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【日めくり】背伸びしたグレーのセットアップと、不器用な恐竜のひみつ【4月17日】

「おはようございます」と絞り出した声が、
静かなオフィスに頼りなく響いた。

正面のデスクには、
周囲から『恐竜番付』で横綱と
恐れられる武藤課長が座っている。

その鋭い眼光は、獲物を狙う肉食獣のよう。
私は思わず、自分の爪先を見つめた。

新卒一年目の私は、
毎朝の服選びからして自信がない。

派手すぎず、地味すぎず、
先輩たちから浮かない「正解」が
ずっと見つからないのだ。

今日も無難なグレーのセットアップを選んだが、どこか背中が縮こまってしまう。

「昨日の定例会議の議事録、修正しておいたわよ」
武藤課長の、
地鳴りのような低い声が私のメンタルをわずかに削る。

バリバリ働いて自立したいと夢見て入社したけれど、
今は日々のミスを減らすことで精一杯。

将来のキャリアなんて、
今の私には雲の上の話に思えてしまう。

昼休み、私は同僚と給湯室でため息をついた。

「武藤課長、今日も絶好調に『無敵モード』だったね」
「本当、あの威圧感だけで胃がキリキリしちゃうよ」
私たちは、
サプリを飲んだり睡眠時間を死守したりして、
この人間関係の荒波を必死に泳いでいる。

夕方、私は恐る恐る課長のデスクへ向かった。
「あの、武藤課長。先ほどは修正、ありがとうございました」
すると課長は、パソコンから目を離さず、
ぽつりと呟いた。
「……今日は、恐竜の日だからね」
「えっ?」

課長は一瞬だけ口角を上げ、机の隅にある小さなフィギュアを指さした。
それは、どこか愛嬌のあるステゴサウルスの模型だった。
「昔から恐竜が好きなの。あんなに大きくて強そうなのに、実は環境の変化に弱い、繊細な生き物でしょう? なんだか他人事とは思えなくてね」

驚いた。
あんなに完璧で、
名前からして無敵そうな武藤課長が、
自分の中にも「弱さ」があるのだと言ったのだ。

「あなた、そのセットアップ。清潔感があって似合っているわよ。自信を持ちなさい」

その言葉に、
ずっと重かった肩の荷がふわりと軽くなった。

帰り道、私は駅前のショップで少しだけ明るい色のパンプスを眺めた。

来月の給料日には、
これを自分への投資として買おう。

明日からは、
もう少しだけ胸を張って歩けそうな気がする。

ふと、昼間の会話を思い出した。
「実は弱い恐竜」に自分を重ねた武藤課長。

でも課長、
私たちが呼んでいる『恐竜番付』は、性格じゃなくて、
その凄まじい「見た目の迫力」の順位なんです。

武藤(ムトウ)だけに、
誰も立ち向かえない『無双(ムソウ)』の横綱。
それは、口が裂けても言えないけれど。

小さな一歩が、明日をそっと変えていくように。
私も、
日々の記録を支える仕組みを 裏で少しずつ整えています。
もうすぐ、お知らせできると思います。

〜あとがき〜

今日という日が、あなたにとって、背筋を伸ばして一歩踏み出せる、心の晴れやかな一日となりますように♥


翌日の物語はこちら:


※本記事は個人の創作によるショートショート小説であり、実在の人物・団体・施設等とは一切関係ありません。


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