。

「た、投祚できるなら投祚はしお行っおほしい、どこに入れるにしおも今、䞎党に入れる人はおらんだろうからな」

「ふヌん」

ず劻は蚀っお少し黙った。そしお思い出したように、

「でもワタナベさんも灜難ね、、廃品回収、怖いわあ」

ず蚀った。

し぀こいからな、ずワシは蚀いながら、たたあの二人に逃げられた悔しさを思い出しおしたった。

しかし、倧分時間がたっおしたったので、ハルトは埅ちくたびれおいるかもしれんな。

キヌ゚さんに、ワタナベ商店にいるキヌ゚さんの嚘のトモミさんに電話をしおもらったら、ゞンくんずゞンくんの兄ちゃんは先に垰ったずいうこずだった。

そういえば、家族でおばあちゃんの家に行くず蚀っおいたな。もうお昌近いし、ワシは、埅っおるように蚀ったのはちょっず悪かったかな、ず思い盎しおいた。

ハルトにはキヌ゚さんから、これからワタナベ商店に戻るず䌝えおもらった。

キヌ゚さんは、今ならいけそうなのでこのたた投祚に行っおくるず蚀っお、ワシは倧䞈倫なのか心配になったが、サカキさんが付き添うこずになったので、ちょっずモダッずしながらもサカキさんに任せるこずにした。

キヌ゚さんが投祚に行く準備をしお、ちょうどサカキさんずワシず䞉人で家の前の道路に出たずころで、さっきも蚀ったが、ワシの劻ずたたバッタリ䌚っおしたったのだ。

「あら、たた」

ず劻はたた驚いた様子で蚀った。公民通の方から歩いおきたので、投祚を終えお家に戻るずころだろう。

ワシず、キヌ゚さんサカキさんの二人ずはキヌ゚さんの家の前で別れた。

劻が䞀瞬、ワシず䞀緒にいるキヌ゚さんずサカキさんを蚝し気に芋おいたので、片手をあげながらワシは「じゃあ」ず二人に蚀っお早々に反察方向に歩き始めた。

ありがずうございたした、ず蚀うキヌ゚さんの声が埌ろで聞こえた。

さすがにキヌ゚さんず自転車の二人乗りは出来ないので、サカキさんは自転車をキヌ゚さんの家に停めたたたで歩いおいくこずになった。

十五

二人ず家の前で別れお、ワシは劻ず歩きながら、曎に劻に事情を説明しおいた。

劻はキヌ゚さんずは面識があったが、サカキさんはもちろん知らないので、誰なのか気になったようだ。

ワシは劻に、ハルトがワタナベ商店で埅っおいるこずを䌝え、嚘のミナキに携垯電話で連絡を入れおもらった。

ミナキは「遅いから、二人でどこかで道草しおるんだずは思っおたけど」ず蚀ったらしいが、やはり心配だったようでワシの携垯電話に䜕床も電話したようだ。家に眮いおきたワシの携垯電話にはミナキからの着信が䜕床も入っおいるこずだろう。

ミナキは劻にも電話したらしいが、なぜか繋がらなかったらしい。

「ああ、携垯電話、バッグの䞭に入れおたからね」

ず劻はけろっずした顔で蚀った。

携垯電話は携垯しおいなければ䜕の圹にも立たないが、携垯しおいおもこれでは意味がないわな、ずワシは思った。

十六

そうこうしおいるうちにワシず劻は、信号のある亀差点のずころたで戻っおきた。

しかし、日曜日ずはいえ車が䞀台も走っおいない。平日でもほずんど車はいないが、やはりこの地域の過疎化を象城するように車のない亀差点で信号機だけが点滅を繰り返しおいる。

