見出し画像

漫画家アシスタント物語 もう終わりで章 〈6〉 もう終わりで章も終りが近い

 
《 写真上:当時、私が移住を考えていたチェンマイにあるカミさんの実家より撮影。 右側がカミさんの妹の家、左側にカミさんの実家がります。 チェンマイの夕暮れ時は、ちょっとだけ涼しくなります‥‥2017年1月 》
        < この『もう終わりで章〈6〉』は、文庫本約10ページ分 >

 
 
「もう終わりで章」は、独立した「章」ですので、「古い話で章」の続きではありません。 無料で、各話、お楽しみいただけます!
 
ただし‥‥ 各話が連続していますので、
「もう終わりで章〈1〉」からお読みいただく方が、よろしいかと思います。
 
はじめての方は、
「マガジン:第1章、第2章」(無料)がお薦めです!

 
 
 さて‥‥ 本文の前に‥‥ 
 

マガジン「漫画家アシスタント物語 第4章」を、購読してくれた方を紹介させてください。 すぱいくさん ‥‥‥‥‥ ありがとうございました!
 
今回は、すぱいくさんの裁判記録記事の中から一編を選んで、実母絞殺事件を連載した記事の「①」をリンクさせていただきました!

 
 
 
               その11

  《 漫画家アシスタントが・・・・師匠の言葉に絶句する・・・・!? 》
 

前回、「 プツリ 」と切れてしまう話を書きましたが・・・・ 何が切れたのかは、結構重要な事なので、追記しておきたいと思います。

漫画に向かう情熱のようなもの・・・・ とても素朴な子供の頃から持っていた「 愛情 」のようなものが消えてしまったという感じが‥‥

ちょうど、この頃( 30代半頃 )から漫画自体を読まなくなって( 読めなくなって )いきました。

前々回に書いた友人の脳性麻痺だった妹さんの記憶なども、糸でも切るように・・・・ あの時の「 笑顔 」の記憶が薄れて行ってしまった気がするのです。
 

さて、今回は、現在( 2017年 )の漫画家アシスタントの状況をお話ししましょう・・・・

うちの師匠であるジョージ先生( ※参照 )も今年で74歳、来年には後期高齢者です。

でも、若い頃と同じような集中と気迫、そして、鬼気迫る感性にゆるみは感じられません。

それでも、連載漫画を描き続ける事は辛そうで・・・・ たぶん、本人は「 引退 」をかなり前から意識している・・・・ 漫画制作が随分と遅くなっています。

バブルの頃( 1980年代、師匠が一番忙しかった頃 )は、毎月350枚ほどの原稿を描いていたと思うのですが・・・・・・・・・・ ここ7,8年は毎月44枚ほどに減っています。( アシスタントの数も7人から2人に減りました )

それも、締め切りを過ぎても完成出来ずに編集員をヒヤヒヤさせるのは毎回の事なのです。

今年に入ってからは、40年落とした事のなかった連載を二度も落としてしまいました・・・・ 一応、病気( 実はウソ )って事になってますが・・・・・・・・ 

考えてみれば、まったくウソ‥‥というわけではないかも知れません。
 

「 ちょっとよ、ダメなんだよ 」

「 ・・・・・・・? 」

ある日、仕事場で真っ白な原稿用紙に向かっている師匠が、振り向きながら私に・・・・・

「 描けねぃ~んだよ 」

私は、漫画を描くための体力がなくなって、ペンをコントロールするのが辛いのかと思って・・・・・・・( 肉体的な疲労かと思って )

「 先生、ペンでガリガリ、キャラを描くのシンドイんじゃないですか? 」

「 違うよ 」

「 ‥‥? 」

「 ネームだよ 」

「 ・・・・・・・! 」( 絶句する )

「 ネームがよ・・・・ 出ねぃ~んだよ 」

「 ネーム 」というのは、キャラクターのセリフです・・・・・・・・つまり、ストーリーです・・・・ それが発想出来ないという事なのです。

結局、その日の仕事はそれで終わり、夕方には「 連載落ち 」が決定。

年に24回、40数年間も続いた隔週連載なのに・・・・ まったく落とした事なんてなかったのに・・・・・・・・・・

私のようなアシスタントにとって、師匠のネーム制作を手伝う事など、恐れ多くて出来ないわけで・・・・・・・・・・

師匠が立ち止まるって事は、機関車が止まるのと似て、客車であるアシスタントも編集も何も出来ないのです。( まったく無力なのです! )

そうなると、もう誰にも機関車を動かせませんし、その代わりを務める事も出来ない・・・・・・・・・・・・・

世界中で、師匠の連載漫画は師匠にしか描けないのです・・・・・・・・・・責任重大です。

師匠は、40年以上もこの重圧に耐え続けながら・・・・・・・・・・・・よくも精神状態に「 異常 」をきたさなかったものだと思います。

さて、今日も仕事は臨時休業・・・・ 毎日、11時過ぎに仕事場へ行くのですが・・・・・・・

また、師匠のネーム作りが遅れ始めました・・・・・・‥

ドアの隙間に担当編集員が悲鳴のような‥‥ 泣きながら懇願するような‥‥ 手紙が挟まっています。

「 先生ぇ~! 今日、仕事してもらわないと締め切りがぁあああああ! 」

この編集員のメモ書き、本当( 実際の文面 )なのです。 
        

 

 


40年近くアシスタントの仕事をした私のデスクを撮影したものです。中央にある原稿は、私が描く最後の「浮浪雲」(ビッグコミックオリジナル・小学館)の仕上がり原稿の一部です。2017年


