#89【治療体験記】コインの表と裏
マガジン化のお知らせ
「病院薬剤師が早期リタイア&起業した話」をマガジン化しました。
1記事ずつ購入するよりもお得になっています。
まとめ読みされたい方は是非どうぞ。
本稿は【だまさんの治療体験記】十二指腸がん編の第40回です。
入院生活を支える人々
2025.4.20 PO32
【医師】
・診断
・処方・検査・食事のオーダ
・治療計画の策定
【看護師】
・問診・聴診・触診
・体温・血圧・SpO2測定
・採血
・内服・外用薬の配薬
・注射薬・点滴の交換
・廃液(尿・胃液・糞便)の回収
【看護助手】
・外来・検査室への送迎
・清拭・陰洗・シャンプー・シャワー
・病院食の配膳・回収
・室内清掃・ベッド周りの清拭
・ゴミ回収
【委託業者】
・寝巻・紙おむつのレンタル
・買い物・洗濯の代行
私の入院生活はこれだけ沢山の方に支えられています(特に看護師さんたちは24時間体制でこれだけの業務をこなしていて、頭が下がります)。
もちろん家族の尽力にも感謝しています。
愛してるよ💕
質問攻め!?
8時半頃、S本先生が単身で訪室されました。
実は私、この瞬間をずっと待っていたのです。
訊きたいことが沢山溜まっていたし、一番話しやすい先生だからです。
さっそく質問開始!
Q「職場に提出する診断書をお願いしていましたが、自宅療養期間は?」
A「とりあえず5月末まで延ばそうと思っています」
十二指腸に対して2025年3月19日に十二指腸切除後、
術後は腸蠕動障害が遷延しており、現在入院中。
術後回復までは時間がかかる見込みで、
自宅退院後であっても2025年4月30日までの自宅療養を要する。
Q「退院しても職場復帰までに時間が掛かる方が多い理由は?」
A「十分に食事が摂れず、職場復帰に自信がつかない方が多いからです」
Q「病理検査結果が出たのはいつ頃ですか?」
A「通常術後から2~3週間後なので、4月に入ってからです」
お陰で頭の中のモヤモヤが晴れました。
術後補助療法
このままスムーズに食事摂取が可能になればいずれ退院の日を迎えます
すると次の焦点は術後補助療法となります。
術後補助療法(アジュバント)とは
がん再発防止を目的に行う化学療法(抗がん剤治療)のこと
ところが今回の場合、一筋縄で行かない悩ましい問題が幾つかあります。
❶標準治療は手術単独療法(補助療法の有効性を示したデータがない)
❸現在、CAPOX療法による補助療法は「先進医療」でのみ可能
❸❷の場合、「治療 or 経過観察」の無作為割付けとなる
❹切除不能あるいは再発例ではCAPOX療法が標準治療
❶標準治療に従うか、それとも
主治医のO林先生によれば、現在のところ大腸がん治療に準じてS-1を中心とするレジメンで治療することが多いとのことでした。
このまま私から何も言わなければ、標準治療(何もしない)ではなく、S-1ベースのレジメンが適用される流れです。
そんな中、私は次のサイトを通じて、CAPOX療法による術後補助療法が先進医療で受けられることを知りました。
「本技術(CAPOX療法)は、術後の補助療法としても現時点で最も効果が期待できる治療法と考えられます。本技術によって、術後の再発抑制ならびに生存期間の延長が期待されます」という情報を知ってしまった以上、そう簡単にはCAPOX療法を諦める訳にはいかなくなりました。
❷先進医療という選択肢
ただ、私は先進医療についてほとんど予備知識がありません。
もし次のいずれかに該当すれば、絵空事に終わる可能性もありました。
・先進医療を実施できる県外施設に赴く必要がある
・莫大な費用がかかる
しかし、何というめぐり合わせでしょうか?
本技術(治療)の実施医療機関に高知医療センターが含まれていたのです。
また、先進医療費用の平均額は約52万円と思ったほど高額ではありませんし、加入中の生命保険には先進医療特約が付いているため、経済的な問題も最小限で済みそうです。
高知医療センターにおける小腸がんの年間患者数は14名(全例手術あり)でした。一方、先進医療の年間実施人数は全国で7名に過ぎませんでした。
「先進医療の実績報告について 令和6年度(令和5年7月1日~令和6年6月30日)実績報告」より
❸くじ引き(無作為割付け)に外れるリスク
CAPOX療法による術後補助療法を希望する患者に大きく立ち塞がる障壁が
「無作為割付け」です。
無作為割付けとは
研究者は、定められたプロトコルに従って研究参加者を無作為に2群に分ける。そのうちの1群には要因の適用(または除去)を行い(介入群)、他の群には行わない(対照群)という分け方のこと。
もし対照群に振り分けられてしまったら、CAPOX療法どころか術後補助療法自体が受けられない事態となってしまいます。
CAPOX療法を熱望する患者からすれば、何ともやるせない仕組みです。
しかし、それでも私はCAPOX療法に賭けてみようと思います。
コインを投げなければ答えは一つしかありませんが、
投げれば複数の可能性が生まれます。
どの可能性が自分にとって最適かは誰にもわかりません。
しかし、コインを投げるかどうかは自分で決められるのです。
たとえ外れても標準治療(=経過観察)は受けられますし、社会貢献もできます(受け入れる準備はできています)。
≪先進医療のメリット・デメリット≫
【共通】
対照群に振り分けられてしまう確率は高い(1/2)が、いずれにせよ厳格なプロトコールに基づいて治療および効果判定が行われる(小腸がんの再発が通常より早く発見できる可能性も)。
【介入群】
治療は受けられるが、無効または副作用で中止となる可能性もある。
【対照群】
治療は受けられないが、(何もしないので)副作用の心配はなく、万一再発となれば先進医療を終了して(晴れて?)CAPOX療法が受けられる。
【解決できていない疑問点】
・CAPOX療法の副作用と支持療法
L-OHP+Capeの副作用は大体理解していますが、実際の患者のしんどさの度合いや、現在がんセンターで行われている予防や支持療法は?
・Vulnerable層の取り扱い
先進医療の場合はプロトコールに基づいた用量設定や減量基準があるため選択の余地はありませんが、再発例に適用する場合、Vulnerable層に恣意的に最初から減量することは可能でしょうか?もちろん小腸がんのデータはないでしょうが、大腸がんではどうでしょうか?

・緩和ケア内科の利用の実際
CAPOX療法が無効ならば緩和医療に移行することになりますが、その利用実態は?(全例受け入れていたらすぐキャパオーバーになると思うのですが…)。また、私のような患者(医療センター以外にかかりつけ医がない)でも利用できるものでしょうか?
今回はここまで。
次回をお楽しみに。
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