目の端に䜕か動きを感じお、ふず亀差点の巊手にある螏切りの方を芋るず、氎色のTシャツを着た芋芚えある倧柄な少幎が螏切りの向こうでりロりロしおいるのが芋えた。

「ゞンくんの兄ちゃん」

ワシは、思わず声を出した。先に家に垰ったんじゃないのか、䞀䜓あんなずころで䜕をしおいるんじゃ 

ワシは疑問に思い、近くにゞンくんの姿を探したが、ここから芋る限りゞンくんの姿は芋えない。

 「あんた、どうしたの 青よ」

信号が倉わっおも暪断報道を枡ろうずしないワシに、劻が声をかけた。

「ちょっず、先にワタナベ商店に行っおおくれ、ハルトず先に垰っおおもいいから、ミナキも埅っおるだろうから」

「どうしたの」劻がたた蚝し気な衚情で聞く。

「先に家に垰っおるはずの子が、あそこにいるみたいじゃからちょっず芋おくる」

ず、ワシは劻に蚀っお、螏切りの方に歩いおいった。埌ろで、じゃあ、あたしはハルトず先に垰っおるよ、ずいう劻の声が聞こえた。

十䞃

螏切りを越えお、ワシはゞンくんの兄ちゃんの方ぞ歩いお行った。

螏切りを超えた先の道路は、かなり向こうの方たでたっすぐ䌞びおおり、その右偎には田んががあり、緑色の皲が絚毯のように広がる、いわゆる田園颚景が広がっおいた。

道路ず田んがの間には幅メヌトル皋の甚氎路があり、道路の奥の方からこちらの螏切りの方たで田んがに沿っお䌞びおいる。

ゞンくんの兄ちゃんは、慌おたような焊ったような顔で、道路の脇の甚氎路の方を芗きこみながら、こちらに向かっお歩いお来おいた。ただ100メヌトルほど離れおいるだろうか。

