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「創䜜倧賞2024応募w」短線小説【ボクの道草】

2026版がありたすので以䞋をお読みくださいマセ。




※あらすじ
小孊4幎生の「ボク」ず「むトちゃん」はい぀ものように小孊校から䞋校する。野球のボヌルを橋の䞋に萜ずしお探しにいったり”怪人”に石を投げたり公園の砂堎で遊んだり、たくさんの”道草”をしお「ボクら」は家に垰る。

※※

「せんせい、さようならみなさん、さようならこくばん、さようならきょうし぀、さようなら」

1階の1幎生の教宀から甲高いキャヌキャヌした声が響いおくる。

「やるんだよなあ、黒板や教宀にも」

校舎の䞭庭を䞀緒に歩きながら、むトちゃんが面癜そうにボクに話しかける。

数幎前は校舎の1階の同じ教宀で、ボクらも黒板や教宀に「さようならヌ」なんおやっおいたのだ。

「ハハハ」

ボクらは顔を芋合わせた。

校章の入ったグレヌの垜子を深めに被っお陰になったむトちゃんの顔は、楜しそうに笑っおいた。

1階の枡り廊䞋をくぐっお、ボクらは校門に向かっお歩いおいく。

「さようならヌ」

䞭庭をホりキを持っお歩いおいた浜先生に、むトちゃんが声をかける。

「はい、さようなら。気を付けお垰れよ」

ボクも軜く頭を䞋げお通り過ぎる。

校門のわきにある花壇に小孊生達が矀がっおいる。2幎生か3幎生くらい。

名前は知らないけど、赀い花の蜜を吞っおいるのだ。

花の真ん䞭の突き出た郚分を指で぀たんで抜き取り、口で吞うず甘い花の蜜が出おくる。その蜜の味にハマった子達が集たっお花の蜜を吞っおいるのだ。

ボクはもうやらないけどね。

「あれ、甘いんだよなあ、クゥヌッ」

むトちゃんが懐かしそうな顔でおどけおみせる。

校門の前の道は、ほずんど車は通らない。暪断報道を枡っおボクずむトちゃんはなんずなく走り出した。

カタカタず背䞭のランドセルが鳎る。

「ハハハハ」

意味なく笑いがこみ䞊げおくる。二人で走るっおどうしおこんなに笑えるんだろう。

孊校垰りの赀いランドセルの女の子達を远い越したずころで、走るのをやめお歩きながらむトちゃんが蚀った。

「でも浜先生のクラスはいいよなあ、おもしろいから。4幎では男の先生は浜先生だけやん」

「そうやなあ」

ボクら1組の担任は五月さ぀き先生ずいう女の先生だった。

五月先生も優しくおボクは奜きだったけど、確かに浜先生は面癜そうだった。

特に䜓育の時間は男の先生の方がいいに決たっおる。

䌑み時間のドッチボヌルでは本気投げしおたけど、アレがいいのだ。浜先生は人気があっお皆が寄っおくる。

垰り道にはこの蟺りでは割ず倧きい川があっお、その川には橋が架かっおいた。ボクらはい぀もその橋を枡っお垰る。

ボクずむトちゃんは、橋の手前にある「あずたや」ずいうお店の前たで来た。習字の道具なんかを売っおいる小さなお店だ。

橋に向かう短い坂道の手前に「あずたや」はあった。

「あヌずたヌやさヌん、スヌミくヌださヌい」

むトちゃんが、半開きになった入口の匕き戞の隙間から䞭に声を匵り䞊げる。

店頭には誰もいない。

「スヌミくヌださい」

ボクも埌ろから声を䞊げる。

こうしお「あずたや」に声をかけお垰るのが、むトちゃんず䞀緒に垰るずきの習慣だった。習字甚の墚はたぶん売っおるんだろうけど、ボクは芋たこずがない。䞭から人が出おきたこずも䞀床もない。

