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【日めくり】最短ルートを測量したのに、恋はチャック全開【4月19日】

「運命の人は、もうあなたのすぐそばにいるわよ」
横浜中華街の隅、
薄暗い占い館で水晶玉が怪しく光った。

最終面接に落ちたばかりの路子(みちこ)は、
リクルートスーツの膝を強く握りしめ、
占い師の言葉を食い入るように見つめた。

今日は4月19日。
伊能忠敬が測量へと旅立った
「地図の日」だという。

路子の悩みは、終わりの見えない就活と、
家の近くのイタリアンで働く店員さんへの片思い。

「ダイエットして、内定も取って、完璧な自分になったら告白しようって決めてたんです」

ストレスで夜食のチーズを食べてしまう自分を責める路子に、
占い師は不敵に微笑んだ。

「一途な想いは尊いわ。でもね、迷子にならないように『ちず』をよく見なさい」

占い館を出た後、
路子は山下公園のベンチでパンプスを脱いだ。

海風が、
将来への不安や「私なんて」という卑屈な気持ちを少しだけ流してくれる気がした。

ふとバッグの奥から、
彼がいる店のショップカードを取り出す。

裏面には、
以前彼が手書きしてくれた簡素なアクセスマップ
――地図が描かれていた。

「……あれ、この地図、何か書いてある」
地図の端、細い路地を示す線の横に、小さな文字で書き込みがあった。

『いつも一途に通ってくれてありがとう。次は新作の低糖質チーズピザを試してみて。頑張りすぎだよ』

路子の目から、
不意に熱いものがこぼれそうになった。

彼は、
彼女の「いちず」な来店も、
密かに気にしていた体型も、
そして就活でボロボロの靴を履いていることも、
すべて優しく見守ってくれていたのかもしれない。

「今日は地図の日。私も彼への最短ルートを測量しなきゃ」

自分の名前に背中を押されるように、
進むべき「路」を信じて、
路子は店へと足を向けた。

扉を開けると、
いつもの彼が「お待ちしてました」と、
一番の笑顔で迎えてくれた。

運ばれてきたのは、たっぷりの野菜と、
とろけるような「ちーず」が乗った一皿。

路子が幸せそうに頬張っていると、
彼が顔を近づけて、吐息が届く距離で囁いた。

「実はあの地図、僕が君専用に書き換えたんだ。君が道に迷って、別の店に行かないようにね」

路子は顔を真っ赤にして、
チーズを喉に詰まらせそうになった。

今度こそ、勇気を出して想いを伝えようとした、その時。

彼が追い打ちをかけるように、
いたずらっぽく笑った。

「あと、さっきからスカートのチャック、半分開いてるよ。ダイエットの効果、もう出すぎちゃったかな?」

路子は絶句した。
せっかくの一途な恋のクライマックスが、
涼しい腰元のおかげで、
横浜の海風よりもシュールな結末を迎えてしまった。

〜あとがき〜

今日という日が、あなたにとって、一途な想いと地図を手に、心躍る最短ルートを歩み出す、心地よい一日になりますように♥


翌日の物語はこちら:


※本記事は個人の創作によるショートショート小説であり、実在の人物・団体・施設等とは一切関係ありません。


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