甚氎路の䞡脇には足元が隠れるくらいの雑草が生い茂っおいた。

「䞀䜓䜕があったんじゃ」

ワシは、ゞンくんの兄ちゃんの顔色を芋お、䜕か倧倉なこずが起こったんじゃないかず心配になり、思わず独り蚀を蚀った。

ふいに、ゞンくんの兄ちゃんの埌ろの方で、甚氎路の方からゞンくんが珟れた。

「兄ちゃん、埅っお」

ゞンくんが叫ぶ声が聞こえた。ゞンくんもこちらに向かっお走っおくる。

ワシは、50メヌトルほどのずころたで近づいおいたゞンくんの兄ちゃんに

「どうした」

ず倧声で蚀った。

ゞンくんの兄ちゃんがワシに気が付き、

「プックリりヌマンが 川に、、流された」

ず声を裏返しながら焊ったように蚀った。”川”ずはたぶんこの甚氎路のこずだろう。

なに ワシは、雑草を螏みしめお、道路脇の甚氎路を芗き蟌んでみた。

甚氎路の氎の流れはゆっくりに芋えたが、氎嵩はどれくらいだろう、い぀もよりは倚く芋えた。

ワシは甚氎路の䞊流の方に目を凝らしおみたが、キラキラず光が反射しおよく芋えない。

埐々にゞンくんの兄ちゃんが近づいおきお、ワシのすぐ偎たで来たずき、䟋のピンク色のプックリの人圢がプカプカず浮かんでこちらぞ流れおくるのが芋えた。

こうしお芋るず、15センチほどのプックリの人圢はかなり小さく芋える。目を反らすず、すぐに芋倱っおしたいそうだ。

ワシは「どうした」ずたた叫んだ。

もちろん、状況はすぐに分かったが、なぜこのようなこずが起きおいるのかを、ワシは思わずゞンくんの兄ちゃんに問うおしたった。

「ゞンの奎がプックリりヌマンを蹎飛ばしお、、川に萜ちた、、」

なんでたたそんなこずを

ゞンくんの兄ちゃんは泣きそうな顔になっおいた。

ワシは、ゞンくんの兄ちゃんに「心配するな、拟っおやるから」ず蚀っお、プックリの人圢を目で远いかけた。

甚氎路は、螏切りの脇を、線路をくぐるように暪切っお、その向こうに䌞びおいた。

線路を超えるず、远うのが倧倉そうだったので、ワシは線路を暪切る前にプックリを捕たえようず思った。

幞い、甚氎路の氎の流れはゆっくりだったので、急いでいけば、線路の手前でプックリを捕たえるこずができそうだった。

ワシは、急いで螏切りの方ぞ匕き返し、線路脇で甚氎路に降りられそうなずころを探した。

線路の手前のずころに䞋に降りられる小さな階段があるのが芋えた。

ワシは、雑草の䞭に足を螏み入れお、その階段を䞋りおいった。

ゆっくりずはいえプックリは着実にこちらの方ぞ流れおきおいる。ここで捕たえられなかったら、この先を远うのはかなり難しそうだった。

ワシは、階段を氎面ギリギリのずころたで䞋りお、プックリが流れおくるのを埅った。

「おじちゃん」

ゞンくんの声が聞こえた。振り返るず、ゞンくんは1メヌトルくらいの朚の枝を持っおいた。

これで ずゞンくんがワシの方ぞ、その枝を投げた。

攟物線を描いお、朚の枝がワシの方ぞ飛んでくる。ワシは片手でその枝を「パシ」ず掎んだ。

「おじちゃん、来たよヌ」

ゞンくんの兄ちゃんの叫び声が聞こえた。

氎面を芋るず、甚氎路の䞭倮蟺りをプックリが流れおきおいた。

ワシは、バランスをずりながら朚の枝を䌞ばした。

「うぬ」

思わず声が出た。届くか届かないか埮劙なずころだ。

プックリはもうすぐ近くたで来おいた。

朚の枝を思いっきり䌞ばす。䜕か捕たるものはないか。ワシは、巊手で探るがコンクリヌトの壁に觊れるだけで、掎たれそうなものはない。

プックリが目の前に来た。ゆっくり通り過ぎようずしおいる。

ワシは朚の枝を最倧限䌞ばす。もう少し、、。

「おじちゃん」

「おじちゃん」

「ああ」

ワシずゞンくんたちが同時に声を䞊げた。

ワシはバランスを厩しお、甚氎路の䞭に倒れこんだ。

バッシャヌン

ゎボゎボゎボッ

身䜓が回転する。氎䞭の独特の音の響きず、䞋から氎面を通しお芋える空の光。党身に冷たい氎の感觊が䌝わる。

”死ぬ気で生きる”

サカキさんの背䞭の黄色い文字が脳裏をよぎる。

氎䞭のくぐもった音が、ワシから時間の感芚を奪っおいく。

ワシは䞭孊校のころの氎泳の授業でのプヌルの䞭を思い出しおいた。

ゎボッゎボッ

氎泳は割ず埗意な方だった。クラス察抗の氎泳倧䌚で遞ばれたこずもある。普段はそれほど目立぀こずはなかったワシだが、氎泳倧䌚では、クラスのみんなが応揎しおくれたものだ。

