最後の宿題。
大切な人との会話は、思っているより早く終わってしまう。
ある日、なくなりそうだったインスタント味噌汁を買い足そうと、スーパーへ行った。年配の夫婦がゆっくりと歩いている。背筋のピンとした旦那さんが少し前を歩き、奥さんがそのあとをトボトボと追いかける。
ときどき立ち止まって、「それ。」「あぁ~これ?」「そう~それ。」そんな短いやり取りを交わしていた。たったそれだけなのに、なぜか目が離せなかった。SDGsか。これだけで、会話が成り立っている。
その姿を見ながら、スマホをスクロールしていると、こんな企画を見つけた。「教えて!あなたの、おじいちゃん、おばあちゃん」
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のぞみんさんの企画に参加させていただきます。
何気なく、その質問の答えを考えていたら、自然と爺ちゃんと婆ちゃんのことを思い出した。大切な人との会話は、思っているより早く終わってしまう。だから私は、爺ちゃんと婆ちゃんのことを思い出すたび、小さな後悔と一緒に生きている。
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祖父母と同じ屋根の下で暮らしていると、不思議と時間の流れがゆっくりだった。時計は動いているのに、急いでいる感じがまったくない。
朝は早く起きて、テレビから流れるニュース。テレビから流れる音に重なる、家族の笑い声。台所から漂う味噌汁の匂い。外から聞こえてくる蝉の鳴き声。爺ちゃんは庭のベンチに腰掛け、婆ちゃんは今日もいつものように家の中をトコトコと歩いている。
何気ない毎日だった。あまりにも当たり前すぎて、その時間が特別だなんて思ったことはなかった。あの頃は、この景色がずっと続くものだと信じていた。
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【関連記事:後悔を、生かす】
私は後悔の塊と言っても過言ではない。
その中でも、一番大きな後悔は、爺ちゃんと婆ちゃんに「もっと話しかければよかった」ということです。
私の爺ちゃんは、口数は少なかったけど、話したら、少しうるさくて頑固でした。子どもの頃は、「また始まった」と思うこともあった。でも、不思議なもので、私が困ったときには、いつも真っ先に手を差し伸べてくれる人だった。厳しい人ではあったけれど、その厳しさの奥には、家族を思う気持ちがあったのだと、イマなら分かる。
一方、婆ちゃんは無口で、とても優しい人でした。「これ、手伝ってくれんか?」その一言が、おばあちゃんから、私への会話の合図でした。もっと手伝えばよかった。もっと話を聞けばよかった。もっと「ありがとう」を伝えればよかった。イマとなっては、そのどれも叶いません。
年月が流れ、爺ちゃんも婆ちゃんも少しずつ歳を重ねた。爺ちゃんは、呼吸をするのもつらそうな日が増えていった。婆ちゃんも、思うように体が動かなくなっていった。
あの頃の私は、「いつか元気になる」と、どこかで思っていたのかもしれない。「きっと大丈夫だろう」と、なぜか思っていた。だから、「また今度話そう」「また今度なにかをしてあげよう」が積み重なってしまった。
でも、その”また今度”は来なかった。
婆ちゃんが亡くなり、そのあとを追いかけるように、爺ちゃんも天国へ旅立ちました。私は「また今度」が、こんなにもあっけなく終わるものだと知りました。
そして、その少しあと、私はお酒で身体を壊しました。私は人生というものを諦めていました。イマ思うと、勝手な考えかもしれませんが、ときどき思うのです。「こら、何をしてる。」「まだ身体を壊すには若すぎるぞ。」天国から、爺ちゃんと婆ちゃんが見ていて、そんなふうに叱ってくれたんじゃないか、と。
「まだ諦めるのは早い。」
天国から、爺ちゃんと婆ちゃんが、イマも背中を押してくれているような気がしています。
もちろん、本当のことは分からない。でも、そう思うと、不思議と前を向ける気がします。後悔は消えない。でも、後悔には役目があると思っています。同じ後悔を繰り返さないための、人生の道しるべ。
私は、爺ちゃんと婆ちゃんに、もっと話しかけていればよかったと、イマでも思います。だからこそ、大切な人には「また今度」ではなく、できるだけ早く、できるだけ正直な気持ちを、言葉にして届けようと思っています。
「ありがとう。」「元気?」「会えてよかった。」「また会おう。」「あのときは、ごめん。」そんな何気ない一言にも、きっと賞味期限があります。
だから私は、爺ちゃんと婆ちゃんからもらった、最後の宿題を、これからの人生で少しずつ返していこうと思います。
「後悔」だと思ってたことのすべてが、”イマも祖父母から教わり続けていること”なのかもしれません。
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冒頭に出てくる老夫婦の会話を書いているとき、すずらんさんの記事がふと頭に浮かびました。素敵な記事だったので、引用させていただきます。
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今日も読んでいただきありがとうございます。
では、また次の記事で。
素敵な一日を。