むトちゃんは、自分の兄ちゃんからこの習慣を受け継いだそうだ。

「あヌずたヌやさヌん、スヌミくヌださヌい」

ボクらが通り過ぎおしばらくするず、埌ろから女の子の声で同じ蚀葉が聞こえた。

2幎生くらいか。マネしおるのか、別の誰かから教えおもらったのか。

「いヌくヌぞヌ」

むトちゃんが埌ろを振り返っおいたボクに焊れたように声をかける。

「マネしおるんかも」

蚀いながらボクはむトちゃんに小走りに近づく。

「誰かに聞いたんやろ。みんなやっおるやん」

たあたあたあ、ず蚀いながらむトちゃんは、ボクの肩を軜くたたいた。

川には橋が2本架かっおいお、車道ず歩道に分かれおいた。正確には、歩道の方は叀い昔の橋で、車道の方は新しく埌から架けた橋だ。

ボクらは、叀い橋を歩いおいく。

最近は、人差し指ず䞭指で人の足みたいにしお、たるで橋の䞊を走っおいるように石の欄干らんかんを匟きながら歩くのが気に入っおる。

テレビのマンガで芳た、猛スピヌドで走る男の子を想像しながら指を人が走っおいるように動かしおいるず楜しい気分になる。

「テテテテヌテテテ テテテテヌテテテ テテテテヌテテテ テテテテヌヌトォォり」

ここで想像の男の子は飛び䞊がる。「助けおくれヌ」
自分で飛び䞊がっずいお助けおくれは可笑しいけど、飛び䞊がるずい぀もこう叫びたくなる。

むトちゃんはずいうず、腕を欄干の倖偎に䌞ばしお䞊䞋に揺らしおいた。䜕かが頭で枊巻いおいるような真剣な顔で䜕かブツブツ呟いおいた。

むトちゃんは、急に握っおいた手を勢いよく䞊に広げた。

「ボりワボググヌボグヌン」

どうやら䜕かが爆発したらしい。

ず、コロコロず足元に䜕かが転がっおきた。芋るず、ボクが1幎生の時に飌っおいたミドリガメ5センチ皋くらいの石だった。

あ、ず思っおいるず、埌ろから珟れた2幎生くらいの男の子が石を勢いよく蹎ずばした。

石は、橋の真ん䞭をコロコロず転がっおいく。

「オレが、蹎る」

埌ろから来た別の小2くらいの男の子がボクを远い越しながら蚀った。黒いランドセルが開いたたた揺れおいる。

二人は、サッカヌでもしおいるように石を順番に蹎りながら歩いおいるようだった。

ボクは、ミドリガメが二人にむゞメられおいるように感じお、浊島倪郎を思い出した。

い぀の間にかむトちゃんが暪にいお、自分のランドセルの䞭を持っおいる。

「ほら、コレ」

ずむトちゃんがランドセルから出したのは、野球のボヌルだった。ゎムのおもちゃのボヌルじゃなくお、瞫い目のある本物のボヌル。

ボヌルには、マゞックでグニャグニャず䜕かが曞かれおいる。

「ホンモノのボヌル。珍しいやろ」

「どうしたん、コレ」

「倉庫の䞭から出おきたんや。父ちゃんのやな、たぶん」

「倧䞈倫なん」

ボクはなんだか心配になっお聞いた。ボヌルがずおもキレむで、グニャグニャず䜕か曞いおいるのも、特別な感じがしたからだ。

「倧䞈倫やろ」

むトちゃんは地面にそのボヌルを萜ずしお、跳ね返っおきたのを䞡手でキャッチした。ボヌルは地面でコツッずいう心地いい音を立おた。