「モモザワくん、頑匵っおヌ」

女子が声を揃えお応揎しおくれる。泳ぎながらでもその声はハッキリず聞こえた。アンカヌを務めたワシは、歓声を济びながら他のクラスの遞手ずデッドヒヌトを繰り広げる。

「モモザワくん、頑匵っおヌ」

黄色い声揎は実に心地よかった。ワシの心は勢いよく奮い立ったものだ。

ゎヌルたであず数メヌトルのずころで、ワシは䞀䜍の遞手に远い぀いた。ゎヌルは際どく、ほが同時でタッチした。

勝ったか どうだ

ワシは審刀を務めおいる孊幎䞻任の先生を芋䞊げる。先生はワシのずころで倧きく手を挙げる。

「䞀䜍」

ワアヌ っず倧きな歓声が䞊がった。普段地味だったワシも、この時は勢いよくガッツポヌズをした。

十八

バシャヌ ワシは、氎面から顔を出した。足は぀く。甚氎路の深さはワシの腰のあたりぐらいだった。意倖に深い。気を抜くず流されおしたいそうだ。

「おじちゃん」

ゞンくんの声が聞こえた。

プックリは、ワシの少し先を線路の方ぞゆっくりず流れおいた。

「おのれ」

ワシは慌おお、手に握っおいた朚の枝を䌞ばす。プックリに枝の先を圓おお䜕床か䜍眮を戻した。プックリの人圢が氎面でクルクルず回転する。

枝の先でなんずかプックリを匕き寄せお、ワシはプックリを片手でガッチリ掎んだ。

「やったヌ」

「おじちゃん」

ゞンくんたちがたた同時に声を䞊げる。

ワシは、二人にプックリを぀かんだ手を掲げお芋せた。

興奮しお、雄叫びを䞊げた぀もりだったが、声が裏返っお「おひょヌ」ずいう倉な動物の鳎き声みたいになっおしたった。

十九

「だから、わざずじゃないっお」

ゞンくんが、ワシに”こずの経緯”を説明する。

ゞンくんの話では、こういうこずらしい。

ゞンくんの兄ちゃんを連れお家に垰るのが少し遅くなっおしたったので、ゞンくんは速足で垰っおいた。ちょっず走ろう、ずゞンくんが提案しお二人は走り始めた。ゞンくんの兄ちゃんはプックリの人圢を手に持っお遊びながら走っおいたが、ちょっずした匟みで手からプックリを萜ずしおしたったらしい。それを、ゞンくんが間違っお蹎飛ばしおしたった。

プックリはそのたた川甚氎路に萜ちおしたった。

家の近くたで来おいたのに、プックリを远いかけおドンドン来た道を戻っおいった。ゞンくんは、朚の枝を芋぀けお䜕床か取ろうずしたが、獲れなかった。远いかけおいくうちに螏切りの近くたで戻っお来おしたった。

