僕が在宅ワークなのに疲労感MAXなのは"脳の燃費"のせいだった――構造的・省エネ思考法で"疲れにくい脳"にする方法
僕がフルリモートで働き始めて、もう15年ぐらいだろうか。
通勤のストレスはなく、作業環境は自分の発達特性に合わせて完璧にチューニングしてある。気を遣う相手もおらず、疲れたら自分のペースで休むことだって許される。
これ以上ないほど理想的な環境のはずだ。
それなのに、なぜか夕方にはもうHPがゼロになっている。
これは、単なる怠けや、ADHDの先延ばし癖なのだろうか?
いや、この問題の根っこは、もっと別のところにある気がする。
なぜ僕たちは、座っているだけで疲弊するのか?――その構造的な理由

もちろん、仕事の難易度が高いのは分かっている。それにしても、この疲れ方は尋常じゃない。
SNSを開けば「疲れた時こそ運動」とジム通いのキラキラした投稿が流れてくる。本を読めば「体力をつければ心も軽くなる」と書いてある。
頭では分かっている。運動が大事なことくらい。
しかし、問題は、体を動かすための余力が、1ミリも残っていないこと。
僕が感じるこの尋常じゃない疲れ。その正体は、実は根性や体力の問題ではなかった。
・・・
それは、僕たちADHDの脳に特有の、“超絶燃費が悪い”設計 が原因だった。そう、僕たちの脳はアメ車並みに燃費が悪い。
僕たちの脳は「バックグラウンドで常に大量のアプリが起動しっぱなしのスマホ」 に似ている。何も操作していなくても、バッテリーがゴリゴリ減っていく。
なぜそんなことが起きるのか?その原因は、主に以下のようなADHDの脳の「仕様」にある。
1. 思考の多動性:止まらない「内なるおしゃべり」

まず、僕たちの脳は「集中モード(ECN)」と「ぼんやりモード(DMN)」の切り替えが苦手だと言われている。
集中すべき場面でも「ぼんやりモード」が完全にオフにならず、「この人すごいな」「それに比べて自分はダメだ」 といった内省的な思考が、常にバックグラウンドで走り続けてしまう。
一つの作業をしているようで、脳内では常に自己評価や未来への不安といった「常駐アプリ」がCPUを食いつぶしているのだ。これでは燃費が悪くて当然である。
2. 感覚過敏:目に入る情報すべての「意味」を自動解析してしまう
次に、僕たちは目や耳から入ってくる情報に対して、無意識に「意味」を探し、解析してしまう癖がある。
何も情報が入ってこないと上で述べた「ぼんやりモード」が動いてしまうし、何か情報があればたちまち「分析モード」が起動してしまう。この脳に「アイドリング・ストップ」装置を付けたいと何度思ったことか……
3. 過集中による燃え尽き:一点突破のエネルギー浪費

そして最後に、この「燃費の悪さ」を補うために、僕たちはしばしば「過集中」という一点突破の力技に頼る。目の前のタスクに全エネルギーを注ぎ込むことで、他のノイズを無理やり遮断しようとするのだ。
しかし、これはエンジンの回転数をレッドゾーンまで振り切って走り続けるようなもの。タスクは片付くかもしれないが、その代償として脳は完全にオーバーヒートし、その日の活動エネルギーすべてを使い果たしてしまう。
燃費の悪い脳を乗りこなす、3つの省エネ運転術
さて、この厄介で愛すべき“燃費の悪い脳”を、僕たちはどう乗りこなせばいいのか。
残念ながら、僕たちのエンジン(脳)そのものを改造(矯正)することは非現実的だ。だから、その特性を理解し、燃費を悪化させないための「省エネ運転術」 を身につける必要がある、ということ。
つまり、僕たちに必要なのは、根性論ではなく、構造に基づいた具体的なドライビングスキルだ。ここでは、先ほど挙げた3つの原因それぞれに直接対応する「運転術」を提案したい。
1. 思考の多動性:やるべきことは、脳ではなく「外部メモリ」に置く

