6月の寝言 風まかせ文芸部
「昨夜、あんた寝言を言っていたわよ」
朝食の席で、母から突然そんなことを言われた。
「えーっ、そうなの?…なんて言ってた?」
「それがね。『シュワシュワ仙人がどうとかこうとか…』って」
いやはや、もしかして夢の中でも、あのシュワシュワ仙人に仕事の愚痴を聞いてもらっていたのだろうか。私は思わず笑みがこぼれた。
それなら、あの「シュワシュワ仙人の労い湯」をなんとか手に入れて、もう一度使いたい。
私はさっそく、以前プレゼントしてくれた友人にどこで手に入れたか尋ねてみることにした。
友人からお店を教えてもらったものの、「夢にまで出てくるなんて、あんた相当疲れてるよね」と、呆れ半分に心配されてしまった。
確かに、六月のジメジメした空気のせいか、最近は体も心も少し重かったのかもしれない。私はその足で教えてもらった店へと向かい、あの不思議な入浴剤を買い求めた。
その夜、念願の入浴剤を湯船にドボンと落とし、私は無事に仙人と再会を果たした。
「仙人、私、夢の中でまで仙人の名前を呼んでいたみたいです」
お湯に浸りながら報告すると、仙人はゴボゴボと嬉しそうに泡を弾かせた。
「知っとるよ、ワシも夜中に君の夢にお邪魔して、愚痴の続きを聞いとったからのぅ。六月の疲れというのは、寝ている間にも溜まるもんなんじゃよ」
そう言って、仙人は優しく笑うのだった。
翌朝。
「昨日の夜も、あんたまた寝言を言ってたわよ」
朝食の時、母から再び指摘されてしまった。
「えっ、今度はなんて言ってた?」
ドキドキしながら聞き返すと、母は目を細めた。
「『仙人、またね』って、なんだか凄く嬉しそうに笑ってたわよ」
自分の寝言の気恥ずかしさに思わず赤面しつつも、私の心は、窓の向こうに広がる六月の青空のように、すっきりと晴れ渡っていた。
※シュワシュワ仙人、また出てきました。
下記もお読みいただきますと幸いです。
※iさま、どうぞよろしくお願いします。
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