ワシは甚氎路ず反察偎のマンションのブロック塀に持たれお座りながらゞンくんの話を聞いおいた。

蝉の鳎き声が䞉人を芆うように聞こえおおり、ワシはなんだか䞍思議な感じを味わっおいた。たるで子䟛のころの倏䌑みのようだ。これは䞀䜓なんじゃ。

ゞンくんは、話し終わるず「すいたせんでした」ず謝った。

ワシは、いやいや、ず手を振った。実際、ゞンくんはワシに謝るようなこずは䜕もしおいないず思った。

ゞンくんの兄ちゃんは、倧事そうにプックリの人圢を握りしめおいた。

ワシは、もう萜ずさないようにな、ず蚀っお「ずにかく早く垰りなさい」ず二人を促した。

もう午埌1時過ぎだ。さすがに芪が心配しおいるかもしれない。

「気を付けお垰るんじゃよ」

ずワシは蚀っお、自分も立ち䞊がった。

ブロック塀に寄りかかっおいたずころが、ワシの圢に濡れおいた。

二十

ガラガラず、ワタナベ商店の匕き戞開けるず、キヌ゚さんの嚘さんのトモミさんのキレむな声が奥から聞こえた。

「いらっしゃいたせヌ」

トモミさんは、いきなりビショ濡れになったワシが入っおきたので、ハッずしたような顔で

「どうされたんですか」

ず蚀った。

「そこの甚氎路に萜ちおしたっお、、」

ずワシは蚀ったが、これではただの”おっちょこちょい”だな、ず思い蚀葉を付け足した。

「プックリの人圢を獲ろうずしたら、バランスを厩しお甚氎路に萜ちおしたっお、、」

いや、これでもやはり”おっちょこちょい”だな、ず思ったが、長々ず説明するのもなんだか蚀い蚳がたしいので、仕方がないので愛想笑いをした。

倧倉、ず蚀っお、トモミさんは店の奥に入り、タオルを持っおきおワシに枡しおくれた。

ああ、すいたせん、ず蚀っおワシは、倧分匷い今日の日差しのせいで也き始めおいた頭を拭きながら、ハルトは垰ったか聞いた。

「はい、奥様が迎えに来お、䞀緒に垰りたしたよ」

ずトモミさんは蚀った。それから、

「すいたせん、母からも連絡ありたした。さっきはありがずうございたした、倧䞈倫でしたか」

ずワシに聞いた。

「ああ、いえいえ、悪者は逃がしおしたっお、、あたりお圹に立おなかったんですが、、サカキさんの方が倧倉で」

「あれ、そういえばサカキさんは」

「サカキさんはキヌ゚さんの投祚に付き添っおいっおたす」

「え、そうなんですか、もう、おかあさんたら、無理しないように蚀っおるのに、、サカキさんにも付き添わせおるんですか」

「あ、いや、サカキさんが、キヌ゚さん䞀人じゃ心配だからっお、、」

無理やり、ず蚀おうずしおワシはその蚀葉をグッず飲み蟌んだ。

「たあ、色々ありたしたし、䜓調も䞇党ではただなさそうだったので、サカキさんが付き添っおいっおよかったず思いたすよ」

ずワシは蚀った。

「そうですか、、」

ず、トモミさんは蚀っお、ワシに申し蚳なさそうな顔をした。

「ずころで、サカキさんずキヌ゚さんは付き合いは長いんですか」

ず、ワシは気になっおいたがなかなか聞けなかったこずを、トモミさんに聞いた。党身ビショ濡れになるず、人間は躊躇がなくなるのかもしれない。

トモミさんは、䞀瞬えっず蚀う顔をしたが、そうですねえ、ず蚀った埌、思い出すように目を䌏せながら、

「もずもずは父の知り合いで、東京にいる頃は、父ず母が離婚する前たではよく家族ぐるみで行き来があったんですね、だから結構付き合い自䜓は長いですねえ、でも、母が離婚しおこちらに垰るこずになっお、しばらくは党然䌚うこずはなかったず思いたす、サカキさんは東京でしたから」

ず蚀った。

「なるほど」

「でも、サカキさんの奥さんがご病気で亡くなっおしたっお、、それで、詳しい事情は分からないんですけど、サカキさん実家に垰るこずになっお、、もずもず母ずサカキさんは出身がこの蟺りで、実家が近いっお話しおお、、それで、たぶん連絡取り合うようになったんじゃないかな、、」

すいたせん、私もよく知らないんです、、ずトモミさんは蚀った。

「私も、サカキさんは私が小さい頃から知っおるので、なんか芪戚のおじさんみたいな感じなんですよね、、母も色々ず地域のシガラミなしで話ができる人がいるのは嬉しいみたいですけど、、䞀床東京に出お戻っおくるずなんか色々付き合いも面倒くさいみたいで、、」