常に「内なるおしゃべり」が続いている僕たちの脳は、「覚えておかないと」というプレッシャー(認知負荷)に弱い。だからこのプレッシャーを逃すのが最も効果的だ。タスクやアイデアが頭に浮かんだ瞬間、それを脳内でこね回すのではなく、1秒でも早く外に出す。
具体的な方法:
「あ、あれもやらなきゃ」と思いついたら、即座にスマホのTODOアプリやメモ帳に書き込む。
重要なのは、「後でまとめよう」とすら考えないこと。 ただ、単語レベルでもいいから書き殴って、脳から追い出す。
脳を「記憶装置」として使うのをやめ、「思考するための作業台」としてのみ使う。これだけで、バックグラウンドで動き続けるアプリを一つ、また一つと強制終了させることができる。
2. 感覚過敏:五感に「物理的なフィルター」をかける

街の看板からカフェのBGMまで、あらゆる情報の「意味」を自動解析してしまう僕たちにとって、脳に入ってくる情報量を物理的に制限することは、極めて有効な省エネ術だ。
自分の意志で情報の取捨選択ができないのなら、物理的なフィルターで、強制的に情報を遮断すればいい。
具体的な方法:
聴覚: ノイズキャンセリングイヤホンは、もはや僕たちの必須装備だ。音楽を聴かなくても、ただ装着するだけで、脳が処理すべき音響情報が何十分の一にも減ることを実感できるはずだ。
視覚: PC作業ではダークモードを基本設定にする。外出時は帽子やフードを被り、視野を物理的に狭めるだけでも、街に溢れる視覚情報から脳を守ることができる。ちなみに僕はメガネに「フィカルサポートレンズ」という特注レンズを入れて、目に入る光の刺激を軽減している。
3. 過集中による燃え尽き:「意志」ではなく「タイマー」で自分を止める
過集中は、一度入り込むと自分の意志では止められない。だから、自分を止める役割を「外部の仕組み」に完全に委ねてしまう必要がある。
具体的な方法:
ポモドーロ・テクニックを導入し、25分作業したら5分休むというサイクルを、タイマーを使って強制的に実行する。
重要なのは、「まだ集中できる」と感じていても、アラームが鳴ったら問答無用で作業を中断すること。 僕たちの「集中できる」という感覚は、バッテリー残量を無視した危険信号なので感覚に頼ってはいけない。
自分の感覚を信用せず、冷徹なタイマーの命令に従う。それこそが、過集中による1日のエネルギーの"ガス欠"を防ぐ、最も確実な方法だ。
脳がオーバーヒートした日のための「積極的回復術」

さて、ここまで脳の燃費を悪化させないための「省エネ運転術」について語ってきた。思考を外部化し、感覚にフィルターをかけ、タイマーで自分を止める。これらの技術はきっと、日々の消耗を大きく減らしてくれるはずだ。
でも、そうは言っても僕たちは社会の中で生きている以上、予期せぬ出来事はやってくる。そして、脳がオーバーヒートしてしまう日もある。
もし"ガス欠"になってしまったら、どうすればいいのか。疲れ果てた脳を、どうすれば効率的に、そして積極的に『回復』 させることができるのか?
その具体的な回復テクニックについては、僕が過去に書いたこちらの記事で3つのステップに分けて詳しく解説している。こちらもぜひ参考にしてほしい。
最後に:僕たちは、一人じゃない
「体力がない」という一言で片付けられてきた、あの正体不明の疲労感。その原因は、少しだけ燃費が悪い僕たちのエンジンにあった。でも、その運転方法さえ分かれば、ちゃんと目的地までたどり着ける。
この記事が、あなたの自分自身への理解を少しでも助けることができたなら、これ以上嬉しいことはない。
もし良かったら、あなたの見つけた「脳の省エネ術」をコメントでぜひ教えてほしい。
どんな小さな工夫でも、それは同じように道に迷う誰かにとって、かけがえのない道しるべになるかもしれない。
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