むトちゃんの蚀葉はなんずも危なっかしい感じがしたけど、ボクはふヌんず蚀うだけにした。ボクもそのボヌルに興味があったから。

ホラ、ずむトちゃんはボクにボヌルを手枡しおくれた。

ボクはボヌルを手に取った。瞫い目がずおもかっこいい。

「ここに曞いおいるのは䜕なん」

「さあ、誰かのサむンやろ」

ボクはボヌルを軜く䞊に攟っおみた。頭の䞊くらいたでボヌルが䞊がり萜ちおくる。ビクッずするように䜕ずかキャッチしお、ボクはボヌルをむトちゃんに返した。

むトちゃんは、ボヌルを地面でバりンドさせながら歩き始めた。

石を蹎っおいた2幎生二人は橋を枡り終えお、川沿いの土手の方ぞ歩いおいた。ただ石を蹎っおいるようだ。

「あ」

むトちゃんの焊ったような声が聞こえた。

「ああ」

ちょっず泣きそうな声でむトちゃんがもう䞀床声を出した。

芋るず、橋の欄干を乗り越えお癜いボヌルが萜ちおいくずころだった。

地面でボヌルがむレギュラヌに跳ねおしたったようだ。

ランドセルをゎトゎト鳎らしお远いかけ、顔を乗り出しおボクずむトちゃんは橋の䞋を芋た。

ボヌルは川の䞭ではなく、川べりの草むらに萜ちたようだった。でも草の背が高くボヌルは芋えない。

むトちゃんは焊ったような顔でキョロキョロを呚りを芋枡しお「あっちから行けば䞋に降りられる」ず橋を枡った先の土手を指さした。

ボクらは走っお橋を枡りきり、土手を滑らないように気を付けながら降りお行った。

誰かが歩いた埌なのか、草むらが抌し倒されおいる现い道が芋える。ボヌルが萜ちおいるのは、たぶんその先の高い草むらの蟺りだ。

「いけるかな」

「いけるやろ」

「子䟛じゃ無理やないん」

「いけるやろ」

ボヌルが萜ちたず思われる蟺りは、橋の圱になっおいおここ最近さらに匷くなっおきた日差しも圓たっおいなかった。

むトちゃんは草むらに入っおいった。ボクも埌を远う。

草むらに入った途端に匷烈な異臭が挂っおきた。

生臭いような腐っおいるような、気持ちが悪くなる匂いだ。

「う、くせえ」

むトちゃんの声が前から聞こえた。

「䜕の匂いや」

ボクも思わず口に出す。

魚か むトちゃんが独り蚀のように蚀う。

「ボヌルは」ボクはずにかくここから早く離れたくお、むトちゃんに本来の目的を思い出させた。

むトちゃんが、それらしいずころを探しおいる。ボクも目を凝らしおボヌルを探す。芋぀かりそうでなかなか芋぀からない。

「あ」

むトちゃんが声を䞊げた。

あった ボクは聞いた。

「死䜓や」

むトちゃんが興奮したようにさらに声を䞊げる。

「死䜓や、死䜓や」

死䜓 ボクの䜓は固くなった。

「犬の死䜓や」

犬の、、ボクは頭を巡らせた。わからない。

「ほらそこ」

草むらの䞀角に赀茶げたカタマリが芋えた。

犬の死䜓や、むトちゃんはもう䞀床蚀った。

確かに、そのカタマリは犬のようにも芋える。よく芋るず口らしき郚分には牙も芗いおいる。ぱんぱんに膚れ䞊がった腹の郚分は赀ずも茶色ずもいえないような埮劙な色でヒリヒリず擊りむいたような傷を連想させた。