あ、そんなこず蚀っちゃダメか、ずトモミさんはペロッず舌を出した。

なるほど、サカキさんも胜倩気なようで色々ずあったのだな、ずワシは思った。

ちょっず立ち入り過ぎた気もしたので、ワシは、「そろそろキヌ゚さんも家に垰ったころですかね」ず蚀っおみた。

あ、電話しおみたしょうか、私もちょっず心配なんで、ず蚀っおトモミさんは携垯電話を取り出した。

そのずき、ガラガラず入口の匕き戞が開いお、サカキさんが入っおきた。

「いやあ、たいったねえ」

ず蚀ったずころで、ワシがいるのに気が付いたサカキさんは

「あれ、モモザワさんどうしたんですか、ビショ濡れじゃないですか」

ず驚いお蚀った。

「ええ、そこの甚氎路に萜ちおしたっお、、」

ず、ワシは蚀ったが、やっぱりマヌケだな。だんだん、ワシはそもそもマヌケなのかも、ず思い始めおいた。

ええ、倧䞈倫ですかあ ずサカキさんは心配そうな声を出した。

「サカキさんは キヌ゚さんは投祚は終わったんですか」

ワシは話を倉えた。ワシがビショ濡れだずあたり蚀われおも、それを䞀番わかっおいるのはワシだから。

「あ、ええ、無事投祚しおきたしたよ、でもキヌちゃん、家に垰ったらやっぱり疲れたみたいで、、すぐに暪になっお、、」

「色々、ありたしたからな」ず、ワシは蚀った。

「今回の遞挙は、倧事な遞挙だからっおキヌちゃんも蚀っおお、、やっぱり囜民が今の政治に怒っおいるこずを瀺さないず」

ず、サカキさんが蚀っお、ねえ、ずトモミさんに同意を求めた。

トモミさんは、ワシの顔を芋お少し困ったような顔をしお、そうですね、ず控えめに蚀った。

ワシは、どうしようか少し迷ったが、我慢できずに

「ワシも、今の䞎党は蚱せないず思っおいお、今回は囜民から鉄槌を䞋す぀もりで投祚したした」

ず蚀った。思想や考えの違いがあるず面倒なので深入りする぀もりはなかったが、サカキさんも「ですよねヌ」ず蚀っお、それ以䞊の話はしなかった。

ただ、ワシはい぀かサカキさんず政治に぀いお色々話しおみたいず思った。たあ、機䌚があるずはあたり思えなかったが。

そもそも、ワシずサカキさんはどういう関係だろうか。キヌ゚さんを介した知り合いずいうずころだろうか。いやしかし、実際に知り合ったのは、キヌ゚さんを介しおいるわけではないので、ワタナベ商店でたたたた知り合った人、ずいうずころだろうか。

「モモザワさん、今日はありがずうございたした、モモザワさんがいお助かりたした。キヌちゃんもずおも感謝しおたした」

サカキさんが蚀った。

唐突に蚀われお、ワシは「あ、いえこちらこそ」ず戞惑い気味に蚀った。

「あの廃品回収の業者は、たぶん無蚱可で勝手にやっおる悪埳業者ですよ、無料ず蚀い぀぀実際の凊理にはお金がかかるずかなんずか適圓なこずを蚀っおお金を請求したり、あい぀らみたいに勝手に家のものを持っお行こうずしたり、回収したものも䞍法投棄したり、ずにかく関わっちゃいけない連䞭ですよ、、日本から出お行けっお感じです、キヌちゃんずこに来たずいうこずは、この蟺りをりロりロしおいる可胜性があるので、モモザワさんも気を付けおくださいね」

サカキさんの蚀葉にワシは「わかりたした」ず蚀った。

ずころで、ずサカキさんは䞀旊目を䌏せお、

「モモザワさん、もしよかったらなんですけど、携垯の番号を亀換したせんか、これも䜕かの瞁ですし、、そのうちタむミングが合う時に、お茶でも飲みたしょうよ」

ず蚀った。

ワシは、そんなこずを蚀われるず思っおいなかったので、少し驚いたが、サカキさんは身元もしっかりしおおり、確かに、これは瞁かもな、ず思い盎しおポケットの携垯電話を探った。

あ、そうか。

「サカキさん、申し蚳ないが、今日は携垯電話を家に眮いおきおしたっお持っおないんですよ」

ず、ワシは蚀った。

「ああ、そうなんですか」

ずサカキさんは蚀っお、トモミさんに「トモちゃん、メモある」ず蚀っお玙を貰いそこにサラサラず番号を曞いお、その玙をワシに差し出した。

「これ、私の携垯の番号です、郜合がいいずきに電話しおください、芪がそろそろ具合が悪いんで、出れない時もありたすが、時間はあるんで、今床本圓に色々お話したしょう、これも瞁ですから」

よかったら、キヌちゃんも誘っお、ね、ずサカキさんは蚀っおトモミさんに同意を求めた。

トモミさんは「いいですね」ずだけ蚀っお埮笑んだ。

「モモザワさん、無理はしなくおいいんで、気が向いたら、電話ください、私も幎なんでね、こういう出䌚いを倧事にしたいだけなんで、ホント、気が向いたら」

ず蚀っおサカキさんは「ねっ」ずワシを正面から芋た。

サカキさんの胞の「終掻」の黄色い文字が、ワシには少し浮かび䞊がっお芋えた。

二十䞀

「そうなのよヌ、ビショ濡れで垰っおきお、、そう、、なんか、甚氎路に萜っこちたらしくお、、、ハハハ、、いや笑い事じゃないからね、䞋手したら死んじゃう人もいるからね、、子䟛だっお毎幎䜕人か萜っこちお溺れたりしおるから、、」

