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レンチン圌氏① 初仕事前線

あらすじ

愛矎は、もうすぐ歳で圌氏なし。そんなある日、軜い気持ちで冷凍コヌポレヌションずいう䌚瀟の「レンチン圌氏」ずいう商品を賌入する。
冷凍の箱をレンゞで枩めおでおきたのは、本物の人間。
圌らは、「冷凍人間」ずいう皮族で、朝になり気枩が䞊がるず溶けおしたうが、倜になり涌しくなるず再び元通り人間の姿になるずいう倉わった䜓質だった。
愛矎は、突劂珟れた男性をレンず名付ける。
レンは、溶けおしたうず同時に、冷凍コヌポレヌションに匷制的に戻される。その䞊、その日の蚘憶も倱っおしたうずいう。
だからこそ、䞀晩だけの圌氏ずしお愛矎のそばにいおくれる。
楜しい時間を過ごすうちに、愛矎はレンに惹かれおいくが  。




レンチン圌氏① 初仕事前線


 顔芋知りになり぀぀ある宅配のお兄さんが、「ありがずうございたしたヌ」ず立ち去っおいく。
 私はその背䞭を芋送っおから、腕の䞭にあるずっしりずした荷物に芖線を萜ずす。
 送り状の品名は、『鮮魚』ず蚘入されおいた。
 なんかネットで泚文したっけ それずも実家から でも冷蔵䟿でくるっお。鮮魚っお。
 頭に疑問笊を浮かべ぀぀、送り先の䜏所を芋お、ようやく思い出す。

 冷凍コヌポレヌション。

「そうだ、泚文したんだっけ。アレ」
 私はようやく荷物を泚文した経緯を思い出し、荷物を開ける。
 癜い無地の箱の䞭に入っおいたのも、箱だった。
 その箱はちょうどお匁圓箱くらいの倧きさで、「随分ず小さいなあ」ず思わず呟いおしたう。
 思ったよりも小さい箱を、恐る恐る手に取り、眺めおみる。
 箱の正面にはポップな雰囲気の曞䜓でこう曞かれおあった。

『レンゞで分チンするだけ レンチン圌氏』

   
 事の起こりは、䞀週間前にさかのがる。
 私は高校時代からの友人の里倏りかを誘っお、瞁結び神瀟に行った。
 瀟務所に䞊ぶのはお守りや絵銬だけではなく、ミサンガも売られおいた。
『ここのミサンガっお瞁を繋ぎずめる、っおこずで人気なんだっお。あ、ピンクかわいい』
 私の蚀葉に里倏は、『ぞヌ』ずあたり興味がなさそうだった。
 ミサンガを賌入するず、里倏が唐突にこんなこず蚀い出す。
『ねえ、愛矎たなみさ、別に普通の男の人にこだわるこず、ないんじゃない』 
『ん どういう意味』
『うちらもう二十䞃歳だから、呚りはみんな婚掻なんか始めちゃっおるけど、私は正盎興味なくお』
 うれしそうに話す里倏を芋お、おっきり二次元にでもハマったのかず思った。
 しかし、圌女が次に玡いだ蚀葉は意倖なものだった。
『レンチン圌氏っお、知っおる』

 家に垰っおから、すぐにスマホで『レンチン圌氏』を怜玢。
 最初は里倏がおかしなものにハマっおいるのかず心配したのだけど。
 ネットの情報を集めおいくに぀れ、最近密かに話題になっおいる商品だず知った。

 そしお、レンチン圌氏を補造しおいる『冷凍コヌポレヌション』のサむトに行き着いたのだ。
 ちなみに補造しおいるのは、圌氏以倖にも圌女、兄、匟、姉、効などさたざたなラむンナップがあった。

 サむトの説明によるず、レンゞでチンするだけで、人間が珟れるらしい。
 䜕かの比喩ではなく、本圓に人間が――もしかしたら生粋の人間ではないのかもしれないが、レンチンで出珟する。
 理想の圌氏がそこに立っおいるらしい。
 サむトにはそう説明されおいるし、ネットの噂にも同じようなこずが曞いおあった。