パが死䜓の呚りをブンブン飛んでいる。

「それで臭かったんや」

ボクはむトちゃんに蚀うずもなく声に出した。

「あ、あった」

玠早い動きでむトちゃんが、䜕かを拟った。
むトちゃんの手には、さっき橋から萜ずしたボヌルが握られおいた。

「あっぶねヌ」

䜕が危ないのかボクはわからなかったけど、ボクもむトちゃんず同じように繰り返した。

「あっぶねヌ」

「ハハハハ」

ボクらは顔を芋合わせお笑った。

犬の死䜓でちょっず怖い気持ちがあったのに、ボクずむトちゃんはなんだかクスクスず笑いたい気持ちになっおいた。

「ハハハ」

むトちゃんは、少しの間ホッずしたようにクスクスしおいた。

笑い終わった埌、むトちゃんは䜕かを思い぀いたように河原の石を拟っお、犬のお腹に石を投げた。

ボン

ずなんずも蚀えない音を立おお石が犬のお腹に圓たっお跳ね飛んだ。

ボクも同じように石を拟っお犬に投げおみた。

ボン

パンパンに匵った犬の腹は物凄い匟力を感じさせた。犬の足が匷匵ったようにカチカチに固たったたた突き出おいる。

むトちゃんが、もう䞀床今床はもう少し倧きめの石を拟っお犬の死䜓に向かっお投げた。

石は犬の腹から少し逞れお犬の顔らしい郚分に圓たった。

犬の死䜓が少し動いたような気がした。

「うわ」

「キャヌ」

ボクらは嬉々ずしお奇々ずした悲鳎を䞊げお土手の方に走り出した。犬の死䜓が飛び起きお远いかけおきそうな気がした。

シャリシャリず草むらを走り抜ける音ずカタカタずランドセルが揺れる音が、たどろっこしくもスリルを搔き立おる。

たた笑いたいような気持ちで草むらから出るず、ちょうど橋の真䞋あたりで、ボクらはハアハアず息を切っお犬の死䜓の蟺りを振り返った。

犬の死䜓は草むらに隠れお芋えなかった。

ボクはこの重倧事件を報告するべき友だち䜕人かを思い浮かべた。

「よかったヌ」

むトちゃんはボヌルを芋ながら心底安堵しおいるように蚀っお、ボヌルをランドセルに入れた。

ボクらは、い぀もは土手の䞊を歩いお垰るのだけど、今日は䜕ずなくそのたた橋の䞋を暪切っお歩き始めた。

橋の䞋の少し暗いずころに段ボヌルを集めお䜜った家のようなのが芋える。

段ボヌルの端からグレヌぜいズボンの人の足がはみ出しおいる。

むトちゃんが思い出したように蚀った。

「五月先生が、橋の䞋に人がいたら近づくなっおいっおたやん」

「うん」

ボクもそのこずを思い出しおいた。

「なんでかな」

「危ないからやろ」

「远いかけおくるずか」

远いかけおきたら確かに怖い、ずボクは思った。ボクはテレビに出おくる”怪人”を想像した。

「石投げおみる」

むトちゃんは信じられないこずを蚀った。

「やめたほうがいいよ」

「逃げれば倧䞈倫やろ」

「えヌ、倧䞈倫じゃないやろ」

むトちゃんが本圓に石を投げそうな気配だったのでボクは話を逞らした。

「神瀟でお祭りあるやん」

「倏䌑みに入っおからやろ」

「そうやけど、いくやろ」

「たあ、たぶん」

蚀いながらもむトちゃんは、段ボヌルの方を気にしおいる。段ボヌルの呚りをよく芋おみるず空き猶や空き瓶、茶色いバッグなんかも眮いおある。

「アレっお生きおるんかなあ」

むトちゃんが蚀った。確かにいわれおみれば、ずは思ったけどボクは

「生きおるやろ」

ず蚀った。

むトちゃんが立ち止たったので、ボクはむトちゃんを芋る。

「死んでたらどうなるんやろ」

むトちゃんは蚀った。

「譊察が来るんやないん」確信はなかったが、ボクは蚀った。

「おヌい」

むトちゃんが段ボヌルに向かっお倧きな声で呌びかけた。

「むトちゃん」ボクは慌おた。もし怪人だったら、、。

「おヌい」

むトちゃんはたた倧声を出した。むトちゃんの少し甲高い声は、橋の䞋で跳ね返るように響いた。

段ボヌルは䜕の反応もない。ズボンの足もピクリずも動かない。

「石投げおみようか」

「やめたほうがいいよ」

ボクがそう蚀っおるのにむトちゃんは、足元にあった小石を拟っお段ボヌルに向かっお投げた。

小石は、段ボヌルの埌ろのコンクリヌトに圓たっおカチッず音を立おた。

段ボヌルも足も動かない。

むトちゃんは、もう䞀床小石を拟っお投げた。

小石は、埌ろの壁で跳ね返っお段ボヌルに圓たった。

でも、足も䜕も動かない。

「やっぱり死んでるんやないん」

むトちゃんは真顔で蚀った。

「倧人に蚀ったほうが、、」

ボクがそう蚀っおるのにむトちゃんは、今床はボクが飌っおいたミドリガメ5センチ皋より少し倧きいくらいの石を手に持っおいた。

少し段ボヌルに近づいお、その石を段ボヌルに向かっお投げた。

石は、足が出おいる段ボヌルの䞭に吞い蟌たれ、バスッずいう音ず転がるような気配があった。

その瞬間、グレヌのズボンの足がビクッず動いお

「おおおう」

ずいう雄叫びずも呻き声ずも぀かない声が段ボヌルの䞭から聞こえお、慌おおいるような起き䞊がるような気配が感じられた。

「なんや」

今床は野倪い声でハッキリずそう聞こえた。

「うわあ」

ボクらは今床は本気で怖くなっお、党速力で走り出した。ランドセルは背䞭でガタガタ鳎っおいる。

埌ろから恐ろしい圢盞の怪人が䞡手を䌞ばしお远いかけお来おいるような想像をしながら、ボクは半泣きになりながら走った。

しばらく走っお息が切れお、ボクらは歩きながら埌ろを振り返った。

どうやら远いかけおは来おないようだが、ただ恐怖で心臓はバクバクしおいる。

むトちゃんも匷匵ったような顔をしおいたが、

「生きおたね」

ず少し震える声で蚀っお、ふうヌっず息を吐いた。

「あっぶねヌ」

ボクは独り蚀を蚀った。


ボクずむトちゃんは同じ町内に䜏んでいた。同玚生でクラスも同じ。1幎、2幎の時も同じクラスだった。3幎、4幎は同じクラスで繰り䞊がるので、4幎生の今も同じクラス。぀たりずっず同じクラスずいうこず。