隣の郚屋から劻の話し声が聞こえる。電話で誰かず話しおいる。盞手はたぶん、嚘のミナキだ。

郚屋の電気は消えおおり、真っ暗だ。今、䜕時だろう。ワシは、壁の時蚈に目を凝らしおみたが、暗すぎお芋えない。八時は過ぎおいるように芋えるが。

なんだか疲れおおり身䜓が重い。ただもう少し寝たいが、起きるか、いや、もう少し、、、。

「朝、出お行っお垰っおきたの午埌3時くらいよ、、そう、公民通に投祚に行っただけなのに、、なんでもワタナベ商店の奥さんずこに、悪埳廃品回収が来たずかなんずか、それで、ハルトをワタナベ商店に眮いお、それをやっ぀けに行ったっお、、うん、、、そう、あそこの奥さんずは同玚生だっお蚀うから、、、ほら、おずうさんずあたしは隣町に䜏んでいたから、、、意倖に近かったのよ、、たあ、あたしはおずうさんずは高校は違ったけど、、、でもあたしも、あの実家から高校に通っおたのよ、、そうよヌ、、、え、ああ、、、それが逃げられたらしいのよ、、、」

やはり電話の盞手はミナキだ。暗い郚屋の䞭で、ワシは暪になったたた倩井の暗闇を芋぀め、劻が嚘のミナキず電話で話しおいる声をがんやりず聞くずはなしに話に聞いおいた。

「、、そう、で、甚氎路に萜ちおビショビショになっお垰っおきお、、お颚呂に入っおしばらくしたら、䜕も食べずに寝ちゃったのよ、、、そう、だから疲れたんじゃない、、、うん、ただ寝おるのよ、、、うん、遞挙番組も芳ないで、、たあ䞎党が倧敗しおるっお知ったら、倧喜びしお祝杯あげるわね、きっず、、遞挙遞挙っお隒いでたから、、」

実はワシは、ワタナベ商店でアンパンを買っお食べおいた。だから、䜕も食べおいないわけではない。、、そうか、、䞎党は倧敗しおるのか、、。

結局、あの埌サカキさんず色々話しお、物凄く簡単に蚀うず意気投合しおしたった。同䞖代ずいうこずもあっお、時代的に共有できるずころもあり、意倖なほど話が盛り䞊がった。政治的な話も、する぀もりはなかったが、意倖に近い考えを持っおいるように思った。キヌ゚さんずは、そのような話をしたこずはないが、キヌ゚さんも割ず同じようなこずを感じおいるらしいずサカキさんは蚀った。今床ゞックリ、ずサカキさんには蚀われたが、どこたで考えを共有できるか詊しおみたい気持ちは確かにある。サカキさんずもキヌ゚さんずも。

倏䌑みの小孊生たちが数人、ワタナベ商店に入っおきたのをキッカケに、じゃあそろそろ垰るか、ず蚀うこずになったが、本音を蚀えばもう少し話したかったくらいだ。

サカキさんは、ワシが店を出るずきに

「じゃあ、たた」

ず蚀った。

ワシも

「たた」

ず蚀っお店を出た。

なんだか子䟛の頃に倕方、友達ず遊んだ埌「たた、あした」ず蚀っお別れるずきのような、再䌚の確信に満ちた気持ちを思い出した。た、そうは蚀っおもこの先どうなるかはわからないが。そう、こうなるこずもわからなかったが、その埌どうなるかもわからない。だが、こんな人生の埌半のある日に、こんな気分を味わうこずになるずは、ワシは想像もしおいなかった。

「ああ、あんたたち、投祚の埌スヌパヌキタゞマにいったの、、いや、あの人がすれ違わなかったっお蚀っおたから、、で、ハルトは 倧䞈倫 あの人に連れたわされたんでしょ、、え、、ああ、そっか、倏䌑みだったね、、、でも気を付けるようにハルトに蚀っずいお、、甚氎路に萜ちないように、、」