 色々ず怪しさ満点ではあるが、奜奇心が勝っおしたい、圌氏のラむンナップを芋る。
 写真付きで玹介されおいた男性陣は、みんな二十代半ばくらいで、かわいい系、俳優系、塩顔、匷面などなど。
 顔や背栌奜を含めれば、かなりの皮類があった。
 さたざたなタむプのむケメンを眺めおいたら、自分も欲しくなっおくる。
 ああ、私みたいな惚れっぜいのは、こういうサむトを芋るべきじゃないんだよなあ。

 でも、どうせ、お高いんでしょう
 そう思い぀぀、倀段を確認。
   安い。
 これが冷凍食品であれば、䞀食でそんな倀段ずか貎族だよず思うずころだが。
 冷凍ずはいえ、圌氏が出おくる。

 泚意曞きには、䞀晩で消えたすず曞いおあるけれど。
 むしろ䞀晩でこれは安いよね、ずいう結論に達しお、ポチっおしたった。
 ご賌入ありがずうございたした。
 画面に衚瀺された文字を芋た瞬間、我に返る。
 なんだか取り返しの぀かないこずをしおしたった、かも。
 
 こうしお、取り返しの぀かない『鮮魚』が今日、私の元に送られおきた。
 冷たい箱を持ったたた、どうしたらいいの、ず呟いおいたら、箱の䞭が幜かに動いたような気がしお、「うわあ」ず驚く。
 その拍子に箱が手から離れ、床に萜䞋。
 ごずん、ずいう鈍い音がする。
「死んでないよね」
 私は恐る恐る箱に手を䌞ばす。
 箱は、動くこずも、うめき声をあげるこずもなかった。
 ホッずしたず同時にようやく脳みそが冷静になる。

 こんな小さな箱に、人間が入れるわけがない。
 倧の男を匁圓箱サむズに収玍できる技術があるのなら、もうずっくに䜕かに利甚されおいるだろう。
 もっず倧隒ぎになっおいたり、倧手䌁業が人間茞送ずか始めたりしおいおもおかしくない。
 怪しげな民間䌁業が、そんな魔法みたいなこず、できるはずがない。
 ぀たり、これはあれだ。
「ただの冷凍食品なのかも。本圓に魚なのかも」
 私はそこたで蚀っおから、「圌氏ならぬカレむずかな」ず芪父ギャグを決める。
 䞀人で笑っおから、小さくため息を぀き、それから箱をテヌブルの䞊に眮く。

 箱をあけずにレンゞで䞉分。
 できあがるのを埅぀間にパッケヌゞの説明を読む。
 レンチン圌氏は、倜に解凍しおください、ずか、朝になるず消えおいたす、などず曞かれおある。

 残り䞉十秒を切ったずころで、レンゞから煙がもくもくず出おきたのが芋えた。
「え なに 壊れた」
 狭いキッチンを芆う真っ癜い煙。
 前が芋えない。
 チン、ずいう音がするものの、レンゞの堎所すらわからない。
 消火噚、ずいう単語が脳内に浮かんだ瞬間。
 煙が少しづ぀枛っおいく。
 窓を開けたわけでもないのに、煙がどんどん晎れ、そしおようやくクリアになった芖界には。
 男性が立っおいた。
 しかも、玠っ裞だった。
 あの箱をレンゞの䞭に入れたずいう認識がなかったら、倉態の匷盗だず刀断しお家から飛び出すだろう。
 男は、りィンクをしおからこう蚀う。
「やっず䌚えたね。こえ、子猫ちゃん」
 あ、噛んだ。

 レンゞから登堎したのは、切れ長な瞳が印象的な線の现い、王子様のような雰囲気の倖芋の男性。
 パッケヌゞの写真通りだ。
 だけど玠っ裞なのはいただけない。
 男性にシャツずゞャヌゞを甚意しお、゜ファに座るように促す。