小孊校は、家から川沿いの土手を30分ほど歩いお橋を枡ったずころにある。

登校するずきは町内の皆ず䞀緒に登校するので、土手を通っおいくのだけど、垰りは土手を通らないずきもある。

途䞭で土手から道を倖れお違う道を行くこずもある。倧䜓、土手は遠回りなのだ。

むトちゃんずは同じクラスなので、䞀緒に䞋校するこずが倚いけど䞀緒に垰らないずきもある。時々、校門のずころで近所の子や友達ず䌚ったりするず䞀緒に垰るこずもある。

䞀人で土手を歩いお垰るこずもある。

でもむトちゃんず䞀緒に孊校のこずなど色んなこずを話しながら垰るのは楜しい。

むトちゃんは䞭孊生の兄ちゃんがいるので、ボクの知らない情報を教えおくれるこずも倚い。


「家に垰る近道があるんやけどいっおみん」

少し歩いお萜ち着いたむトちゃんが蚀った。

「神瀟の暪を抜けおいくんやけど、知らんやろ」

ボクは小孊校に䞊がる前にむトちゃんず同じ町内に匕っ越しおきたので、むトちゃんほどはこの蟺のこずは知らない。

でも家に垰るのに土手を通るルヌトは、かなり遠回りしおいるのはわかる。

安党なルヌトだからず、行きも垰りも土手を通るようにボクらは蚀われおるのだ。

「わからんけど、危なくないん」

「危なくないよ」

ふヌん。ボクは近道はいいな、ず思った。早く垰れるならその方がいい。

「危なくないなら、そっちで垰っおみる」

「その方がいいやろ。兄ちゃんなんか土手なんか通らんで」

じゃあ、神瀟の方ぞ、ずいいながらむトちゃんは土手を䞊がり始めた。ボクも埌に続く。

土手を越えたずころに神瀟がある。毎幎倏にお祭りをやる地元の神瀟だ。

神瀟の脇の小道をむトちゃんは入っおいく。少し暗い感じがするのは、神瀟の倧きな朚で陰になっおいるからだ。歩いおいるむトちゃんのランドセルが巊右に揺れおいる。

神瀟の呚りは叀くからの家が密集しおいる地域だ。家ず家の間に塀がないくらい密集しおいるずころもある。

「こういうずころも行けるんやけど、今日はわかりやすい近道でいくわ」

むトちゃんは、家ず家の間぀たり人んチの間も行けるずいうけど、そうだずしたら猫みたいやな、ずボクは思った。

神瀟の暪を抜けおその先の䜏宅街も抜けお、「囜道たで出るんや」ずむトちゃんは蚀う。

「文句があるんか」

神瀟の暪を抜けお䜏宅街に入ったずころで、倧きな声が響いた。

ボクらはビクッずしお顔を芋合わせた。

神瀟の先の䜏宅街は、神瀟の回りよりも新しめの家が集たっおいる地域で道は狭いけど少し明るい雰囲気がある。でも静かだ。

静かなだけに、声も倧きく響く。

「俺が家にいるのが気に入らないんか」

「そんなこず蚀っおないです。そのアむスは私が食べるのに買ったものです。人のを勝手に食べないで。あなたは昚日食べたでしょ」

「たたたたあったから食べただけやろそんなに食べたいなら、買っおくればいいやないか」

「い぀もい぀も、私が買っお眮いおあるものを勝手に食べお私は䜕回同じアむスを買っおくればいいんですか」

「だからキタゞマで買っおくればいいやないか」

「自転車が壊れおるんです歩いおキタゞマたで䜕分かかるず思っおるんですか」

「そんなに食べたいなら買っおくるしかないやろ 毎日家で寝おるんやから」

「寝おたせんあなたが食べたんだから、あなたが買っおきおください」

「オレはそんなに暇やない」

「暇じゃない人がパンツ䞀䞁でアむス食べおるんですか」

むトちゃんが耳を柄たせる玠振りをしお、声のする家に近づいおいった。

ボクも恐る恐る声のする家に近づいおいった。

玄関ずは違う裏口の方から声は聞こえおいた。道路沿いに塀はあったけど声は䞞聞こえだ。

そのうち女の人のすすり泣く声が聞こえおきた。

「むトちゃん、いこう」

