山行日記「表銀座縦走~すれ違う人たち~」Epi0 変質者にならないように
上高地インフォメーションセンターにある北アルプスの立体模型図は登山者に人気だ。
バスを待つ間に、自分が登ってきた山を、俯瞰して神様視点でじっくり眺めることができる。
改めて表銀座縦走ルートを、中房温泉からこの上高地までを見ながら、「よくやったなぁ」としみじみ思った。
距離は長いし、標高差もある。
そして槍ヶ岳の穂先までと、急登や稜線歩きや岩場などバラエティーに富んでいて、さすがに人気のコースだと納得した。
すぐ横でこの模型図を熱心に見ていた若い山ガールに思わず声をかけた。
「山が好きなんですか?」
「登ってきたところです」
「どの山?」
「蝶ヶ岳です。ここからピストンで行ってきました。で、槍ヶ岳が見えたんです。他の山はよく分からなかったんですが、こうやって見ると位置関係がよくわかりますね」
「そこに行ってきたんですよ。確かに槍はとがったところが分かりやすいですよね。実は僕も去年、蝶ヶ岳に登ったんです。
その時に、『あの尖った山が槍ヶ岳ですか』と周りにいた山の先輩たちに尋ねて、教えてもらったんです。
夕日に染まる槍を眺めていつか登りたいと思い、今回チャレンジしたんです」
「あの山頂は怖そうですが大丈夫ですか」
「ゆっくり慎重にいけば大丈夫です。今度行ってみてはどうですか」
「そうですね、いつか行ってみたいですね」
「いいですね、急に話しかけて失礼しました。ではお気をつけて」
と会話を終えた。
登山中は普通に挨拶を交わす。山小屋でも気軽に話しかけたり、かけられたりが多い。
そのため下山直後には一般社会の感覚に戻らなかったためか、思わず声をかけてしまった。
この俗世間では気を付けなければ変質者に思われてしまう。