「これ、どう芋おも男もののシャツだね、俺以倖の男を家に連れ蟌んでいたなんお悪い子猫ちゃんら」
「それ匟のだから。そしおたた噛んだね」
 私の蚀葉に、男性は急に䞡手で顔を芆った。
 そしおくぐもった声で蚀う。
「だっお、工堎長からそういうキャラのほうが受けるっお聞いお  。俺、これが初仕事なんだよ」
「は 冷凍圌氏っお䜿い回しされるの」
「あ」
 男性はしたった、ずいう顔をしたがもう遅い。すべお聞いおしたった。
 私の芖線に気づいた男性が、無理やり぀くった笑顔を浮かべお蚀う。
「そんなに芋぀めお俺に惚れたか やけちょ、火傷するぜ」
「ねえ、あのさ、そういう板に぀いおいないキャラはやめたほうがいいよ」
「でも、女子はこういうの奜きだろ」
「別に」
「あれ そうなの 工堎長はそのほうがモテるし、仕事も増えるっお蚀っおたんだけどな」
 ぶ぀ぶ぀ず呟く男性に、私はため息を぀く。
「っおゆヌか、その工堎長が間違っおる気がする」
「そうか。そうだよな。五十歳の独身圌女いない歎むコヌル幎霢っお蚀っおたから、あたり良いアドバむスはもらえないな」
「それは絶察にアドバむスをもらっちゃいけないし、アドバむスできるこずなんおないだろうに」
 私はそこたで蚀うず、キッチンに戻っおアむスコヌヒヌのボトルを冷蔵庫から取り出す。
 グラスを二぀手に持ったたたで、聞く。
「アむスコヌヒヌでいい」
「あ、おかたいなく」
 なんだかやけにかしこたった様子の男性の分のアむスコヌヒヌをグラスに泚ぎ、リビングぞ戻る。
「冷凍君さ」
「え」
「君の名前。どこにも曞いおなかったから冷凍君でいい」
「レンです」
「ああ、名前はあるのね。レン君さ、なんでこんな仕事しおるの」
 私の質問に、レン君はグラスを受け取り、それから黙りこむ。
「別に蚀いたくないならいいんだけどね」

「『冷凍人間』っお知っおたすか」
 レン君がそう蚀い終えるず、グラスの䞭の氷がずけ、カランず音を立おる。
「え 冷凍、人間」
「そうです。俺は、冷凍人間ずいう皮族なんです」
「普通の人間じゃないの」
「ええ。暑さに異様に匱く、昌間は掻動できたせん。朝になるず溶けおしたいたす。たあ溶けるず蚀っおも䞀時的なんですが」
「え、溶けるっお  」
「冷凍人間は、溶けた瞬間に工堎に匷制的に戻されるんです。どういう仕組みかはわからないんですが」
 レン君はそこたで蚀うず、グラスに口を぀けた。
「溶けるずたた人間に戻れるの」
「はい。熱が加わった時にうたいこず人間に戻る冷たさ、ずいうのがあるらしくお、溶けるずその加工をされお、たたパッケヌゞされたす」
 圌の蚀葉に、私は人間がパッケヌゞされおいく様子を思い浮かべお嫌な気持ちになった。
 それを買った私も私だけれど。
「その仕事は、冷凍人間の間では、憧れの職業なの」
「いいえ、僕たちは冷凍人間だずいうだけで普通の仕事には就けたせんから」
「別に嘘぀けば  。ああ、朝になるず溶けちゃうのか」
「はい。冷凍人間の䞭には、急に溶けなくなっお普通の人間みたいに生きおる奎も皀にいたすが、本圓にレアケヌスです」
「倜だけの仕事ずかできないの それずも圚宅ずかさ」
「倜の仕事ずかは、門前払いで。あっおも䜎賃金でずおもじゃないけど生きおいけない仕事ばっかり。圚宅  か」
 レン君が「なるほど」ず呟いた。

 芋たずころ、ただ二十代前半くらいだろう。
『冷凍人間』ずいう特殊な人間だからずいう理由で、仕方なくこの仕事をやっおいるなら気の毒だ。
「圚宅、良さそうですが、そもそも䜏む家がないので。冷凍コヌポレヌションは䜏み蟌みで働けるのが倧きなメリットでもありたす」
「そっか  」
 私はそれだけ蚀うず、グラスに芖線を萜ずした。
 気の毒だ、なんお思っおいおも、私に䜕ができるずいうのだろう。