                その12

  《 漫画家アシスタントが・・・・先生より先に引退する・・・・!? 》

先日、2017年6月23日の金曜日に私は漫画家アシスタントを引退しました。

というわけで・・・・

この「 漫画家アシスタント物語 」もいよいよ、次回で最終回となります。

ちょっと寂しい気もしますが・・・・ この寂しさは、漫画作品が描けなくなった頃( 10年前 )からずっと続いていた気もします。

・・・・ですので、正直今は、少しホッとしている感じです。
 

さて・・・・・

私の師匠であるジョージ先生は、軽い糖尿病を患っているとはいえ、まだまだ元気に酒を飲み、マルボロたばこをバカスカ吸いまくるほどの精神力ですから、しばらくはその創作活動がストップする事はないと思います。

しかし、私の方の体調が良くありません・・・・

ここ数年、腎臓病とヘルニアに悩まされてきた上に、頭の回転もすっかり衰えてしまって・・・・・・・・

あああ・・・・ 頭の回転が・・・・ やけに・・・・ ゆっ・・・・・ くり・・・・・に・・・・・・・・・・・・

この不愉快な脳の愚鈍ぶりにも嫌気がさして、大学の講師職を辞めたわけですが・・・・・

突然倒れたり、パ~になったりして、学生や周りの方々に迷惑をかける前に・・・・・・・ 老兵は去って行った方が良かろうと・・・・・・・・・・・・

そして、年金や退職金をあてにしつつ・・・・ 食っていけない日本を離れて東南アジアへの移住を選択する・・・・ ま・・・・ そんな次第なのです。

2017年6月23日(金)・・・・

東京、目白の秋山プロで・・・・

私が最後に描いた背景画は・・・・

大きなお月様の絵でした・・・・

今週( 2017年7月20日号 )、発売される「 ビッグコミックオリジナル 」の「 浮浪雲 」に出ているはずです。

夜の江戸の町に浮かぶ月。 その下の大きなコマに、アップで雲に半分隠れた大きな月の絵・・・・・・・・ それが、私の最後の背景画になりました。

この日も、締め切りがギリギリで・・・・ 編集にはあおられ、一人で6枚の背景を処理しなくてはならないハードな作業でした。( 通常は1日で2~3ページ )

時間が足らないために、背景画の制作がとても間に合わず‥‥

連載された過去の古原稿を段ボール箱から引っ張り出して、それを切り張りしたり・・・・ かつて経験した事がないほど、無茶苦茶な進行状況でした。

それでも、なんとか間に合わせるのが、秋山プロの凄い所( 適当な所 )ではあるのですが‥‥‥‥

さて・・・・

私がいなくなったらどうなるのか・・・・・・・ ま・・・・ そんな事は知った事ではないので・・・・‥‥ 別に心配はしていません。

「 辞めないでくれよ、今辞められたら困るんだよ! 」

・・・・ってな事言われりゃ別ですが・・・・・・・・

意外とサバサバと簡単に辞められてしまったわけで・・・・・・・・・・・・

『 アシスタントの代わりなんて、いくらだっているからな・・・・ 』

・・・・ふと、そんな風に考えてしまうわけで・・・・・・・・・・( ちょっと無情な風が吹いている )

ですが・・・・

これからもガンガン続くであろう連載「 浮浪雲 」・・・・・・・・・・・・

・・・・と言いたいところですが・・・・・・・・・・・・

噂によると、この40年続いた連載漫画もいよいよ終わりの時が来るとか来ないとか・・・・‥‥

問題のXデーは、秋頃との事ですから・・・・・・ まだ、6回か7回は続きそうですが。( あくまで噂ですので、この先2.3年続いちゃったりするかも知れませんが )

私が先生に、仕事を辞める話をしたのが・・・・・・・・6月7日。( 正式な退職日23日の2週間以上前 )

その日( 6月7日 )は、仕事の量が少な目でちょっと早めに作業終了。

仕事の後で私は先生の部屋へ行って「 辞める 」話をしました。

普通の会社だと「 辞表 」ってやつなんかを上司に提出するんでしょうが・・・・

私の場合は、「 辞表 」なんて書かずに、いつものように‥‥

恐る恐る師匠に近づき・・・・・・・・・・

こちらに背中を向けたまま、黙々と原稿に向かう師匠に小さな声で・・・・

「 センセ・・・・ 」

黙って背中を向けたままのジョージ先生・・・・・・・・

「 ・・・・うぃ・・・・・・・ 」

予想以上に、こうした話は‥‥ 切り出しにくい・・・・・・・・

でも、キッパリと私は自分にムチでも入れるつもりで・・・・・・・・

「 あの・・・・ 」

    
 
 
  
    「 漫画家アシスタント物語 もう終わりで章〈7〉」へつづく・・・・
                「もう終わりで章〈5〉」へもどる‥‥
                         「もくじ」 へ‥‥
 
 
 
 
 
 ~~~ 参照  もう終わりで章〈6〉~~~

【その11】
・ジョージ先生 :
 昭和の有名漫画家、代表作「銭ゲバ」「アシュラ」「浮浪雲」1966年、23歳で売れっ子作家に。70年には同時週刊連載6誌という逸話もある。2017年「浮浪雲」を終了し、2020年に東京にて永眠。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
 
 
 

 ⇩⇩ 輝くバラの画家、村田先生が童話作品で創作大賞に挑戦! ⇩⇩

 
 

    ⇩ ⇩ ⇩  私の応募作品もよろしく!  ⇩ ⇩ ⇩

 
 
 
 
 


いいなと思ったら応援しよう!

yes 年金生活者にとって、とても嬉しいご支援! 感謝申し上げます!