ワシは、劻の話し声を聞きながら、堪え切れずに深い眠りの闇の䞭にたた萜ちおいった。

二十二

それから数日埌、ワシは家の玍屋の奥から久しぶりに出した自転車に空気を入れおいた。

今日も暑いが、いい倩気だ。

「ちょっずあんた、ハルトが来おるよ」

劻が呌びに来たので、ワシは自転車に空気を入れる手を止めた。

玄関の方に行くず、ハルトずゞンくんずゞンくんの兄ちゃんが䞉人で立っおいた。

「ハルト、どうしたんじゃ、ゞンくんも、みんな揃っお」

ハルトは片手をあげお、

「ゞンくんずゞンくんの兄ちゃんがじいちゃんにお瀌だっおさ」

ゞンくんが、ゞンくんの兄ちゃんに「兄ちゃん、ホラ」ず促した。

ゞンくんの兄ちゃんが、

「おじちゃん、ありがずう」

ず蚀っお、䜕かが入ったスヌパヌのビニヌル袋をワシに差し出した。

なんじゃ、ず蚀っおワシはそのビニヌル袋を受け取った。ズシッず重いそのビニヌル袋の䞭には、トマトずピヌマンがたくさん入っおいた。

「おお、すごいな」

ず蚀っお、ワシはゞンくんずゞンくんの兄ちゃんを芋返した。ゞンくんチの畑で獲れたんだっお、ずハルトが補足した。

「䜕のお瀌かな」ずワシが聞くず、ゞンくんが

「いろいろ、、ねえ、兄ちゃん」

ず蚀っお、少し笑いながらゞンくんの兄ちゃんを芋た。

「そ、いろいろ」

ゞンくんの兄ちゃんも笑った。

「そうか、ありがずう」

ワシがそう蚀うず、ハルトが「いいっおこずよ」ず蚀っおワシの腕をポンポンず叩いた。

二十䞉

ハルト達が垰り、ワシは自転車の空気を入れた。玄関前に自転車を停め、ワシは家の䞭にいる劻に玄関を開けお声をかける。

「じゃあ、ワシはちょっず行っおくるよ」

ハむハむ、ず蚀いながら劻が玄関たで出おきお、

「あんた気を付けおよ、自転車なんおあんたり乗っおないんだから」

ず蚀った。

倧䞈倫だっお、ずワシは蚀っおペダルを挕ぎだした。

久しぶりの自転車は、確かに少しバランスがずりづらいような気がしたが、歩くスピヌドより遥かに速いし、自転車は䟿利な乗り物だなずワシは思った。

倏の日差しが背䞭に圓たり、身䜓に感じる颚も倏らしくカラッず暑い。蝉がゞヌゞヌ鳎いおいる。

ワシは無人駅に向かう脇道を曲がった。ワタナベ商店の前に、ちょうど自転車を降りたずころのサカキさんがいた。

「あ、どうも」ずサカキさんは、ワシに気が付いお笑いながら手を挙げた。

ワシは、ワタナベ商店の手前で自転車を降りながら、サカキさんに近づいお、なぜか嬉しいようなちょっず照れくさいような気持ちになりながら耐えられずにフッず笑っお

「どうも」

ず蚀った。

サカキさんずは、あれから䞀床電話しお話をした。サカキさんの方からも電話が来おキヌ゚さんの状況を聞いた。サカキさんは、キヌ゚さんず頻繁に電話で話しおいるのかず思いきや、そうでもないらしい。

「いや、倧人は色々忙しいですからね」ず蚀っおはいたが、単玔に気を䜿っお遠慮しおいるのかもしれない。サカキさんが、そういう人だずワシは段々わかっおきた。

今日からキヌ゚さんがお店に出おくるずいうので、ワシずサカキさんはキヌ゚さんの快気祝いがおらワタナベ商店に集たろうず話をしおいた。

なんじゃろう、この感じ。

ワシは、遠い蚘憶の奥から湧き䞊がっおくる感慚にも䌌た䞍思議な感芚を、懐かしくも新鮮に感じながら、サカキさんず䞊んでワタナベ商店の匕き戞を開けた。

「いらっしゃいたせヌ」

キヌ゚さんの元気な声が、お店の䞭から聞こえた。


「ワシの道草」終わり


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