【兵庫県文書問題】多数の個人・企業に対する誹謗中傷的記述の内容を整理する
はじめに
兵庫県文書問題では、渡瀬元県民局長が10ヵ所に配布した文書が一般にも流出し、多くの人物や企業・団体に関する誹謗中傷的記述が拡散された。
しかし、現在でも一部のメディアや反斎藤派の人物から、斎藤知事が公益通報者保護法に違反したとの批判が続いている。
この点については、過去の記事において法的観点から整理しているため、そちらを参照されたい。
また、第三者委員会の報告書においては、斎藤知事のパワハラについて一定の評価が示されているが、これは第三者委員会独自の評価基準によるものである。
さらに同報告書においては、それ以外の点について事実関係の認定がなされていないことにも留意が必要である。
その上で、本稿では当該文書に記載された誹謗中傷的記述の内容を整理し、どのような断定的評価がいかなる形で記載されていたのかを具体的に確認する。
文書原本




名誉棄損整理
1. 個人に関する記述
斎藤元彦知事
文書では以下のように記載されている。
「井戸嫌い、年長者嫌い、文化学術系嫌いで有名」と人格的評価
副理事長解任を「嫌がらせ以外の何ものでもない」と評価
五百旗頭氏がその対応により強いストレスを受け、「その命を受けた片山副知事とともに命を縮めたことは明白」と因果関係を断定
令和3年知事選において、県職員による事前運動・選挙運動の関与を背景に当選したとする構造
令和5年以降、商工会・商工会議所に対し投票依頼を行ったと記述
贈答品について「おねだり体質」「自宅に山のように積まれている」と記載
コーヒーメーカーの件では表向き辞退しつつ、裏で受領を指示したと記述
トレックのロードバイクについて「贈収賄」と断定
ゴルフクラブについて「再度おねだり」との情報を記載
企業選定について「何が貰えるかが判断材料」「役得が列記されている」との記述
出張時の飲食について「ゴチのタカリ体質」と表現
政治資金パーティでは補助金削減を示唆した圧力を背景に購入させたと記述
パレード関連では補助金を通じたキックバック構造に関与したと記述
パワハラについて、怒鳴る・無視する・机を叩く・チャットで深夜指示など多数の具体例を列挙
人事について「気に入らないだけで左遷」と記述
片山安孝元副知事
五百旗頭氏に対する副理事長解任を「相談ではなく通告」として実施
その行為が結果として死亡に繋がった文脈で記述
政治資金パーティにおける圧力の「実質的実行者」と記載
パレード資金のキックバック構造の「司令塔」と記載
井ノ本知明氏(当時:県民生活部長)
選挙における事前運動の実施者の一人として記載
贈答品問題において「アレンジ役」と記述
パレード問題においても関与が示唆される
部下の問題について「どこ吹く風で知事の機嫌取りに勤しんでいる」と評価
原田剛治氏(当時:産業労働部長)
選挙の事前運動実施者として記載
知事の投票依頼行脚に随行したと記述
贈答品受領に関する指示を受けた対象として記載
小橋浩一氏
選挙における事前運動の実施者として記載
三宅隆之氏
選挙の事前運動実施者として記載
「お前ら言うこと聞けよ」と市役所幹部等に対する恫喝発言をしたと記述
細川敬太氏(当時:市町振興課長)
知事と同じ総務省出向でありながら「考えられないくらい冷遇されている」と記述
その理由について「付度しなかったことへの面当てかも知れない」と推測
福田靖久氏(当時:産業労働部地域経済課長)
政治資金パーティに関する圧力行為の「実行者」と記載
古川理事長(信用保証協会)
保証業務を背景に企業へパーティ券購入依頼を行ったと記述
見返りとして理事長に抜擢されたと記述
その後退任し別ポストへ移る動きについても記載
岡専務理事(信用保証協会)
上記パーティ券購入依頼に関与したと記述
服部会長(みなと銀行)
片山元副知事との関係性(高校の先輩後輩)を記載
今後、銀行に対する利益供与がある「ものと思われる」と推測
パレード担当課長
一連の不正行為と大阪府との調整により「精神が持たず、うつ病を発症」と記述
2. 企業・団体に関する記述
株式会社千石
同社幹部が、視察に訪れた知事へ高級コーヒーメーカーを贈呈しようとしたと記述
マスコミの前では辞退された後、秘書課へ送付し、知事に受け取らせたかのように記述
同社が、知事への不適切な贈答や、表に出ない受け渡しに加担した企業であるかのような印象を与える
片山副知事の子息が同社に勤務しているとの未確認情報を併記し、県幹部との特別な関係を疑わせる記述
トレック・ジャパン株式会社
ロードバイク(約50万円)を知事に提供
これを「完全な贈収賄」と断定
アシックス
知事が広告塔となる構造の中で「癒着」と表現
兵庫県信用保証協会
保証業務を背景とした企業へのパーティ券購入依頼を実施したと記述
但陽信用金庫
補助金増額を原資とした寄附(キックバック)の幹事社と記述
神姫バス
便宜供与の見返りとして寄附を行ったと記述
みなと銀行
将来的に県からの利益供与がある可能性を示唆
総括
本件文書は、
・違法行為を具体的に列挙しつつ断定的に記述している
・「〜で有名」「〜に過ぎない」「〜と思われる」など、評価や推測を交えて構成されている
・一部では死亡や疾病と行為の因果関係にまで言及している
といった特徴を有する。
そして、その対象は特定の一人や一社にとどまらず、複数の個人および企業・団体に広がっている。
しかし、第三者委員会の報告内容を踏まえると、斎藤知事のパワハラに関する評価(同委員会独自の基準によるもの)を除き、これらの記述について事実関係は認められていない。
すなわち、本件文書において断定的に記載された多数の不正行為や不適切行為について、その前提となる事実は確認されていないことが明らかとなった。
その意味において、本件文書は告発というよりも、事実の裏付けを欠いたまま評価を流通させた文書と位置付けざるを得ない。
その結果、断定的な評価のみが先行して流通し、対象となった個人および企業・団体の社会的評価に影響を及ぼし得る状態が生じたといえる。
このような文書を、果たして「告発」と評価できるのだろうか。
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