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#15|それでも、会社は変わらなかった

前回は、外部取締役の人たちが調べたことで、会社の実態が少しずつ見えてきた話を書きました。
では、実態がわかったところで、会社は変わるのか。
変わりませんでした。

今度こそ、誰かが変えてくれると思っていた

会社は株式会社だったので、株主もいました。
社内にも社外にも、取締役がいました。
これだけの人が関わっているのだから、何らかの状況へ誰かがどうにかしてくれる。そう期待していました。
もう一度書きます。
他人任せでごめんなさい。

株主総会も開かれました。
その日、会議室からは何度も大きな声が聞こえてきました。
相当、揉めているようでした。
何を話しているのかはわからないけれど、中にいる人たちが社長に怒っていることだけはわかりました。
ここまで放置していたことを責めていたのか。
これから会社をどうするのか問いただしていたのか。
それとも、社長の交代を求めていたのか。
何が議題だったのかはわかりません。
ただ、これだけ怒られても社長は変わらない。
変わらないから、怒られているわけだけど。
意思が強い人ってすごい。
呆れるを通り越して、そんな社長に感心してしまうほどでした。

結局は株主も取締役も、私たちと似たようなものだったのだと思います。
社長に何を言っても、話が進まない。
話し合っても、埒が明かない。
これから会社をどうするのかという話も、当然出ていたのだと思います。
でも、続けるのか、整理するのか。
そこまで決めることは、株主たちにもできなかったみたいです。
株主の中には昔から会社に勤め、すでに退職した人もいました。
社内にも、株を持つ取締役がいました。
ただ、ほとんどの株は、社長とその身内が持っていたようです。
結局、社長に言うことを聞かせることは、誰にもできなかったのだと思います。

社長を交代させようとしたけれど

株主総会とは別の話ですが、社長を交代させようという話もありました。
でも、代わりに社長になる人がいませんでした。
取締役の中からも、
「自分がやる」
という人はいなかった。
一番有力で引き受けるつもりだった人はいました。
外部との話も進み、ほとんどお膳立てができていた。
でも、その人は直前になって断りました。
そうでしょうね。
誰だって、こんな状態の会社の社長なんて引き受けたくありません。
わかるけど、でも。
取締役という立場にいた以上、負う責任もあるはず。
みんなより高い給料をもらって、役員報酬とかも受け取っていただろうに。でも、いざ会社を背負う段階になると、誰もその役目を引き受けませんでした。

その間も、私たち従業員は働き続けていました。
給料を減らされ、支払いを待たされ、それでも毎日会社に来て仕事をしていたのです。
誰も会社の責任を引き受けない。
そのしわ寄せだけが、立場の弱い従業員に回ってくる。
そう思えてなりませんでした。

私は、最後には誰かが社長を説得するなどして、会社を整理するだろうと思っていました。
けれど、「会社は絶対に潰さない」と言い続ける社長を、誰も変えさせることができませんでした。
株主も取締役も誰も、従業員をどう守るのか、そこまで考えてくれる人はいませんでした。
いたのかな? わかりません。
でも少なくとも、すでに退職していた株主や、話をすることができた外部取締役に尋ねても、「うーん、どうしようね」というような反応でした。
「こうしたらいいんじゃないか」
とはっきりと、具体的な道筋を示してくれる人はいませんでした。

会社はそのまま続き、未払いだけが増えていきました。
続けるためのお金はない。
でも、終わらせる人もいない。
「会社を潰さない」という社長の意思のもと、会社は止まれないまま動き続けました。

「会社が倒れた方がいいのでは」と考え始めた

そんな状態を見ているうちに、従業員の間でも少しずつ声が上がるようになりました。
もう任せて待っているだけではなく、きちんと整理してもらうために、自分たちも動いた方が良いのではないか。

給料の未払いについて調べる中で、会社が倒産した場合などに、未払い賃金の一部を立て替えてもらえる「未払賃金立替払制度」があることを知りました。
会社が倒産しても、国から未払いになっている給料の一部を受け取れる可能性があるということです。
それを知ったこともあり、
「いっそ、会社が倒れた方がいいのではないか」
そんな声まで出るようになりました。

会社が倒産するなんて、普通なら避けたいことです。
でも、給料の未払いは続いている。
退職金もどうなるかわからない。
働き続けるほど、支払われない給料だけが増えていく。
私たちにとっては、会社がなくなることより、この状態のまま続いていくことの方がつらかった。

次回は、「会社を畳んでほしい」と思うようになった話を書きます。
会社を倒したかったわけではありません。
もう曖昧な状態を続けるのではなく、きちんと終わらせてほしかったのです。


#14|会社の実態が、少しずつ見えてきた
#15|それでも、会社は変わらなかった


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