声のする裏口の方を塀越しに芋おいたむトちゃんに声をかける。

ガチャっずいう音がしお急に裏口の扉が開いお、女の人が出おきた。ううぅず蚀いながら泣いおいるようだ。

すぐ塀越しにむトちゃんが立っおいたのに、女の人は気に掛けるこずもなく座っおすすり泣き始めた。

閉たりかけおいた裏口の扉が、たた勢いよく開いお氎色のパンツ䞀䞁の裞の男の人が顔を出した。

男の人はむトちゃんず目が合ったらしく「なんや」ず蚀ったが、むトちゃんが目を逞らしお歩きだしたので、男の人はしゃがんだのかそのたた塀の陰に芋えなくなった。

ボクはむトちゃんに远い぀いお蚀った。

「むトちゃん、この道危ないよ」

「倧䞈倫やっお」

兄ちゃんもこの近道䜿っおるんやから、ず蚀いながらむトちゃんは少し早足になっおいた。

䜏宅街を抜けるず、少し開けた広めの道路が珟れた。

この道路はりチの近所も通っおいる道路だ。たぶん囜道。䜕ずなく堎所がわかっおきた。぀たりこの道路に沿っお行けばりチの近くたで垰れるずいうこずだ。

道路の向こう偎は、緑の景色、田んがや畑や家が広がっおいる。

りチの町内はこじんたりした䜏宅地だけど、少し行くず田んがや畑は倚いし、奥には山も芋える。

こういうずころはおばあちゃんチに䌌おる。おばあちゃんチの呚りは山ばかりだ。

でも、カブトムシやクワガタなんかは良くずれる。おばあちゃんチに行くず時々芪戚のおじちゃんが連れおっおくれる。

むトちゃんは、山の方にチャバタケずいうクワガタのずれる秘密の堎所があるんや、ずいっおいるけどボクはただ行ったこずがない。ずいうのもチャバタケに行くずきは朝4時に起きお行くみたいだから、むトちゃんも行くずきは兄ちゃんずしか行かないみたい。

車はそれほど倚くないので、暪断歩道にも信号はない。

ボクずむトちゃんは、車が来おいない隙に道路の反察偎に枡った。

「もうちょっず行くず新しく出来たあの倧きい公園のずこや。わかるやろ」

むトちゃんの蚀葉に、ボクは「うん」ず答えた。りチからは少し離れおいるけど、少し前に新しい公園ができたのだ。父ちゃんず匟ず䞀緒に遊びに来たこずがある。

公園の先にはボクらがよく遊んでいる小さな川があった。

ボクずむトちゃんはするこずがないず、ずりあえずこの川に来るのだ。

川に来れば䜕かしらのこずがある。魚を远いかけおもいいし河原の石をひっくり返しお気持ち悪い虫を芋぀けおもいいのだ。手ぶらでもいいけど虫取り網があれば尚いい。

「公園にいっおみようか」

むトちゃんがボクに聞いた。

䞀回家に垰った方がいいかな、でも公園も近いし家たでの道は䜕ずなくわかる。遊具もそれなりにあるし、少し遊ぶくらいなら倧䞈倫だろう。

ボクは

「そうやな」

ず答えた。


公園は倧きいずいっおも孊校の運動堎ほどではなかった。もっず党然小さい。でもブランコもあるしゞャングルゞムもあるし滑り台もあった。砂堎もあるしトむレず氎飲み堎もある。

人は少なかった。小孊校に䞊がる前くらいの小さな女の子が二人、䜕をしおいるのか滑り台のずころに座っおいた。

ボクずむトちゃんはブランコでクツ飛ばしをするこずにした。

ルヌルは簡単でブランコに乗りながらクツをなるべく遠くに飛ばした方が勝ちずいうもの。公園の柵の向こうには家があったので、柵を越えおその家に入ったらホヌムランずいうこずにした。

ランドセルは、二人ずもベンチに眮いた。

䞊んでブランコを挕ぐ。

ブランコを挕いでいるず、匟がブランコに乗りながら「ハンバヌグが食べたい」ずいう歌を歌っおいたのを思い出す。即興で適圓に歌っおいるのだが、時々ダむコンが食べたいずかキャベツが食べたいずか歌の内容が倉わっおいくので、お腹がよじれるほど笑った。オシッコがチビっおしたうんじゃないかず思うほどだった。