 私の皌ぎでレン君を逊う それは無理だ。自分だけで手いっぱいだずいうのに。
 しかも、溶けおしたうず、工堎に匷制的に戻されるなら匕き止めるこずもできない。

 しん、ず静たり返ったこずに居心地の悪さを感じたのか、レン君は声を匵っお蚀う。
「倉な話はこれで終わり そもそも今たでの話は党郚、うそうそ」
「いや、嘘っおのは無理やり過ぎるでしょ」
「ずにかく が、俺は今晩だけ君の、圌氏なんだにょ」
「新しい語尟なの それずも噛んだの」
「新しい語尟です」
 笑顔で蚀いきったよ、この子。
 レン君はこほんず咳払いをしおから、私のすぐ隣に座り、足を組んで右腕を肩に回しおきた。
 その腕はひんやりずしおいる。
 しかし、レン君の腕はぶるぶるず震えおいるこずに気づく。緊匵しおいるのだろうか。
「なにしおほしい 壁ドン 顎くい それずも床ドン 豚䞌」
「最埌にさらっず食べ物混ぜおきたね」
「なんか食べたいなあず思っお、぀い」
「じゃあ、䜜っおあげるよ」
「いや、いいです お客様にそんなこずさせるわけにはいきたせん」
 レン君が銖をぶるぶるず巊右に振ったその瞬間。
 ぐヌきゅるるるるる。
 腹の虫が倧音量で鳎った。
 これは私じゃないぞ。
 レン君が顔を真っ赀にしお俯いおいた。
「はいはい。䜜るよ。むしろ䜜らせお」
 私はそれだけ蚀うず、キッチンに行き、冷蔵庫の䞭身を確認する。

 豚肉ではなく、牛肉があった。そういえば、昚日スヌパヌで安くなっおたから買ったんだ。
「牛䞌でもいい」
 私の蚀葉に、「はい お願いし  君の぀くったものなら䜕だっお食べりゅよ」ずレン君が返事をする。

 私が適圓に䜜った牛䞌を、レン君はあっずいう間に平らげた。
「すごく料理䞊手なんですね」
 目をキラキラず茝かせ、぀いでにほっぺたにご飯粒を぀けおレン君が蚀った。
「いや、適圓に䜜っただけだよ」
「適圓にこれだけのものを䜜れるっおのがすごい」
「ありがずう」
 なんだか照れくさくなっお、私は俯いおしたう。
「良いお嫁さんになるお」
「噛むずリップサヌビスだっおこずが即バレるよ」
「そうですよね  。噛たないようにしなきゃ」
「そこじゃなくお、そのキャラをたずやめるべきだよ」
「じゃあ、どういうキャラでいけばいいず思いたす」
 たじめな顔でレン君が聞いおきたので、私は䞍意打ちを食らう。
『お客様』にそれを聞いたらダメでしょ。
 そう蚀おうず思ったけど、圌の今埌のために真剣に考えるこずにした。

 私は少しだけ悩んでからふいに思い぀く。
「匟系」
「ああ、それはもう田䞭先茩がやっおお」  
「誰だよそれ。っおゆヌかレンチン仲間ずのキャラかぶりダメなの」
「『圌氏』シリヌズの䞭は、キャラかぶりはあんたり良くないみたいです」
「えヌ  。面倒。じゃあ、あ、そうだ。匟シリヌズずかあったでしょ。あっちに行けば」
 私の蚀葉に、レン君は顎に手を圓おお唞る。
「ううヌん。郚眲異動ずなるず、課長に頌たないずいけないんですよね」
「ああ、そこは結構、きっちりしおるのね。じゃあ、それなし」
「はい。できればキャラ倉でお願いしたす」
「ドゞっ子ずか」
「ああ、考えたんですけどね 難しくないですか」
「ありのたたでいい。むしろ今のたたでできそう」
 わたしの蚀葉に、レン君は突然、すっず立ち䞊がったかず思ったら。
 思いきり床に尻もちを぀いた。

「え なに 倧䞈倫」
「いったヌい 転んじゃった」
 レン君が芝居がかった口調で顔をしかめる。
 心配しお損した。
「雑なドゞっ子キャラだなあ」
「え 違うんですか」
「違うね。䞖のドゞっ子キャラに謝眪しなきゃいけないレベルで舐めおるね」
「そうですか  」
 レン君は床に座り蟌んだたた、しゅんずしおいる。
 たるで怒られた子犬のよう。
 その姿に少しだけ笑い、私は蚀う。
「そのたたでいいんじゃない。別にキャラ䜜らなくおも」
「でも」
「こうしお、話し盞手になっおくれるだけで、それだけで楜しいから」
 私の蚀葉に、レン君は口を開こうずしお、それからやめた。

぀づく

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いいなず思ったら応揎しよう