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ISO/DIS 14060が示すネットゼロ企業の考え方― SBTiとの違いとカーボンクレジットの位置付けを解説 ―

6月17日にISO 14060 Net zero aligned organizations(ネットゼロ目標に合致する組織)のドラフト版が公開され、12週間のパブコメが開始されました。9月までの合意形成を目指すとのこと。

SBTiが6月11日に企業ネットゼロ基準を始めてメジャーアップデートし、カーボンクレジットの要件を明確化・強化・前倒ししたことは以下の記事で説明をしました。

ISOがドラフトを公開したこの規格は基本的にはSBTiとの整合を図りつつも、カーボンクレジットの活用方法中間目標を達成できなかった場合の考え方などで、いくつか重要な違いが見られます。

今回はそのポイントを整理します。


ISO/DIS 14060におけるカーボンクレジットの4つの役割

ISO/DIS 14060では、カーボンクレジットの役割を次の4つに分類しています。

1. 気候変動緩和への資金提供(推奨)

企業は、自社の排出削減とは別に、気候変動対策へ資金を提供することが推奨されています。

対象となるのは

  • 吸収・除去クレジット

  • 排出回避・削減クレジット

であり、新たな気候変動緩和の取り組みを生み出す追加性のある投資が推奨されています。

これはSBTiでいう**BVCM(Beyond Value Chain Mitigation)**やOERとほぼ同じ考え方です。


2. 中間目標未達時の是正措置

中間目標を達成できなかった場合には、

  • 吸収・除去

  • 排出回避・削減

のいずれのクレジットも補完的な手段として利用できます。

この点は、SBTiでは明確な記載がほとんどない部分であり、ISO独自の特徴と言えます。


3. 過去排出への対応

ISOでは、企業が過去に排出した温室効果ガスへ自主的に対応する取り組みも、高い野心として評価しています。

こちらもSBTiでは明確な位置付けはありません。


4. ネットゼロ達成時の残余排出の除去

ネットゼロを宣言する際には、

高耐久性の除去(Durable Carbon Removal)

が必須とされています。

ISOでは耐久性100年を基本的な考え方としており、具体的な数値で示されているのがSBTiとの差異です。

一方で注釈として、

物理的な貯留期間が100年未満と予測される場合でも、バッファープールや保険、リスク評価、複数の除去手法の組み合わせなど適切なリスク管理が行われれば、「耐久性100年」とみなせる可能性

にも触れられています。これは明らかに森林を想定した記述です。Removal(吸収・除去)クレジットの大半を占める森林を取り込む意図が見えます。


クレジットに求められる品質

ISO/DIS 14060では、利用するカーボンクレジットに対し、

  • 耐久性

  • 追加性

  • 定量化

  • リーケージ管理

  • 二重計上防止

  • 独立した第三者検証

といった品質要件を求めています。


中間目標を達成できなかった場合の対応

ISOでは、中間目標を達成できなくても、すぐにネットゼロへの整合性が失われるわけではありません。

移行計画(Transition Plan)を更新し、必要な是正措置を講じることで、引き続き「Net Zero Aligned」であることを主張できます。

ただし、

  • Scope 1はカーボンバジェット内に収まっていること

  • 各Scopeで基準年より排出量が削減されていること

  • 移行計画に沿った施策を実施していること

  • 超過排出分について気候変動緩和への資金提供を行うこと

などが前提条件になります。


超過排出量によって対応が変わる

ISOでは、目標未達の程度に応じて対応が異なります。

超過が25%以内

「調整期間」となり、

  • 未達となった範囲

  • 超過割合

を公表することが求められます。


超過が25%を超える場合

「是正期間」に入り、

12か月以内に拘束力のある是正計画を策定・公表する必要があります。


軽微な未達の場合

条件付きではあるものの、「Net Zero Aligned」の状態を維持できます。

その場合は、

  • 3か月以内に

    • 省エネ

    • 燃料転換

    • 電化
      などの具体策を盛り込んだ対応計画を公表することが求められます。


まとめ

ISO/DIS 14060は、SBTiとの整合性を保ちながらも、より実務的で柔軟な制度設計を目指していることが分かります。

特に注目すべきポイントは、

  • カーボンクレジットの役割を4つに整理していること

  • 中間目標未達時の対応プロセスを明確に示していること

  • 過去排出への自主的な対応を評価していること

  • 耐久性に関して、100年以上を基本としつつも森林を取り込む意図から、リスク管理による柔軟な考え方を取り入れていること

です。

今後、ISO/DIS 14060が正式な国際規格となれば、企業のネットゼロ戦略やカーボンクレジット活用の考え方に大きな影響を与える可能性があります。SBTiとの違いを正しく理解しながら、今後の議論や最終版の内容を注視していくことが重要です。

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