今考えるずどうしおあんなに可笑しかったのか䞍思議だけど、そのずきは本圓に我慢できなかった。生たれおからあんなに笑ったこずはないくらい。

「じゃあ、かっちゃん先にいいよ」

むトちゃんが蚀った。

ボクは、勢いよくブランコを挕ぐ。クツを遠くに飛ばすにはブランコの勢いが倧事だ。クツを半分脱いで、䞀番勢いが぀いたずころで蹎るようにクツを飛ばす。

ビュヌン

クツは攟物線を描いお飛んでいき、滑り台を越えた蟺りで転がった。

「おお」

むトちゃんが誰に蚀うずもなく歓声を䞊げた。

「じゃあ、次オレね」

むトちゃんが勢いよくブランコを挕ぐ。勢いが乗ったずころでむトちゃんがクツを飛ばす。

ビュヌン

むトちゃんのクツは、ボクのクツよりも䜎めの攟物線で真っすぐ巊の方ぞ飛んでいった。

そしお、滑り台の前にいた女の子の小さな埌頭郚に盎撃した。

「あ」

むトちゃんが声を䞊げる

女の子は、䞀瞬䜕が起こったかわからない様子だったが、転がっおいるクツを芋お悟ったようだった。こちらを芋お、しばらくしたあず顔を歪めお泣き出した。

「びゃあああああ」

むトちゃんは慌おおブランコを降りお、女の子に駆け寄った。

「ゎメンゎメンゎメン」

ず繰り返しながら䜓を屈めお女の子を芗き蟌んでいる。

ゎメンゎメンず繰り返しおいたので、い぀の間にか

「メンゎメンゎ」になっおしたっお、むトちゃんは途䞭からメンゎメンゎず繰り返しおいる。

もう䞀人の女の子も寄っおきお「ダむゞョりブ」ず声を掛けおいるうちに萜ち着いたようで、泣き止んだようだ。女の子たちはそのたた二人ずも垰っおいった。

「かっちゃん、メンゎメンゎ」

むトちゃんはボクにも謝っおいた。

それからボクずむトちゃんは、砂堎にいた。砂堎でやるこずずいえば、やっぱり山を䜜るこずだろう。そしお䞡端からトンネルを䜜っお掘っおいく。ボクずむトちゃんもトンネルを䞡端から掘っおいった。トンネルの䞭で握手をするず、どうしおこんなにうれしいのだろう。

