ベネズエラ国民は喜んでいるのか〜歓喜と沈黙の温度差〜
2026年1月3日未明、米軍がベネズエラを攻撃し、マドゥロ大統領夫妻を拘束・国外移送した。
前回の記事では「260兆円の石油」という数字の虚実を検証した。
今回は、ベネズエラ国民がこの出来事をどう受け止めているか。結論から言えば、反応は「その人が今どこにいるか」で全く違う。
国外脱出者の歓喜
過去10年以上で約800万人がベネズエラを離れた。人口の4分の1。シリアに次ぐ世界第2位の難民危機だ。主な避難先は米国、コロンビア、ペルー、チリ、スペイン。
彼らの反応は圧倒的な喜びだった。
米国フロリダ州ドーラルでは大規模な祝賀集会が開かれた。チリやスペインでも街頭でベネズエラ国旗を掲げ、国歌を斉唱する人々の姿が報じられている。「自由だ」「ついに帰れるかもしれない」という声が相次いだ。
なぜこれほど喜んでいるのか。
2014年から2020年の間にGDPは74%減少し、国民の95%以上が貧困状態に陥った。6桁のデノミで通貨は紙くず同然に。食料・医薬品の深刻な不足。暴力と犯罪の蔓延。政治的弾圧と言論統制。彼らはそこから逃れてきた。
10年以上にわたる苦しみからの解放。祖国への帰還の可能性。家族との再会。歓喜するのは当然だろう。
帰国への道のりは遠い
ただ、歓喜の裏には現実がある。
ある調査によると「経済が大幅に改善すれば帰国する」と答えたベネズエラ人は57%。しかし「マドゥロが権力を握ったままなら帰国する」と答えたのはわずか14%だった。マドゥロはいなくなった。だが、帰国の条件が整ったわけではない。
国内のインフラは崩壊している。電力網は老朽化し、週に3〜4回の停電は日常だ。インターネット速度は地域平均の10分の1。水道や医療も機能不全に陥っている。彼らが10年前に離れた家は、まだそこにあるのか。住める状態なのか。治安は保たれるのか。
帰国を夢見る800万人の前には、いくつもの壁がある。
国内残留者の沈黙
一方、国内に残る約1,950万人の反応は全く異なる。
カラカスのBBC記者は「午前2時、巨大な爆発音で目が覚めた。すべてが震え、心臓が激しく鼓動した」と証言している。カラカス住民の声はこうだ。「どう感じているか? 怖い。みんなと同じように。ベネズエラ人は怖くて目が覚めた」「彼ら(米国)は世界の警察だ。彼らは暗殺者だ」
街はゴーストタウンのような静けさに包まれている。ほとんど無人の街路。ガソリンスタンド、スーパー、薬局には長蛇の列。公共交通機関は停止し、一部地域では停電が続く。
国内に残る人々の反応を見ると、まず反政府派の大多数。内心ではマドゥロ体制の終焉に安堵しているとみられる。しかし公言できない。マドゥロ政権下では、米国の軍事行動を支持する発言は違法とされ、最大30年の懲役が科される可能性があった。政権が崩壊した今も、混乱の中で何が起こるかわからない。野党指導者マチャドもコメントを拒否している。
マドゥロ支持派もいる。カラカス市長が参加した抗議デモでは「マドゥロを支持しろ」「即座に釈放を」「これは誘拐だ」「主権侵害だ」という声が上がった。ただ、マドゥロ政権の実際の支持率は2割以下とされており、少数派だ。
そして沈黙する大多数。家に閉じこもり、何も言わず、国外の家族に安否確認をし、様子を見ている。
声を上げられない構造
沈黙には理由がある。
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