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風薫る長命寺へ。膝は爆笑、心は晴天、40代からよりよく生きるための808段。

先日、京都東山の豊国廟で489段の石段を登りきった私は、階段にハマってしまったのかもしれない。

お休みが続くと、普段とは違う動きをするせいか、ふとした瞬間に腰の重みを感じるようになります。

このままではマズイ……

凝り固まりかけた体をほぐそうと向かったのは、滋賀県近江八幡市にある「姨綺耶山 長命寺(いきやさん ちょうめいじ)」。

飛鳥時代に聖徳太子が開基したと伝わるこの古刹は、琵琶湖を望む長命寺山(333m)の山腹に静かに佇んでいます。

この山の中にある
低く見えるけど…

階段をあえて登った先にある景色に感動する

山の麓に到着すると、お寺へは二つの道があります。

(A) 山の中腹まで車、残りの100段ほどを登る道
(B) 麓から808の石段をひたむきに踏破する道

当然(B)ですよね!

「迷った時には困難な方を選べ」

新人の頃、上司がかけてくれた言葉が、40代になってなお、私の背中を押してくれます。

よっしゃ、行く!

タイパ重視の現代で、こんな選択は時代遅れなんかもしれない。
けれど、人生の転機にいる今の私が必要なのは、そんな苦労の先にある何かだと感じる時があるのです。

はははははは…
とりあえず笑おう

前日の雨で湿り気を帯びた石段は滑りやすく、集中して慎重にいかねば、ツルんと転んでしまいそう。

豊国廟のように整った石段ではなく、登山に近い

豊国廟ではダッシュしてむせかえるという醜態を晒したので、今回は一歩ずつ、階段を登っていきます。

途中に休憩所
慈悲を感じる

木々の間を吹き抜ける風が、ほてった頬を撫でる。
沿道の朽ちた建物や苔むす石垣から、車のない時代にこの道を歩いたであろう、いにしえの人々の息遣いが聞こえてくるような。

お疲れさん
優しげなげなお地蔵さんが見守ってくださる

歴史の中を彷徨い、時代を追体験するような感覚に包まれていきます。
便利な暮らしの中で忘れかけていた、自分の力で目的地へ辿り着くという喜び。

おい!なにサボってんねん。
ひえーーーー

途中、8合目からは車で登ってきた方々と合流。
西国三十三カ所第31番札所としても知られているだけあって、この日も多くの方がお越しになっていました。

あー終わりが見えない…

そんな人々の中で一人だけ、ゼエゼエ肩で息をしている私(笑)
少し恥ずかしくも、頑張った自分を褒めてあげたい。

ようやく山門が見え、檜皮葺の堂宇が連なる境内に到着しました。

まだ登るよー
上に見えるのが重要文化財の「本堂」

こちらのご本尊は、すべての衆生をお救いくださると言われる千手十一面聖観世音菩薩様。「寿命長遠」の御利益があると言われます。
なるほど、この808段を上り下りしていれば、足腰は鍛えられて寿命も延びるでしょうね。

本堂と三重塔
朱色が目に鮮やか

少し息を整えてから、私のお気に入りの場所へとさらに足を延ばします。
諸堂を抜けた先にあるのは、長命寺を守る大天狗を祀っている太郎坊権現社。

太郎坊権現社にある巨石
今にも落っこちそう

大きな岩に神威を感じながら、そこから見下ろす琵琶湖と近江盆地は、本当に美しく、またここに来たいと思わせてくれます。

近江盆地の遠景

思いっきり息を吸い込むと、体の隅々まで澄んだ空気が行き渡る感じがして、階段での疲れが、達成感へと変わっていきます。

お堂の中から琵琶湖を望む

本堂に戻りながら朱色が鮮やかな三重塔と、檜皮葺の諸堂が織りなす雅な景色を眺めながら、階段をのぼり健康長寿を祈願してきた数多の人々に思いを馳せます。

この檜皮の連なりが何とも美しい

40代が人生の岐路に思うこと

40代半ばを迎え、今後のキャリアや生き方について考える時間が増えました。体調の変化もあって、以前のように頑張れないというか、踏ん張りが効かなくなった自分に、どこか戸惑いを感じています。

永禄年間(1558年−1570年)の再建と伝わる三仏堂(重要文化財)
本堂(重文)も良いけど、この建物の屋根の曲線が好き
守り伝えてこられた時を思う

加えて、周囲には同じように頑張れる仲間も減ってきた。
生きてきた時代の違い、世代差なんだなと、自分の立ち位置を、半ば諦めに近い気持ちで受け入れようとすることもしばしばです。

山道にある休憩所
時にはひと休みしたいよね

でも、時々こうしてあえて苦労し、回り道をする。
人生もきっと同じで、最短距離を駆け抜けるだけでは見落としてしまう景色が、この世界にはたくさんあるんだと。

新緑の季節は心も晴れる

時代遅れと言われても、一歩一歩、石段を踏み締めたからこそ味わえる体験の深みこそが、私の人生を豊かにしてくれるはずだし、まだ戦えるという自信にもなる。

私にとって階段を登ることは、自分自身の強さと弱さに向き合い、再確認する儀式のようなものなのかもしれません。

鐘楼

人生の階段はまだまだ続く

ん?ちょっと待てよ……

滋賀界隈に詳しい方ならもうお察しのことかも知れません。

「太郎坊権現」といえば、同じ滋賀県の東近江市にあって勝運の神様で知られる「太郎坊宮(阿賀神社)」。

10年も前に私の膝をゲラゲラ悶絶させた恐怖の階段。
年に一度、「太郎坊チャレンジ」と称し、急勾配の石段を一気に駆け上るイベントも開催されている。

まさに「階段の聖地」と言っていい場所がある。

私にはこの石碑が「フラグ」に見えた

行くの?行かないの?
どうする?GOする?

膝が苦笑いしながら私に問いかけてくる。

「その先にはもっと違う世界があるかもよ」
どこからか天狗様の囁きが聞こえてくるようです。

また、近いうちに…

山門の脇に置かれている杖
時には支えもいるよね

人生の階段は続く。
筋肉痛で無様な歩き方になったとしても、足腰が動く間は、登り続けようと思う。

降りる方が怖い
勢いで高いところに登って降りられなくなるタイプ(笑)

山門を背に登りよりも慎重に階段を降りながら、いつしか腰の違和感は消えていました。

駐車場で懐かしいコンビを見つけた

長命寺
滋賀県近江八幡市長命寺町157番地
(JR『近江八幡駅』から近江バス25分)
拝観料|無料
拝観時間|8:00〜17:00

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