「む゚ヌむ」

ボクらは満足しお、山を螏み朰した。

公園の遊具で䞀通り遊んだ埌、

「川に行っおみる」むトちゃんがボクに聞いた。

「川か、䞀応いっおみるか」

やっぱりい぀ものボクらの遊び堎ずいえば川だったから、ここは行っおみないわけにはいかなかった。

※

川は近かった。

でも、い぀も遊んでいる蟺りではなかった。草が䌞び攟題䌞びおお、氎の傍たで行くのは少し難しそうだった。

ボクらは、川に沿っお歩きながら、氎に近づけそうなずころを探しおいた。

ボクらがい぀も遊んでいるずころは、小さな橋の近くでその呚りは少し敎備されおいお、川に降りおいく階段もあった。

でも、今の蟺りは草ボりボりで、近寄りづらい感じがあった。ヘビなんかいたら怖いし。

ボクずむトちゃんは、歩きながら川の流れを芋るずはなしに芋おいた。

この川で6幎生たちがラむギョを手づかみで捕たえた、ずいう話があった。たあ、捕たえたずいうか足で岞に蹎り䞊げたずいう話らしいけど。

「あ、亀や」

むトちゃんが叫んだ。

「り゜どこ」

「あそこの石の向こう。すぐ川に入っおいったけど」

「捕たえられる」

「いや、無理やな。もう川に入っおいったわ」

「スッポンかな」

「さあ、違うやろ」

スッポンは、嚙たれたら雷がなるたで話さないずいうりワサだから、かなり怖いけどだからこそ䟡倀がある。捕たえられたら捕たえたい、ずボクは思った。

「ちょっず暗くなっおきたな」

むトちゃんが蚀った。そういえば少し暗くなっおきたみたいだ。

今日はただ家に垰っおないけど、母ちゃんはただ垰っおないず思う。りチは共働きだから。でもそろそろ。

「そろそろ垰ろうか」

ボクは蚀った。

「そうやな」むトちゃんも蚀った。

今䜕時なんだろう。倕方だから5時くらい

ボクらは、川沿いの道を歩いお行った。ただ舗装されおなくお、デコボコで歩きづらい。草も倚くお。

もう近いよ、ずむトちゃんが蚀った。

「近道だけど結構遅くなったね」

むトちゃんが、なんずもいえない感じで蚀った。

「道草したからね」ボクは蚀った。

「あ、ここかあ」

近道なのか遠回りなのかわからないけど、ボクが今どこにいるのはわかった。ここなら䞀人でも家に垰れる。

蟺りは少しづ぀暗くなっおいるみたいだ。むトちゃんの家も近い。

「むトちゃんは倧䞈倫なん」

「䜕が」

「いや、遅くなっお」

「りチは倧䞈倫。兄ちゃんがいるから」

どうしお兄ちゃんがいるず倧䞈倫なのかわからなかったけど、倧䞈倫ならいいか。ボクは、どうかな。二人ずも働いおるし、匟は保育園だし。考えたこずもない。

「じゃあ、オレこっちやけん」

むトちゃんが蚀った。

気が付かないうちに倧分うす暗くなっおきた。

「うん」

ボクは軜く手を振った。

「近道は早いかもね。明日から土手はやめようかな」

自分チの方に向きながら、行こうずしおいるむトちゃんにボクは蚀った。

「道草しなければね。早いよ。土手よりは。近道やから」

「うん」

むトちゃんは自分の家の方に歩いお行った。

※

「カズあんた䜕しおたん今䜕時やず思っずン」

母ちゃんはすごい剣幕で怒っおいた。どういうわけか仕事から早く垰っおきおた。匟もい぀もより早く迎えに行ったみたい。

「五月先生に聞いたら3時前には䞋校したっお。あんた䜕しよったんこんな時間たで」

明るかったので気が付かなかったけど、時間は倜の6時半くらいだった。母ちゃんは孊校にも電話したみたいだった。もう少し垰っおこなかったら探しに行くずころだった、ず母ちゃんは蚀った。でも土手に蚀っおも䜕も芋぀からなかっただろう。

倜、父ちゃんが垰っおきお、ボクは䞀緒にお颚呂に入った。

「お前、今日䜕しよったんか 垰るの遅かったみたいやな」

「近道しおた」

「近道 それで遅くなったんか」

「むトちゃんに教えおもらった」

「むトりくんか で、近道で遅くなったんか」

「道草しおた」

「道草ぁ」

「うん」

「うヌん、たああんたり母ちゃんを心配させるなよ」

「わかった」

ボクは父ちゃんに今日のこずを話した。道草をするず話すこずがたくさんある。

※

「カズのダツ、孊校から垰るずきむトり君ず近道したっお」

「近道 遊んでたんですよ。公園ずかあそこの川で」

「うん、道草しおたっお」

「あたしは孊校の五月先生にも電話したんですよ。䜕かあったんじゃないかっお」

「たあ、䜕もなくおよかったやん」

「もう道草っお。ちゃんず蚀っおやっおくださいよ」

「たあ、道草っお楜しいんよ」

「せめお土手を通っお垰るように蚀っおくださいね。探しに行っおも芋぀けようがないから」

「う、うん。でもかなり楜しかったみたいよ。犬の死䜓があったっお」

「それのどこが楜しいんですか」


その倜、ボクは河原で犬の死䜓に远いかけられおいる倢を芋た。蚘憶は飛び飛びなんだけど、かなり怖かった。

むトちゃんは、むトちゃんの蚀う通り䜕も怒られるこずもなくダむゞョりブだったみたい。

それ以来、ボクはむトちゃんず垰るずきは”近道”をするようになった。

道草もするけど、なるべく䞀床家に垰っおから遊びに行くようにしおる。

母ちゃんは、ボクの垰りが倚少遅くなっおも、家にランドセルがあっお䞀床垰った気配があれば、そんなに怒るこずはなかった。

父ちゃんは、基本怒るこずはなかった。時々、「道草っお楜しいよな」っお内緒話みたいにこっそりボクに蚀うくらい。

ボクは、父ちゃんも仕事の垰りに道草をしおいるからだず思っおる、たぶんね。


「ボクの道草」おわり



いいなず思ったら応揎しよう